ハイどうも~こんにちは! そうだいでございます。
みなさま、だいぶ寒くなってきましたがカゼもひかずにがんばっておられますでしょうか? もう年末も近いですからねぇ!
まわりは体調を崩している人も多いのですが、あいかわらず頭がアレなもんで、私はカゼをひく気配もございません。
そういえば、うまく大晦日まで逃げ切れたらなんと私、今年はなんの病気にもかからなかったことになるのよ。
身体はそうなんですけど、この『長岡京エイリアン』をごらんいただいてもおわかりのように、私はまぁ生まれつき病気にかかり続けているようなもんなんで……プラマイ、ちょいマイみたいなもんかしら!? ちょいどころじゃないか。
さて、そんなていたらくで病膏肓にいっているわたくしなのですが、先日、数々の病巣の中でも特に致命的なものの発作がぶり返してきました。
いや、ただ信仰の対象となっているおたかさん主演の映画を観てきたってだけなんですけど……
映画『恋谷橋 La Vallee de l'Amour 』(主演・上原多香子 監督・後藤幸一)
現在は、東京都内では新宿と六本木の1館ずつで上映中で、私が行ったのは「シネマート六本木」のほうでした。ちょっと大通りから入ったところにあるのですが、上映作品も多いしおしゃれな映画館でしたね。
千葉に住んでいると、乗り換えが多い六本木はなかなか行く機会がなくて……六本木は心中のメッカだとどっかで聴いたことがあったのですが、日の出ている内はふつうの街でしたね。安心。
いや~、それで観てきたんですけどね。
ど~にも不思議な言い方になっちゃうんだよなぁ、観た感想が……
あの、私そうだい自身はひっじょ~に満足しております! 冒頭、鳥取空港の出入り口からおたかさんが来迎したシーンの時点で、思わず私は「100点」のパネルを上げてしまい、後ろのお客さんにスクリーンが見えないと怒られました。
まぁそれは言いすぎで、私も道楽で信仰しているわけではないのでちゃんとおたかさんの威光が失われていないかどうか、エンドクレジットまで厳しくチェックしつつ見入っていたのですが、おたかさんに限らず、この映画は役者さんの力にずいぶんと助けられているところが大きいな、と感じました。もちろん、そうやって役者の皆さんが良く映るということは、そのまんま製作スタッフの実力のたまものでもあるわけです。
と・こ・ろ・が。
私はなぜか、この映画を人にすすめることがものすんごくはばかられる気分になってしまうのです。
何度でも言いますが、私は『恋谷橋』を存分に楽しみました。私ほどおたかさんびいきの人でなかったとしても、純粋に出演している俳優さんたちの演技を楽しむつもりで観ていたら、
「まぁまぁ、ベテラン勢も良かったし、いいんじゃない? 上原多香子も思ったより主人公ができてたし、若い人たちもヒドくはなかったし。」
と評価してくれるのではないのでしょうか。
説明がこの前に転載させてもらった記事とかぶってしまうのですが、『恋谷橋』は鳥取県東伯郡三朝(みささ)町を舞台とした物語で、長い歴史にはぐくまれた三朝温泉街にある老舗の大旅館「大橋」の女将の娘である主人公(おたかさん)が、20代後半という年齢をむかえて、不景気で苦しむ親の職業をつぐのか、東京都内で照明デザイナーとして自活していく道を目指すのかの選択にせまられるという筋になっております。タイトルの「恋谷橋(こいたにばし)」は三朝温泉に実在する橋で、大橋さんも本当にある旅館なのですが、もちろんおたかさんも含む経営者一家の設定はフィクションです。
こういったお話ってさぁ。はっきり言っちゃうと完全なる「他人事」じゃないですか。
おたかさん演じるデザイナーがどっちの道を選ぶのかはあくまでも本人の自由でして、家族や地元の仲間たちと一緒に故郷を盛り立てていくのも東京で自分の夢を追い続けていくのも、どっちが正解どっちが間違いということはないはずです。そして、最終的にそこでの選択が良かったのかどうかを判断するのは、「選んだ道をしばらく歩いてからの本人の感覚」なんですから。そういう意味では、おたかさんがその選択を決めるところで終わっているこの映画は、「主人公が選んだ道」にかんしては特にこだわっていない作品なのです。だってその結果はえがかれていないんですから。要は、「主人公が勇気をもって道を選ぶにいたった過程」が重要なんですよ。
ということなので、「故郷か夢か」というなかなか答えの出てこない、撮りようによってはウジウジして「どうでもいいわ、そんなこと!」と見はなされてしまいかねないこの作品を、おたかさんをはじめとする豪華な役者陣でいろどったキャスティングには「お見事!」とうなってしまいました。
すごいんですよ~。
まず、主人公であるおたかさんの周辺がすごい。
おたかさんの母 …… 松田美由紀
母の若かった頃 …… 土屋アンナ
おたかさんの父 …… 小倉一郎
おたかさんの祖母 …… 吉行和子
おたかさんの姉 …… 中澤裕子
旅館「大橋」の板長 …… 松方弘樹
板長の息子 …… 水上剣星(みかみ けんせい)
すごいだろ~。
松田さんの若い頃の土屋さんは、過去のシーンでのほんのちょっとの出演なんですが、土屋さんが何十年かしたら松田さんになるっていうこのキャスティング、私はものすんごくしっくりきてしまったんですよ。特に似てはいないんですがなんか通じてる!
また、ただでさえ出番の少ない土屋さんにほとんどセリフをしゃべらせなかった製作スタッフの英断には感心しました。夜の街にたたずむ無言の土屋さんはほんとにきれい。またここでの土屋さんがそうとうな苦悩を読みとらせるいい表情をしているのですが、その理由がまぁ~ったく!その後の物語で語られることがなかったのが非常に不可解でした。なんだったんだ、あの思いつめた顔……
吉行さんがおばあちゃんで、松田さんがお母さんで娘が中澤さんとおたかさん。小倉一郎のDNA はいずこ?
いや~でも、この映画でいっちばんいい味を出してたのは間違いなくその小倉さんなんだよなぁ!
大変に失礼ながら、いっつもTV で小倉さんのことを「信頼の小者ブランド」「黄金のねこぜ」「Mr.尻しかれ」などと思っていたのですが、その小倉さんに感動しちゃったねぇ~。物語の中盤で大病に倒れてしまうのですが、い~い味わいを出してるのよ!
ご本人の演技力以上にこの作品の小倉さんの存在意義が大きかったのは、それ以外の役者さんたちが軒並み「現実離れした外見」をしていたからなんですね。
吉行さん・松田さん・おたかさんの三代は、はっきり言ってそれぞれの実年齢よりも大幅に若く見えます。おたかさんなんか、国宝の三徳山三仏寺・投入堂を参拝するために過酷な登山道をのぼって汗を流す姿は、デビュー時のダンストレーニング風景かとみまごうばかりの若々しさでしたよ。
そうなると、三代にわたる美人女優の競演(中澤さんもいるヨ)は絵としては最高なのですが、「不景気に苦しむ旅館の経営者一家」や「将来の道になやむ30代手前の女性」といった部分のリアリティはないんだなぁ。
また、おたかさんの幼なじみとして地元で生活している人たちも、水上くんを筆頭としてほとんどが美男美女だったりして。なかなか日本のどこにでもある地方都市という前提が希薄になりがちに。
そういった面で足りなくなっている「重さ」をほぼ1人でカバーしていたのが小倉さんだったというわけ。すっごくいいたたずまいでした。
余談ですがこの『恋谷橋』には、私が今年の夏に観た映画『大鹿村騒動記』(監督・阪本順治)でも村人として共演していた小倉さんと石橋蓮司さんがまた出てきています。2人がいっしょのシーンはなかったのですが、なんか地方都市にいそうな顔なんですかねぇ。
女優さんときてやっぱり忘れてならないのが、三朝温泉で実現した「中澤さんとおたかさんのツーショット」ね!!
世間的には、2人がいっしょに姉妹として談笑しながら歩いていたり温泉につかっているのを観て「うをを!」とときめく人はどのくらいいるのかはわからないのですが、少なくともあんな「ざっくりすぎるアイドルグループ史」なんて気のふれた企てをやらかしてしまったわたくしは素直に感動してしまいましたよ。
SPEEDとモーニング娘。ねぇ。
モーニング娘。の当時のレギュラー番組『ハロー!モーニング。』を観るかぎり、微妙に活動時期がずれているし、この2つのグループがお互いの話題を口にすることをタブーにするほど対立した関係だったことはなかったらしいのですが、やっぱり前後して日本芸能史上におけるそれぞれの一時代を築いたメンバー同士の夢の共演ですからね。キャリア的にはおたかさんのほうが先輩なのに実年齢は中澤さんのほうが上というねじれがいい感じでした。
それはそれとして、『恋谷橋』でおたかさんの姉を演じた中澤さんは、自分勝手とも言える気ままな態度のために家族を振り回してしまうちょっとした「悪役」を演じているのですが、けっこう良かったですねぇ! 観ようによっては「なにコイツ~!?」とか「いけすかねぇ奴だなぁ!」などと感じられてしまいかねない損な役回りだったのですが、そこはそれ、そう生きるしかない30代なかば過ぎの絶妙な「をんな」を演じきっておられたと思います。
まさか、『ハロモニ。劇場』でのあの過酷なツッコミ専属の日々がこうして女優としての大輪の花を咲かせることになろうとはねぇ……しみじみ。
もしかしたら、『恋谷橋』での中澤さんの演技を観て「わざとらしい」ととる方もいるかも知れないのですが、中澤さんの役はあのくらい滑稽な「トリックスター」にならないと映画全体がにぎやかにならないからねぇ。あのくらいが絶妙でいいバランスなんですよ。
さてさて。まぁこんな感じでいろいろと役者さんに関して「おもしろかった点」をあげてきたわけなのですが……
そんなわたくしが、なじょして『恋谷橋』を人にすすめることができないというのか。
それはねぇ。役者さんがいくら良くても、総合的な「ひとつの作品としての完成度」がきびしいんですよ。
私ねぇ、な~んかこの映画、ほんとにそう思っていたのかどうかは別としても、製作スタッフに「ご当地映画なんだから、このくらいでいいだろ。」という甘さがあったからOK になったとしか思えないシーンやカットが多いなぁと感じちゃったのよ。
カットとしては、やっぱり作品の目玉になっている三仏寺投入堂の映像は美麗の一言に尽きたのですが、それ以外の野外での撮影シーンで露骨にピントが合っていなかったり、カメラを横に移動させながらのアップが「ちょっと動いてアップ、ちょっと動いてアップ」のくり返しでカクカクしてたりして、せっかくの役者さんのセリフの内容がじぇんじぇん頭に入ってこないくらいに気が散る局面が多かったのに本当に驚きました。心の底から、「えっ、これをOK にしちゃうのが今の日本の映画界なんだ……」と愕然としました。
いろいろとね、2008年から映画化が決定していたのに、実際に撮影がおこなわれたのが2010年の暮れ近くで劇場公開が2011年の秋になっちゃったという経緯からして、予算や撮影スケジュールの点でひとかたならざる苦労があったであろうことはわかるのですが、だからこそ! ひとつの「芸術作品」としてのこだわりを『恋谷橋』につぎこむプロの漢気(おとこぎ)が観たかったです。
少なくとも、うまいうまくないは別にしても、俳優のみなさんからテキトーにやっている気配はみじんも感じられなかったのですが……ほんとに厳しい言い方をしてしまいますと、製作スタッフがこの映画を「日本全国や全世界に評価を問うことができる映画」にしようとして作っているのか、それとも単なる「地方の町おこしのPR ドラマ」としてしか作っていないのかがわからなくなる、どうしようもない甘さが感じられたんですよ。
なんか熱の入れ方がバラバラなんですよ。あるシーンでは「どうやら地元にいる有名人らしいしろうと」にセリフをしゃべらせる「ご当地映画特有」の苦笑い演出を入れているのかと思えば、あるシーンではぎょっとするような非現実的な特殊効果カットをさしこんでいるし、三朝温泉を全面的にバックアップした映像を盛り込んでいたかと思えば、地元の人なら首をかしげざるを得ないような役者さんの所作もそのまま撮影に採用されているし。
あのシーンの、ストッキングねぇ……いや、おたかさんがストッキングを履いたまま入った足湯の残り湯を手にしたものは世界を統べることができるという「ロンギヌスの槍」的な効能があるから、おたかさんは履いて入ってもいいのかもしんないけどさぁ。
あと、三仏寺の登山道は本当に危険だから、1人でのぼっちゃいけないことになってるんですよね?
どちらも、映画の中では重箱のすみをつつくように小さなポイントなのですが、ここで矛盾の無い応用をきかすのがプロの脚本力だと思うんですよ。地元の人が守っているルールを無視しちゃダメよ。
ちょっとしたことなんですけど、鳥取砂丘のシーンはせっかく抜群に幻想的なロケーションだったのに、緑地化して水たまりができているスペースが堂々と映り込んでいたのはがっかりしちゃったなぁ。風紋のカットとか、おたかさんの悩むかんばせにマッチしてものすごく良かったのに。
なんかね、この映画を観て「あぁ、こんないい映画を撮るプロが日本にいるんだ!」と世界のどこかで誰かに感じてもらえるかも知れないステキな可能性を、作り手自身が勝手に自分で握りつぶしているような気がするんだな。
「こんなんでいいでしょ。こっちもツラいんだよぉ~。」
なんていう言い訳、プロの口から聞きたくないじゃないですか。言い訳するならするで、ちゃんとおもしろく言い訳をしていただきたい。
ましてや!! この『恋谷橋』はァア!! かけまくもおたかさんの「初主演映画」であらせられるゥウアッシャァアア!!
「あぁ、いろんな人たちの顔色をうかがいながら作っていくのが映画なのかなぁ。」という部分はかなりリアルで身にせまるものがあったのですが、「商業作品」であることはよくわかったから、「お金がどうこういう次元の産物じゃない、観る人に夢を与えてくれる」ほうの一面がもっと観たかったなぁ、と思った今回の『恋谷橋』なのでございました~。
次におたかさんの御姿をスクリーンで観られるのは、いつのこととなるのだろうか……それまでは、死ねぬ。
みなさま、だいぶ寒くなってきましたがカゼもひかずにがんばっておられますでしょうか? もう年末も近いですからねぇ!
まわりは体調を崩している人も多いのですが、あいかわらず頭がアレなもんで、私はカゼをひく気配もございません。
そういえば、うまく大晦日まで逃げ切れたらなんと私、今年はなんの病気にもかからなかったことになるのよ。
身体はそうなんですけど、この『長岡京エイリアン』をごらんいただいてもおわかりのように、私はまぁ生まれつき病気にかかり続けているようなもんなんで……プラマイ、ちょいマイみたいなもんかしら!? ちょいどころじゃないか。
さて、そんなていたらくで病膏肓にいっているわたくしなのですが、先日、数々の病巣の中でも特に致命的なものの発作がぶり返してきました。
いや、ただ信仰の対象となっているおたかさん主演の映画を観てきたってだけなんですけど……
映画『恋谷橋 La Vallee de l'Amour 』(主演・上原多香子 監督・後藤幸一)
現在は、東京都内では新宿と六本木の1館ずつで上映中で、私が行ったのは「シネマート六本木」のほうでした。ちょっと大通りから入ったところにあるのですが、上映作品も多いしおしゃれな映画館でしたね。
千葉に住んでいると、乗り換えが多い六本木はなかなか行く機会がなくて……六本木は心中のメッカだとどっかで聴いたことがあったのですが、日の出ている内はふつうの街でしたね。安心。
いや~、それで観てきたんですけどね。
ど~にも不思議な言い方になっちゃうんだよなぁ、観た感想が……
あの、私そうだい自身はひっじょ~に満足しております! 冒頭、鳥取空港の出入り口からおたかさんが来迎したシーンの時点で、思わず私は「100点」のパネルを上げてしまい、後ろのお客さんにスクリーンが見えないと怒られました。
まぁそれは言いすぎで、私も道楽で信仰しているわけではないのでちゃんとおたかさんの威光が失われていないかどうか、エンドクレジットまで厳しくチェックしつつ見入っていたのですが、おたかさんに限らず、この映画は役者さんの力にずいぶんと助けられているところが大きいな、と感じました。もちろん、そうやって役者の皆さんが良く映るということは、そのまんま製作スタッフの実力のたまものでもあるわけです。
と・こ・ろ・が。
私はなぜか、この映画を人にすすめることがものすんごくはばかられる気分になってしまうのです。
何度でも言いますが、私は『恋谷橋』を存分に楽しみました。私ほどおたかさんびいきの人でなかったとしても、純粋に出演している俳優さんたちの演技を楽しむつもりで観ていたら、
「まぁまぁ、ベテラン勢も良かったし、いいんじゃない? 上原多香子も思ったより主人公ができてたし、若い人たちもヒドくはなかったし。」
と評価してくれるのではないのでしょうか。
説明がこの前に転載させてもらった記事とかぶってしまうのですが、『恋谷橋』は鳥取県東伯郡三朝(みささ)町を舞台とした物語で、長い歴史にはぐくまれた三朝温泉街にある老舗の大旅館「大橋」の女将の娘である主人公(おたかさん)が、20代後半という年齢をむかえて、不景気で苦しむ親の職業をつぐのか、東京都内で照明デザイナーとして自活していく道を目指すのかの選択にせまられるという筋になっております。タイトルの「恋谷橋(こいたにばし)」は三朝温泉に実在する橋で、大橋さんも本当にある旅館なのですが、もちろんおたかさんも含む経営者一家の設定はフィクションです。
こういったお話ってさぁ。はっきり言っちゃうと完全なる「他人事」じゃないですか。
おたかさん演じるデザイナーがどっちの道を選ぶのかはあくまでも本人の自由でして、家族や地元の仲間たちと一緒に故郷を盛り立てていくのも東京で自分の夢を追い続けていくのも、どっちが正解どっちが間違いということはないはずです。そして、最終的にそこでの選択が良かったのかどうかを判断するのは、「選んだ道をしばらく歩いてからの本人の感覚」なんですから。そういう意味では、おたかさんがその選択を決めるところで終わっているこの映画は、「主人公が選んだ道」にかんしては特にこだわっていない作品なのです。だってその結果はえがかれていないんですから。要は、「主人公が勇気をもって道を選ぶにいたった過程」が重要なんですよ。
ということなので、「故郷か夢か」というなかなか答えの出てこない、撮りようによってはウジウジして「どうでもいいわ、そんなこと!」と見はなされてしまいかねないこの作品を、おたかさんをはじめとする豪華な役者陣でいろどったキャスティングには「お見事!」とうなってしまいました。
すごいんですよ~。
まず、主人公であるおたかさんの周辺がすごい。
おたかさんの母 …… 松田美由紀
母の若かった頃 …… 土屋アンナ
おたかさんの父 …… 小倉一郎
おたかさんの祖母 …… 吉行和子
おたかさんの姉 …… 中澤裕子
旅館「大橋」の板長 …… 松方弘樹
板長の息子 …… 水上剣星(みかみ けんせい)
すごいだろ~。
松田さんの若い頃の土屋さんは、過去のシーンでのほんのちょっとの出演なんですが、土屋さんが何十年かしたら松田さんになるっていうこのキャスティング、私はものすんごくしっくりきてしまったんですよ。特に似てはいないんですがなんか通じてる!
また、ただでさえ出番の少ない土屋さんにほとんどセリフをしゃべらせなかった製作スタッフの英断には感心しました。夜の街にたたずむ無言の土屋さんはほんとにきれい。またここでの土屋さんがそうとうな苦悩を読みとらせるいい表情をしているのですが、その理由がまぁ~ったく!その後の物語で語られることがなかったのが非常に不可解でした。なんだったんだ、あの思いつめた顔……
吉行さんがおばあちゃんで、松田さんがお母さんで娘が中澤さんとおたかさん。小倉一郎のDNA はいずこ?
いや~でも、この映画でいっちばんいい味を出してたのは間違いなくその小倉さんなんだよなぁ!
大変に失礼ながら、いっつもTV で小倉さんのことを「信頼の小者ブランド」「黄金のねこぜ」「Mr.尻しかれ」などと思っていたのですが、その小倉さんに感動しちゃったねぇ~。物語の中盤で大病に倒れてしまうのですが、い~い味わいを出してるのよ!
ご本人の演技力以上にこの作品の小倉さんの存在意義が大きかったのは、それ以外の役者さんたちが軒並み「現実離れした外見」をしていたからなんですね。
吉行さん・松田さん・おたかさんの三代は、はっきり言ってそれぞれの実年齢よりも大幅に若く見えます。おたかさんなんか、国宝の三徳山三仏寺・投入堂を参拝するために過酷な登山道をのぼって汗を流す姿は、デビュー時のダンストレーニング風景かとみまごうばかりの若々しさでしたよ。
そうなると、三代にわたる美人女優の競演(中澤さんもいるヨ)は絵としては最高なのですが、「不景気に苦しむ旅館の経営者一家」や「将来の道になやむ30代手前の女性」といった部分のリアリティはないんだなぁ。
また、おたかさんの幼なじみとして地元で生活している人たちも、水上くんを筆頭としてほとんどが美男美女だったりして。なかなか日本のどこにでもある地方都市という前提が希薄になりがちに。
そういった面で足りなくなっている「重さ」をほぼ1人でカバーしていたのが小倉さんだったというわけ。すっごくいいたたずまいでした。
余談ですがこの『恋谷橋』には、私が今年の夏に観た映画『大鹿村騒動記』(監督・阪本順治)でも村人として共演していた小倉さんと石橋蓮司さんがまた出てきています。2人がいっしょのシーンはなかったのですが、なんか地方都市にいそうな顔なんですかねぇ。
女優さんときてやっぱり忘れてならないのが、三朝温泉で実現した「中澤さんとおたかさんのツーショット」ね!!
世間的には、2人がいっしょに姉妹として談笑しながら歩いていたり温泉につかっているのを観て「うをを!」とときめく人はどのくらいいるのかはわからないのですが、少なくともあんな「ざっくりすぎるアイドルグループ史」なんて気のふれた企てをやらかしてしまったわたくしは素直に感動してしまいましたよ。
SPEEDとモーニング娘。ねぇ。
モーニング娘。の当時のレギュラー番組『ハロー!モーニング。』を観るかぎり、微妙に活動時期がずれているし、この2つのグループがお互いの話題を口にすることをタブーにするほど対立した関係だったことはなかったらしいのですが、やっぱり前後して日本芸能史上におけるそれぞれの一時代を築いたメンバー同士の夢の共演ですからね。キャリア的にはおたかさんのほうが先輩なのに実年齢は中澤さんのほうが上というねじれがいい感じでした。
それはそれとして、『恋谷橋』でおたかさんの姉を演じた中澤さんは、自分勝手とも言える気ままな態度のために家族を振り回してしまうちょっとした「悪役」を演じているのですが、けっこう良かったですねぇ! 観ようによっては「なにコイツ~!?」とか「いけすかねぇ奴だなぁ!」などと感じられてしまいかねない損な役回りだったのですが、そこはそれ、そう生きるしかない30代なかば過ぎの絶妙な「をんな」を演じきっておられたと思います。
まさか、『ハロモニ。劇場』でのあの過酷なツッコミ専属の日々がこうして女優としての大輪の花を咲かせることになろうとはねぇ……しみじみ。
もしかしたら、『恋谷橋』での中澤さんの演技を観て「わざとらしい」ととる方もいるかも知れないのですが、中澤さんの役はあのくらい滑稽な「トリックスター」にならないと映画全体がにぎやかにならないからねぇ。あのくらいが絶妙でいいバランスなんですよ。
さてさて。まぁこんな感じでいろいろと役者さんに関して「おもしろかった点」をあげてきたわけなのですが……
そんなわたくしが、なじょして『恋谷橋』を人にすすめることができないというのか。
それはねぇ。役者さんがいくら良くても、総合的な「ひとつの作品としての完成度」がきびしいんですよ。
私ねぇ、な~んかこの映画、ほんとにそう思っていたのかどうかは別としても、製作スタッフに「ご当地映画なんだから、このくらいでいいだろ。」という甘さがあったからOK になったとしか思えないシーンやカットが多いなぁと感じちゃったのよ。
カットとしては、やっぱり作品の目玉になっている三仏寺投入堂の映像は美麗の一言に尽きたのですが、それ以外の野外での撮影シーンで露骨にピントが合っていなかったり、カメラを横に移動させながらのアップが「ちょっと動いてアップ、ちょっと動いてアップ」のくり返しでカクカクしてたりして、せっかくの役者さんのセリフの内容がじぇんじぇん頭に入ってこないくらいに気が散る局面が多かったのに本当に驚きました。心の底から、「えっ、これをOK にしちゃうのが今の日本の映画界なんだ……」と愕然としました。
いろいろとね、2008年から映画化が決定していたのに、実際に撮影がおこなわれたのが2010年の暮れ近くで劇場公開が2011年の秋になっちゃったという経緯からして、予算や撮影スケジュールの点でひとかたならざる苦労があったであろうことはわかるのですが、だからこそ! ひとつの「芸術作品」としてのこだわりを『恋谷橋』につぎこむプロの漢気(おとこぎ)が観たかったです。
少なくとも、うまいうまくないは別にしても、俳優のみなさんからテキトーにやっている気配はみじんも感じられなかったのですが……ほんとに厳しい言い方をしてしまいますと、製作スタッフがこの映画を「日本全国や全世界に評価を問うことができる映画」にしようとして作っているのか、それとも単なる「地方の町おこしのPR ドラマ」としてしか作っていないのかがわからなくなる、どうしようもない甘さが感じられたんですよ。
なんか熱の入れ方がバラバラなんですよ。あるシーンでは「どうやら地元にいる有名人らしいしろうと」にセリフをしゃべらせる「ご当地映画特有」の苦笑い演出を入れているのかと思えば、あるシーンではぎょっとするような非現実的な特殊効果カットをさしこんでいるし、三朝温泉を全面的にバックアップした映像を盛り込んでいたかと思えば、地元の人なら首をかしげざるを得ないような役者さんの所作もそのまま撮影に採用されているし。
あのシーンの、ストッキングねぇ……いや、おたかさんがストッキングを履いたまま入った足湯の残り湯を手にしたものは世界を統べることができるという「ロンギヌスの槍」的な効能があるから、おたかさんは履いて入ってもいいのかもしんないけどさぁ。
あと、三仏寺の登山道は本当に危険だから、1人でのぼっちゃいけないことになってるんですよね?
どちらも、映画の中では重箱のすみをつつくように小さなポイントなのですが、ここで矛盾の無い応用をきかすのがプロの脚本力だと思うんですよ。地元の人が守っているルールを無視しちゃダメよ。
ちょっとしたことなんですけど、鳥取砂丘のシーンはせっかく抜群に幻想的なロケーションだったのに、緑地化して水たまりができているスペースが堂々と映り込んでいたのはがっかりしちゃったなぁ。風紋のカットとか、おたかさんの悩むかんばせにマッチしてものすごく良かったのに。
なんかね、この映画を観て「あぁ、こんないい映画を撮るプロが日本にいるんだ!」と世界のどこかで誰かに感じてもらえるかも知れないステキな可能性を、作り手自身が勝手に自分で握りつぶしているような気がするんだな。
「こんなんでいいでしょ。こっちもツラいんだよぉ~。」
なんていう言い訳、プロの口から聞きたくないじゃないですか。言い訳するならするで、ちゃんとおもしろく言い訳をしていただきたい。
ましてや!! この『恋谷橋』はァア!! かけまくもおたかさんの「初主演映画」であらせられるゥウアッシャァアア!!
「あぁ、いろんな人たちの顔色をうかがいながら作っていくのが映画なのかなぁ。」という部分はかなりリアルで身にせまるものがあったのですが、「商業作品」であることはよくわかったから、「お金がどうこういう次元の産物じゃない、観る人に夢を与えてくれる」ほうの一面がもっと観たかったなぁ、と思った今回の『恋谷橋』なのでございました~。
次におたかさんの御姿をスクリーンで観られるのは、いつのこととなるのだろうか……それまでは、死ねぬ。