新基準「5年猶予」~原子力規制委が議論せずに提示
公開日: 2013/04/10
原子力規制委員会は10日、原発再稼働の前提となる原発の「新規制基準」の条文案を提示した。防潮堤や免震重要棟などは、今年7月以降の審査申請と同時に義務づけられるが、中央制御室の代替施設である「緊急時制御室」など大規模な設備については、5年間の猶予を与えるとした。明日11日から5月10日まで30日間、パブリックコメントを実施し、新たな規制案を正式に決定する。傍聴した市民からは抗議の声があがった。原発の「新規制基準」は、東京電力福島第1原発事故を受けて、既存の規制基準では不十分であるとの教訓から、原子力規制委員会がより厳しい基準を策定し、7月の施行に向けて議論がされてきた。施行後は、既存の全ての原発に適用させ、基準に達しない原発は、電力会社が改修計画をたて、原子力規制委員会の審査を経て改修工事をし、その後さらに審査を行う再稼働の前提となるもの。基準を満たすには、数年がかかると見込まれていた。しかし、原子力規制委員会は3月19日に、一部の施設設置に5年の猶予期間を設ける方針を提示。また、関西電力大飯原発3、4号機については、同基準の例外とし、9月予定の定期検査終了までは「新規制基準」を適用させずに運転を継続させる方針を示していた。この日「5年猶予」について、原子力規制委員の間で議論されるのではと、傍聴席には70人ほどの市民が詰め掛けた。しかし、委員会では一度も、「5年猶予」の理由や根拠に関する議論がないまま、内容が読み上げられたため、傍聴席からは「なぜ5年猶予なのか説明しろ!」と抗議の声が上がった。また、配布資料で「5年猶予」の箇所が黒塗りになってしまうなど、一部印刷に不備があり、傍聴席からは「黒塗りでわからない!説明してください!」と声が上がった。原子力規制委員会の田中俊一委員長は、会見で印刷の不備を謝罪。「5年猶予」に関しては「基本的な安全対策はできている。さらなるバックアップ対策として、より安全なものを5年の間にやってくださいということ」と説明した。原子力規制委員会の傍聴を続ける「原子力規制を監視する市民の会」は、委員会後、田中俊一委員長と委員宛の「5年猶予」撤回を求める要請書と2933筆の署名を提出た。同会の阪上武さんは、「バックアップ対策だから5年猶予していいというのはおかしい。規制当局が、再稼動に対する便宜を図っている。撤回すべき」と訴えた。今回パブリックコメントに付される条文案などは、1500ペ―ジを上回る量。パブリックコメントの期間がわずか1ヶ月しかないことに対しても、批判が相次いだ。
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