長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

来たれ、ニュージェネレーション総大将 ~ぬらりひょんサーガ 第24回~

2011年11月18日 14時40分49秒 | ゲゲゲの鬼太郎その愛
《前回までのあらすじ……じゃないです》
 「ぬらりひょんサーガ」がいよいよ佳境に入ってきたのにもかかわらず、そうだいは昨日の夜に受け取ったメールのために気もそぞろだった。
 ……東日本大震災が起きた日に絶交した親友から半年以上ぶりに音信が。
 おれも変わってねぇけど、あの子も変わってねぇなぁ。まぁ……引き続き連絡はとらないことにしよう。


 2007年から放送が開始されたアニメ第5期『ゲゲゲの鬼太郎』と、翌2008年から連載が開始されて現在にいたる人気妖怪アクションマンガ『ぬらりひょんの孫』。
 『ぬらりひょんの孫』は今現在リアルタイムでアニメ第2期『千年魔京』が放送中ですし、去年は降って湧いたようにNHK朝ドラ&映画化した『ゲゲゲの女房』も話題になったことも記憶に新しいです。さすがに流行語大賞が「ゲゲゲの」というのは私もどうかなと思うんですけど。
 また、「鬼太郎サーガ」とは直接の関係はないものの、少年マンガの『妖怪のお医者さん』や『結界師』、少女マンガの『夏目友人帳』に小説の世界では西尾維新の『化物語』に畠中恵の『しゃばけ』シリーズと、昨今は「妖怪もの」のフィクション作品に事欠かない活況となっています。

 ただ、この2007年以降続いている現在の状況をさして、これまでに何度も触れてきた2つの「昭和妖怪ブーム」や1990年代なかばの「平成妖怪ブーム」と同じブームととらえることはできないような気がするんだなぁ。

 要は、ブームという現象に必ずあるはずの「核」となる作品がはっきりしていないんですね。昔でいう『ゲゲゲの鬼太郎』や『学校の怪談』みたいな。
 「日本の妖怪が出てくる」という点では共通していても内容は千差万別だし、今のところわずかに『ぬらりひょんの孫』が頭ひとつ抜きんでている様子はあるものの、「妖怪ファン」層全体を取り込んでくれる決定的な作品はなく、めいめいが好きなものを各自で楽しむといった感じで、もはや「妖怪」はブームでなく立派な「ジャンル」に成長したというわけなんですね。う~ん、素晴らしいことだ。

 今や、現代日本の妖怪カルチャーは過去に類を見ない広がりを見せる「ネクストレベル」に移行したわけなんですなぁ。
 妖怪ネットは広大だわ……


 さてさて今回は、その流れの端緒となりながらも「非業の完結」を迎えることとなってしまったアニメ第5期『ゲゲゲの鬼太郎』のお話に行く前に、「鬼太郎サーガ」系のマンガの世界に現れた「最後のぬらりひょん」をご紹介いたしましょう。


ほしの竜一版『ゲゲゲの鬼太郎』(講談社『月刊コミックボンボン』などで連載)

 みなさん、ご存じ?
 具体的にはこの『ほしの版鬼太郎』は3期に分かれており、正確に言うと、

『ゲゲゲの鬼太郎R』(2004年6月~05年12月 全18話)『月刊コミックボンボン』で連載
『ゲゲゲの鬼太郎 妖怪千物語』(2007年4~12月 全12話)『月刊コミックボンボン』で連載(2007年12月号で休刊)
『ゲゲゲの鬼太郎 新・妖怪千物語』(2007年12月~09年8月 全15話)『季刊テレまんがヒーローズ』などで連載(2009年夏号で休刊)


 という一連のシリーズになります。

 ほしの竜一先生は、『ファミ拳リュウ』や『SDガンダム外伝 騎士ガンダム物語』などでも知られる『コミックボンボン』常連の人気作家さんの1人です。私もずいぶんと楽しませてもらいましたねぇ~。

 ほしの先生によるリメイク版『ゲゲゲの鬼太郎』シリーズは、連載時期を見ていただいてもわかるように最初の『R』だけアニメの放送と関係のない独自展開で、『妖怪千物語』と『新』はアニメ第5期にタイアップしたものとなっています。
 そのため、『R』では鬼太郎のデザインがやや長髪で水木しげるの原作マンガに近い顔つきで、ヒロイン格の猫娘が「ゴスロリファッションに長髪」というほしのイズム満点のアレンジとなっているのにたいして、『妖怪千物語』以降は鬼太郎も猫娘もアニメ第5期に準拠したあか抜けたデザインになっているという変更も起きています。ただし、さすがは「エロ」も主力武器とした『コミックボンボン』の人気作家というべきか、一見アニメ第5期にあわせただけともみえるデザイン変更後の猫娘は、よく見ると体格が女子高生か成人女性なみに成熟していることがわかります。「鬼太郎サーガ」における猫娘史上、最もセクシーなのはこの「ほしの版(後期)」だ!! どうでもいい~。


 ここでちょっと、「アニメ版」と「マンガ版」との『ゲゲゲの鬼太郎』の関係を確認しておきたいと思います。

 まず1960年代のアニメ第1期は、言うまでもなく同時期に『週刊少年マガジン』(講談社)で連載されていた水木しげる本人によるマンガを原作としていました。これはストレートな「原作」と「そのアニメ化」の関係です。
 1970年代のアニメ第2期もほぼ同様に『週刊少年サンデー』(小学館)で連載されていたマンガと、それ以前の水木作品を原作としたものとなっています。
 この関係が1980年代のアニメ第3期になるとビミョ~に変わってきまして、水木しげる本人による『新編 ゲゲゲの鬼太郎』(『マガジン』連載)と、子ども向けの水木プロダクション作品(作画・森野達弥)『最新版 ゲゲゲの鬼太郎』(『ボンボン』連載)がほぼ同時に展開されるという状況となりました。とはいえ、どっちのマンガも同じ内容を描いていたというわけではなく、簡単に言うとアニメ第3期から「ぬらりひょん(つまり特定の悪の大ボスがいる設定)要素」を排除したのが『新編』で、逆にそこをモリッモリに盛り込んだのが『最新版』という不思議なすみ分けとなっているのでした。この時期の水木先生はぬらりひょんに冷たかった冷たかった!

 そんな大盤振る舞いな第3期から一転して、1990年代のアニメ第4期となると、同時期に発表された水木マンガはたった3回で中断してしまった『鬼太郎霊団』シリーズ(1996年2月~97年3月)のみで、これも内容的に複雑すぎたりエロすぎたりしてとてもじゃないですがアニメ化できるしろものではなく、アニメ第4期にタイアップしたマンガ作品は「ない」という状況となっていました。もちろん、水木プロによる過去作品のダイジェストやリライトもの、イラスト展開はありましたが。

 余談ですが、こういう経緯を見て「マンガ家としての水木しげるも終わりか……」と思われる方もいるかもしれないのですが、とォ~んでもねェ!!
 みなさん、水木しげる最後の「鬼太郎サーガ」作品となる『鬼太郎霊団』シリーズの『安倍奉連想(ほうれんそう)』と『セクハラ妖怪いやみ 前後編』はすげぇんだぜ。今これらの作品は、

『京極夏彦が選ぶ!水木しげるの奇妙な劇画集』(筑摩書房ちくま文庫)

 で読むことができます。できたらぜひとも読んでいただきたい。
 『安倍奉連想』は鬼太郎ファミリーとあの!大陰陽師・安倍晴明の子孫「ほうれんそう少年」とのガチンコ対決、『いやみ』は1970年代の「青年鬼太郎」をほうふつとさせる妖怪チンポどころじゃない史上最エロの大決戦となっているのです。

鬼太郎  「バカにオ××コ臭いな。」
砂かけ婆 「猫娘 こりゃあ食べ物じゃねぇ!」
猫娘    「バナナかと思ったわ。」

 ギャ~! こんなのアニメ化できるわけねぇだろ!!
 水木しげる神先生は、ついにアニメで変換できない世界へと旅立たれてゆかれたのです……いや、まだ健在ですけど。
 

 1990年代にしてこんな状態だったために、ましてや21世紀のアニメ第5期に水木先生みずからが筆を執ることはなく、そこでタイアップマンガの作家として起用されたのが、すでに『R』連載の実績のあったほしの竜一先生だったのです。

 こういった経緯もあってか、もともと大の水木しげるファンを自認していたほしの先生の連載にかける情熱は並々ならぬものがあり、掲載誌の『コミックボンボン』が休刊し、アニメ第5期が放送終了したあとにもほしの版『鬼太郎』は数回連載されて終了しました。
 コミックスは『R』から『新』までトータルで9巻出版されており、「2本立て連載」や「増刊号連載」もおこなっていたため、雑誌での連載号数にたいして話数が多くなっている(全45話)のも非常にお得です。

 そんなほしの版『ゲゲゲの鬼太郎』は、先ほどにも言ったようにだいたいの世界観やキャラクター設定はアニメ第5期と同じであるものの、ストーリー展開はかなり独自のものとなっていることが多いです。
 これはアニメ第5期もほしの版も、過去の水木しげる作品のアレンジから作られているという「兄弟」のような関係にあったからで、かつてのアニメ版『鬼太郎』と水木マンガのように直結した「親子」関係ではなかったからです。


 そういう部分でのアニメ第5期とほしの版との差異がもっともはっきりしていたのが、両者で共通してエピソード化されていた『妖怪大裁判』の回でした。
 この2ヴァージョンはどちらにも我らがぬらりひょん先生が登場しているのですが、同じ流れの物語であるはずなのに、ぬらりひょんの「立ち位置」やらなんやらがまるで違っているんですよね!

 アニメ第5期における新生ぬらりひょんの大活躍はまた次回にしておきまして、今回はほしの版ぬらりひょんについて。

 まず、アニメ第5期の話が持ち上がる前に連載されていたほしの先生の『R』にはぬらりひょんは登場しておらず、ラスボスは「魔王プルトー」の召喚を企てるバックベアードというオリジナル展開となっており、ぬらりひょんがアニメ版に通じる「悪の親玉」という役割で登場したのは、アニメ第5期と同時に連載が再開された『妖怪千物語』からとなっています。

 『妖怪千物語』でのぬらりひょんは、おなじみ朱の盤をパートナーとして第23話の「枕がえし」と25話の「水虎」の悪行を裏から操る黒幕的存在という相変わらずの感じで登場しており、第26~27話の『妖怪大裁判 前後編』(2007年10~11月掲載)でついに鬼太郎との直接対決におよぶこととなります。
 ほしの版の『妖怪大裁判』は、ぬらりひょんとその部下の百々爺がでっちあげた罪によって天狗ポリスに逮捕された鬼太郎と、その冤罪を証明しようとする仲間たちの活躍を描くといった原作どおりの内容。
 そして結局、いつも通りの鬼太郎ファミリーの活躍によって陰謀を暴きたてられたぬらりひょんはクライマックスで天狗ポリスに逮捕され、「500年間の溶解刑」というアホみたいな刑に処されて一件落着となり、それ以降は二度とほしの版『鬼太郎』に姿をあらわすことはありませんでした。ちなみに、ここでの朱の盤は鬼太郎との決戦を前にしてダッシュで逃亡しており、他のシリーズよりも薄情な別れかたとなっています。

 いっぽう、アニメ第5期の『妖怪大裁判』はこのほしの版の約半年後にオンエアされることとなるのですが、ぬらりひょん一味の立場はだいぶ異なったものとなっています。そのことについては、また次回ということで。

 こんな感じで、アニメの「悪の親玉」イメージをそのまんまマンガに持ってきたようなほしの版ぬらりひょんは、いまいち際だった見せ場もないまま退場ということになってしまいました。

 いまいちと言えば、ほしの版のぬらりひょんは外見もなんとなくパッとしません。
 まず、ぬらりひょんがその存在を匂わせるだけで登場していない段階の第23話のラストのコマでは、少年アクションマンガのお約束にのっとり、鬼太郎と目玉の親父との、


鬼 「妖怪たちの背後に だれかいるのかもしれませんね。」

目 「そうかもしれんな。気をつけるんじゃぞ! 鬼太郎。」

鬼 「はい! 父さん。」


 という会話のバックに「黒幕らしき存在の影」がゴゴゴゴ……という雰囲気で現れるのですが、そのあまりに特徴的すぎる頭部のシルエットから、誰がどう見てもそれがぬらりひょん先生であることはバレバレとなっています。
 ただ、気になるのは黒いシルエットの中でそこだけらんらんと光っている「目の形」で、明らかにその両目は「八」の字。つまりは水木しげるの原作マンガかアニメ第4期の西村ぬらりひょんのような「タレ目」となっているのです。

 そ・れ・な・の・に!!
 その次の第25話のクライマックスでついにその姿をあらわした時、ぬらりひょん先生はギラッとした鋭い目つきとうすい眉毛の特徴的なアニメ第3期の青野ぬらりひょんに変更されてしまっているのです。同時期にTV で大活躍していたアニメ第5期のぬらりひょんとは似ても似つかない小悪党ヴァージョンだ!

 まぁ、予告シルエットとご本人の姿がまったく違うという流れもまた、『キン肉マン』以来の少年アクションマンガの伝統となっているのですが、過去のイメージをフル動員させたほしの版ぬらりひょんは、それゆえにどうにも新味に欠けたまま中途半端に消え去ってしまったのです。
 それ以降、「鬼太郎サーガ」のマンガ作品にはぬらりひょんは登場していないわけなので、非常に悔いの残る「最後のぬらりひょん」ということになってしまいました……


 だが。
 そんな「旧世代のぬらりひょん」の数々を一掃するべくリニューアルされた新デザインのぬらりひょんこそが! アニメ第5期にその名をとどろかすこととなった「ニュージェネレーション仕様ぬらりひょん」だったのです!!

 今度のわしはひと味ちがうぞ……首を洗って待っておれ、鬼太るォオ!!

 ということで、いよいよ白熱のアニメ第5期のお話は、また次回!次回! じっかい~ィン。
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