どぅーもこんばんは、そうだいです。私の町も東京も、そんなに雨はふらなかったですね。でも、夜の寒さは本格的だ! 冬はもうはじまっている……
今日は、お昼から東京に行ってお芝居を観てきました。小竹向原のアトリエ春風舎で上演されていた、元祖演劇乃素いき座の第32回公演『出かける』です。
主演で、いき座の主宰もなされている土井通肇(すみません、なんてお読みするのかわからない……)さんの雰囲気に、今回も呑まれましたね。どんなにセリフとセリフのあいだに時間をとっても、おん年70をこえた土井さんの持つ味わいのなせるわざなのか、観ている側の集中力がとぎれない! 本当にうまいんだなぁ。最初に土井さんの舞台を観た時には、これは本物のお年寄りが演劇をやっているからおもしろいのかと思っていたのですが、年をとれば誰でもいい俳優になれるのかというと、そんなことはない! 年齢関係なく、土井さん個人がすごいんですね。また観に行きたいなぁ。
こういったお芝居を観ると、目の前の手の届きそうな距離にある本物の空間で、しかもカットしたりCGをつけたしたりできない条件の中で、生身の人間だけがつくりあげていく演劇というもののおもしろさをしみじみ楽しむことができるわけなんですが、今回も前回に引き続き、演劇とは対極の位置にありそうな形式である「アニメ」作品の話題をさせていただきます。でもねぇ、今回のやつはかんなりアニメっぽくないアニメよ!
前回の『劇場版 機動警察パトレイバー』に続きまして、今回は『劇場版 機動警察パトレイバー2』(1993年 監督・押井守)でございます。
1988年に発売されヒットしたOVAシリーズに続いて、その発展型として公開されたのが1989年の劇場版第1作でした。そしてその直後にいよいよTVシリーズが始まり(1989~1990年 全47話)、そこで終わりきらなかった部分を、TVシリーズ終了後から1992年までに新OVAシリーズというかたちでまた発売。
『機動警察パトレイバー』シリーズは、この作品中唯一のSF要素と言っていい巨大作業ロボット・レイバーによる犯罪を、警察特製のパトロールレイバー「パトレイバー」を駆って鎮圧する警視庁特車(特別車両)2課第2小隊の日々をえがいたポリスストーリーです。
物語の大筋は、軍事企業「シャフト」の巨大な陰謀を特車2課があばくといったもので、1988~1992年にわたって展開された物語で、「パトレイバー」はいちおう完結します(物語の世界は、当時から見て10年後の近未来)。
1992年の新OVAシリーズ終了によって円満に終わった「パトレイバー」。しかし、その翌年の1993年に公開された『劇場版 機動警察パトレイバー2』のために、このシリーズはよくあるロボットアニメとは別の次元で記憶されるべきものになってしまったのです!
『劇場版2』は、名実ともに「パトレイバー」シリーズの完結編にあたります。物語は、主人公達が「シャフト」事件を解決してから数年後、西暦2002年の年明け直後の東京が舞台となります。
主人公たちの多くは昇進して第2小隊を離れたり、現場捜査からしりぞいて新人警官の教育にあたったりしていました。
そんな中、国籍不明の戦闘機が東京上空に突如あらわれ、ミサイル攻撃によって横浜ベイブリッジを爆撃するという大事件が発生したのです。爆撃したのは、どこの国の戦闘機なのか! すわ戦争か!?
日本国中が騒然とするなか、第2小隊にあやしすぎる容貌の自衛隊幹部・荒川(声は竹中直人!)があらわれ、警察の本捜査からはずれたところでの独自調査を依頼してきます。荒川によると、今回の爆撃事件は自衛隊のクーデターに見せかけたテロ集団の犯行だというのですが、その集団のリーダーと第2小隊には、意外な関係が。
荒川が予言した通り、日本政府は爆撃した戦闘機が自衛隊のものだったと誤認発表し、それに呼応するように第2の謎の戦闘機が東京に襲来してまた失踪。日本政府は警察の機動隊を総動員して全国の自衛隊基地を包囲します。
一連の流れに、まったく身におぼえのなかった自衛隊もついにキレてしまい、「自衛します。」とばかりに関東地方の諸基地から戦車部隊を発動、冬の首都東京を占拠してしまうのです。
結局、テロ集団は軍隊とも言えない最小限の武器しか持っていなかったのですが、ミサイル1発と謎の戦闘機の影だけで、そしてそれを自衛隊のせいにデッチあげただけで、平和だったはずの日本を戦争状態に変えることに成功したわけなんです。
あ、あれ? これ、ロボットアニメ? 別に「パトレイバー」じゃなくてもいいんじゃ……
そうなんです! これ、はっきし言って「パトレイバー」っていう要素、いらないんです。物語の主人公も、シリーズではわき役だったはずの「後藤さん」と「南雲さん」、そして気味悪い魅力に満ちた荒川の3人といったていで、本来主人公だったはずの若いレギュラーメンバーはほっとんど!活躍しません。タイトルになってるはずのロボット・パトレイバーのあつかいなんか、もう……ただただ涙、涙。これ、公開当時は激怒したファンの方々も多かったんじゃないかなぁ。
レギュラーメンバーはなんとかかんとかだいたいが集合するんですが、ロボットとしてのパトレイバーが好きな人にとってはもう、言い方をキツくしてしまえば、「パトレイバーが出る、パトレイバーが出るとタイトルでにおわせておきながら、フタをあけてみるとじぇんっじぇん出てこない」という、いわゆる「パトパト詐欺」の疑いが濃厚ですよ、これは!
パトレイバーどころか、実はこの『劇場版2』には、そもそも「SF」要素すらありません。さきほどから言っているように、この物語の舞台は、現実の時間からおよそ10年後の2002年(日本政府と自衛隊が東京で一触即発の状態になってしまう日付は、ご丁寧にも2月26日。「2.26」とは、いやはや……)ではあるんですが、空気はあきらかに1990年代前半。あの自衛隊PKO派遣問題で、「この国にとって、軍事力とは、戦争とはなんなのか。」という不穏なテーマに揺れていた当時の空気を見事にトレースしています。
SF要素を排除しているのは敵側テロ集団の設定もおなじことで、今回は現実にはありえないような高度技術を持った天才的悪人も登場しなければ、得体の知れない怪物を創造するマッドサイエンティストもいません。ただただ、「今の日本は戦争を思い出す必要がある。」という固い信念を持った集団があらわれ、決起するだけです。このリアリティ。だいぶ時間のたった2010年の世界から観ても、思わずゾッとしてしまう恐ろしさがあります。これはね、やっぱり「パトレイバー」という設定を思いっきり突き放さないと獲得できない境地ですね。
『劇場版2』をまだ観てない方、この文章を読んで『劇場版2』を観たくなるかしら? ロボットが全然活躍しない、しかもずいぶんと辛気くさいテーマの映画なんだな、と思われたかもしれません。
しかしお立ち会い! ここから言いたいのが押井監督の才能の真骨頂なんです。要するに、こんなにキツくて重い内容なのに、この映画はエンタテインメントとして120%成立している!
微に入り細にわたってリアルに描かれた東京の風景と、まるで生身の役者のように立ち回るおさえた演技によって、逆に心のうつろいが全身から伝わってくるキャラクターたち。とにかくヘンに重厚なアニメなわけなんですが、その要所要所で、押井監督ならではのユーモアセンスが炸裂するのがおかしくてしょうがないんですね!
劇中後半、テロ集団の持つ飛行船から多量に噴出される毒々しい色のついたガス。ガスをあびた人々は毒ガスだ毒ガスだと大パニックにおちいるのですが、そんな人たちをながめて普通にほえる野良犬。それを見て愕然とする人々。あ、毒ガスじゃないんだ……
これはほんの序の口なんですが、古くさい歌謡曲カラオケの映像やら、コンビニの食糧買い占め騒動やら……『劇場版2』の押井監督のユーモアセンスは、これでもかというほどに随所にちりばめられています。サービス精神が旺盛なのね!
ここらへんの、硬軟自由自在の押井ワールドはもう、ストーリーなんかよくわかんなくっても観ているだけで幸せになっちゃいますね。
『劇場版 機動警察パトレイバー2』は、そんなエンタメと現代日本に突きつけられた大命題とが奇跡的に融合したすんばらしい映画です。この映画を通して押井監督が言ったことをどう受け止めるかはさておいても、まだ観ていない方はとにかく1回ごらんになってみてください。おすすめ!
ただ、私はこの映画を観ていて、「あぁ、押井監督がパトレイバーでやりたいことはもうないんだなぁ。」と、ちょっとさみしくもなりました。オールナイト上映だったので前作の劇場版を観た直後だったし。
劇中の季節も、雪のふりしきる真冬。そして内容も凍てついた東京の街と曇天の似合う『劇場版2』。部屋をあったかくして観たい1作ですね! ひゅるりら。
今日は、お昼から東京に行ってお芝居を観てきました。小竹向原のアトリエ春風舎で上演されていた、元祖演劇乃素いき座の第32回公演『出かける』です。
主演で、いき座の主宰もなされている土井通肇(すみません、なんてお読みするのかわからない……)さんの雰囲気に、今回も呑まれましたね。どんなにセリフとセリフのあいだに時間をとっても、おん年70をこえた土井さんの持つ味わいのなせるわざなのか、観ている側の集中力がとぎれない! 本当にうまいんだなぁ。最初に土井さんの舞台を観た時には、これは本物のお年寄りが演劇をやっているからおもしろいのかと思っていたのですが、年をとれば誰でもいい俳優になれるのかというと、そんなことはない! 年齢関係なく、土井さん個人がすごいんですね。また観に行きたいなぁ。
こういったお芝居を観ると、目の前の手の届きそうな距離にある本物の空間で、しかもカットしたりCGをつけたしたりできない条件の中で、生身の人間だけがつくりあげていく演劇というもののおもしろさをしみじみ楽しむことができるわけなんですが、今回も前回に引き続き、演劇とは対極の位置にありそうな形式である「アニメ」作品の話題をさせていただきます。でもねぇ、今回のやつはかんなりアニメっぽくないアニメよ!
前回の『劇場版 機動警察パトレイバー』に続きまして、今回は『劇場版 機動警察パトレイバー2』(1993年 監督・押井守)でございます。
1988年に発売されヒットしたOVAシリーズに続いて、その発展型として公開されたのが1989年の劇場版第1作でした。そしてその直後にいよいよTVシリーズが始まり(1989~1990年 全47話)、そこで終わりきらなかった部分を、TVシリーズ終了後から1992年までに新OVAシリーズというかたちでまた発売。
『機動警察パトレイバー』シリーズは、この作品中唯一のSF要素と言っていい巨大作業ロボット・レイバーによる犯罪を、警察特製のパトロールレイバー「パトレイバー」を駆って鎮圧する警視庁特車(特別車両)2課第2小隊の日々をえがいたポリスストーリーです。
物語の大筋は、軍事企業「シャフト」の巨大な陰謀を特車2課があばくといったもので、1988~1992年にわたって展開された物語で、「パトレイバー」はいちおう完結します(物語の世界は、当時から見て10年後の近未来)。
1992年の新OVAシリーズ終了によって円満に終わった「パトレイバー」。しかし、その翌年の1993年に公開された『劇場版 機動警察パトレイバー2』のために、このシリーズはよくあるロボットアニメとは別の次元で記憶されるべきものになってしまったのです!
『劇場版2』は、名実ともに「パトレイバー」シリーズの完結編にあたります。物語は、主人公達が「シャフト」事件を解決してから数年後、西暦2002年の年明け直後の東京が舞台となります。
主人公たちの多くは昇進して第2小隊を離れたり、現場捜査からしりぞいて新人警官の教育にあたったりしていました。
そんな中、国籍不明の戦闘機が東京上空に突如あらわれ、ミサイル攻撃によって横浜ベイブリッジを爆撃するという大事件が発生したのです。爆撃したのは、どこの国の戦闘機なのか! すわ戦争か!?
日本国中が騒然とするなか、第2小隊にあやしすぎる容貌の自衛隊幹部・荒川(声は竹中直人!)があらわれ、警察の本捜査からはずれたところでの独自調査を依頼してきます。荒川によると、今回の爆撃事件は自衛隊のクーデターに見せかけたテロ集団の犯行だというのですが、その集団のリーダーと第2小隊には、意外な関係が。
荒川が予言した通り、日本政府は爆撃した戦闘機が自衛隊のものだったと誤認発表し、それに呼応するように第2の謎の戦闘機が東京に襲来してまた失踪。日本政府は警察の機動隊を総動員して全国の自衛隊基地を包囲します。
一連の流れに、まったく身におぼえのなかった自衛隊もついにキレてしまい、「自衛します。」とばかりに関東地方の諸基地から戦車部隊を発動、冬の首都東京を占拠してしまうのです。
結局、テロ集団は軍隊とも言えない最小限の武器しか持っていなかったのですが、ミサイル1発と謎の戦闘機の影だけで、そしてそれを自衛隊のせいにデッチあげただけで、平和だったはずの日本を戦争状態に変えることに成功したわけなんです。
あ、あれ? これ、ロボットアニメ? 別に「パトレイバー」じゃなくてもいいんじゃ……
そうなんです! これ、はっきし言って「パトレイバー」っていう要素、いらないんです。物語の主人公も、シリーズではわき役だったはずの「後藤さん」と「南雲さん」、そして気味悪い魅力に満ちた荒川の3人といったていで、本来主人公だったはずの若いレギュラーメンバーはほっとんど!活躍しません。タイトルになってるはずのロボット・パトレイバーのあつかいなんか、もう……ただただ涙、涙。これ、公開当時は激怒したファンの方々も多かったんじゃないかなぁ。
レギュラーメンバーはなんとかかんとかだいたいが集合するんですが、ロボットとしてのパトレイバーが好きな人にとってはもう、言い方をキツくしてしまえば、「パトレイバーが出る、パトレイバーが出るとタイトルでにおわせておきながら、フタをあけてみるとじぇんっじぇん出てこない」という、いわゆる「パトパト詐欺」の疑いが濃厚ですよ、これは!
パトレイバーどころか、実はこの『劇場版2』には、そもそも「SF」要素すらありません。さきほどから言っているように、この物語の舞台は、現実の時間からおよそ10年後の2002年(日本政府と自衛隊が東京で一触即発の状態になってしまう日付は、ご丁寧にも2月26日。「2.26」とは、いやはや……)ではあるんですが、空気はあきらかに1990年代前半。あの自衛隊PKO派遣問題で、「この国にとって、軍事力とは、戦争とはなんなのか。」という不穏なテーマに揺れていた当時の空気を見事にトレースしています。
SF要素を排除しているのは敵側テロ集団の設定もおなじことで、今回は現実にはありえないような高度技術を持った天才的悪人も登場しなければ、得体の知れない怪物を創造するマッドサイエンティストもいません。ただただ、「今の日本は戦争を思い出す必要がある。」という固い信念を持った集団があらわれ、決起するだけです。このリアリティ。だいぶ時間のたった2010年の世界から観ても、思わずゾッとしてしまう恐ろしさがあります。これはね、やっぱり「パトレイバー」という設定を思いっきり突き放さないと獲得できない境地ですね。
『劇場版2』をまだ観てない方、この文章を読んで『劇場版2』を観たくなるかしら? ロボットが全然活躍しない、しかもずいぶんと辛気くさいテーマの映画なんだな、と思われたかもしれません。
しかしお立ち会い! ここから言いたいのが押井監督の才能の真骨頂なんです。要するに、こんなにキツくて重い内容なのに、この映画はエンタテインメントとして120%成立している!
微に入り細にわたってリアルに描かれた東京の風景と、まるで生身の役者のように立ち回るおさえた演技によって、逆に心のうつろいが全身から伝わってくるキャラクターたち。とにかくヘンに重厚なアニメなわけなんですが、その要所要所で、押井監督ならではのユーモアセンスが炸裂するのがおかしくてしょうがないんですね!
劇中後半、テロ集団の持つ飛行船から多量に噴出される毒々しい色のついたガス。ガスをあびた人々は毒ガスだ毒ガスだと大パニックにおちいるのですが、そんな人たちをながめて普通にほえる野良犬。それを見て愕然とする人々。あ、毒ガスじゃないんだ……
これはほんの序の口なんですが、古くさい歌謡曲カラオケの映像やら、コンビニの食糧買い占め騒動やら……『劇場版2』の押井監督のユーモアセンスは、これでもかというほどに随所にちりばめられています。サービス精神が旺盛なのね!
ここらへんの、硬軟自由自在の押井ワールドはもう、ストーリーなんかよくわかんなくっても観ているだけで幸せになっちゃいますね。
『劇場版 機動警察パトレイバー2』は、そんなエンタメと現代日本に突きつけられた大命題とが奇跡的に融合したすんばらしい映画です。この映画を通して押井監督が言ったことをどう受け止めるかはさておいても、まだ観ていない方はとにかく1回ごらんになってみてください。おすすめ!
ただ、私はこの映画を観ていて、「あぁ、押井監督がパトレイバーでやりたいことはもうないんだなぁ。」と、ちょっとさみしくもなりました。オールナイト上映だったので前作の劇場版を観た直後だったし。
劇中の季節も、雪のふりしきる真冬。そして内容も凍てついた東京の街と曇天の似合う『劇場版2』。部屋をあったかくして観たい1作ですね! ひゅるりら。
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