どうにもこうにもこんばんは! そうだいでございます~。
春もたけなわ、花粉症もたけなわでございます……このへんの山形近辺でも、やっと桜が咲き始めましたよ~。でも、朝夕はまだまだ寒いんだよなぁ。ほんと、何着たらいいのかわかんない季節ですねぇ。空気のにおいは確実に春なんですけれどもね。
さて今回のお題は、いよいよと言いますかやっとと言いますか、日本、いやさ世界ミステリー小説史上に燦然と輝く超名作が完全初映像化されたというお話でございます。これはほんとにすっげぇぞ!!
いや~、この小説が世に出て、なんとその37年後に初映像化ですよ。年号2回変わっちゃってますからね!? 昭和、平成ではついに不可能だった難業が、令和の御世に満を持して現実のものとなった! 胸が熱くなりますねぇ、生きててよかった!!
ドラマシリーズ『十角館の殺人』(2024年3月22日全5話同時配信)
配信サイト huluの「 huluオリジナル」枠で独占配信された。第1話53分、第2話45分、第3話49分、第4話46分、最終第5話49分の計242分。
『十角館の殺人』とは!?
『十角館の殺人(じゅっかくかんのさつじん)』は、推理小説家・綾辻行人のデビュー作品となる長編推理小説。
1987年9月に講談社ノベルスから出版され、2012年出版の『奇面館の殺人』まで9作発表されている綾辻の「館シリーズ」の第1作にあたる。2017年7月時点で本作の累計発行部数は100万部を突破している。
日本のミステリー小説界に大きな影響を与え、いわゆる「新本格ブーム」を巻き起こした。雑誌『週刊文春』が推理作家や推理小説の愛好者ら約500名のアンケートにより選出した「東西ミステリーベスト100」の2012年版国内編で第8位に選出されている。ちなみに綾辻の他作品では、『時計館の殺人』(1991年)が第20位、『霧越邸殺人事件』(1990年)が第82位に選出されている。2023年にアメリカのニュース雑誌『タイム』が企画した「史上最高のミステリー&スリラー本」オールタイム・ベスト100にも選出されている。
2007年10月に講談社文庫から「新装改訂版」が出版され、綾辻はあとがきで「本書をもって『十角館の殺人』の決定版とするつもりでいる。」と述べている。
清原紘の作画によるマンガ版が、『月刊アフタヌーン』(講談社)にて2019年10月号~22年6月号まで連載された。全31話、コミックス全5巻。
あらすじ
1986年3月26日水曜日。大分県O市にある K大学のサークル「推理小説研究会」の一行は、豊予海峡をのぞむ大分県S半島J崎から約5km 沖に浮かぶ、角島(つのじま)と呼ばれる無人の孤島を訪れた。彼らの目当ては、半年前の1985年9月20日に凄惨な四重殺人事件が発生して焼け落ちた「青屋敷」の跡と、その別邸となる奇抜な十角形のデザインをした「十角館」と呼ばれる建物だった。島に唯一残っているその十角館で、彼らは1週間の合宿を過ごそうというのだ。
その頃、九州本土では、研究会や青屋敷事件の関係者に宛てて、かつて研究会の会員で1985年1月に急死した中村千織の死の真相が他殺であると告発する怪文書が送りつけられていた。怪文書を受け取った1人である江南孝明は、中村千織の唯一の肉親である叔父の中村紅次郎を訪ねる。そこで、紅次郎の大学時代の後輩だという島田潔と出会った江南は、一緒に中村千織の事故死と青屋敷の事件の真相を探ろうと調査を開始し、推理研メンバーの守須恭一に協力を求める。
いっぽう角島の十角館では、合宿3日目の朝、推理研メンバーのオルツィが寝室で絞殺された上に左手を切断された状態で発見される。そして部屋の扉には「第一の被害者」という札が掲げられていた。残されたメンバー達は「自分たちの中に犯人がいるのではないか?」と推理を始めるが……
おもな登場人物とキャスティング
※推理小説研究会の主要メンバーは、それぞれ有名な海外の推理作家にちなんだニックネームで呼ばれている。物語の時点でのサークル会員数は、少なくとも16名。
エラリイ …… 望月 歩(23歳)
法学部3回生の21歳。色白で背の高い男性。金縁の伊達メガネをかけている。推理小説研究会誌『死人島』の現編集長。マジックが趣味で、バイスクルのライダーバック・トランプを赤青1組ずつ持っている。吸う煙草の銘柄はセーラム。
ポウ …… 鈴木 康介(26歳)
医学部4回生の22歳。口髭をたくわえた大柄な男性。無口だがときどき毒のある発言をする。オルツィとは幼馴染。吸う煙草の銘柄はラーク。
ヴァン …… 小林 大斗(ひろと 24歳)
理学部3回生。中背の痩せた男性。不動産業を営む伯父が角島を購入したことを推理小説研究会に伝えた。吸う煙草の銘柄はセブンスター。
アガサ …… 長濱 ねる(25歳)
薬学部3回生の21歳。ゆるいソバージュの長髪の女性。男性的な性格をしている。
ルルウ …… 今井 悠貴(25歳)
文学部2回生の20歳。銀縁の丸メガネをかけた、童顔で小柄な男性。会誌『死人島』の次期編集長で、今回の合宿を提案した。
カー …… 瑠己也(るきや ?歳)
法学部3回生の22歳。中肉中背だが骨太で猫背の男性。三白眼で、青髭の目立つ顎はしゃくれている。ひねくれた性格で、何かにつけて他のメンバーに噛み付くことが多く、特にエラリイとは衝突することが多い。ポケットボトルのウィスキーを携行している。
オルツィ …… 米倉 れいあ(19歳)
文学部2回生の20歳。頬にそばかすの目立つ、ショートヘアの小柄で太めな女性。引っ込み思案な性格。日本画を描くのが趣味。ポウとは幼馴染。
江南 孝明 …… 奥 智哉(19歳)
推理小説研究会の元会員。苗字の読みは「かわみなみ」だが、島田は「こなん」と呼んでいる。研究会時代のニックネームは「ドイル」。吸う煙草の銘柄はセブンスター。
島田 潔 …… 青木 崇高(44歳)
寺の三男坊。中村紅次郎の友人で年齢は30代後半。カマキリを連想させる痩せて背の高い男。次兄の修(おさむ)は大分県警警部。
島田 修 …… 池田 鉄洋(53歳)
島田潔の次兄で大分県警警部。40歳過ぎの太った男。潔との兄弟仲はあまり良いとは言えない。
中村 青司(せいじ)…… 仲村 トオル(58歳)
建築家で十角館の設計者。物語の半年前に発生した事件で死亡したとされている。当時46歳。
中村 和枝 …… 河井 青葉(42歳)
青司の妻。半年前の事件で死亡している。旧姓・花房。
中村 千織 …… 菊池 和澄(25歳)
青司の娘。物語の1年前に開かれた推理小説研究会の新年会の、大学構内の部室で行われた三次会の最中に急性アルコール中毒で死亡した。当時は文学部1回生。
中村 紅次郎 …… 角田 晃広(50歳)
大分県別府市鉄輪に住む、高校の社会科教師。中村青司の3歳年下の弟で、現在は44歳。大学時代の後輩だった島田潔と親しい。
吉川 誠一 …… 前川 泰之(50歳)
中村青司に雇われた庭師で、角島の青屋敷には月に1回数日間滞在して庭の手入れをしていた。半年前の事件では遺体が見つからず行方不明とされている。当時46歳。
吉川 政子 …… 草刈 民代(58歳)
吉川誠一の妻。誠一と結婚する前は、中村紅次郎の紹介で中村青司の青屋敷で働いていた。現在は大分県安心院町(あじむまち)にある誠一の実家に住んでいる。
漁師 …… 鳥谷 宏之(44歳)
大分県S町J崎の漁師。所有する漁船で推理小説研究会の一行を角島へ渡らせる。
船橋 弘江 …… 岩橋 道子(55歳)
病院看護師。生前の中村千織の往診を担当していた。
松本 邦子 …… 濱田 マリ(55歳)
江南の住むアパートの大家。
おもなスタッフ
監督 …… 内片 輝(53歳)
脚本 …… 八津 弘幸(52歳)、早野 円(?歳)、藤井 香織(50歳)
音楽 …… 富貴 晴美(38歳)
主題歌 …… 『低血ボルト』(ずっと真夜中でいいのに。)
製作著作 …… 日本テレビ
いや~、これはほんとにすごいことですよ。そして、映像化された作品も、この高すぎるハードルをなんなく跳び越えていくクオリティのものでした。文句なく、名作! 観て損は無し!!
今回の作品は、地上波でも BSでもなく定額動画サービス「 hulu」内での独占配信ですので、当然ながら視聴するためには huluに加入する必要があります。なので、元来ケチでめんどくさがりな私は「う~ん、どうしようかナ」などと二の足を踏んでいたのですが、青春時代にこの作品をはじめとする綾辻行人作品の数々に新鮮な驚きと感動をいただいていた私に、見逃すなどという選択肢なぞあるはずもなく、今月に入って割と早々に加入してしまったのでありました。まんまとディズニー帝国の膝下にひざまづいちまったよ!
日本を代表する現役の推理小説作家・綾辻行人。私にとりましては、大乱歩とか横溝正史とかコナン=ドイルとかいった故人は別にしまして、生きている作家さんの中で最も早い時期に夢中になった方の一人であります。綾辻さんの前に星新一がいて、綾辻さんの後に京極夏彦が続くといった順番でしょうか。
上の情報にもあるように、綾辻先生の「館シリーズ」はもともと講談社ノベルスから出版されていたのですが、私が夢中になったころにはそれらはすでに講談社文庫の形になっていて、その時点でもう推理小説のジャンルにおいて必読レベルの殿堂入り作品になっていたと思います。当時のミステリー界のメジャーレーベルと言えば、もう講談社ノベルスですよねぇ。
実は、かくいう私も『十角館の殺人』の登場人物のごとく、大学生時代に推理小説同好会というサークルの末席を汚していたのですが、ほんとに汚すもいいところで、サークルの部屋にはしょっちゅう顔を出しているクセに毎年出す会誌にはまるで作品を提出しないという幽霊部員ライフを謳歌してしまっておりました。幸か不幸か、角島に行くようなエース部員の面々には入るべくもありません……
ただ、私が大学生だったのは1990年代の後半から2000年代の初頭だったので『十角館の殺人』の時代設定とは約10年以上の差があるのですが、物知り顔の先輩方が狭い部室の中でスパスパ煙草を吸いながら推理小説談義を楽しそうにしているという空気はまるまる今回のドラマさながらに残っていたと思います。いたいた、エラリイみたいな先輩! なつかしいなぁ、今もお元気かな。
そして、余談ながら私の大学では、確か私が入学する直前にサークルの飲み会で急性アルコール中毒による死者が出たという、『十角館の殺人』を地で行く悲劇があったようで、私が入学したころには全サークルで飲み会に対してかなりピリピリしたモラル周知が徹底していたような気がします。ま、それでも盛り上がっちゃったら「イッキ!」とか言い出す先輩はいましたけど。
あと、私の身のまわりでは、ちょうど私が卒業するころになってやっと、室内での喫煙を問題視する空気も徐々に広がってきたかな、という感じでした。今じゃ考えられないけど、先輩の吸っている煙草を横目に見て露骨に嫌そうな顔をしている一年生を見て、「あぁ、これが新人類か……」なんて驚いちゃってたもんね! いやいや、令和の時代から見るとその反応が100% 正しい常識になっているわけなのですが、それまでは、すぐ隣で誰かがバッカバカ副流煙を出していようが、おしゃれした女子でも全然気にせずに談笑してましたもんね。すごい時代だったな……
それはさておき、今回のドラマ版『十角館の殺人』は、そこらへんの昭和末期、1986年の春という時代設定にもこだわり抜いた再現度を目指す、限りなく原作小説に忠実な映像化になっていたと感じました。昨今における過去の名作の映像化でよくある、筋だけを拝借して時代設定は21世紀現在にアレンジするという安易な手は使っていないんですね。まぁ、今回はミステリー世界でおなじみの「嵐の山荘」とか「陸の孤島」という設定を実現するためにも、高機能なスマホが普及している現代を舞台とするわけにはいかなかったのでしょうが、登場人物の多くが当たり前のように気持ちよく煙草を吸う今作の光景は、非常に懐かしく、かつ独特な雰囲気を醸し出す味付けになっていたと思います。その擬古体な様式が、なんか綾辻作品っぽいんだよなぁ!
さて、ここで原作小説と今回のドラマ作品との差異に触れてみたいと思うのですが、まず、結論から言うと両者には大筋では大きな違いはありません。そうなのですが、よくよく観てみるとドラマ版は、原作の良さをより引き立たせるために、なかなか冒険的なアレンジも後半にいくにつれてけっこう大胆に差しはさんでいることがよくわかります。
そんでもってすみません、原作小説とドラマ版とを比較する前に、まず原作小説の中にある「講談社文庫旧版(以下、『旧版』)」と「講談社文庫新装改訂版(以下、『改訂版』)」との違いについてもちょっとだけ触れさせてください。迂遠で申し訳ない!
これまた上の情報にあります通り、原作小説『十角館の殺人』として2024年現在に講談社文庫から発行されているのは、2007年10月からリニューアルされた改訂版なのですが、それまでは1987~91年に講談社ノベルス版、そして1991~2007年に旧版が長らく販売されていました。そのため、今でも古本屋にいけば旧版は簡単に見つかるのではないかと思われるのですが、「新装」だけでなく「改訂」と銘打たれている以上、現行の改訂版には、中坊時代の私が馴れ親しんだ旧版とは違うなにかしらの変更があるはずですので、まずそこの差異をしっかり見極めてみることにしましょう。めんどくさいな~、そういうとこ気になる性分はよう!!
そんでま、家の本棚にあった日焼けしまくりシミつきまくりの旧版と、本屋さんで買って来たピッカピカの改訂版とを見比べてみたのですが、まず旧版が総ページ数「375(うち本文366)」で、改訂版が総ページ数「497(うち本文453)」ということで、改訂版の方が旧版の1.2~3倍ボリュームアップしています。でも、これは本を開けば一目瞭然なのですが、昨今の超高齢社会の余波なのか、改訂版の文章の文字が旧版のそれの1.5倍くらい大きく見やすくなっていますので、別に改訂版で決定的に内容が増量したということではなさそうです。でも、やっぱ私は旧版の文字の小ささが大好きだなぁ~。あと、それぞれの表紙イラストについても、いかにもおどろおどろしい雰囲気のある改訂版の喜国雅彦さんバージョンもいいのですが、やっぱり意図的に簡素なイラストが逆に不気味な旧版の辰巳四郎さんバージョンの方が好きですね。
そして、実際に内容を読んでみても、綾辻先生ご本人が改訂版あとがきで明言している通り、エピソード数が増減したり、登場人物のキャラクター像のイメージが変わるような描写の変化があるわけでもなさそうでした。内容は、ほぼ一緒!
しかしながら、よく見比べてみると文章の内容を分かりやすくするために、長い段落を改行で分割する、読みにくい漢字にルビを振る、漢字をひらがな表記に改める(例:旧版5ページ4行目「腰掛け」→改訂版7ページ4行目「腰かけ」)、傍点やカッコ書きや読点づけによる重要なワードの強調表現を増やす、修飾表現を簡素にして文章の意味を通りやすくする(例:旧版24ページ7行目「そう云ってヴァンは、玄関ホールの、向かって右隣りのドアを指さした。」→改訂版30ページ15行目「と、ヴァンはドアの一枚を指さした。」)、単語の表記を現代における浸透度にあわせて改める(例:旧版13ページ3行目「トレンチ・コート」→改訂版16ページ13行目「トレンチコート」や旧版15ページ8行目「エムスカ・オルツィ男爵夫人」→改訂版19ページ13行目「バロネス・オルツィ」)、登場人物のセリフを自然な語り口のものに改める(例:旧版17ページ11行目「凄いわ」→改訂版22ページ6行目「凄い凄い」や旧版30ページ16行目「警察では」→改訂版40ページ6行目「警察的には」)などなど、文章の意味を変えない範囲での書き直しはほぼ全ページにわたってくまなくなされています。綾辻先生の几帳面で真摯な姿勢が浮かんでくるようですね!
同時に、これはかの大乱歩がその後半生に行っていた、ポプラ社版の「少年探偵団シリーズ」における自身の過去作品の子ども向けリライト群を彷彿とさせる丁寧さに満ちており、綾辻先生も、ついに日本の推理小説界の次世代を担う子ども達の育成に心血を注ぐ立場になられたのだなぁ、と勝手に感慨深くなってしまうものがあります。ま、大乱歩ご本人がリライトしてたわけじゃないみたいなんですけど、要はそれくらい、改訂版の漢字が少なくなって読みやすくなってるってことなんですよ! お子様でも安心して、十角館で繰り広げられる連続殺人事件の惨劇を楽しむことができます!!
結論……旧版も改訂版もほぼいっしょ。この真理を得るためにめっちゃ手間ひまかかっちゃったよ……でも、何ごとも自分で検証するのがいちばん! エラリイ先輩がなんとおっしゃろうが、靴底すりへらして汗水かきながら調べあげるのが漢の本懐なんでいコンチクショー!!
ハイ、ということでありまして、やっとこさそういった小説版と今回のドラマ版との比較に入っていくわけなのですが、私がざっと観て感じた両者の違いは、簡単にいえば以下の3点になります。
1、コナン&島田ペアの本土サイドのペース調整によるドラマ性のアップ
2、中村千織まわりの描写のボリュームアップによる真犯人の動機の掘り下げ
3、コナンくんのかわいさアップ大作戦
こんな感じでしょうかね。
まずこの3点の検証に入る前に、この『十角館の殺人』という作品が、世界レベルで有名な大傑作なのに、どうしてかれこれ40年近くもずっと映像化されてこなかったのかという点に触れなければならないのですが、それを端的に言ってしまうと、この作品のトリックが、作品の面白さやスリルを保ちながら視覚的に伝えることがかなり難しい種類のものだから! これに尽きると思います。まともに映像化したらトリックの肝が視聴者に最初から丸わかりになってしまうというか、このトリックの効果範囲が、ターゲットのみにかなりギュギュっと焦点を絞ったものになっているので、プロの手品を観客席じゃなくて舞台袖から見てしまっているような台無し感になってしまうんですね。だから長年、映像化が難しかったんだと思うのです。
そして、そこの問題をみごとにクリアしたのが今回のドラマ版なのですが、それはもう、役者さんの演技の工夫にせよカメラワークの巧緻な計算にせよ、その苦労がしのばれる万全たる対策が練られていました。ほんと、あともうちょっと長く映しちゃうとバレてまう!みたいなギリギリのラインでしたよね。
でも、私がそれ以上に感心してしまったのは、今回のドラマ版における「全5話一挙配信」というやや変則的な形式までもが、トリックを活かすための作戦になっていたということ! これにはビックラこきましたよ。第4話を最後まで観てやっと、「あぁ~! これをしたかったからか!!」と膝を打ったと言いますか。
もちろん、その放送形態がどうしてトリックに効いているのかを説明するわけにはいかないのですが、ミステリー小説の映像化として常道な「2~3時間の単発スペシャルドラマか映画」だと原作小説を大幅にカットすることになっちゃうし、かといって時間に余裕のできる「毎週1話ずつ放送の連続ドラマ」にしちゃうとトリックの秘密が維持できないということで、それらのどちらでもない第3の解決策を編み出した制作サイドの執念には、本当に頭が下がる思いです。いやほんと、こんなに幸せな映像化の例なんて、今まで無かったんじゃないですか!?
いや~、私だって別にアメリカねずみ帝国のしもべでもストームトルーパーでもなんでもないのですが、このドラマ版は、ぜひっとも一人でも多くに人に観て欲しいですね!! トリックの衝撃もすごいのですが、制作スタッフの細心の配慮と俳優陣の若々しくも達者な演技合戦がすばらしいですよ。特に、エラリイとポウとヴァンのクライマックスでの異様な推理合戦は迫力たっぷりだったなぁ。エラリイ役の望月歩さんなんて、序盤は典型的ないけすかないスネオキャラかと思っていたのですが、極限状況の中でだんだんと狂気を帯びてくる目つき、煙草の吸い方が最高でしたね! 日本で『バットマン』のジョーカーを演じられるのは、この望月さんかも知れないぞ!!
そういうわけで、とにもかくにもけなす点があんまり見つからないドラマ版なのですが、字数もかさんできましたので、先ほど挙げた3つの映像化にあたっての変更ポイントに触れて、おしまいにしたいと思います。ほめるべき点は他にも山ほどあるんですけどね。
1、に関しては、原作小説にかなり忠実に進んできていたドラマ版の中でも珍しく明確に原作と違っている変更点として、原作では物語が始まって「四日目」にコナン&島田の本土チームがたどり着いていた「青屋敷全焼事件」の真相が、ドラマ版では一日遅れて「五日目」になっているというアレンジがありました。
これはおそらく、原作通りに本土チームが、十角館チームよりもはやめに中村青司の生死に関する推理の結論を出してしまうと、五日目の時点でもそこらへんであーだこーだと議論している十角館チームとの緊迫感のつり合いが取れなくなるという部分をウィークポイントと考えた制作スタッフが、物語としてのバランスを考えてわざと一日遅らせたのではないでしょうか。
そして、本土チームを遅らせるために今回のドラマ版で制作スタッフがオリジナルに創案したのが、2、のポイント、すなはち中村千織の生前の姿を本土チームが実地に調査して、千織の肉親に関する疑惑を強くさせるという流れだったのでしょう。これで約一日分の時間が稼げました。うまいもんですねぇ。
また、原作小説を読んでいくと、果たして真犯人がそこまで恨みに思う程、本当に千織が「殺害」されていたのか?というあたりの真実がわざとぼかされているので、真犯人が真剣に千織の復讐だけを動機としていたのか? それとも、もともと自分の計画した完全犯罪を実現させることに愉快犯的な興味を持つ狂気をはらんでいて、千織の死がその最後のトリガーとなっただけだったのか? そこらへんがはっきりしない振れ幅のある人物造形となっていました。その反面、ドラマ版では真犯人と河南との両面から、人間としてのあたたかみを持った中村千織の姿が浮き彫りになったため、あくまで復讐を主目的として今回の犯行に至った真犯人への同情性というか、悲劇性がけっこう感情的に強調される効果があったと感じました。
ただ、今回のドラマ化で真犯人の「頭の中」での想像として、千織の死に際した面々の憎々しげな表情こそ映像化されてはいましたが、本当に彼らがそんなことを妄想して「アハハ☆」「ウフフ♡」と嗤っていたのかどうかは、ちょっと疑問ですよね。あそこのシーンだけ妙に浮いている「バカバカしさ」があるところに、それを事実だと無理やり自分に思いこませて凶行に走った真犯人の「論理のヒビ」が見えたような気がして、そういう意味でも、ドラマ版のオリジナル部分は雄弁に原作小説の世界を補強する妙手になっていたと見ました。真犯人も、だいぶ青くてあやうい人なんですよね。
ちなみになんですが、もう一つのドラマ版の英断として、原作小説では五日目の十角館チーム内での、互いに生き残った者が真犯人なのではないかという疑心暗鬼におちいる凄惨な論戦の中で、あまりにも唐突に2人の登場人物の家族に殺人や犯罪にからんだ経歴があると告発される一幕があるのですが、ドラマ版ではそのくだりはきれいさっぱりカットされています。
いいですねぇ、そこらへんのドライな割り切り方! 原作に書いてあるからと言ってなんでもかんでも盲目的に映像化するのではなく、ちゃんと各個の要素が「独立した映像作品」の完成度に貢献するのかどうかをしっかり吟味している制作スタッフ陣のプロフェッショナルな姿勢を見るようで、とっても感じ入りました。
そんな……ねぇ! 身内に事件に巻き込まれている人がそうそうわんさかいてたまるかって。まぁ、出身高校が私立不動高校だったら、話は別ですけどね。
ポイントの3、に関しては、もうドラマ版を観ていただくより他にないのですが、コナン役の奥智哉くんが、んまぁ~かわいいことかわいいこと。
今回のドラマ版は、主要キャストが大学生ということもあって男女問わず若い俳優さんがたで固められているのですが、特に推理研の男子の面々の演技が非常に上手ですばらしいです。年上の紳士淑女チームも、島田潔役の青木さんはもちろんのこと、東京03の角田さんも達者だし、あんなチョイ役なのに草刈民代さんが出ているという不思議なゴージャス感もステキでした。でも、やっぱり今作の MVPは望月・鈴木・小林の3トップかなぁ。日本俳優界の未来は明るいですね!
そんな中での智哉君なのですが、演技が非常にたどたどしいんです! 周りが上手な人ばっかりなだけに、余計につたなく見えてしまうのですが、そこがまた、血なまぐさ過ぎる今作の中での一服の清涼剤というか、貴重なオアシス、癒しの存在になっているんですね。おまけにゃドラマオリジナルで、最終話のあそこで独自の珍推理を披露するという迷ワトスンっぷり! やってくれましたね~。
原作小説のコナンは、真犯人にいいように踊らされてしまう The・狂言回しという感じで、いまひとつ個性が見えてこない弱さもあったのですが、そこに「プリティさ」を加えたことで、みごとな愛すべきピュアさとバカっぽさをたたえた名キャラクターになっていたような気がします。
奥智哉さんがいるなら、「館シリーズ」はぜひとも続いてほしいなぁ! 島田潔の役は正直、金田一耕助パターンでどの俳優さんが演じてもいいような気がするのですが、奥智哉のコナンだけは絶対に続投してほしい!
……とまぁ、いつものごとくとっちらかった内容のまま、今回の記事もお開きとあいなるのですが、ドラマ版『十角館の殺人』、ホントにおすすめです!! 原作小説を未読の方も既読の方も、ぜひとも小説を片手に楽しんでいただきたい奇跡のエンタテインメントですよ! だまされたと思って、思い切って huluに加入してみては、いかが!?
あ、そうそう、最後にひとつだけ。
ドラマ版におけるアガサの「聖子ちゃんカット」は、令和だからこそ通じる虚構であり、制作スタッフがわざと仕掛けた昭和幻想の罠だから、気をつけよう!!
セミロングの頭髪にボリュームのあるレイヤーカットを盛り込んだいわゆる「聖子ちゃんカット」を、名前の由来となったアイドルの松田聖子さんが実際にしていたのは1980~81年のことで、もちろんその後もしばらく聖子ちゃんカットを模倣する流行は広がってはいたものの、『十角館の殺人』の物語の舞台となる1986年ごろにはブームも下火になっており、85年にデビューした中山美穂さんや86年デビューの西村知美さんあたりはアイドルとしてのゲンをかつぐ意味合いで聖子ちゃんカットをしてはいたものの、アガサのように特に芸能界デビューを目指しているわけでもない一般女性が聖子ちゃんカットなのは、当時ほんとにやってたら、周囲からはちょっと奇異に見られていたのではないかと思われます。80年代当時は、「オタサーの姫」なんていう特異結界は無かったはずですしね。
やっぱり、原作小説の通りにアガサはソフトソバージュ(松田聖子さんも当時やっていたそうです)をしているのが自然なわけなのですが、そこはドラマ作品としての華を優先して、ちょっとしたウソを入れた、という感じでしょうか。
まぁ、原作小説だとエラリイはメガネをかけているし、ポウはヒゲもじゃだし、カーはしゃくれてますからね。
でも、そういうウソもつけるくらいに、80年代も遠い昔になっちゃったってことなんですなぁ。
でもさでもさ! そこまで忠実に80年代を再現するんだったら、本土ペアがやいのやいの推理談義する喫茶店のテーブルに置いてあった「ルーレット式星占いおみくじ器」も、邪魔だってくらいにバカでかいタイプにして欲しかったし、最終話で一瞬映るワイドショーレポーターの TV中継放送でも、レポーターを押しのけて「ピース!ピース!!」ってカメラに殺到する野球帽のガキどももちゃんと映像化してほしかったぞ!!
嗚呼、げに昭和は遠くなりにけりィイイ。
春もたけなわ、花粉症もたけなわでございます……このへんの山形近辺でも、やっと桜が咲き始めましたよ~。でも、朝夕はまだまだ寒いんだよなぁ。ほんと、何着たらいいのかわかんない季節ですねぇ。空気のにおいは確実に春なんですけれどもね。
さて今回のお題は、いよいよと言いますかやっとと言いますか、日本、いやさ世界ミステリー小説史上に燦然と輝く超名作が完全初映像化されたというお話でございます。これはほんとにすっげぇぞ!!
いや~、この小説が世に出て、なんとその37年後に初映像化ですよ。年号2回変わっちゃってますからね!? 昭和、平成ではついに不可能だった難業が、令和の御世に満を持して現実のものとなった! 胸が熱くなりますねぇ、生きててよかった!!
ドラマシリーズ『十角館の殺人』(2024年3月22日全5話同時配信)
配信サイト huluの「 huluオリジナル」枠で独占配信された。第1話53分、第2話45分、第3話49分、第4話46分、最終第5話49分の計242分。
『十角館の殺人』とは!?
『十角館の殺人(じゅっかくかんのさつじん)』は、推理小説家・綾辻行人のデビュー作品となる長編推理小説。
1987年9月に講談社ノベルスから出版され、2012年出版の『奇面館の殺人』まで9作発表されている綾辻の「館シリーズ」の第1作にあたる。2017年7月時点で本作の累計発行部数は100万部を突破している。
日本のミステリー小説界に大きな影響を与え、いわゆる「新本格ブーム」を巻き起こした。雑誌『週刊文春』が推理作家や推理小説の愛好者ら約500名のアンケートにより選出した「東西ミステリーベスト100」の2012年版国内編で第8位に選出されている。ちなみに綾辻の他作品では、『時計館の殺人』(1991年)が第20位、『霧越邸殺人事件』(1990年)が第82位に選出されている。2023年にアメリカのニュース雑誌『タイム』が企画した「史上最高のミステリー&スリラー本」オールタイム・ベスト100にも選出されている。
2007年10月に講談社文庫から「新装改訂版」が出版され、綾辻はあとがきで「本書をもって『十角館の殺人』の決定版とするつもりでいる。」と述べている。
清原紘の作画によるマンガ版が、『月刊アフタヌーン』(講談社)にて2019年10月号~22年6月号まで連載された。全31話、コミックス全5巻。
あらすじ
1986年3月26日水曜日。大分県O市にある K大学のサークル「推理小説研究会」の一行は、豊予海峡をのぞむ大分県S半島J崎から約5km 沖に浮かぶ、角島(つのじま)と呼ばれる無人の孤島を訪れた。彼らの目当ては、半年前の1985年9月20日に凄惨な四重殺人事件が発生して焼け落ちた「青屋敷」の跡と、その別邸となる奇抜な十角形のデザインをした「十角館」と呼ばれる建物だった。島に唯一残っているその十角館で、彼らは1週間の合宿を過ごそうというのだ。
その頃、九州本土では、研究会や青屋敷事件の関係者に宛てて、かつて研究会の会員で1985年1月に急死した中村千織の死の真相が他殺であると告発する怪文書が送りつけられていた。怪文書を受け取った1人である江南孝明は、中村千織の唯一の肉親である叔父の中村紅次郎を訪ねる。そこで、紅次郎の大学時代の後輩だという島田潔と出会った江南は、一緒に中村千織の事故死と青屋敷の事件の真相を探ろうと調査を開始し、推理研メンバーの守須恭一に協力を求める。
いっぽう角島の十角館では、合宿3日目の朝、推理研メンバーのオルツィが寝室で絞殺された上に左手を切断された状態で発見される。そして部屋の扉には「第一の被害者」という札が掲げられていた。残されたメンバー達は「自分たちの中に犯人がいるのではないか?」と推理を始めるが……
おもな登場人物とキャスティング
※推理小説研究会の主要メンバーは、それぞれ有名な海外の推理作家にちなんだニックネームで呼ばれている。物語の時点でのサークル会員数は、少なくとも16名。
エラリイ …… 望月 歩(23歳)
法学部3回生の21歳。色白で背の高い男性。金縁の伊達メガネをかけている。推理小説研究会誌『死人島』の現編集長。マジックが趣味で、バイスクルのライダーバック・トランプを赤青1組ずつ持っている。吸う煙草の銘柄はセーラム。
ポウ …… 鈴木 康介(26歳)
医学部4回生の22歳。口髭をたくわえた大柄な男性。無口だがときどき毒のある発言をする。オルツィとは幼馴染。吸う煙草の銘柄はラーク。
ヴァン …… 小林 大斗(ひろと 24歳)
理学部3回生。中背の痩せた男性。不動産業を営む伯父が角島を購入したことを推理小説研究会に伝えた。吸う煙草の銘柄はセブンスター。
アガサ …… 長濱 ねる(25歳)
薬学部3回生の21歳。ゆるいソバージュの長髪の女性。男性的な性格をしている。
ルルウ …… 今井 悠貴(25歳)
文学部2回生の20歳。銀縁の丸メガネをかけた、童顔で小柄な男性。会誌『死人島』の次期編集長で、今回の合宿を提案した。
カー …… 瑠己也(るきや ?歳)
法学部3回生の22歳。中肉中背だが骨太で猫背の男性。三白眼で、青髭の目立つ顎はしゃくれている。ひねくれた性格で、何かにつけて他のメンバーに噛み付くことが多く、特にエラリイとは衝突することが多い。ポケットボトルのウィスキーを携行している。
オルツィ …… 米倉 れいあ(19歳)
文学部2回生の20歳。頬にそばかすの目立つ、ショートヘアの小柄で太めな女性。引っ込み思案な性格。日本画を描くのが趣味。ポウとは幼馴染。
江南 孝明 …… 奥 智哉(19歳)
推理小説研究会の元会員。苗字の読みは「かわみなみ」だが、島田は「こなん」と呼んでいる。研究会時代のニックネームは「ドイル」。吸う煙草の銘柄はセブンスター。
島田 潔 …… 青木 崇高(44歳)
寺の三男坊。中村紅次郎の友人で年齢は30代後半。カマキリを連想させる痩せて背の高い男。次兄の修(おさむ)は大分県警警部。
島田 修 …… 池田 鉄洋(53歳)
島田潔の次兄で大分県警警部。40歳過ぎの太った男。潔との兄弟仲はあまり良いとは言えない。
中村 青司(せいじ)…… 仲村 トオル(58歳)
建築家で十角館の設計者。物語の半年前に発生した事件で死亡したとされている。当時46歳。
中村 和枝 …… 河井 青葉(42歳)
青司の妻。半年前の事件で死亡している。旧姓・花房。
中村 千織 …… 菊池 和澄(25歳)
青司の娘。物語の1年前に開かれた推理小説研究会の新年会の、大学構内の部室で行われた三次会の最中に急性アルコール中毒で死亡した。当時は文学部1回生。
中村 紅次郎 …… 角田 晃広(50歳)
大分県別府市鉄輪に住む、高校の社会科教師。中村青司の3歳年下の弟で、現在は44歳。大学時代の後輩だった島田潔と親しい。
吉川 誠一 …… 前川 泰之(50歳)
中村青司に雇われた庭師で、角島の青屋敷には月に1回数日間滞在して庭の手入れをしていた。半年前の事件では遺体が見つからず行方不明とされている。当時46歳。
吉川 政子 …… 草刈 民代(58歳)
吉川誠一の妻。誠一と結婚する前は、中村紅次郎の紹介で中村青司の青屋敷で働いていた。現在は大分県安心院町(あじむまち)にある誠一の実家に住んでいる。
漁師 …… 鳥谷 宏之(44歳)
大分県S町J崎の漁師。所有する漁船で推理小説研究会の一行を角島へ渡らせる。
船橋 弘江 …… 岩橋 道子(55歳)
病院看護師。生前の中村千織の往診を担当していた。
松本 邦子 …… 濱田 マリ(55歳)
江南の住むアパートの大家。
おもなスタッフ
監督 …… 内片 輝(53歳)
脚本 …… 八津 弘幸(52歳)、早野 円(?歳)、藤井 香織(50歳)
音楽 …… 富貴 晴美(38歳)
主題歌 …… 『低血ボルト』(ずっと真夜中でいいのに。)
製作著作 …… 日本テレビ
いや~、これはほんとにすごいことですよ。そして、映像化された作品も、この高すぎるハードルをなんなく跳び越えていくクオリティのものでした。文句なく、名作! 観て損は無し!!
今回の作品は、地上波でも BSでもなく定額動画サービス「 hulu」内での独占配信ですので、当然ながら視聴するためには huluに加入する必要があります。なので、元来ケチでめんどくさがりな私は「う~ん、どうしようかナ」などと二の足を踏んでいたのですが、青春時代にこの作品をはじめとする綾辻行人作品の数々に新鮮な驚きと感動をいただいていた私に、見逃すなどという選択肢なぞあるはずもなく、今月に入って割と早々に加入してしまったのでありました。まんまとディズニー帝国の膝下にひざまづいちまったよ!
日本を代表する現役の推理小説作家・綾辻行人。私にとりましては、大乱歩とか横溝正史とかコナン=ドイルとかいった故人は別にしまして、生きている作家さんの中で最も早い時期に夢中になった方の一人であります。綾辻さんの前に星新一がいて、綾辻さんの後に京極夏彦が続くといった順番でしょうか。
上の情報にもあるように、綾辻先生の「館シリーズ」はもともと講談社ノベルスから出版されていたのですが、私が夢中になったころにはそれらはすでに講談社文庫の形になっていて、その時点でもう推理小説のジャンルにおいて必読レベルの殿堂入り作品になっていたと思います。当時のミステリー界のメジャーレーベルと言えば、もう講談社ノベルスですよねぇ。
実は、かくいう私も『十角館の殺人』の登場人物のごとく、大学生時代に推理小説同好会というサークルの末席を汚していたのですが、ほんとに汚すもいいところで、サークルの部屋にはしょっちゅう顔を出しているクセに毎年出す会誌にはまるで作品を提出しないという幽霊部員ライフを謳歌してしまっておりました。幸か不幸か、角島に行くようなエース部員の面々には入るべくもありません……
ただ、私が大学生だったのは1990年代の後半から2000年代の初頭だったので『十角館の殺人』の時代設定とは約10年以上の差があるのですが、物知り顔の先輩方が狭い部室の中でスパスパ煙草を吸いながら推理小説談義を楽しそうにしているという空気はまるまる今回のドラマさながらに残っていたと思います。いたいた、エラリイみたいな先輩! なつかしいなぁ、今もお元気かな。
そして、余談ながら私の大学では、確か私が入学する直前にサークルの飲み会で急性アルコール中毒による死者が出たという、『十角館の殺人』を地で行く悲劇があったようで、私が入学したころには全サークルで飲み会に対してかなりピリピリしたモラル周知が徹底していたような気がします。ま、それでも盛り上がっちゃったら「イッキ!」とか言い出す先輩はいましたけど。
あと、私の身のまわりでは、ちょうど私が卒業するころになってやっと、室内での喫煙を問題視する空気も徐々に広がってきたかな、という感じでした。今じゃ考えられないけど、先輩の吸っている煙草を横目に見て露骨に嫌そうな顔をしている一年生を見て、「あぁ、これが新人類か……」なんて驚いちゃってたもんね! いやいや、令和の時代から見るとその反応が100% 正しい常識になっているわけなのですが、それまでは、すぐ隣で誰かがバッカバカ副流煙を出していようが、おしゃれした女子でも全然気にせずに談笑してましたもんね。すごい時代だったな……
それはさておき、今回のドラマ版『十角館の殺人』は、そこらへんの昭和末期、1986年の春という時代設定にもこだわり抜いた再現度を目指す、限りなく原作小説に忠実な映像化になっていたと感じました。昨今における過去の名作の映像化でよくある、筋だけを拝借して時代設定は21世紀現在にアレンジするという安易な手は使っていないんですね。まぁ、今回はミステリー世界でおなじみの「嵐の山荘」とか「陸の孤島」という設定を実現するためにも、高機能なスマホが普及している現代を舞台とするわけにはいかなかったのでしょうが、登場人物の多くが当たり前のように気持ちよく煙草を吸う今作の光景は、非常に懐かしく、かつ独特な雰囲気を醸し出す味付けになっていたと思います。その擬古体な様式が、なんか綾辻作品っぽいんだよなぁ!
さて、ここで原作小説と今回のドラマ作品との差異に触れてみたいと思うのですが、まず、結論から言うと両者には大筋では大きな違いはありません。そうなのですが、よくよく観てみるとドラマ版は、原作の良さをより引き立たせるために、なかなか冒険的なアレンジも後半にいくにつれてけっこう大胆に差しはさんでいることがよくわかります。
そんでもってすみません、原作小説とドラマ版とを比較する前に、まず原作小説の中にある「講談社文庫旧版(以下、『旧版』)」と「講談社文庫新装改訂版(以下、『改訂版』)」との違いについてもちょっとだけ触れさせてください。迂遠で申し訳ない!
これまた上の情報にあります通り、原作小説『十角館の殺人』として2024年現在に講談社文庫から発行されているのは、2007年10月からリニューアルされた改訂版なのですが、それまでは1987~91年に講談社ノベルス版、そして1991~2007年に旧版が長らく販売されていました。そのため、今でも古本屋にいけば旧版は簡単に見つかるのではないかと思われるのですが、「新装」だけでなく「改訂」と銘打たれている以上、現行の改訂版には、中坊時代の私が馴れ親しんだ旧版とは違うなにかしらの変更があるはずですので、まずそこの差異をしっかり見極めてみることにしましょう。めんどくさいな~、そういうとこ気になる性分はよう!!
そんでま、家の本棚にあった日焼けしまくりシミつきまくりの旧版と、本屋さんで買って来たピッカピカの改訂版とを見比べてみたのですが、まず旧版が総ページ数「375(うち本文366)」で、改訂版が総ページ数「497(うち本文453)」ということで、改訂版の方が旧版の1.2~3倍ボリュームアップしています。でも、これは本を開けば一目瞭然なのですが、昨今の超高齢社会の余波なのか、改訂版の文章の文字が旧版のそれの1.5倍くらい大きく見やすくなっていますので、別に改訂版で決定的に内容が増量したということではなさそうです。でも、やっぱ私は旧版の文字の小ささが大好きだなぁ~。あと、それぞれの表紙イラストについても、いかにもおどろおどろしい雰囲気のある改訂版の喜国雅彦さんバージョンもいいのですが、やっぱり意図的に簡素なイラストが逆に不気味な旧版の辰巳四郎さんバージョンの方が好きですね。
そして、実際に内容を読んでみても、綾辻先生ご本人が改訂版あとがきで明言している通り、エピソード数が増減したり、登場人物のキャラクター像のイメージが変わるような描写の変化があるわけでもなさそうでした。内容は、ほぼ一緒!
しかしながら、よく見比べてみると文章の内容を分かりやすくするために、長い段落を改行で分割する、読みにくい漢字にルビを振る、漢字をひらがな表記に改める(例:旧版5ページ4行目「腰掛け」→改訂版7ページ4行目「腰かけ」)、傍点やカッコ書きや読点づけによる重要なワードの強調表現を増やす、修飾表現を簡素にして文章の意味を通りやすくする(例:旧版24ページ7行目「そう云ってヴァンは、玄関ホールの、向かって右隣りのドアを指さした。」→改訂版30ページ15行目「と、ヴァンはドアの一枚を指さした。」)、単語の表記を現代における浸透度にあわせて改める(例:旧版13ページ3行目「トレンチ・コート」→改訂版16ページ13行目「トレンチコート」や旧版15ページ8行目「エムスカ・オルツィ男爵夫人」→改訂版19ページ13行目「バロネス・オルツィ」)、登場人物のセリフを自然な語り口のものに改める(例:旧版17ページ11行目「凄いわ」→改訂版22ページ6行目「凄い凄い」や旧版30ページ16行目「警察では」→改訂版40ページ6行目「警察的には」)などなど、文章の意味を変えない範囲での書き直しはほぼ全ページにわたってくまなくなされています。綾辻先生の几帳面で真摯な姿勢が浮かんでくるようですね!
同時に、これはかの大乱歩がその後半生に行っていた、ポプラ社版の「少年探偵団シリーズ」における自身の過去作品の子ども向けリライト群を彷彿とさせる丁寧さに満ちており、綾辻先生も、ついに日本の推理小説界の次世代を担う子ども達の育成に心血を注ぐ立場になられたのだなぁ、と勝手に感慨深くなってしまうものがあります。ま、大乱歩ご本人がリライトしてたわけじゃないみたいなんですけど、要はそれくらい、改訂版の漢字が少なくなって読みやすくなってるってことなんですよ! お子様でも安心して、十角館で繰り広げられる連続殺人事件の惨劇を楽しむことができます!!
結論……旧版も改訂版もほぼいっしょ。この真理を得るためにめっちゃ手間ひまかかっちゃったよ……でも、何ごとも自分で検証するのがいちばん! エラリイ先輩がなんとおっしゃろうが、靴底すりへらして汗水かきながら調べあげるのが漢の本懐なんでいコンチクショー!!
ハイ、ということでありまして、やっとこさそういった小説版と今回のドラマ版との比較に入っていくわけなのですが、私がざっと観て感じた両者の違いは、簡単にいえば以下の3点になります。
1、コナン&島田ペアの本土サイドのペース調整によるドラマ性のアップ
2、中村千織まわりの描写のボリュームアップによる真犯人の動機の掘り下げ
3、コナンくんのかわいさアップ大作戦
こんな感じでしょうかね。
まずこの3点の検証に入る前に、この『十角館の殺人』という作品が、世界レベルで有名な大傑作なのに、どうしてかれこれ40年近くもずっと映像化されてこなかったのかという点に触れなければならないのですが、それを端的に言ってしまうと、この作品のトリックが、作品の面白さやスリルを保ちながら視覚的に伝えることがかなり難しい種類のものだから! これに尽きると思います。まともに映像化したらトリックの肝が視聴者に最初から丸わかりになってしまうというか、このトリックの効果範囲が、ターゲットのみにかなりギュギュっと焦点を絞ったものになっているので、プロの手品を観客席じゃなくて舞台袖から見てしまっているような台無し感になってしまうんですね。だから長年、映像化が難しかったんだと思うのです。
そして、そこの問題をみごとにクリアしたのが今回のドラマ版なのですが、それはもう、役者さんの演技の工夫にせよカメラワークの巧緻な計算にせよ、その苦労がしのばれる万全たる対策が練られていました。ほんと、あともうちょっと長く映しちゃうとバレてまう!みたいなギリギリのラインでしたよね。
でも、私がそれ以上に感心してしまったのは、今回のドラマ版における「全5話一挙配信」というやや変則的な形式までもが、トリックを活かすための作戦になっていたということ! これにはビックラこきましたよ。第4話を最後まで観てやっと、「あぁ~! これをしたかったからか!!」と膝を打ったと言いますか。
もちろん、その放送形態がどうしてトリックに効いているのかを説明するわけにはいかないのですが、ミステリー小説の映像化として常道な「2~3時間の単発スペシャルドラマか映画」だと原作小説を大幅にカットすることになっちゃうし、かといって時間に余裕のできる「毎週1話ずつ放送の連続ドラマ」にしちゃうとトリックの秘密が維持できないということで、それらのどちらでもない第3の解決策を編み出した制作サイドの執念には、本当に頭が下がる思いです。いやほんと、こんなに幸せな映像化の例なんて、今まで無かったんじゃないですか!?
いや~、私だって別にアメリカねずみ帝国のしもべでもストームトルーパーでもなんでもないのですが、このドラマ版は、ぜひっとも一人でも多くに人に観て欲しいですね!! トリックの衝撃もすごいのですが、制作スタッフの細心の配慮と俳優陣の若々しくも達者な演技合戦がすばらしいですよ。特に、エラリイとポウとヴァンのクライマックスでの異様な推理合戦は迫力たっぷりだったなぁ。エラリイ役の望月歩さんなんて、序盤は典型的ないけすかないスネオキャラかと思っていたのですが、極限状況の中でだんだんと狂気を帯びてくる目つき、煙草の吸い方が最高でしたね! 日本で『バットマン』のジョーカーを演じられるのは、この望月さんかも知れないぞ!!
そういうわけで、とにもかくにもけなす点があんまり見つからないドラマ版なのですが、字数もかさんできましたので、先ほど挙げた3つの映像化にあたっての変更ポイントに触れて、おしまいにしたいと思います。ほめるべき点は他にも山ほどあるんですけどね。
1、に関しては、原作小説にかなり忠実に進んできていたドラマ版の中でも珍しく明確に原作と違っている変更点として、原作では物語が始まって「四日目」にコナン&島田の本土チームがたどり着いていた「青屋敷全焼事件」の真相が、ドラマ版では一日遅れて「五日目」になっているというアレンジがありました。
これはおそらく、原作通りに本土チームが、十角館チームよりもはやめに中村青司の生死に関する推理の結論を出してしまうと、五日目の時点でもそこらへんであーだこーだと議論している十角館チームとの緊迫感のつり合いが取れなくなるという部分をウィークポイントと考えた制作スタッフが、物語としてのバランスを考えてわざと一日遅らせたのではないでしょうか。
そして、本土チームを遅らせるために今回のドラマ版で制作スタッフがオリジナルに創案したのが、2、のポイント、すなはち中村千織の生前の姿を本土チームが実地に調査して、千織の肉親に関する疑惑を強くさせるという流れだったのでしょう。これで約一日分の時間が稼げました。うまいもんですねぇ。
また、原作小説を読んでいくと、果たして真犯人がそこまで恨みに思う程、本当に千織が「殺害」されていたのか?というあたりの真実がわざとぼかされているので、真犯人が真剣に千織の復讐だけを動機としていたのか? それとも、もともと自分の計画した完全犯罪を実現させることに愉快犯的な興味を持つ狂気をはらんでいて、千織の死がその最後のトリガーとなっただけだったのか? そこらへんがはっきりしない振れ幅のある人物造形となっていました。その反面、ドラマ版では真犯人と河南との両面から、人間としてのあたたかみを持った中村千織の姿が浮き彫りになったため、あくまで復讐を主目的として今回の犯行に至った真犯人への同情性というか、悲劇性がけっこう感情的に強調される効果があったと感じました。
ただ、今回のドラマ化で真犯人の「頭の中」での想像として、千織の死に際した面々の憎々しげな表情こそ映像化されてはいましたが、本当に彼らがそんなことを妄想して「アハハ☆」「ウフフ♡」と嗤っていたのかどうかは、ちょっと疑問ですよね。あそこのシーンだけ妙に浮いている「バカバカしさ」があるところに、それを事実だと無理やり自分に思いこませて凶行に走った真犯人の「論理のヒビ」が見えたような気がして、そういう意味でも、ドラマ版のオリジナル部分は雄弁に原作小説の世界を補強する妙手になっていたと見ました。真犯人も、だいぶ青くてあやうい人なんですよね。
ちなみになんですが、もう一つのドラマ版の英断として、原作小説では五日目の十角館チーム内での、互いに生き残った者が真犯人なのではないかという疑心暗鬼におちいる凄惨な論戦の中で、あまりにも唐突に2人の登場人物の家族に殺人や犯罪にからんだ経歴があると告発される一幕があるのですが、ドラマ版ではそのくだりはきれいさっぱりカットされています。
いいですねぇ、そこらへんのドライな割り切り方! 原作に書いてあるからと言ってなんでもかんでも盲目的に映像化するのではなく、ちゃんと各個の要素が「独立した映像作品」の完成度に貢献するのかどうかをしっかり吟味している制作スタッフ陣のプロフェッショナルな姿勢を見るようで、とっても感じ入りました。
そんな……ねぇ! 身内に事件に巻き込まれている人がそうそうわんさかいてたまるかって。まぁ、出身高校が私立不動高校だったら、話は別ですけどね。
ポイントの3、に関しては、もうドラマ版を観ていただくより他にないのですが、コナン役の奥智哉くんが、んまぁ~かわいいことかわいいこと。
今回のドラマ版は、主要キャストが大学生ということもあって男女問わず若い俳優さんがたで固められているのですが、特に推理研の男子の面々の演技が非常に上手ですばらしいです。年上の紳士淑女チームも、島田潔役の青木さんはもちろんのこと、東京03の角田さんも達者だし、あんなチョイ役なのに草刈民代さんが出ているという不思議なゴージャス感もステキでした。でも、やっぱり今作の MVPは望月・鈴木・小林の3トップかなぁ。日本俳優界の未来は明るいですね!
そんな中での智哉君なのですが、演技が非常にたどたどしいんです! 周りが上手な人ばっかりなだけに、余計につたなく見えてしまうのですが、そこがまた、血なまぐさ過ぎる今作の中での一服の清涼剤というか、貴重なオアシス、癒しの存在になっているんですね。おまけにゃドラマオリジナルで、最終話のあそこで独自の珍推理を披露するという迷ワトスンっぷり! やってくれましたね~。
原作小説のコナンは、真犯人にいいように踊らされてしまう The・狂言回しという感じで、いまひとつ個性が見えてこない弱さもあったのですが、そこに「プリティさ」を加えたことで、みごとな愛すべきピュアさとバカっぽさをたたえた名キャラクターになっていたような気がします。
奥智哉さんがいるなら、「館シリーズ」はぜひとも続いてほしいなぁ! 島田潔の役は正直、金田一耕助パターンでどの俳優さんが演じてもいいような気がするのですが、奥智哉のコナンだけは絶対に続投してほしい!
……とまぁ、いつものごとくとっちらかった内容のまま、今回の記事もお開きとあいなるのですが、ドラマ版『十角館の殺人』、ホントにおすすめです!! 原作小説を未読の方も既読の方も、ぜひとも小説を片手に楽しんでいただきたい奇跡のエンタテインメントですよ! だまされたと思って、思い切って huluに加入してみては、いかが!?
あ、そうそう、最後にひとつだけ。
ドラマ版におけるアガサの「聖子ちゃんカット」は、令和だからこそ通じる虚構であり、制作スタッフがわざと仕掛けた昭和幻想の罠だから、気をつけよう!!
セミロングの頭髪にボリュームのあるレイヤーカットを盛り込んだいわゆる「聖子ちゃんカット」を、名前の由来となったアイドルの松田聖子さんが実際にしていたのは1980~81年のことで、もちろんその後もしばらく聖子ちゃんカットを模倣する流行は広がってはいたものの、『十角館の殺人』の物語の舞台となる1986年ごろにはブームも下火になっており、85年にデビューした中山美穂さんや86年デビューの西村知美さんあたりはアイドルとしてのゲンをかつぐ意味合いで聖子ちゃんカットをしてはいたものの、アガサのように特に芸能界デビューを目指しているわけでもない一般女性が聖子ちゃんカットなのは、当時ほんとにやってたら、周囲からはちょっと奇異に見られていたのではないかと思われます。80年代当時は、「オタサーの姫」なんていう特異結界は無かったはずですしね。
やっぱり、原作小説の通りにアガサはソフトソバージュ(松田聖子さんも当時やっていたそうです)をしているのが自然なわけなのですが、そこはドラマ作品としての華を優先して、ちょっとしたウソを入れた、という感じでしょうか。
まぁ、原作小説だとエラリイはメガネをかけているし、ポウはヒゲもじゃだし、カーはしゃくれてますからね。
でも、そういうウソもつけるくらいに、80年代も遠い昔になっちゃったってことなんですなぁ。
でもさでもさ! そこまで忠実に80年代を再現するんだったら、本土ペアがやいのやいの推理談義する喫茶店のテーブルに置いてあった「ルーレット式星占いおみくじ器」も、邪魔だってくらいにバカでかいタイプにして欲しかったし、最終話で一瞬映るワイドショーレポーターの TV中継放送でも、レポーターを押しのけて「ピース!ピース!!」ってカメラに殺到する野球帽のガキどももちゃんと映像化してほしかったぞ!!
嗚呼、げに昭和は遠くなりにけりィイイ。
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