横須賀にある米軍基地を訪問したエントリのカテゴリーを
「アメリカ」にするのは少しためらわれましたが、門を一歩入れば
そこはすでにアメリカであった、ということからあえてこうしました。
米軍基地というのはどこも、その気になれば全く外に出ないで
全てが完結するだけの施設が充実しています。
ショッピングセンターはもちろん、学校、医療施設、教会、
映画館もボーリング場も、前回の観察によるとリサイクルショップまで。
それでなくても艦隊勤務の軍人さん、ロナルド・レーガンの乗組員などは
ここにあってもさらに艦内でずっと生活しているわけです。
休みの日に外に出るだけで、まるで「海外旅行気分」なのではないでしょうか。
さて、昼食後はいよいよバスで「ロナルド・レーガン」まで 移動です。
RRの前にはセキュリティゲートがあって、出入りが厳しくチェックされます。
バスはここでしばらく待たされました。
バスの右手には実は潜水艦が繋留してありました。
おお米軍の潜水艦、これは珍しいと皆が窓越しにみていると、
「潜水艦の写真は自衛隊のも米軍のも撮らないでください」
と最初も言われていましたが、駄目押しのアナウンスが。
しかし驚いたことに、そのとたん、
携帯で写真をとるシャッター音が周囲で2回起こりました。
撮るなと言われてる端から撮るな!
とはもちろん言えず、黙っていました。
なんだろう・・・撮っちゃいけないといわれたら、撮りたくなる?
わたしは潜水艦の右側で作業をしていた隊員の写真で我慢しました。
このフォークリフトがKOMATSUでないのが、アメリカです。
しばらく待たされたのは、この案内役の広報官に連絡を取り、
彼がRRから出てきてここまで歩いて来るのに時間がかかったからでした。
なんと、錨のマークがついた白いカウボーイハットを被っています。
これは、一見カウボーイハットですが、実はヘルメットなのです。
画像検索してもこのタイプは一切出てこないので、もしかしたら
最近導入されたものなのかもしれません。
青い海軍迷彩に白のカウボーイハットがよく似合うこの長身の広報官が、
この乗艦ツァーの間ずっと付き添って説明をしてくれます。
こちらには女性の通訳が一人同行していました。
彼が乗り込んでから、バスはRR前まで移動。
この時初めて知ったのですが、RR、どうやら現在補修中です。
わたしの今まで実際に乗艦したことのある空母は退役して博物館になった
「ホーネット」と「イントレピッド」ですが、
現役の空母の中に実際に入るのはもちろんこれが初めてです。
「ホーネット」「イントレピッド」のエセックス級空母の排水量は27,100t。
RRは満載 101,429t ・・・・・って、なんと4倍弱はあるではないの。
RRの全長は先代の「ジョージ・ワシントン」と同じ333mで、これは
東京タワーと全く同じだったりしますから、「ニミッツ」級おそるべし。
広報官によるとRRの乗員総数は2500名だそうですが、これには日常横田にいる
飛行隊の人数は入っておらず、全てが乗り込んできたらほぼ5,000人だそうです。
Wikipediaには乗員総数3,200名、航空要員2,480名とされていますが、
その誤差が何であるかはわかりません。
しかし、同じ艦に勤務していても一度も会ったことのない人同士なんていくらでもいそうですね。
作業でペンキでも塗るのかな、と思ったのですが、それにしては
全身真っ白のつなぎって、汚れが目立ちすぎないかな・・・?
・・・・はっ。
これってもしかして原子炉関係のメンテナンス要員?
ニミッツ級はA4Wという艦艇用原子炉を2基搭載しています。
この超弩級空母が、軽々と海上を航行するための140,000軸馬力(104MW)の推力と、
艦内で必要な電力を産み出すのに十分な蒸気を発生させているのです。
バスは艦内に通じる階段に横付けです。
カメラを持っていない人は皆携帯で写真を撮りながら
「大きすぎて画面に収まらない!」
と口々に言っております。
こんなこともあろうかと広角レンズを持ってきたわたしに死角はなかった。
どれくらいの割合で行われるのかはわかりませんが、この補修は
かなり大規模なものである模様です。
おそらく左に突き出している部分にも、その上にも、
パイプでこれでもかと足場が組まれているのが確認できます、
こちら艦橋側。
操舵室と航空管制用と司令用と・・・
これだけガラが大きいと、役割が分担されてあちこちに分けられています。
こちらに向かって突き出したデッキは、おそらく着岸の時に視認するためのものでしょう。
さて、いよいよラッタルを渡って乗艦です。
まず階段でこのレベルまで登り、しかるのち少し傾斜した
ラッタルを渡っていくので、ここまでは楽勝。
途中で立ち止まって写真を撮りまくっても大丈夫。
というわけでわたしも途中で撮りまくりました。
いろんなコードやパイプやもやい的なものが陸上とつながっています。
艦上の海軍迷彩以外の作業員は日本人。
画面右端に集合している作業員たちも日本人です。
後から甲板を見る機会があった時、飛行甲板の補修をしていたのがこのグループでした。
必要な技術によっては日本の企業に依頼することがあるんですね。
なお、このときに日本人限定で作業員を選ぶのかどうかは謎。
どうやら艦体の隅々まですべて塗装し直すようです。
あらゆるところに作業足場が組まれています。
滑り台が海に突き出しているようなこの構造物はなんでしょうか。
別の艦船と洋上で接舷したときに、何かを渡すためのものか、
それとも、いざという時の脱出のためか(こちらは多分違う)
ラッタルを渡りながら反対側を撮ってみました。
こちらもたくさんのコードがつながっていますが、注目したのは
岸壁の構造。
なんと、「地下」にコードをつなげる電源やその他色々が収納されていました。
雨風が少しでもかからないための仕様でしょうか。
艦内に入る前に立てかけてあった火災に関する注意書きの色々。
boundaries というのは境界のことですが、
右下はこの4つの境界にファイアーアラームがあるので、
安全担当士官にコンタクトを取ってからドアとハッチを通れ、
というようなことが書かれているように読めます。
ここでもイマージェンシーコールは911となっています。
さて、艦内に入ると、まずそこがRRの「玄関口」です。
まず、当空母の幹部の写真が・・・・・ってなんてたくさんいるんだ。
まあ、5,000人の組織ですから、トップもこれくらい必要でしょう。
トップスリーの下は「ナビゲーション」「オペレーション」「エア」で、
これはわかりますが、その下に「デンタル」がいるのには驚きました。
普通に歯医者さんのことですよね?
人数が多いだけに、それを統括する部門も細分化されていて
そのぶん指揮官もたくさんいるってことです。
ついこの間乗ったのは、少人数でなんでもやってしまう掃海艇だったのですが、
こんかいはすべてが対極にある巨大空母です。
真ん中が艦長で、「コマンディング・オフィサー」。
右は自衛隊の「海曹長」で、これが「コマンディング・マスター・チーフ」。
左は状況的に副長だと思うのですが、「エグゼクティブ・オフィサー」。
下士官のチーフ、曹長の腕の洗濯板がすごい。
こちらにはそのCPO、下士官の指揮官がこちらもずらりと。
甲板、砲術、ナビ、航海などの戦術科は上段に。
供給、法務、医務、セキュリティ、セイフティなどは下段です。
印象ですが、やはり士官にはコケイジャンが多く、下士官にアフリカ系、
アジア系、ヒスパニック系が多いように思います。
そして彼らの属する海軍組織の偉い人たち。
トップはアメリカ合衆国大統領であり、その下には
「セクレタリー・オブ・ディフェンス」つまり国防長官、
「セクレタリー・オブ・ネイビー」、海軍長官 。
後の制服組は、太平洋艦隊司令長官とか、第7艦隊司令とか。
そして他の空母を見たことがないので比べようがありませんが、
いかにも「ロナルドレーガン」の名を冠した空母らしい、にぎにぎしいコーナー。
さすがは超弩級空母、おそらく普通の船にこれ一つ載せたら速度すら落ちるに違いない。
笑ってしまうくらい大きなロナルド・レーガンのブロンズ像が。
かつて使っていたことのある操舵室の備品もここぞと飾りたてております。
舵輪には、まるで蜘蛛の巣のようにもやいをあしらってみました。
後ろの旗についての説明は全くなかったので、何かわかりません。
艦隊旗かなんかでしょうか。
巨大頭部ブロンズ像だけで驚いてはいけない。
その向かい側では、なんと全身像が「いよッ!」とばかりに手を上げてご挨拶。
やっぱり元映画スターっていうのが、こういうときに表れますねえ。
同じ生存している人の名前が付けられた空母でも、アーレイ・バーク提督や
ジョージ・ブッシュではここまでやってないのではないかな。
(いや、ボブ・ホープとジミー・カーターならあるいは・・)
みなさん、ここで待たされている間に、この手を握りしめたりぶら下がるふりをして、
実に楽しそうに写真を撮っておられました。
さすが空母「ロナルド・レーガン」、見学者に対するおもてなしのツカミはバッチリです。
続く。