長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

ミクロと淑女の決死圏 ~第11使徒イロウルのロジックすぎる侵入~ 4手・やればできる娘チーム

2012年05月07日 22時35分55秒 | エヴァンゲリオン使徒大行進
 わおわお~!! どうもこんばんは、そうだいでございます~。
 いろいろとタイヘン! いろいろとギリギリ!! はやく給料日かもんのかみ直弼。ストップ・ザ・桜田門外ノ変。
 もはや、なにがなんだか……こんなにしんどい経済生活はもうたくさんです。私も若くはないんで! こんな貧乏学生みたいなキビしい日々に耐えられるほど身体もムリがきくわけじゃないんですよ~。まぁ、せめて病気にかかることのないように気を張ってがんばれてるのがせめてもの救いでしょうか。やっぱ健康はいちばんの財産ですなぁ。

 もう、いいや! こんなツラいにもほどのある現実生活なんかほっぽっといちゃってさぁ、ちゃっちゃとのびのびになってるこっちのほうを終わらせちゃおうよ。カッツカツの2012年なんかどうでもいいわ!! 2015年にゲッタウェイってなもんで~い。
 『新世紀エヴァンゲリオン』に登場する歴代使徒の自由気ままな検証シリーズの「第11使徒イロウル編」、ようやく今回で完結! の、つもり。


《これまでのあらすじ》
 微生物に酷似した性質を持ち、ネルフ本部内の壁のパネルにカビのように付着して潜入することに成功した「歴代最小の使徒」こと、第11使徒イロウル。
 イロウルが急速に増殖して侵蝕を開始した地点は、すでにネルフ本部よりも地下に位置していた。目指すサードインパクトの誘発ポイントに、歴代の中で最も近い場所に陣取ることに成功したイロウルに、ネルフ本部は動揺の色を隠せない。
 さらにイロウルは、ネルフの攻撃を利用してみずからの体質をコンピュータの電子回路のように進化させてネルフ本部のネットワークにハッキングを開始。超人的なスピードを誇るイロウルの猛攻はネルフの頭脳ともいえるスーパーコンピュータ・マギになんなく及び、マギをリプログラムして本部全体の「自律自爆」を決行させ、その爆発に乗じてサードインパクトを誘発するという「そんなのありぃ~!?」な作戦を展開させるのであった。

 マギは「メルキオール」「バルタザール」「カスパー」という3つの人格プログラムの合議制によって成り立っているが、イロウルはたった「20秒」という速さでメルキオールを占領してしまった。次なるバルタザールの陥落も、もはや時間の問題なのだろうか……!?


ぴ~んぽ~ん。

マギの『母』の部分・バルタザール(47歳、娘もち女性)が住んでいる一戸建て住宅に来訪者が。


バル「は~い、どなた……あら! どうしたのあなた、びしょ濡れじゃないの!」

イロ「すみません、ぶしつけに申し訳ないのですが、ちょっと休ませていただいてよろしいでしょうか……そこでいきなりどしゃ降りにあっちゃって。」

バル「あらあら、雨ふってきてたの!? 知らなかったわ。ちょっと待っててね、いまタオル持ってきますから。」

イロ「いえいえ、おかまいなく! そんなお気遣いはいりません、やんだらすぐに失礼します。」

バル「なに言ってんのよ、そんな濡れねずみみたいな格好で。お仕事中なんでしょ? とにかくそのバッグだけでも拭かなきゃいけないでしょ。中に大事なものでも入ってるんだろうから。」

イロ「すみません……どうも。」

ふきふき、ふきふき……

バル「……あら、どうしたの? そんなにまじまじと私の顔を見て。なにかついてるのかしら。」

イロ「い、いや……なんでもありません。やさしいな、と思って……」

バル「ふふふ、こんなおばさんを口説くなんて、ずいぶんと物好きなのね。」

イロ「く、口説くだなんて、そんな……」

バル「……ほら、背広もぬいで。」

イロ「えっ……」

バル「もう、中のYシャツまでしみてるじゃないの。似たようなのはいくらでもあるから、よかったら着替えていったら。」

イロ「いや、そんな……家の人にも迷惑がかかりますし……」

バル「だいじょうぶ。今はだれもいないわ……シャワーも使えるけど。」

イロ「お、奥さん……」

バル「ふふふ、昼さがりは退屈してしかたがないのよ。ひとりで家の中にいると乾いちゃってたまんないわ。どこもかしこも、ね。」

ぷるるるるる、ぷるるるるる。

イロ「わっ! で、電話。」

バル「んもう、いいとこなのに……(がちゃ)はい、赤木ですけど?」

娘 「お母さん!! なにやってんのよ!? 話の構成上、あなたが口説かれるんでしょ!? 逆にお母さんから攻めまくってどうすんのよ!!」

バル「あんたこそなに言ってんのよ! 家にひとりで取り残されてる40女よ!? ここで燃えずにどうするっていうのよ。」

娘 「お母さんが燃えたら人類が滅びるのよ!! さっさとそいつを追い出して、早く!」

バル「あーうっさい! そんなの、今まで私をほっといてたあんたたちがいけないんじゃない。鬱屈した主婦のパトスがどんだけのものなのかを思い知るがいいんだわ!! オホホのホ~!」

娘 「このわからずや! もういいわよ、今、マギのロジックモードを変更して、シンクロコードを15秒単位にしたから!! そっちがそうするならこっちはこうやるし!! お母さんのそういうとこ、もうホンッッッットにやだ!(がちゃ)」

突如として、バルタザール母さんの家の中に大量のぬる~いくず湯が注入!! ドロドログズグズで有無を言わさず動きを鈍くさせられてしまうバルタザールとイロウル!!

バル「っも~、あのばぁか娘ぇ~!」

イロ「むむむ、マギの進行スピード全体を遅くしてしまうとは、考えたでヤンスね……しかし、どうあがこうとハッキングは止まらないでヤンスよぉ~!!」


 ……意味、わかります? もう、自分でもなにがなんだか。

 とにかく、要するにネルフ本部はエヴァンゲリオン計画開発主任(30歳女性・金髪染め)のとっさの機転による、「マギのコンピュータとしての処理速度をわざと遅くして、それによってイロウルのハッキングも遅くして考える時間をかせぐ」という奇手に出たわけだったのでした。主任、グッジョブ!

 このため、メルキオールの占領に20秒しかかからなかったイロウルは、次なるバルタザールを攻め落とすのに「2時間」かけなければならなくなってしまいました。予定よりも360倍おそくなっちゃった……これはイタい。
 この貴重な時間猶予のうちにネルフ側はどんな対抗策を講じるというのでしょうか!?

 アニメ本編の様子からさっするに、メルキオール陥落ののち、矢継ぎ早に始まったバルタザール侵入の最中、開発主任は瞬間的な思いつきで処理速度遅延の奇策を見いだしたように見えるのですが、はっきり言って、ネルフ本部 VS イロウルの緊迫感あふれる決戦はこのときの主任の一手によって勝敗が決まってしまいました。恐るべし、泣きぼくろ主任のインスピレーション!

 ここで戦況を整理してみますと、イロウルがまっしぐらに目指している「ネルフ本部の自律自爆」はマギにとっても自分の命(?)にかかわる最重要決定事項となるので、多数決2対1ではなく、3機の「全会一致」でなければ遂行されません。つまり、イロウルはマギの3機すべてをリプログラムしなければ勝てないわけなのです。
 そして、ネルフ側が苦しまぎれにさしこんだ「マギの処理速度変更」という事項は多数決で廃止することができるものなので、イロウルが2つ目のバルタザールを2時間かけて占領した時点で、メルキオールとバルタザールの2票で処理速度はいつもの速さに回復させることができるようになります。

 つまり、ネルフ側にとって、イロウルを食い止めることができる猶予は、バルタザールと最後のカスパーがハッキングされる時間をあわせた「2時間と2~30秒」。ここでイロウルを冥土に送ることができなければ、人類がまるごとみんなで死出の旅路に出るということに。タイトねぇ~!!

 ところがここから、今までの存在感・信頼感の薄さとはまるで人が変わったように大活躍してくれるのが、マギの定期検診の直後で徹夜明けであるはずなのにミョ~に冴えている開発主任なんですなぁ~。カッコイイ!

 イロウルの動きをにぶくした後、開発主任はすかさず、イロウルに対する「自滅推進プログラム」の投入をネルフ本部に提案します。

 ここで思い出していただきたいのが、イロウル侵入の直前までおこなわれていたエヴァンゲリオンに関する2つの実験のうちのひとつの名称だった「アポトーシス作業」です。
 本編の中で3人の専属パイロットがすっぱだかにされていたほうは「オートパイロット実験」だったのですが、セリフにその名前が出るだけではっきり描写されていなかったため、その詳細はあきらかになっていない、この「アポトーシス作業」。
 ただし、「アポトーシス」と銘打たれている以上、それが今回のイロウル退治に急遽投入されることとなった「自滅推進プログラム」に関係していそうなにおいはプンップンしますよねぇ!? 

 アポトーシス (apoptosis) とはすなはち、多細胞生物の体を構成する細胞の死にかたの一種で、生物をより良い状態に保つために積極的に引き起こされる、管理・調節された細胞の「自殺」(プログラムされた細胞死)のこと。

 完全によそから持ってきた情報のうけうりなんですけど、要するにこれは、「おたまじゃくしがカエルになるときにしっぽがなくなる」現象のことなのだそうです。生き物が成長していくにあたって「いらない部分を自分から殺して捨てていく」作業のことなんだって。
 これ自体がアポトーシスなのかどうかはわからないのですが、イメージとしては、樹木がエネルギーをためて冬を越すために秋に自分から葉っぱを枯らして落としてしまう、そういう感じなんじゃないでしょうか。

 こういうことから推測してみますと、その日のエヴァンゲリオンのアポトーシス作業とは、エヴァンゲリオンの性能をさらに向上させるために、機体の内部からの「進化」をうながすなにかをエヴァンゲリオン各自にやってもらうという実験だったようなんですね。
 でも、こんなことを言っている時点で、エヴァンゲリオンってもう、「ふつうのロボットじゃない」ことは一目瞭然ですよね……アポトーシスをやらせるってことはつまり、「生き物」だな、あれ。
 まぁ、暴走してほえたり、つぶれた眼を勝手に再生させたりしてたんでね、いまさら驚きはしませんけど!

 さて、そんな感じなので、おそらくはこのアポトーシス作業の成果としてネルフ本部が収穫していたプログラムを、思いっきりめもりを「最強」にして、投入した生き物自体を自滅させちゃうくらいの武器にしちゃえ、と開発主任が発想したのは自然のなりゆきだったのではないでしょうか。
 「あっ、ホラ! 午前中にやってたやつのアレ。アレ使っちゃおっか!」みたいな非常にリーズナブルな考え方です。シンプル・イズ・ベスト! 開発主任はいい主婦になれるよ……

 ともあれ、開発主任の主導により、ネルフ側は手作業でマギの最後のとりでであるカスパーにラインをつなげ、襲ってくるイロウルにそこから自滅推進プログラムをうちこむための準備をすることとなりました。その作業に2時間くらいかかっちゃうんだなぁ! うまくできてるもんです。

 これによって、イロウルとネルフ側との戦闘は、「マギ3機のリプログラム」と「自滅推進プログラムの投入」のどっちが機先を制するかですべてが決するという、お侍さんの居合い抜き対決のような非常に緊張感の高い勝負に。ひえ~!
 このへんのスリルはぜひともアニメ本編をご覧になって楽しんでいただきたいのですが、激闘のゆくえは実にギリギリのところで決しました。

 イロウルの動きをにぶくした、その2時間後! 


オペレーター1「バルタザールが乗っ取られました!」

作戦指揮官  「始まったの!?」

オペレーター2「バルタザール、さらにカスパーに侵入!」

副司令    「押されてるぞ!」

オペレーター2「なんて速度だ……」

副司令    「いかん!」

オペレーター2「カスパー、18秒後に乗っ取られます!」

作戦指揮官  「リツコ(開発主任の名前)、急いで!!」

開発主任   「大丈夫。1秒ちかくも余裕があるわ。」

作戦指揮官  「1秒って……」

開発主任   「ゼロやマイナスじゃないのよ。」


 ンギャ~!! しゅ、主任、かっくいいぃ~!!

 結果。終始ネルフ側をてんてこまいさせていたはずのイロウルは、すんでのところでブッこまれた自滅推進プログラムのために、「たった1秒の時間差」でそれまでの戦果をまるごとぜ~んぶ没シュート!!
 見事にオトしたメルキオールもバルタザールも、オトす寸前までいったカスパーもすべてがイロウルの手から離れていく……わけもわからないまま無理やり自滅させられてしまう中、イロウルの胸に去来するものはどのようなものだったでしょうか。

「ず~る~い~で~ヤンス~!! ルール変えたり最強技つかったり! でも、それが人間なんでヤンスよね……悪知恵勝負で人間に勝とうとしたあっしの負けでヤンス。しょせんあっしは、たった1人の女性も幸せにすることができない根無し草。かけひきなしの真実の愛を求めてまた旅に出ることにするでヤンス……じゅじゅじゅわ~。」

 無念! 第11使徒イロウル、消滅~。


 とにかく今回のイロウルは、苦労しないで人類を滅ぼす方法を追求した結果、マギのハッキングを考えたところまではナイスだったのですが、そのために「人類がつくった」コンピュータの理論にあわせて自分の性質を変えなければならなかった、その時点でしょせんは勝てない戦いになってしまっていたのです。
 だってさぁ、敵のほうが一方的にルールを変えることができる勝負なんて、そこのあなた、やる気になれます!?
 当然そのへんのことはイロウルも充分承知の介ではあったし、そのためにコンピュータ化したあとの決戦をあれほどまでに急いだのでしょうが、自律自爆にいくまでにネルフ側の人間の誰かにひとつでも反則技を思いつかせてしまった時点でもうダメだったという見方で行くと、あまりにもリスクの高い作戦だと言えるのではなかったのでしょうか。ギャンブラーだな、イロウル!

 ともあれ、この前代未聞の「主役も主役兵器もいっさい活躍しない使徒との決戦」は、こういった経緯であんがい短時間のうちに終結したのでした。ただし、イロウルが「史上はじめてネルフ本部に直接侵入した」恐怖の使徒であったことは決して忘れてはならないでしょう。スリリングなアニメ本編の内容も、TVシリーズ中屈指の緊迫感があってすばらしいです。


 と・こ・ろ・が。非常に残念なことに、この「第11使徒イロウル」のエピソードが物語の中に組み込まれているのは、最初のTV シリーズだけ! その後の貞本義行によるマンガ版や最近の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズでは完全に「なかったこと」にされてしまっています。
 これはおそらく、「マンガではいまひとつおもしろさを伝えられない」や、「物語上、上部組織のゼーレに指摘されることを恐れてネルフ本部がイロウル事件そのものの存在を否定しているため立ち位置がビミョー」といったもろもろのことがあるのでしょうが、まぁとにかくなんといっても、

「主人公がまるで活躍しないし、逆に脇役の開発主任が圧倒的にクローズアップされる内容であるため、組み込むと物語全体のバランスが崩れる」

 ということが大きいんじゃないでしょうか。やっぱり、こういった大冒険は20話以上用意されている TVシリーズだからできるんですよねぇ。
 『機動戦士ガンダム』の『ククルス・ドアンの島』みたいな、まさしく「ボトルストーリー」的な存在であるわけなのですが、こういったエピソードこそが、いい味だしてるんですよね~。アニメに限らず、「美は細部にやどる」ことを証明する名作の大条件です。

 しかも、今回のイロウルが活躍する第13話『使徒、侵入』が名エピソードになるのは、スタッフリストから見ても自明の理!!


脚本   …… 庵野秀明・磯光雄・薩川昭夫
演出   …… 岡村 天斎
作画監督 …… 黄瀬 和哉
作画製作 …… Production I.G


 !! おもしろくならねぇはずがねぇ!!

 映画『パトレイバー』シリーズや『攻殻機動隊』でつとに有名な Production I.Gと、その代表的存在である黄瀬和哉(きせ かずちか)さんがアニメ制作を外注で受け持っているエピソードとしても、この『使徒、侵入』はよく話題にのぼるのですが、あくまでも TVシリーズの中の1エピソードですので、この回にかぎって登場キャラクターの面々がやたら陰影のついたリアル顔にデザインしなおされている、といったことは決してありません。まぁ、主人公がおもいっきり蚊帳の外という状況は『パトレイバー2』や『3( WXⅢ)』によく似ていますけど。
 ただし、開発主任が電動ドリルと電動カッターをけっこう器用に使って潜入したマギ・カスパーのコードうじゃうじゃな内部描写や、やたら光が反射して目の部分がサングラスのように見えなくなっている主任のメガネなどがかろうじて Production I.Gっぽいような。あと、お話の中ではやたら役立たず感が出ているものの、いつもより出番が多めなネルフ副司令の顔つきがちょっとリアルに老けているような気がします。オッサンに特徴が出るのねぇ~。

 絵よりももっと色濃くこのエピソードを特徴づけているのが3人の共同による本エピソードの脚本なのですが、具体的なわりふりはわからないものの、私の勝手な推測で言わせていただくのならば、マギの設定などの物語全体にかかわる謎を差し込んでいるのが庵野総監督で、イロウルのハッキングというあたりの SF的要素を設定したのがいまや『電脳コイル』の原作・監督でも有名な磯さん、開発主任とすでに死亡している彼女の母親との深い関係を非常に簡潔に、しかし濃密にセリフに織り込んでいたのが薩川さんということなのではないでしょうか。ぜいたく~!!

 薩川さんといえばあーた、「日本のジメジメ感」をこよなく愛しておられた実相寺昭雄監督の「江戸川乱歩3部作(『屋根裏の散歩者』『D坂の殺人事件』『鏡地獄』)において、人妻ドロリッチ感満点の脚本を手がけておられていたお方でございますよ。

 そんなお3方に自分メインのエピソードを作ってもらえたのですから、金髪染めの開発主任もそれまでの役回りのやたら損な感じをきれいさっぱり忘れさせてくれる素晴らしい活躍を見せてくれました。
 ただし、この回の中でついに、エヴァンゲリオン計画のおおもとやマギシステムを考案したのが開発主任なのではなく、実はその亡くなった母親だったという事実も明らかになってしまいました。したがって、今回の大金星とひきかえに、主任はみずからの立場の弱さを視聴者の前にさらけ出すことになってしまったわけなのです。あわれなり……


「カスパーにはね、女としての母さんがインプットされていたの。
 最後まで女でいることを守ったのね。ホント、母さんらしいわ。」


 このエピソードの締めくくりとなる開発主任の味わい深いセリフです。
 つまり、マギシステムが「第7世代の有機コンピュータに個人の人格を移植して思考させる」という「人格移植OS」であり、そこに「科学者」「母親」「女」という3つの「自分」を移植したのが他ならぬ開発者自身、要するに開発主任の母親だったということを受けての娘としての発言ですね。

 ただ! これまでの経緯をごらんいただいてもおわかりの通り、イロウルを撃退したのはあきらかに! マギじゃなくて娘の主任さんです。
 主任がなんとかしなければカスパーなんかものの2~30秒でオトされていたことは自明の理なのですから、別にこの最後のセリフのように主任が死んだ母親のことをここまでもちあげる必要はまったくないのです。

 ここね!! ここらへんに、自分の努力や実績に関係なく、いつまでたっても母親の存在を過剰に意識してしまう開発主任のキャラクターが明示されているのです。まぁそれは時には自分が奮起するための燃料になるのかもしれませんが、彼女の場合は意識する相手がすでに死んでしまっているという事実もあいまって、非常にあやういものになっている匂いがするんですよね。

 確かに開発主任は、今回の大活躍以降はふしめがちな表情が似合う暗~い雰囲気でいる印象が強くなっていきます。それであの最期でしょ……? 救いようがないっすよ!
 そういう意味では、そのへんの感じを思いっきりスルーしている『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』の中での彼女はいくらか幸せなのかも知れませんが、そのぶん影が薄くなっちゃったしねぇ。どっちがいいんでしょうかねェ~? 私はやっぱり TVシリーズのほうが好きですよ。だって、こんな複雑な脇役がいるアニメ、そうそうないでしょ!?


 ともあれ、「次第に明らかになるエヴァンゲリオンの謎」「シリーズ随一の SFサイバーアクション」「開発主任の鬱屈の原因が明らかに!」といった興味深い要素が満載の「 VS 第11使徒イロウル戦」だったわけなのですが、最後にもうひとつ、忘れるわけにはいかないこの要素を強調しておしまいにしたいと思います。


「非人間的な使徒 VS 人間的にもほどがあるずるっこ人類」という構図がこれ以上にわかりやすくうち出されているエピソードは、ない!!


 これですよ……謎の兵器エヴァンゲリオンが出てくるとどうしても目がそこにいってしまうのですが、あくまでもこの『新世紀エヴァンゲリオン』は、人類がその存亡をかけて外敵と闘うという内容の物語なのです。そして、その中であがく人間たちがほぼ全員、アニメ作品としては異例なほどにゆがみまくり……いやいや、生々しく描かれているところが、この作品の真のオリジナリティなのではないでしょうか。
 そして、そういった点から観ても、TVシリーズの『新世紀エヴァンゲリオン』と現在の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』はまったく別の作品になっていると言えるんじゃないかと。どっちが好きなのかは人それぞれよ。


 まぁともかくそんな感じなのですが、少なくとも私はぜ~っっっっったいに!! 第11使徒イロウルの挑戦は忘れないぞ!

 よくやった、イロウル。でも、悪知恵で人間に勝てるとは思っちゃいけないよ~♡
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