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艦橋と集中制御室〜掃海母艦「ぶんご」見学その1

2019-04-19 | 軍艦

今年の幹部候補生学校の卒業式には、すでにここで述べたように
前日の見学を含むツァーにご招待いただくという形での参加になりました。

卒業式のご報告が全て終わった今、あらためて卒業式前日の
見学からお話しさせていただこうと思います。

予定には「艦艇見学」とだけ書かれており、何を見せていただけるのかは
当日、岸壁に到着してからのお楽しみ、ということで
集合場所のホテルのロビーから自衛隊のご用意くださったバスに乗り、
やってきたのはわたしにとってはおなじみの昭和埠頭(というらしい)。

一番IHI寄りの岸壁に係留されている掃海母艦「ぶんご」。
これが本日見学させていただく自衛艦です。

わたしにとっては掃海隊の訓練のときに見学させていただいたり、
艦長と会食、あるいは高松での掃海艇殉職者追悼式に先立つ
艦上レセプションで非常に馴染みの深い艦ですが、今日の見学では
どんな発見があるでしょうか。

艦上に案内されて一番最初に何をしたかというと写真撮影。
艦橋が写るように艦首部分に並べられた椅子の前には
掃海隊群のシンボルである龍が機雷を掴んでいる姿を描いたマーク、
それがプリントされたマットが敷いてあります。

感心するのは、こういうときに海上自衛隊というのは
席をきっちりと決めておくことで、しかもその席順は、
前にも言いましたが、海自内部でどういう基準によるものか
厳密に上位が決まっているらしいことでした。

これは間違いなく海軍伝統で、海上自衛隊の規則集には
例えば車の席でも上位がきっちりと決まっていて、
運転手の後ろが「上座」だったと記憶します。

写真撮影後、艦内に案内されました。
掃海母艦の艦橋はほぼ艦体の大きさのままで低く安定しているので
正面から見ると大変見分けやすい形をしています。

移動中も見学中も、カメラマンが記録の写真を撮りまくっていました。

今回は海幕総務から海将補を筆頭に一佐、二佐、海曹長、
そして防衛省職員などが一団となって
一行の案内、説明、
アシストのために出張してきていました。

舷側を歩きながらも周りの写真を撮るのを忘れません。
隣の岸壁には掃海艇「あいしま」と「みやじま」がいます。

これも補給のための構造物のため一目でわかる補給艦、
「とわだ」がいます。

この岸壁には通常「いずも」がいるのですが、今日は訓練に出ていてお留守です。

その向こうが潜水艦基地。
「そうりゅう」型潜水艦が一隻だけ係留されていました。

 

 

やっぱり「みやじま」は地元である広島・呉を定係港にするんですね。
「あいしま」も山口県相島から名前を取っています。

「相島」という島は全国に三箇所あるのですが、「あいしま」と読むのは
山口のだけで、三重県の相島は「おじま」(御木本真珠島のこと)、
そして福岡県のは「あいのしま」と読むのだそうです。

案内されて艦内に入って行きました。

部屋に入ると、席次がモニターに映し出されていたのでびっくり。

最初にレクチャーが行われることになっていたのですが、
ここも全て席が決められていて、左側の真ん中が「上座」のようでした。

席に着くとまず冷たいお茶が出てきて、その後はコーヒー。
陸自もそうですが、自衛隊では必ずコーヒーが出てきます。

レクチャーは勿論掃海隊についてのことです。

まずは掃海隊の歴史や編成などについて。
戦争中、日本側が防御のために、そしてアメリカ側が「飢餓作戦」で
日本列島の周りに敷設した機雷を処分することから活動が始まった、
ということから説明が始まりました。

わたしには周知のことでしたが、同行のお歴々の中には
ほぼ初めて聞く方もおられたようです。

写真は掃海隊の編成図ですが、呉基地の第3掃海隊はこの「ぶんご」、
先ほど見た「あいしま」「みやじま」の3隻となります。
もう一隻の掃海母艦「うらが」は横須賀の第1掃海隊所属です。

掃海隊の現在の活動についても、東日本大震災の行方不明者捜索や
墜落したF-2戦闘機の機体を捜索、回収した時の記録が紹介されました。

これを見て思わずにいられないのが、4月9日のF-35A墜落です。

先日はまだ破片だけで機体も搭乗員も見つかっていないため、空自、
海自、海保は勿論米軍の偵察機まで投入されているようですが、
位置が特定されれば、そのときには掃海隊の出動となるのでしょうか。

レクチャーが終わってから皆が席を立った後ですが、
わたしたち以外のほとんどの席に資料が残されていたのにびっくりしました。

普通こういうのって持って帰りません?

メンバーの方たちは、最後に、何か質問はありませんかと言われて、
レクチャーで話題となった掃海活動とは全く関係ない、明後日の質問
(自衛隊の基本的な知識も全くないことがわかるような)をしたり、
もしかしてこの日まで自衛隊の見学をしたことがないのかなとさえ思わされました。

先に隣の艦長室を見学。
専用のタブ付きバス、応接セット付きの個室です。

丸窓があって外が見えるのがすごい特権と言えるかもしれません。
掃海母艦は大きいので、他の艦よりも艦長室も広いように思えますが、
実際は「あきづき」型護衛艦の艦長室とほぼ同じ感じでした。

見学の最初は艦橋、ブリッジからです。
手前は先ほどレクチャーしてくれた第3掃海隊司令(一佐)です。

「ぶんご」「うらが」などの掃海母艦のブリッジが大変広いことを強調しています。

赤と青二色の椅子は「ぶんご」艦長席。
「ぶんご」艦長は二等海佐職となります。

赤いカバーは第3掃海隊司令席。
自衛官のなかにおいては司令官職だけが座ることを許されます。

「ぶんご」が例えば掃海隊訓練などで、掃海隊群司令(海将補)が座乗する場合、
この席には黄色いカバーが掛けられ「群司令席」となります。
その場合右舷側席は多分艦長席となるはずです(たぶん)

同行の政治家先生が、勧められるままに司令官席に座り、赤いストラップ、
そして第3掃海隊司令の帽子を被って写真を撮っておられました。

ご自身のホームページに「活動記録」として載せるおつもりでしょうか。

艦橋窓からの眺め。
「この世界の片隅に」で、主人公のすずさんが、姪と一緒に立ち、
「大和」「武蔵」などの海軍艦艇を眺めた
灰ヶ峯が連なっています。

岸壁(というよりここ実はポンツーン、浮き桟橋です)には
訓練支援艦「くろべ」が係留されていました。

甲板にはオレンジ色の標的機が見えます。

出航などの時に吹奏されるラッパの置き場は艦によって違います。
天井に近いところに掛けてあるというのだけはどこも同じですが。

案内役の一団におられた海曹の方(海幕の先任伍長だったかも)
が出して見せてくださったのですが、あれ?

もしかしてこれ、マウスピースの近くが折れていないかい?

次にわたしが目をつけた?のは測距儀です。
今まで測距儀を収納しているところを見たことがなかったので、

「測距儀がこんなところにあるー!」

とはしゃいでおりますと・・・・、

海幕の海曹が上から降ろして、触らせてくれました。

「思ってたのより軽いですねー」

「のぞいて見られたことありますか」

「いえ、なかったと思います」

あれ?もしかしたらのぞいたことあったかな?まあいいや。

測距儀ラックに置いて、調節の仕方を教えてもらいました。
筒を回して対象物に焦点をあわせ、その時に掲示された距離が
ここから対象物までの距離です。

「これでどうやって距離がわかるんですか」(これはTO)

「両側のレンズと対象までの三角形から距離を計算します」

つまり三角関数ですねわかります。

最初にやらせてもらいましたが、そもそもどちら側に回せばいいのか
全く見当がつかないのでいくらやってもピントが合わず。

「どうしても合わせられませんー」(´・ω・`)

合わせてもらって輸送艦の艦体に合わせたところをのぞいて見ました。

「ここからあそこまでの距離は約250mですね」

慣れないと、これを合わせていて気分が悪くなることもあるそうです。

いやーこれは楽しい。
見学する人数が少なくて案内が同じくらいいるので、その辺にいる人を
捕まえてなんでも質問し放題、体験し放題。

艦橋から一同は隣のCICに案内されました。
「制御室」ともいうところです。

一般的に護衛艦などの集中制御室はもっと下の階にありますが、
「ぶんご」「うらが」の掃海母艦は艦橋階にあるのが特徴です。

ですから、艦橋を出てすぐ隣の部屋に制御室が!

これはいろんな艦艇を見慣れている目にはちょっとした驚きです。

右上の黄色い一角が「ぶんご」の集中制御室となります。
ご覧のように機械室などは艦体の下の方にあるわけですが、掃海母艦は
機雷を処理する現場で操業を行うので、この図にも書いてあるように、

「機械室の無人化を図る」

ためにこのような設計となっているのです。
ぶっちゃけていいますと、万が一の事態(つまり触雷)に備えてのことですね。

もちろん触雷し艦底が破損することになれば、クラッチや制御機器、
ボイラ、クラッチも被害を受け動かなくなる可能性はあるわけですが、
そこが無人化されていさえすれば、人的被害だけは避けられます。

集中制御室では電源の監視制御も行われます。

制御室に艦の形をし、そのいたるところにランプがついた
左端のようなパネルがあるのを、おそらく艦底見学された方は
一度ならずご覧になったことがあるでしょう。

制御室には応急監視制御版、艦内の状態を一手に把握できるシステムがあります。

なお、わかりやすく動力の伝達について図が示してありました。

「操舵装置」

艦橋にある舵輪は、艦長などの操舵指示を受けて海曹が動かします。
ここから船の舵まで、操舵が伝達されます。

「動力伝達装置」

ディーゼルエンジンで発生した動力はカムを動かし、そのカムは
クラッチによって回転数を変化させ、プロペラを回します。

「プロペラ装置」

プロペラ欲は角度を変えることで前進、中立、後進を行うのです。

 

簡単な図ですが、案外そうだったのか(操舵だけに)と目から鱗の説明で、
単純化された艦船の仕組みが腑に落ちたというか、把握できた気がします。


 

続く。