たぶん2017年のブログです
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河合隼雄さんと南伸坊さんの『心理療法個人授業』(2002・新潮社)を再読しました。
これもかなりの久しぶりでしたが、とても面白かったですし、勉強になりました。
河合隼雄さんが先生で、南伸坊さんが生徒役で、南さんがとてもいい生徒で、素朴で適切な質問を発して、河合さんの本音をどんどん引き出しています。
勉強になったところは、たくさんありましたが、一つめは、突然の自殺予告や自己臭の唐突な訴えなどで、カウンセラーを驚かせたり、びっくりさせる患者さん。
いずれも、慎重な対応が求められますが、そのうえで、河合さんは、そういう形でしかものが言えない患者さんや直接、カウンセラーを攻撃できずにそういう形をとる患者さん、と理解して接していければいい、と述べられます。
臨床現場では確かにそういう場面がたまにあって、初心者の時はあわてますが、しかし、大きなチャンスでもあって、大事な場面だろうと思います。
二つめは、このところ、このブログでも話題に出ている転移と逆転移、恋愛性の転移・逆転移の問題(カウンセラーとクライエントさんが、過去の人間関係を心理療法の場に投影すること、でいいと思うのですが…)。
逆転移はなかなかたいへんですが、カウンセラーがうまく自己分析をできればチャンスになる、といいます。
また、恋愛性の転移は心理療法には必要なことですが、それを終了させることのほうが難しく、河合さんは、ひとやま越えたような感じですね、と穏やかに話せるような感じがいい、と述べられます。
三つめは、妄想の問題。
これも中井久夫さんの本などでよく話題になりますが、河合さんは、妄想はたいへんですが、だからといって、ただ薬でなくしてしまうことに疑問を呈します。
妄想にもそれなりの役割があるかもしれず、了解不能といわずに、了解できる部分を増やしたい、と述べます。
そういえば、中井さんも薬で妄想を減らす際にすごく慎重だったことを思い出しました。
大家の治療には、本当に細心の細やかさと注意深さと患者さんへの深い愛情があるのだなと思い知らされます。
とても勉強になる一冊でした。
また、南伸坊さんの描く河合さんのマンガもとても楽しく堪能できました。 (2017?記)
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2020年11月の追記です
妄想の積極的な意味を教えてくださったのが、中井久夫さんと河合さん。
症状を薬でとるだけに慎重なのが、中井さんと木村敏さん。
いずれも、臨床からの深い観察とこまやかな治療がすごい人たちだと思います。 (2020. 11 記)