濃いピンクの一重梅、佐橋紅 (サバシコウ、さはしこう、
紅梅性)。
緋梅性とするサイトもありますが、
茨城県営都市公園オフィシャルウェブサイト に従っておきます。
同サイトによると、「本紅 (つやのある明るい紅色)、萼はこげ茶色、 花弁が丸くしべが長く、旗弁が多くの花にあらわれる」 とありますが、なるほどしべが長く、花びらの外にまで飛びだしていて印象的です。
ちょっと線香花火のようですね。旗弁はあまり見当たりません。2月11日にすでに満開で、府中郷土の森の中でも八重寒紅とならぶ早咲きでした。
さてこの 「佐橋」 の名がどこから来たか明示する資料はなく、いくつか候補があってこれと断定する
ことができません。
まず、明治時代に狂言作者 佐橋富三郎という人があり、大阪府立中之島図書館所蔵になる絵入根本
(絵入りの台本) の著者として数点見つけることができます。
次に、新潟県小千谷市平成の
慈眼寺のホームページ ”管理人のひとりごと” などによると、
鎌倉時代の三浦の乱 (宝治合戦、1247年=宝治元年) で妻の兄三浦泰村に加担した毛利季光 (すえ
みつ) は戦い敗れその長男、二男、三男とともに頼朝ゆかりの法華堂で自害しましたが、 越後国 「佐橋荘」 (さはしのしょう) にいた四男経光 (つねみつ) だけは生き残りました。毛利季光は鎌倉幕府創業の功臣大江広元の子で、毛利庄を相続して毛利姓を名乗ったもので、また佐橋荘はいま新潟県柏崎市の南部、信越本線の北条 (きたじょう) 駅周辺にあたります。経光は佐橋荘南条と安芸国吉田荘を四男時親に継がせ、それにより時親は毛利元就で知られる安芸毛利家の祖とされているそうです。
毛利元就が越後と縁があるとは知りませんでした。
また佐橋は岐阜県にも多い姓のようで、佐橋滋 (1913~ 1993) は辣腕で知られた通商産業事務次官
でした。
これらのどれが梅の 「佐橋紅」 の名付けの元になったのか、あるいは全く別の謂れがあるのか、ご存知の方はぜひ教えてください。
(東京都府中市 府中郷土の森 090211)
ところで、
ディックの花通信 では 「根岸森林公園の梅林の佐橋紅は鹿児島紅ではないか」 と書いていま
すが、写真を見るとたしかにそのようです。鹿児島紅は色は似ていますが花弁は二重でやや波打っており、佐橋紅のようなきれいな一重の丸型とは違います。しべも花びらの外に飛び出すほど長くはありません。
プレートは必ずしも正確ではないので、気をつけたいですね。
(追伸 2022.04.11)
「雑草」さんから、Amebaブログのウメさんという方が、
「天保年間に旗本、佐橋氏邸の実生に佐橋紅と名付けられたそうです。」と書いておられます。旗本佐橋氏を調べましたら佐橋佳富(さはせよしとみ)が該当するのかなと思いました。」
という情報が寄せられました。Amebaブログのウメさんの記事は1行だけの簡素なもので、詳細は全く分かりませんが、佐橋 佳富(安永5年(1776年) - 没年不明)は江戸時代末期(幕末)の旗本で、天保11年(1840年)4月8日、勘定奉行となっています。
また2010年に tedさんから、「水戸から静岡に移り住んだ先祖のある佐橋さん」のご先祖が佐橋紅を作ったとのことです。」
という情報がありましたが、これも未確認のままになっていました。
もしこれが徳川慶喜が謹慎処分で水戸から駿府(静岡)の宝台院に入ったことを指すなら、それは慶応4年 (明治元年、1868) 7月。茨城県立歴史館HPによると、その時水戸から清水港までの行程の付き人は不明です。
静岡県立中央図書館HP資料によると、
「このとき、旧幕臣たちは新政府に仕えるか農民や商人になるかの道を迫られたが、新政府に仕えることを良しとせず、無禄でも徳川家に従い新領地に移住する道を望んだ者も多かった。しかし縮小された静岡藩に任官できた者はごく一部にすぎない。大部分の者は、江戸の役宅から退去を迫られ、1868(慶応4・明治元)年8月~ 10月頃までの間に、先の見込みがないまま家族共々駿河・遠江に移り住んだ。1871年段階で県内に在住した旧幕臣総数は13,764人余にのぼるので、その家族や従者も含めれば数万人規模の移住が行われたことになる。」
とのことです。この時に佐橋佳富存命なら92才になるので、その子か孫が移住者の中にあっておかしくはありません。それが佐橋紅に結び付くかどうかなんとも言えませんが、Amebaブログのウメさんとtedさんの話は同じである可能性がありそうです。
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