突然失礼しま~っす!! 海外 TVドラマシリーズ『刑事コロンボ』とは!
※参考文献『別冊宝島 刑事コロンボ完全捜査記録』(監修・町田暁雄 2006年 宝島社)
『刑事コロンボ』(けいじコロンボ 原題: Columbo)は、アメリカ合衆国で制作・放映されていたサスペンス TVドラマシリーズである。全69話。
日本においては、アメリカ本国の NBCで1968~78年に放送された45作は『刑事コロンボ』、ABC で1989~2003年に放送された24作は『新・刑事コロンボ』の邦題で放映された。制作はユニヴァーサル映画。原作・原案は推理小説家で脚本家のリチャード=レヴィンソン(1934~87年)とウィリアム=リンク(1933~2020年)。
犯罪者を主人公とする倒叙ものミステリーの形式を一貫しており、特に日本においては TVドラマ『古畑任三郎』シリーズ(作・三谷幸喜 1994~2006年放送 全40話)と並んで倒叙ものミステリードラマの代表作と称されることが多い。
『刑事コロンボ』の原形は、アメリカのミステリー小説誌『アルフレッド・ヒッチコック・ミステリー・マガジン』1960年3月号に掲載されたレヴィンソンとリンクによる犯罪小説『愛しい死体』(原題:May I come in?、掲載時は Dear Corpus Delicti)である。この作品にコロンボ警部は登場しないが、登場するニューヨーク市警のフィッシャー警部に後のコロンボ警部を予感することができ、本作は『刑事コロンボ』の第1話『殺人処方箋』に発展していく。
レヴィンソンとリンクは、犯罪小説だった『愛しい死体』を倒叙ものミステリーにすると共に犯人と探偵との対決物語へと改作し、ミステリー TVドラマシリーズ『シボレー・ミステリー・ショー』内で1960年7月31日に放送されたエピソード『 Enough Rope』とした。
この作品に探偵を登場させるにあたり、レヴィンソンとリンクはフョードル=ドストエフスキーの長編小説『罪と罰』(1866年)に出てくる、見た目は冴えないが推理や心理テクニックを駆使して主人公の殺人者ラスコーリニコフを追い詰めていく有能なポルフィーリ=ペトローヴィチ予審判事を参考に、コロンボ警部というキャラクターを創造した。『 Enough Rope』でコロンボ警部を演じたのはバート=フリード(当時40歳)だったが、フリードにとっては数多く演じた刑事役の中の一つに過ぎなかった。
しかし、演劇ファンであり劇作家になることも夢見ていたレヴィンソンとリンクは『 Enough Rope』をボリュームアップさせ再構築し、戯曲『殺人処方箋』(原題Prescription : Murder)を書きあげた。この舞台公演はコロンボ警部役をトーマス=ミッチェル(当時70歳)、犯人の精神科医役をジョゼフ・コットン(当時57歳)といった豪華キャストで、サンフランシスコを皮切りに25週にわたってアメリカ・カナダ2ヶ国ツアーが行われ大成功となった。この舞台での主役は犯人役のコットンであったが、それを上回る喝采をミッチェルが受け、観客にとってコロンボ警部が真の主役であることの証左となった。後にコロンボ警部のトレードマークの1つとなるレインコートはまだ使用されておらず、初代フリードは薄手のトップコートを、2代目ミッチェルは厚手のオーバーコートを着ていた。また、舞台版は後の TVシリーズとは異なりニューヨークを舞台としている。ただし、「あと1つだけ」、「うちのカミさんがね」、「あたしたちはプロ、犯人は所詮素人」といった、TVシリーズでのコロンボ警部の名セリフとなるような言葉はすでに舞台版の脚本に記されており、犯人とコロンボ警部の緊迫したやり取りもあるなど、コロンボ警部の造形は舞台版で明確になったと言える。
しかしながら、2代目コロンボ警部を好演したミッチェルは体調不良のために舞台を途中降板し、その直後の1962年12月に世を去ってしまう。レヴィンソンとリンクはミッチェルに代わる俳優を探し、映画『ポケット一杯の幸福』(1961年)でミッチェルと共演したことのある「目つきのよくない怪優」ピーター=フォーク(当時40歳)を3代目のコロンボ警部役に起用し、舞台版の脚本をさらにひねり、1968年2月に再び TV版単発ドラマをシリーズ化に向けたパイロット作『殺人処方箋』として製作した。これがフォークにとって初めての本格的な刑事ドラマ主演となった。
本シリーズは独特のテンポで進むストーリーで、知的で社会的地位も高い犯人が完全犯罪を目論むも、一見愚鈍で無能そうなコロンボ警部にアリバイを突き崩され、自ら破滅の道を転落する必罰的展開ながらも、コロンボ警部と犯人との駆引き、静かにしかし確実に追い詰められて行く犯人の内面の葛藤・焦りといった感情描写や、コロンボ警部のユーモラスなセリフ回しなど、そのいずれもが味わいのある1話完結形式のミステリードラマとなっている。
また本シリーズは、冒頭で完全犯罪を企む犯人の周到な犯行を視聴者に見せた後、隙のなさそうに見える犯人が見落としたほんのわずかな手がかりを元にして、コロンボ警部が犯行を突き止めていく倒叙ものミステリーとなっている。これはもともと原形となった『愛しい死体』が犯人が主役とした犯罪小説であったものを舞台化するにあたって、主人公の犯人と追い詰める探偵との対立構図に再編したためである。
原作者のレヴィンソンとリンクは自著にて、本シリーズが倒叙ものミステリー小説の創始者であるイギリスの推理小説作家オースティン=フリーマン(著書に「ソーンダイク博士」シリーズなど)の影響を受けていることを認めると共に、倒叙もの形式が TVドラマと相性が良いことを『殺人処方箋』の制作を経て直観したと語っている。
コロンボ警部について
コロンボは、アメリカ合衆国カリフォルニア州のロサンゼルス市警察殺人課に所属する警察官であり、階級は「 Lieutenant(ルテナント)」である。ただし、殺人事件が発覚していない時点(行方不明など)で捜査に加わることもある。
「lieutenant」を日本語に訳す場合、一般的には「警部補」とすることが多いが、実際のアメリカの警察制度では、lieutenantの一階級上の「 captain(警部)」が分署長や本部の課長などを務めることが多い。そのため lieutenant はそれに次ぐ階級として、署長(もしくは実動部隊の長)の「副官、代行」であるとともに、場合によっては署長職を務めることもあり、日本の警察での「警視」に相当する役割をも担っている。また、lieutenantの下の階級の「 sergeant(巡査部長)」でも警察署の係や課、警察署全体の当直シフトなどを監督・指揮できる階級となっている。コロンボは一定の権限を与えられた捜査責任者(警察を代表して犯人と対決することができる)という立場だが、単身で現れることが多く部下を指揮するような描写も少ない。
シリーズを通して劇中でコロンボのファーストネームが語られたことは一度もなく、コロンボも名前を尋ねられた際、「私を名前で呼ぶのはカミさんだけです。」と答えている。しかし第5話と第35話でコロンボの警察バッジケースがクローズアップされる場面があり、それには「 Frank Columbo」と記されている。
安っぽくよれよれのワイシャツとネクタイに、裏地がなく防寒着としては役立たないレインコート、安い葉巻、櫛の通っていないボサボサの髪の毛と斜視による藪睨み、猫背が特徴でまったく冴えない風貌の人物である。しかしその風貌こそが、コロンボの優れた知性を隠して犯人の油断を誘う重要な武器となっている。
口癖は「 Just one more thing(あと1つだけ)」や、「My wife(うちのカミさんがね)」。頻繁に妻や親戚の話を口にする。イタリア系でイタリア語が話せる(第34、42、59話)が、話せないという設定の回もある(第65話)。
射撃技術は不得手で拳銃は携帯しない。半年ごとに行う射撃訓練に10年も行っておらず警察本部から警告されたことがある。銃の発砲音が苦手らしく、やむを得ず発砲する必要がある時は耳を塞いで撃つ(第30話『ビデオテープの証言』)。またホールドアップの必要がある場面でも、実際には撃たずに突き付けるだけで済ませていた(第64話『死を呼ぶジグソー』)。
刑事になる前は軍隊におり朝鮮戦争(1950~53年)に従軍した経験があるが、前線には出ず炊事当番をしていたと話している。
怖がりで解剖や手術、残酷な殺人現場の写真を見ることを好まない(第13、15話)が、嘔吐したり気を失うなどといったことは全くなく、被害者の生死が係っている状況では怖がる様子は見せない。首が切断された死体がある現場でも、死体を見ないようにしながら現場検証をこなしている(第46話『汚れた超能力』)。
運動は苦手で泳げない。高い所が苦手らしく、ケーブルカーに乗った際には一言も言葉を発しなかったり(第8話『死の方程式』)、捜査のため致し方なく航空機に搭乗した後は落ち着いて降りるまでに相当な時間を要していた(第2話『死者の身代金』)。乗船時に船酔いをしていたことがある(第5話『ホリスター将軍のコレクション』)。しかしゴルフではプロ級のスウィングでホールインワンを決め(第4話『指輪の爪あと』)、ダーツでは3投目に中央のブルに命中させている(第45話『策謀の結末』)。ビー玉などを狙って当てるのが幼い頃から得意である(第13話『ロンドンの傘』)。
葉巻をふかす時、ライターやマッチは大抵誰かに借りている。葉巻はシガーカッターで切ったものより噛みちぎったものの方が好みである。
好きな料理はチリコンカンとコーヒー。コーヒーは熱いのが好みで、ぬるくなると文句を言う。
「料理はまったくだめ」と言いながらも料理を手際よく調理することができ(第3話『構想の死角』)、仔牛料理を料理研究家に振舞った際にはその腕前と才能を高く評価されている(第42話『美食の報酬』)。料理に関する知識も豊富で、自宅ではもっぱら妻に代わって台所で料理を担当しているらしい。
趣味はリメリック(五行戯詩)、西部劇、クラシック音楽(イタリアオペラ、シュトラウス2世のワルツなど)、ゴルフ、ボウリング、フットボールの TV観戦。絵画にも精通しているようで(演じたフォークも絵画に精通している)、飾ってある絵画の価値を一目見ただけで把握したこともある。またビリヤードが得意である。
逮捕した犯人にワインをふるまったり(第19話『別れのワイン』)、音楽をかけて慰めの言葉をかけたりする(第24話『白鳥の歌』)など、犯人に対して温かい心遣いを見せることもある。しかし卑劣な犯人に対しては、普段の控えめな態度を急変させて怒りを露わにすることもある(第15、26話など)。ちなみに日本語吹き替え版ではコロンボが犯人に対して怒鳴るシーンもあるが、原語版でのフォークは低音かつ抑え目のトーンで話していることが多い。
犯行現場に寝ぼけたり、食事を抜かした状態でやって来ては現場にあった被害者の食べかけを勝手に食べたり(第21話『意識の下の映像』)、周囲の人間にコーヒーやオレンジジュース、ちょっとした食べ物を要求することも多い。また、犯行現場を荒らしてしまう癖があり、目覚ましに勝手に現場の水道を使って顔を洗ったり、凶器の鉄棒やパトカーでゆで卵の殻を割ったり、葉巻の灰をじゅうたんの上に落としてしまうなど軽率な行動も多いが、それが結果的に犯罪を暴くきっかけになる場合も多い。
酒と高級なつまみが好きで、あちこちでご馳走になったり、現場や容疑者宅に置いてあるものを無断で失敬するが、自分ではめったに買わない。また、あまり金を持ち歩かないので、飲食店などでお金が足らなかった時には小切手で支払いをしたり、警察宛ての請求書を切ってもらうことがしばしばある。
事件が起こっても急いで現場に駆けつけることは少なく、たいていは実況見分があらかた終わってから顔を出す。しかも、自身が注目する以外の物事には大して興味を示さず、現場保存にも執着せず、火の点いた葉巻をくわえながら自分なりの検分を行う。
署内でのコロンボは相当な信頼と名声があるのか、同じ課に勤務する新人刑事から尊敬されているほか、事故として処理されかけている事件を上司に掛け合って殺人事件に切り替えて再捜査したり、警察とつながりのある社会的地位が高い人物の恫喝にも飄々と対応している。
捜査方法は、整合性のない事柄に関して容疑者や関係者に事細かにしらみ潰しに当たり、時間や場所に関係なく職務質問するという極めて古典的なもので、その場でアリバイが立証されて一応納得するようなことがあっても、事実が判明するまでは幾度も同じ捜査を繰り返す。また聞き込みでは、相手の地位に関係なくへりくだった態度で妻の話などの雑談を振っておいてから、「形式的な捜査なので……」や「報告書に書くためだけです。」などと職務質問に入るパターンが恒例となっている。
状況証拠と証言だけでの真相解明を目指さず、守秘義務に関係なく捜査状況を容疑者本人に逐一報告することで感情の機微や証言の小さな差異をあぶり出し、それらを手がかりに矛盾点を突きつけ焦らせて心理的誤誘導するなどし、最終的には理詰めで追い込んで犯行を認めさせるという捜査方法を多々用いる。知能指数が高く、世界で2% の高IQ な人物しか加入できない「シグマ協会」(モデルはメンサ)のメンバーである犯人は、コロンボの知能指数をテストした際に「あなたは警察に置いておくには惜しい。」と賛辞している(第40話『殺しの序曲』)。その一方で、犯罪捜査においては運が必要だと話している(第56話『殺人講義』)。
お金が好きだといい、少ない情報で税や収入などの複雑な計算が瞬時にできる(第10話『黒のエチュード』)。
非常に粘り強い捜査が持ち味となっており、最長の捜査期間は9年4か月だったと語っている(第62話『恋におちたコロンボ』)。
本人によれば、新シリーズの時点で22年警察官を勤めている(第54話『華麗なる罠』)と言うが、これは第1話『殺人処方箋』の初回放送日が該当話の22年前(1968年2月)であることにちなんだネタであると思われる。
コロンボが着ているよれよれの背広服とレインコートのスタイルはフォークが作り上げたものであり、どちらも彼の私物である。乾燥して降雨が少ないロサンゼルスではレインコートはほとんど普及していないが、フォークは「コロンボに強烈な個性と独特なキャラクターをもたせたかった。そこで、カリフォルニアでレインコートを着せることにした。」と語っている。
コロンボは通常、相棒を持たず単独で捜査にあたる。しかし本物の刑事はパートナーと組んで捜査することもあり、エピソードによっては協力して捜査にあたる相棒が登場する。第11話『悪の温室』では、警察大学(入学前に殺人課に1年在籍する)を出たてのフレデリック=ウィルソン刑事(演・ボブ=ディシー)が登場した。フレディ刑事は警察大学で科学捜査を学び新しい捜査技術に明るく、丹念に事件の裏付けをたどって真相に行き着くコロンボとは対照的であり、「あの人とは捜査の仕方が違う。」と批判的な態度をとることもあったが、第36話『魔術師の幻想』に再登場した時には「また警部とご一緒できて光栄です。」と慕っている。
また、同じ殺人課に配属されてコロンボの担当する事件のサポートをしていると思われる刑事として、第28話『祝砲の挽歌』のほか第31、34、37、52、65話に登場するジョージ=クレイマー刑事(演・ブルース=カービィ)がいる(ただし第65話ではブリンドル刑事という役名)。クレイマー刑事は常識的な捜査を行うが、コロンボの突飛な推理と単独捜査に面食らう描写が多い。なお、演じたカービィは『秒読みの殺人』で別の役(テレビの修理屋)としても登場している。
コロンボは捜査中によく「my wife」もしくは「Mrs. Columbo」(日本語版では「カミさん」)の存在を引き合いに出す。しかし画面に登場したことは一度も無い。第53話『かみさんよ、安らかに』でコロンボと共に女性の写真が並んでいるシーンがあるが、コロンボによると写真の人物はカミさん本人ではなく、カミさんによく似た姉妹だった。
コロンボの子に関しては、妻と同じくセリフ中でのみ登場する。第19話『別れのワイン』や第23話『愛情の計算』で子どもが複数いることがわかるが、第53話『かみさんよ、安らかに』では「私たちには子どもはいないけどね(犬がいるので幸せだよ)。」と話している。
コロンボは、甥や姪などの親族の話もよく引き合いに出す。シリーズを通して、コロンボが相手に揺さぶりをかけるために事件の核心に迫る際に話すだけで実際には登場しないことがほとんどであるが、コロンボの姉メアリーの息子で両親はすでに亡くなっているという甥のアンディ刑事(第60話『初夜に消えた花嫁』)だけが作中に登場している。
具体的には妻の弟ジョージ(第14話『偶像のレクイエム』)、コロンボと甥と何人かの親族が写る数枚の写真(第25話『権力の墓穴』)、サンディエゴの水族館に勤める甥(第69話『殺意のナイトクラブ』)などの言及がある。
コロンボはバセットハウンドの犬を飼っているが、これは実際に当時のフォークのペットであった。犬種はバセットハウンド。名前は、コロンボがあれこれ考えたものの良い名前が思い浮かばず「 dog」(日本語吹き替え版では「ワン公」)となり、最後まで名前が決まることはなかった。第10、16、23、30、32、36、41、43、44話に登場。
なお、最初に出演していた犬はシリーズの途中で亡くなったため、以降は代々、初代に似た犬を起用している。
コロンボの私有車として、くたびれたフランス製小型乗用車の1959年式プジョー403カブリオレ(オープンカータイプ)がしばしば登場し、彼のライフスタイルを物語る小道具となっている。ピーター=フォークの自伝によれば、シリーズの撮影中に自らがコロンボの自家用車のチョイスを任されたが、自宅ガレージの隅にあった色褪せているうえにパンクしていたプジョー403を直感的に選んだという。
この車種は TVシリーズの初放映時点ですでに10年以上経過した旧式モデルであった。塗装もところどころまだらになっており、プジョーは作中でしばしば不調を起こし、あまりに散々な見てくれに周囲からはスクラップ扱いされる体たらくであったが、コロンボはさして意に介する様子もなく、自らの足として愛用し続けた。
1989年に新シリーズが再開された時点では、旧シリーズで使用していたプジョー403はすでに売却されていたが、改めてプジョー403を3台購入して撮影に使用した。そのため旧シリーズの車体の色が灰色だったのに対し、新シリーズは白に近い薄い灰色になり、最終エピソードとなった第69話のみ水色になっている。
シガレットライターに繋ぐ形式のパトランプを積んでいるが、シガレットライターが壊れているため作中では一度も使用されたことがない。ほとんどの場合ソフトトップをつけたまま乗車しているが、第7話『もう一つの鍵』などの数話で屋根を開けた姿を見せている。
第43話『秒読みの殺人』の冒頭で衝突事故を起こしてしまい車両後部が大きく破損している。これは旧シリーズの最終第45話『策謀の結末』でも直っておらず、ボディ後部に歪みが残っていた。
日本で一般に『刑事コロンボのテーマ』として知られている曲は、『刑事コロンボ』を含む4作の TVドラマシリーズをローテーション放送していた『 NBCミステリー・ムービー』のテーマ曲である(原題:Mystery Movie Theme 作曲・ヘンリー=マンシーニ)。しかし NHKでの放送時にこの曲がオープニングとエンディングで流されたため、『刑事コロンボのテーマ』として定着した。
もうひとつの「コロンボのテーマ」と呼ばれる曲は、アメリカの古い歌『 This Old Man』で、劇中でコロンボが頻繁に口笛を吹いたり口ずさんだりしており、『死者のメッセージ』などでピアノを弾く場面もあった。
日本語吹き替え版でのコロンボ警部の声は、旧シリーズでは小池朝雄(吹き替え当時41~47歳)が担当した。しかし小池が1985年に死去したため、新シリーズには石田太郎(吹き替え当時49~67歳)が起用された。第67話以降の最終3話は WOWOWで日本初放映されたため、地上波で石田が吹き替えたものの他に銀河万丈(吹き替え当時50~55歳)が吹き替えた WOWWOW版が存在する。例外的に最終第69話は WOWOWの銀河版しか存在しなかったが、2011年6月23日に死去したコロンボ役のピーター=フォーク追悼の意を込め、ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメントジャパンから2011年12月2日に HDリマスター版全69話を収録したBlu-ray BOX『刑事コロンボ コンプリート・ブルーレイBOX』が発売された際に、石田による吹き替え版が新録されている。
小池朝雄は、当時舞台俳優として実力を広く認められていたものの、映画、テレビに出演した際の役柄は悪役が大部分(それも類型的な悪役よりは異常性や残虐さを強調した役)であり、かなり思い切った起用であった。しかし結果として小池の独得のセリフ回しは大きな人気を集め、一躍その名がお茶の間に知られることとなった。
小池の没後に放送された新シリーズでは石田太郎が2代目に抜擢されたが、日本テレビが番組を買い付けてから石田に決まるまでに2年近くの時間を要し、放送決定後に10名の候補者を絞り込んだ上で石田に決まったという。当時、日本語吹き替え版の制作スタッフだった吉田啓介によると、石田の登板は早くから持ち上がっており(小池の持ち役だったジーン=ハックマンの吹き替えを石田が引き継いでいた)、結局は視聴者に馴染みのある小池のイメージに寄せる方針で石田に落ち着いた。小池に雰囲気が似ているという制作側の希望条件に沿ってコロンボ役を継いだ石田は、イメージを壊さないようにとの要請に苦労したという。
日本語吹き替え版は、コロンボのセリフの独特なニュアンスを生かした額田やえ子の翻訳(「うちのカミさんがね……」の口癖が有名)に、コロンボのキャラクターと小池の吹き替えのハマリ具合が重り、洋画が吹き替えによって作品の魅力を高めることに成功した代表例となった。
『刑事コロンボ』シリーズ
1968年パイロット放送版(1968年2月20日放送)98分
第1話『殺人処方箋』( Prescription: Murder)
1971年パイロット放送版(1971年3月1日放送)98分
第2話『死者の身代金』( Ransom for a Dead Man)
第1シーズン(1971年9月~72年2月放送)各話73分
第3話『構想の死角』( Murder by the Book)
第4話『指輪の爪あと』( Death Lends a Hand)
第5話『ホリスター将軍のコレクション』( Dead Weight)
第6話『二枚のドガの絵』( Suitable for Framing)
第7話『もう一つの鍵』( Lady in Waiting)
第8話『死の方程式』( Short Fuse)
第9話『パイル D-3の壁』( Blueprint for Murder)
第2シーズン(1972年9月~73年3月放送)第10・13話のみ98分、それ以外は各話73分
第10話『黒のエチュード』( Etude in Black)
第11話『悪の温室』( The Greenhouse Jungle)
第12話『アリバイのダイヤル』( The Most Crucial Game)
第13話『ロンドンの傘』( Dagger of the Mind)
第14話『偶像のレクイエム』( Requiem for a Falling Star)
第15話『溶ける糸』( A Stitch in Crime)
第16話『断たれた音』( The Most Dangerous Match)
第17話『二つの顔』( Double Shock)
第3シーズン(1973年9月~74年5月放送)第19・20・24・25話は98分、それ以外は各話73分
第18話『毒のある花』( Lovely but Lethal)
第19話『別れのワイン』( Any Old Port in a Storm)
第20話『野望の果て』( Candidate for Crime)
第21話『意識の下の映像』( Double Exposure)
第22話『第三の終章』( Publish or Perish)
第23話『愛情の計算』( Mind Over Mayhem)
第24話『白鳥の歌』( Swan Song)
第25話『権力の墓穴』( A Friend in Deed)
第4シーズン(1974年9月~75年4月放送)第26~29話は98分、第30・31話は73分
第26話『自縛の紐』( An Exercise in Fatality)
第27話『逆転の構図』( Negative Reaction)
第28話『祝砲の挽歌』( By Dawn's Early Light)
第29話『歌声の消えた海』( Troubled Waters)
第30話『ビデオテープの証言』( Playback)
第31話『5時30分の目撃者』( A Deadly State of Mind)
第5シーズン(1975年9月~76年3月放送)第32・34・36・37話は98分、第33・35話は73分
第32話『忘れられたスター』( Forgotten Lady)
第33話『ハッサン・サラーの反逆』( A Case of Immunity)
第34話『仮面の男』( Identity Crisis)
第35話『闘牛士の栄光』( A Matter of Honor)
第36話『魔術師の幻想』( Now You See Him)
第37話『さらば提督』( Last Salute to the Commodore)
第6シーズン(1976年10月~77年3月放送)各話73分
第38話『ルーサン警部の犯罪』( Fade in to Murder)
第39話『黄金のバックル』( Old Fashioned Murder)
第40話『殺しの序曲』( The Bye-Bye Sky High IQ Murder Case)
第7シーズン(1977年11月~78年5月放送)第43・45話は98分、それ以外は各話73分
第41話『死者のメッセージ』( Try and Catch Me)
第42話『美食の報酬』( Murder Under Glass)
第43話『秒読みの殺人』( Make Me a Perfect Murder)
第44話『攻撃命令』( How to Dial a Murder)
第45話『策謀の結末』( The Conspirators)
『新・刑事コロンボ』シリーズ ※全話各98分
第8シーズン(1989年2~5月放送)
第46話『汚れた超能力』( Columbo Goes to the Guillotine)
第47話『狂ったシナリオ』( Murder, Smoke and Shadows)
第48話『幻の娼婦』( Sex and the Married Detective)
第49話『迷子の兵隊』( Grand Deceptions)
第9シーズン(1989年11月~90年5月放送)
第50話『殺意のキャンバス』( Murder, a Self-Portrait)
第51話『だまされたコロンボ』( Columbo Cries Wolf)
第52話『完全犯罪の誤算』( Agenda for Murder)
第53話『かみさんよ、安らかに』( Rest in Peace, Mrs. Columbo)
第54話『華麗なる罠』( Uneasy Lies the Crown)
※スティーヴン=ボチコが1974年5月に執筆した没シナリオを映像化したもの
第55話『マリブビーチ殺人事件』( Murder in Malibu)
第10シーズン(1990年12月~2003年1月放送)※数ヶ月~1年以上に1作放送のペースとなった
第56話『殺人講義』( Columbo Goes to College)
第57話『犯罪警報』( Caution : Murder Can Be Hazardous to Your Health)
第58話『影なき殺人者』( Columbo and the Murder of a Rock Star)
第59話『大当たりの死』( Death Hits the Jackpot)
第60話『初夜に消えた花嫁』( No Time to Die)
※倒叙もの形式でない特殊な回(原作はエド=マクベインの「87分署」シリーズ)
第61話『死者のギャンブル』( A Bird in the Hand...)
第62話『恋におちたコロンボ』( It's All In The Game)
第63話『4時02分の銃声』( Butterfly In Shades Of Grey)
第64話『死を呼ぶジグソー』( Undercover)
※倒叙もの形式でない特殊な回(原作はエド=マクベインの「87分署」シリーズ)
第65話『奇妙な助っ人』( Strange Bedfellows)
第66話『殺意の斬れ味』( A Trace of Murder)
第67話『復讐を抱いて眠れ』( Ashes to Ashes)
第68話『奪われた旋律』( Murder With Too Many Notes)
第69話『殺意のナイトクラブ』( Columbo Likes the Nightlife)
小説版『刑事コロンボ』シリーズ(1988~2003年は二見書房、2006~07年は竹書房より刊行)
小説版については、放映された映像作品から独自に書き起こしたものや、脚本から小説化したものなど形態が多数存在する。そのため映像化された作品と比較して物語の流れやトリックなどに相違点があるものもある。著者名に記載されているレヴィンソンとリンクは原作・原案者として名を貸しているだけである。
オリジナル小説作品(ハードカバーで二見書房から出版された『殺人依頼』以外は全て二見書房文庫)
1、『人形の密室』( A Christmas Killing)アルフレッド=ローレンス 訳・小鷹信光 2001年3月25日
※1972年にアメリカで出版されたオリジナル小説の改題・改訳版(1975年12月に『死のクリスマス』として初訳されていた)
2、『13秒の罠』( The Dean's Death)アルフレッド=ローレンス 訳・三谷茉沙夫 1988年4月25日
※1975年にアメリカで出版されたオリジナル小説の翻訳。のちの映像版第56話『殺人講義』(1990年)と同様の展開がある
3、『サーカス殺人事件』( Roar of the Crowd)ハワード=バーク 訳・小鷹信光 2003年4月25日
※1975年12月に執筆された没シナリオの小説化作品
4、『血文字の罠』( The Helter Skelter Murders)ウイリアム=ハリントン 訳・谷崎晃一 1999年12月25日
※1994年にアメリカで出版されたオリジナル小説の翻訳
5、『歌う死体』( The Last of the Redcoats) 北沢遙子 1995年4月25日
※没シナリオ・シノプシスの小説化作品
6、『殺人依頼』( Match Play for Murder) 小鷹信光 1999年6月2日
※没シノプシス『 Trade for Murder』を元にした小鷹信光によるオリジナル小説
7、『硝子の塔』( The Secret Blueprint)スタンリー=アレン、訳・大妻裕一 2001年8月25日
※アメリカで出版されたオリジナル小説の翻訳
同人誌作品
8、『クエンティン・リーの遺言』( Shooting Script)大倉崇裕 『刑事コロンボ』の日本同人誌『 COLUMBO!COLUMBO!』第1~3号(2004年12月~06年12月)にて連載
※1973年7月にジョゼフ=P=ギリスとブライアン=デ・パルマが執筆した没シナリオの小説化作品
いんや~、これ、ずっとやりたかった記事なのよね! やっと最近になって読書する余裕ができましたので、満を持して始めたいと思います。
そんな感じで、幻の未映像化小説8作のを実際に読んでみての具体的な感想あれこれは、まったじっかい~。
※参考文献『別冊宝島 刑事コロンボ完全捜査記録』(監修・町田暁雄 2006年 宝島社)
『刑事コロンボ』(けいじコロンボ 原題: Columbo)は、アメリカ合衆国で制作・放映されていたサスペンス TVドラマシリーズである。全69話。
日本においては、アメリカ本国の NBCで1968~78年に放送された45作は『刑事コロンボ』、ABC で1989~2003年に放送された24作は『新・刑事コロンボ』の邦題で放映された。制作はユニヴァーサル映画。原作・原案は推理小説家で脚本家のリチャード=レヴィンソン(1934~87年)とウィリアム=リンク(1933~2020年)。
犯罪者を主人公とする倒叙ものミステリーの形式を一貫しており、特に日本においては TVドラマ『古畑任三郎』シリーズ(作・三谷幸喜 1994~2006年放送 全40話)と並んで倒叙ものミステリードラマの代表作と称されることが多い。
『刑事コロンボ』の原形は、アメリカのミステリー小説誌『アルフレッド・ヒッチコック・ミステリー・マガジン』1960年3月号に掲載されたレヴィンソンとリンクによる犯罪小説『愛しい死体』(原題:May I come in?、掲載時は Dear Corpus Delicti)である。この作品にコロンボ警部は登場しないが、登場するニューヨーク市警のフィッシャー警部に後のコロンボ警部を予感することができ、本作は『刑事コロンボ』の第1話『殺人処方箋』に発展していく。
レヴィンソンとリンクは、犯罪小説だった『愛しい死体』を倒叙ものミステリーにすると共に犯人と探偵との対決物語へと改作し、ミステリー TVドラマシリーズ『シボレー・ミステリー・ショー』内で1960年7月31日に放送されたエピソード『 Enough Rope』とした。
この作品に探偵を登場させるにあたり、レヴィンソンとリンクはフョードル=ドストエフスキーの長編小説『罪と罰』(1866年)に出てくる、見た目は冴えないが推理や心理テクニックを駆使して主人公の殺人者ラスコーリニコフを追い詰めていく有能なポルフィーリ=ペトローヴィチ予審判事を参考に、コロンボ警部というキャラクターを創造した。『 Enough Rope』でコロンボ警部を演じたのはバート=フリード(当時40歳)だったが、フリードにとっては数多く演じた刑事役の中の一つに過ぎなかった。
しかし、演劇ファンであり劇作家になることも夢見ていたレヴィンソンとリンクは『 Enough Rope』をボリュームアップさせ再構築し、戯曲『殺人処方箋』(原題Prescription : Murder)を書きあげた。この舞台公演はコロンボ警部役をトーマス=ミッチェル(当時70歳)、犯人の精神科医役をジョゼフ・コットン(当時57歳)といった豪華キャストで、サンフランシスコを皮切りに25週にわたってアメリカ・カナダ2ヶ国ツアーが行われ大成功となった。この舞台での主役は犯人役のコットンであったが、それを上回る喝采をミッチェルが受け、観客にとってコロンボ警部が真の主役であることの証左となった。後にコロンボ警部のトレードマークの1つとなるレインコートはまだ使用されておらず、初代フリードは薄手のトップコートを、2代目ミッチェルは厚手のオーバーコートを着ていた。また、舞台版は後の TVシリーズとは異なりニューヨークを舞台としている。ただし、「あと1つだけ」、「うちのカミさんがね」、「あたしたちはプロ、犯人は所詮素人」といった、TVシリーズでのコロンボ警部の名セリフとなるような言葉はすでに舞台版の脚本に記されており、犯人とコロンボ警部の緊迫したやり取りもあるなど、コロンボ警部の造形は舞台版で明確になったと言える。
しかしながら、2代目コロンボ警部を好演したミッチェルは体調不良のために舞台を途中降板し、その直後の1962年12月に世を去ってしまう。レヴィンソンとリンクはミッチェルに代わる俳優を探し、映画『ポケット一杯の幸福』(1961年)でミッチェルと共演したことのある「目つきのよくない怪優」ピーター=フォーク(当時40歳)を3代目のコロンボ警部役に起用し、舞台版の脚本をさらにひねり、1968年2月に再び TV版単発ドラマをシリーズ化に向けたパイロット作『殺人処方箋』として製作した。これがフォークにとって初めての本格的な刑事ドラマ主演となった。
本シリーズは独特のテンポで進むストーリーで、知的で社会的地位も高い犯人が完全犯罪を目論むも、一見愚鈍で無能そうなコロンボ警部にアリバイを突き崩され、自ら破滅の道を転落する必罰的展開ながらも、コロンボ警部と犯人との駆引き、静かにしかし確実に追い詰められて行く犯人の内面の葛藤・焦りといった感情描写や、コロンボ警部のユーモラスなセリフ回しなど、そのいずれもが味わいのある1話完結形式のミステリードラマとなっている。
また本シリーズは、冒頭で完全犯罪を企む犯人の周到な犯行を視聴者に見せた後、隙のなさそうに見える犯人が見落としたほんのわずかな手がかりを元にして、コロンボ警部が犯行を突き止めていく倒叙ものミステリーとなっている。これはもともと原形となった『愛しい死体』が犯人が主役とした犯罪小説であったものを舞台化するにあたって、主人公の犯人と追い詰める探偵との対立構図に再編したためである。
原作者のレヴィンソンとリンクは自著にて、本シリーズが倒叙ものミステリー小説の創始者であるイギリスの推理小説作家オースティン=フリーマン(著書に「ソーンダイク博士」シリーズなど)の影響を受けていることを認めると共に、倒叙もの形式が TVドラマと相性が良いことを『殺人処方箋』の制作を経て直観したと語っている。
コロンボ警部について
コロンボは、アメリカ合衆国カリフォルニア州のロサンゼルス市警察殺人課に所属する警察官であり、階級は「 Lieutenant(ルテナント)」である。ただし、殺人事件が発覚していない時点(行方不明など)で捜査に加わることもある。
「lieutenant」を日本語に訳す場合、一般的には「警部補」とすることが多いが、実際のアメリカの警察制度では、lieutenantの一階級上の「 captain(警部)」が分署長や本部の課長などを務めることが多い。そのため lieutenant はそれに次ぐ階級として、署長(もしくは実動部隊の長)の「副官、代行」であるとともに、場合によっては署長職を務めることもあり、日本の警察での「警視」に相当する役割をも担っている。また、lieutenantの下の階級の「 sergeant(巡査部長)」でも警察署の係や課、警察署全体の当直シフトなどを監督・指揮できる階級となっている。コロンボは一定の権限を与えられた捜査責任者(警察を代表して犯人と対決することができる)という立場だが、単身で現れることが多く部下を指揮するような描写も少ない。
シリーズを通して劇中でコロンボのファーストネームが語られたことは一度もなく、コロンボも名前を尋ねられた際、「私を名前で呼ぶのはカミさんだけです。」と答えている。しかし第5話と第35話でコロンボの警察バッジケースがクローズアップされる場面があり、それには「 Frank Columbo」と記されている。
安っぽくよれよれのワイシャツとネクタイに、裏地がなく防寒着としては役立たないレインコート、安い葉巻、櫛の通っていないボサボサの髪の毛と斜視による藪睨み、猫背が特徴でまったく冴えない風貌の人物である。しかしその風貌こそが、コロンボの優れた知性を隠して犯人の油断を誘う重要な武器となっている。
口癖は「 Just one more thing(あと1つだけ)」や、「My wife(うちのカミさんがね)」。頻繁に妻や親戚の話を口にする。イタリア系でイタリア語が話せる(第34、42、59話)が、話せないという設定の回もある(第65話)。
射撃技術は不得手で拳銃は携帯しない。半年ごとに行う射撃訓練に10年も行っておらず警察本部から警告されたことがある。銃の発砲音が苦手らしく、やむを得ず発砲する必要がある時は耳を塞いで撃つ(第30話『ビデオテープの証言』)。またホールドアップの必要がある場面でも、実際には撃たずに突き付けるだけで済ませていた(第64話『死を呼ぶジグソー』)。
刑事になる前は軍隊におり朝鮮戦争(1950~53年)に従軍した経験があるが、前線には出ず炊事当番をしていたと話している。
怖がりで解剖や手術、残酷な殺人現場の写真を見ることを好まない(第13、15話)が、嘔吐したり気を失うなどといったことは全くなく、被害者の生死が係っている状況では怖がる様子は見せない。首が切断された死体がある現場でも、死体を見ないようにしながら現場検証をこなしている(第46話『汚れた超能力』)。
運動は苦手で泳げない。高い所が苦手らしく、ケーブルカーに乗った際には一言も言葉を発しなかったり(第8話『死の方程式』)、捜査のため致し方なく航空機に搭乗した後は落ち着いて降りるまでに相当な時間を要していた(第2話『死者の身代金』)。乗船時に船酔いをしていたことがある(第5話『ホリスター将軍のコレクション』)。しかしゴルフではプロ級のスウィングでホールインワンを決め(第4話『指輪の爪あと』)、ダーツでは3投目に中央のブルに命中させている(第45話『策謀の結末』)。ビー玉などを狙って当てるのが幼い頃から得意である(第13話『ロンドンの傘』)。
葉巻をふかす時、ライターやマッチは大抵誰かに借りている。葉巻はシガーカッターで切ったものより噛みちぎったものの方が好みである。
好きな料理はチリコンカンとコーヒー。コーヒーは熱いのが好みで、ぬるくなると文句を言う。
「料理はまったくだめ」と言いながらも料理を手際よく調理することができ(第3話『構想の死角』)、仔牛料理を料理研究家に振舞った際にはその腕前と才能を高く評価されている(第42話『美食の報酬』)。料理に関する知識も豊富で、自宅ではもっぱら妻に代わって台所で料理を担当しているらしい。
趣味はリメリック(五行戯詩)、西部劇、クラシック音楽(イタリアオペラ、シュトラウス2世のワルツなど)、ゴルフ、ボウリング、フットボールの TV観戦。絵画にも精通しているようで(演じたフォークも絵画に精通している)、飾ってある絵画の価値を一目見ただけで把握したこともある。またビリヤードが得意である。
逮捕した犯人にワインをふるまったり(第19話『別れのワイン』)、音楽をかけて慰めの言葉をかけたりする(第24話『白鳥の歌』)など、犯人に対して温かい心遣いを見せることもある。しかし卑劣な犯人に対しては、普段の控えめな態度を急変させて怒りを露わにすることもある(第15、26話など)。ちなみに日本語吹き替え版ではコロンボが犯人に対して怒鳴るシーンもあるが、原語版でのフォークは低音かつ抑え目のトーンで話していることが多い。
犯行現場に寝ぼけたり、食事を抜かした状態でやって来ては現場にあった被害者の食べかけを勝手に食べたり(第21話『意識の下の映像』)、周囲の人間にコーヒーやオレンジジュース、ちょっとした食べ物を要求することも多い。また、犯行現場を荒らしてしまう癖があり、目覚ましに勝手に現場の水道を使って顔を洗ったり、凶器の鉄棒やパトカーでゆで卵の殻を割ったり、葉巻の灰をじゅうたんの上に落としてしまうなど軽率な行動も多いが、それが結果的に犯罪を暴くきっかけになる場合も多い。
酒と高級なつまみが好きで、あちこちでご馳走になったり、現場や容疑者宅に置いてあるものを無断で失敬するが、自分ではめったに買わない。また、あまり金を持ち歩かないので、飲食店などでお金が足らなかった時には小切手で支払いをしたり、警察宛ての請求書を切ってもらうことがしばしばある。
事件が起こっても急いで現場に駆けつけることは少なく、たいていは実況見分があらかた終わってから顔を出す。しかも、自身が注目する以外の物事には大して興味を示さず、現場保存にも執着せず、火の点いた葉巻をくわえながら自分なりの検分を行う。
署内でのコロンボは相当な信頼と名声があるのか、同じ課に勤務する新人刑事から尊敬されているほか、事故として処理されかけている事件を上司に掛け合って殺人事件に切り替えて再捜査したり、警察とつながりのある社会的地位が高い人物の恫喝にも飄々と対応している。
捜査方法は、整合性のない事柄に関して容疑者や関係者に事細かにしらみ潰しに当たり、時間や場所に関係なく職務質問するという極めて古典的なもので、その場でアリバイが立証されて一応納得するようなことがあっても、事実が判明するまでは幾度も同じ捜査を繰り返す。また聞き込みでは、相手の地位に関係なくへりくだった態度で妻の話などの雑談を振っておいてから、「形式的な捜査なので……」や「報告書に書くためだけです。」などと職務質問に入るパターンが恒例となっている。
状況証拠と証言だけでの真相解明を目指さず、守秘義務に関係なく捜査状況を容疑者本人に逐一報告することで感情の機微や証言の小さな差異をあぶり出し、それらを手がかりに矛盾点を突きつけ焦らせて心理的誤誘導するなどし、最終的には理詰めで追い込んで犯行を認めさせるという捜査方法を多々用いる。知能指数が高く、世界で2% の高IQ な人物しか加入できない「シグマ協会」(モデルはメンサ)のメンバーである犯人は、コロンボの知能指数をテストした際に「あなたは警察に置いておくには惜しい。」と賛辞している(第40話『殺しの序曲』)。その一方で、犯罪捜査においては運が必要だと話している(第56話『殺人講義』)。
お金が好きだといい、少ない情報で税や収入などの複雑な計算が瞬時にできる(第10話『黒のエチュード』)。
非常に粘り強い捜査が持ち味となっており、最長の捜査期間は9年4か月だったと語っている(第62話『恋におちたコロンボ』)。
本人によれば、新シリーズの時点で22年警察官を勤めている(第54話『華麗なる罠』)と言うが、これは第1話『殺人処方箋』の初回放送日が該当話の22年前(1968年2月)であることにちなんだネタであると思われる。
コロンボが着ているよれよれの背広服とレインコートのスタイルはフォークが作り上げたものであり、どちらも彼の私物である。乾燥して降雨が少ないロサンゼルスではレインコートはほとんど普及していないが、フォークは「コロンボに強烈な個性と独特なキャラクターをもたせたかった。そこで、カリフォルニアでレインコートを着せることにした。」と語っている。
コロンボは通常、相棒を持たず単独で捜査にあたる。しかし本物の刑事はパートナーと組んで捜査することもあり、エピソードによっては協力して捜査にあたる相棒が登場する。第11話『悪の温室』では、警察大学(入学前に殺人課に1年在籍する)を出たてのフレデリック=ウィルソン刑事(演・ボブ=ディシー)が登場した。フレディ刑事は警察大学で科学捜査を学び新しい捜査技術に明るく、丹念に事件の裏付けをたどって真相に行き着くコロンボとは対照的であり、「あの人とは捜査の仕方が違う。」と批判的な態度をとることもあったが、第36話『魔術師の幻想』に再登場した時には「また警部とご一緒できて光栄です。」と慕っている。
また、同じ殺人課に配属されてコロンボの担当する事件のサポートをしていると思われる刑事として、第28話『祝砲の挽歌』のほか第31、34、37、52、65話に登場するジョージ=クレイマー刑事(演・ブルース=カービィ)がいる(ただし第65話ではブリンドル刑事という役名)。クレイマー刑事は常識的な捜査を行うが、コロンボの突飛な推理と単独捜査に面食らう描写が多い。なお、演じたカービィは『秒読みの殺人』で別の役(テレビの修理屋)としても登場している。
コロンボは捜査中によく「my wife」もしくは「Mrs. Columbo」(日本語版では「カミさん」)の存在を引き合いに出す。しかし画面に登場したことは一度も無い。第53話『かみさんよ、安らかに』でコロンボと共に女性の写真が並んでいるシーンがあるが、コロンボによると写真の人物はカミさん本人ではなく、カミさんによく似た姉妹だった。
コロンボの子に関しては、妻と同じくセリフ中でのみ登場する。第19話『別れのワイン』や第23話『愛情の計算』で子どもが複数いることがわかるが、第53話『かみさんよ、安らかに』では「私たちには子どもはいないけどね(犬がいるので幸せだよ)。」と話している。
コロンボは、甥や姪などの親族の話もよく引き合いに出す。シリーズを通して、コロンボが相手に揺さぶりをかけるために事件の核心に迫る際に話すだけで実際には登場しないことがほとんどであるが、コロンボの姉メアリーの息子で両親はすでに亡くなっているという甥のアンディ刑事(第60話『初夜に消えた花嫁』)だけが作中に登場している。
具体的には妻の弟ジョージ(第14話『偶像のレクイエム』)、コロンボと甥と何人かの親族が写る数枚の写真(第25話『権力の墓穴』)、サンディエゴの水族館に勤める甥(第69話『殺意のナイトクラブ』)などの言及がある。
コロンボはバセットハウンドの犬を飼っているが、これは実際に当時のフォークのペットであった。犬種はバセットハウンド。名前は、コロンボがあれこれ考えたものの良い名前が思い浮かばず「 dog」(日本語吹き替え版では「ワン公」)となり、最後まで名前が決まることはなかった。第10、16、23、30、32、36、41、43、44話に登場。
なお、最初に出演していた犬はシリーズの途中で亡くなったため、以降は代々、初代に似た犬を起用している。
コロンボの私有車として、くたびれたフランス製小型乗用車の1959年式プジョー403カブリオレ(オープンカータイプ)がしばしば登場し、彼のライフスタイルを物語る小道具となっている。ピーター=フォークの自伝によれば、シリーズの撮影中に自らがコロンボの自家用車のチョイスを任されたが、自宅ガレージの隅にあった色褪せているうえにパンクしていたプジョー403を直感的に選んだという。
この車種は TVシリーズの初放映時点ですでに10年以上経過した旧式モデルであった。塗装もところどころまだらになっており、プジョーは作中でしばしば不調を起こし、あまりに散々な見てくれに周囲からはスクラップ扱いされる体たらくであったが、コロンボはさして意に介する様子もなく、自らの足として愛用し続けた。
1989年に新シリーズが再開された時点では、旧シリーズで使用していたプジョー403はすでに売却されていたが、改めてプジョー403を3台購入して撮影に使用した。そのため旧シリーズの車体の色が灰色だったのに対し、新シリーズは白に近い薄い灰色になり、最終エピソードとなった第69話のみ水色になっている。
シガレットライターに繋ぐ形式のパトランプを積んでいるが、シガレットライターが壊れているため作中では一度も使用されたことがない。ほとんどの場合ソフトトップをつけたまま乗車しているが、第7話『もう一つの鍵』などの数話で屋根を開けた姿を見せている。
第43話『秒読みの殺人』の冒頭で衝突事故を起こしてしまい車両後部が大きく破損している。これは旧シリーズの最終第45話『策謀の結末』でも直っておらず、ボディ後部に歪みが残っていた。
日本で一般に『刑事コロンボのテーマ』として知られている曲は、『刑事コロンボ』を含む4作の TVドラマシリーズをローテーション放送していた『 NBCミステリー・ムービー』のテーマ曲である(原題:Mystery Movie Theme 作曲・ヘンリー=マンシーニ)。しかし NHKでの放送時にこの曲がオープニングとエンディングで流されたため、『刑事コロンボのテーマ』として定着した。
もうひとつの「コロンボのテーマ」と呼ばれる曲は、アメリカの古い歌『 This Old Man』で、劇中でコロンボが頻繁に口笛を吹いたり口ずさんだりしており、『死者のメッセージ』などでピアノを弾く場面もあった。
日本語吹き替え版でのコロンボ警部の声は、旧シリーズでは小池朝雄(吹き替え当時41~47歳)が担当した。しかし小池が1985年に死去したため、新シリーズには石田太郎(吹き替え当時49~67歳)が起用された。第67話以降の最終3話は WOWOWで日本初放映されたため、地上波で石田が吹き替えたものの他に銀河万丈(吹き替え当時50~55歳)が吹き替えた WOWWOW版が存在する。例外的に最終第69話は WOWOWの銀河版しか存在しなかったが、2011年6月23日に死去したコロンボ役のピーター=フォーク追悼の意を込め、ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメントジャパンから2011年12月2日に HDリマスター版全69話を収録したBlu-ray BOX『刑事コロンボ コンプリート・ブルーレイBOX』が発売された際に、石田による吹き替え版が新録されている。
小池朝雄は、当時舞台俳優として実力を広く認められていたものの、映画、テレビに出演した際の役柄は悪役が大部分(それも類型的な悪役よりは異常性や残虐さを強調した役)であり、かなり思い切った起用であった。しかし結果として小池の独得のセリフ回しは大きな人気を集め、一躍その名がお茶の間に知られることとなった。
小池の没後に放送された新シリーズでは石田太郎が2代目に抜擢されたが、日本テレビが番組を買い付けてから石田に決まるまでに2年近くの時間を要し、放送決定後に10名の候補者を絞り込んだ上で石田に決まったという。当時、日本語吹き替え版の制作スタッフだった吉田啓介によると、石田の登板は早くから持ち上がっており(小池の持ち役だったジーン=ハックマンの吹き替えを石田が引き継いでいた)、結局は視聴者に馴染みのある小池のイメージに寄せる方針で石田に落ち着いた。小池に雰囲気が似ているという制作側の希望条件に沿ってコロンボ役を継いだ石田は、イメージを壊さないようにとの要請に苦労したという。
日本語吹き替え版は、コロンボのセリフの独特なニュアンスを生かした額田やえ子の翻訳(「うちのカミさんがね……」の口癖が有名)に、コロンボのキャラクターと小池の吹き替えのハマリ具合が重り、洋画が吹き替えによって作品の魅力を高めることに成功した代表例となった。
『刑事コロンボ』シリーズ
1968年パイロット放送版(1968年2月20日放送)98分
第1話『殺人処方箋』( Prescription: Murder)
1971年パイロット放送版(1971年3月1日放送)98分
第2話『死者の身代金』( Ransom for a Dead Man)
第1シーズン(1971年9月~72年2月放送)各話73分
第3話『構想の死角』( Murder by the Book)
第4話『指輪の爪あと』( Death Lends a Hand)
第5話『ホリスター将軍のコレクション』( Dead Weight)
第6話『二枚のドガの絵』( Suitable for Framing)
第7話『もう一つの鍵』( Lady in Waiting)
第8話『死の方程式』( Short Fuse)
第9話『パイル D-3の壁』( Blueprint for Murder)
第2シーズン(1972年9月~73年3月放送)第10・13話のみ98分、それ以外は各話73分
第10話『黒のエチュード』( Etude in Black)
第11話『悪の温室』( The Greenhouse Jungle)
第12話『アリバイのダイヤル』( The Most Crucial Game)
第13話『ロンドンの傘』( Dagger of the Mind)
第14話『偶像のレクイエム』( Requiem for a Falling Star)
第15話『溶ける糸』( A Stitch in Crime)
第16話『断たれた音』( The Most Dangerous Match)
第17話『二つの顔』( Double Shock)
第3シーズン(1973年9月~74年5月放送)第19・20・24・25話は98分、それ以外は各話73分
第18話『毒のある花』( Lovely but Lethal)
第19話『別れのワイン』( Any Old Port in a Storm)
第20話『野望の果て』( Candidate for Crime)
第21話『意識の下の映像』( Double Exposure)
第22話『第三の終章』( Publish or Perish)
第23話『愛情の計算』( Mind Over Mayhem)
第24話『白鳥の歌』( Swan Song)
第25話『権力の墓穴』( A Friend in Deed)
第4シーズン(1974年9月~75年4月放送)第26~29話は98分、第30・31話は73分
第26話『自縛の紐』( An Exercise in Fatality)
第27話『逆転の構図』( Negative Reaction)
第28話『祝砲の挽歌』( By Dawn's Early Light)
第29話『歌声の消えた海』( Troubled Waters)
第30話『ビデオテープの証言』( Playback)
第31話『5時30分の目撃者』( A Deadly State of Mind)
第5シーズン(1975年9月~76年3月放送)第32・34・36・37話は98分、第33・35話は73分
第32話『忘れられたスター』( Forgotten Lady)
第33話『ハッサン・サラーの反逆』( A Case of Immunity)
第34話『仮面の男』( Identity Crisis)
第35話『闘牛士の栄光』( A Matter of Honor)
第36話『魔術師の幻想』( Now You See Him)
第37話『さらば提督』( Last Salute to the Commodore)
第6シーズン(1976年10月~77年3月放送)各話73分
第38話『ルーサン警部の犯罪』( Fade in to Murder)
第39話『黄金のバックル』( Old Fashioned Murder)
第40話『殺しの序曲』( The Bye-Bye Sky High IQ Murder Case)
第7シーズン(1977年11月~78年5月放送)第43・45話は98分、それ以外は各話73分
第41話『死者のメッセージ』( Try and Catch Me)
第42話『美食の報酬』( Murder Under Glass)
第43話『秒読みの殺人』( Make Me a Perfect Murder)
第44話『攻撃命令』( How to Dial a Murder)
第45話『策謀の結末』( The Conspirators)
『新・刑事コロンボ』シリーズ ※全話各98分
第8シーズン(1989年2~5月放送)
第46話『汚れた超能力』( Columbo Goes to the Guillotine)
第47話『狂ったシナリオ』( Murder, Smoke and Shadows)
第48話『幻の娼婦』( Sex and the Married Detective)
第49話『迷子の兵隊』( Grand Deceptions)
第9シーズン(1989年11月~90年5月放送)
第50話『殺意のキャンバス』( Murder, a Self-Portrait)
第51話『だまされたコロンボ』( Columbo Cries Wolf)
第52話『完全犯罪の誤算』( Agenda for Murder)
第53話『かみさんよ、安らかに』( Rest in Peace, Mrs. Columbo)
第54話『華麗なる罠』( Uneasy Lies the Crown)
※スティーヴン=ボチコが1974年5月に執筆した没シナリオを映像化したもの
第55話『マリブビーチ殺人事件』( Murder in Malibu)
第10シーズン(1990年12月~2003年1月放送)※数ヶ月~1年以上に1作放送のペースとなった
第56話『殺人講義』( Columbo Goes to College)
第57話『犯罪警報』( Caution : Murder Can Be Hazardous to Your Health)
第58話『影なき殺人者』( Columbo and the Murder of a Rock Star)
第59話『大当たりの死』( Death Hits the Jackpot)
第60話『初夜に消えた花嫁』( No Time to Die)
※倒叙もの形式でない特殊な回(原作はエド=マクベインの「87分署」シリーズ)
第61話『死者のギャンブル』( A Bird in the Hand...)
第62話『恋におちたコロンボ』( It's All In The Game)
第63話『4時02分の銃声』( Butterfly In Shades Of Grey)
第64話『死を呼ぶジグソー』( Undercover)
※倒叙もの形式でない特殊な回(原作はエド=マクベインの「87分署」シリーズ)
第65話『奇妙な助っ人』( Strange Bedfellows)
第66話『殺意の斬れ味』( A Trace of Murder)
第67話『復讐を抱いて眠れ』( Ashes to Ashes)
第68話『奪われた旋律』( Murder With Too Many Notes)
第69話『殺意のナイトクラブ』( Columbo Likes the Nightlife)
小説版『刑事コロンボ』シリーズ(1988~2003年は二見書房、2006~07年は竹書房より刊行)
小説版については、放映された映像作品から独自に書き起こしたものや、脚本から小説化したものなど形態が多数存在する。そのため映像化された作品と比較して物語の流れやトリックなどに相違点があるものもある。著者名に記載されているレヴィンソンとリンクは原作・原案者として名を貸しているだけである。
オリジナル小説作品(ハードカバーで二見書房から出版された『殺人依頼』以外は全て二見書房文庫)
1、『人形の密室』( A Christmas Killing)アルフレッド=ローレンス 訳・小鷹信光 2001年3月25日
※1972年にアメリカで出版されたオリジナル小説の改題・改訳版(1975年12月に『死のクリスマス』として初訳されていた)
2、『13秒の罠』( The Dean's Death)アルフレッド=ローレンス 訳・三谷茉沙夫 1988年4月25日
※1975年にアメリカで出版されたオリジナル小説の翻訳。のちの映像版第56話『殺人講義』(1990年)と同様の展開がある
3、『サーカス殺人事件』( Roar of the Crowd)ハワード=バーク 訳・小鷹信光 2003年4月25日
※1975年12月に執筆された没シナリオの小説化作品
4、『血文字の罠』( The Helter Skelter Murders)ウイリアム=ハリントン 訳・谷崎晃一 1999年12月25日
※1994年にアメリカで出版されたオリジナル小説の翻訳
5、『歌う死体』( The Last of the Redcoats) 北沢遙子 1995年4月25日
※没シナリオ・シノプシスの小説化作品
6、『殺人依頼』( Match Play for Murder) 小鷹信光 1999年6月2日
※没シノプシス『 Trade for Murder』を元にした小鷹信光によるオリジナル小説
7、『硝子の塔』( The Secret Blueprint)スタンリー=アレン、訳・大妻裕一 2001年8月25日
※アメリカで出版されたオリジナル小説の翻訳
同人誌作品
8、『クエンティン・リーの遺言』( Shooting Script)大倉崇裕 『刑事コロンボ』の日本同人誌『 COLUMBO!COLUMBO!』第1~3号(2004年12月~06年12月)にて連載
※1973年7月にジョゼフ=P=ギリスとブライアン=デ・パルマが執筆した没シナリオの小説化作品
いんや~、これ、ずっとやりたかった記事なのよね! やっと最近になって読書する余裕ができましたので、満を持して始めたいと思います。
そんな感じで、幻の未映像化小説8作のを実際に読んでみての具体的な感想あれこれは、まったじっかい~。
初回はもちろん「殺人処方箋」ですっ‼️犯人の愛人の事故死まで偽装して犯人を嵌めちゃうのはちょっと行き過ぎですね、コロンボさん。
これから犯人を追い詰めるコロンボさんのイヤらしさが毎週土曜日に堪能できます。わくわくっ♥️)))。
いや~待ってました、『刑事コロンボ』シリーズの NHK-BS再放送! 本当にうれしいですね。
ブログ記事でも申しているように、私は前回の2021年からの再放送をよく観ていたのですが、それでも見落としてしまったエピソードは多かったので、今回も初見に戻ったつもりで楽しんでいきたいと思います! 週末放送っていうのも地味にありがたし!!
『殺人処方箋』は見ての通り、コロンボ警部もだいぶカチッとした外見でパイロット版的味わいの作品なわけですが、ちょっと後続作品での人間くささがウソのような妙にダーティな立ち居振る舞いが、もともと犯人視点のクライムノベルだったという原典のかおりを濃厚に残していますよね。もう、コロンボがほぼ悪役!
今回の本ブログでの企画は、映像化されなかった作品群に焦点を当てているのですが、69作の映像化作品がそうとう熾烈な争いの果てに生き残った勝者であることを雄弁に物語っている「敗者の記録」として、時の砂に埋もれさせてはならないという思いが2割、二見書房文庫なつかし~!!というノスタルジー8割で進めております。
「おヒマならぜひ読んでみて!」とも言えない、古本を探すしかない悲惨な現状がほとんどなのですが、まぁ、まずは聖典たる69エピソードを堪能してまいりましょう。
うう、『影なき殺人者』も聖典あつかいしなきゃならんのか……でもしょうがねっか、シャーロック=ホームズでいう『ライオンのたてがみ』みたいな珍味ということにしておきましょう!!
ジェレミー=ブレット版で『ライオンのたてがみ』が観たかった……いや、ベネディクト=カンバーバッチ版での映像化を私、信じてる!!