マイナンバーカードと健康保険証を一体化したマイナ保険証の利用促進に向け、政府が利用率を上げた医療機関へ支援金を給付する制度を設けた。いわば報奨金だが普及が進まない原因はトラブルや利点の乏しさにある。カネの力で強引に普及を図るのは筋違いだ。
現行保険証を今年12月に廃止する政府方針にもかかわらず、マイナ保険証の利用率は8カ月連続で減少し、昨年12月には4・29%にまで落ち込んだ。政府は医療機関の消極的姿勢が一因とみて、支援金制度を創設した。
11月までを2期に分け、昨年10月に比べて平均利用率が上がった医院などには申請なしで支援金を支給。5ポイント増えた医療機関には1件当たり20円が診療報酬に上乗せされ、最大120円まで増額される仕組みだ。カード読み取り機=写真=の増設補助も盛り込んだ。
ただ、マイナ保険証の利用率低迷は利点の乏しさや相次ぐシステムの不具合などが原因だ。
厚生労働省が昨年11月、中央社会保険医療協議会に報告した調査ではマイナ保険証による診療や薬剤などの情報を活用した病院は3割弱にとどまり、このうち半数以上が患者の利点について「特にない」「分からない」と答えた。
全国保険医団体連合会の調査では、昨年10月以降も回答した58・4%の医療機関で名前・住所の不表示や窓口負担割合での誤りなどの不具合が起きているという。
医療情報の提供ミスは人命に直接かかわるにもかかわらず、マイナポイントと同様、経済的な利得を与えて普及を促す姿勢は、人命軽視と批判されて当然だ。
支援策に税金から約217億円が投じられる。取得を任意とする原則と矛盾するのではないか。
能登半島地震では大規模な停電や通信障害が発生し、マイナ保険証が災害時に十分機能しない疑問も浮上した。厚労省は被災者が現行、マイナどちらの保険証がなくても医療機関での受診は可能と通知して混乱は避けられたものの、災害時には現行の健康保険証が頼りになるという声は根強い。
政府は安心安全のために現行健康保険証の廃止を撤回すべきだ。
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