生まれる子どもの減少が止まらない。少子化や人口減は社会や経済の活力を奪い、現役世代が支える社会保障制度の維持も危うくする。社会の支え手を増やすための効果的な対策が必要だ。
厚生労働省の人口動態統計(速報値)によると、二〇二一年に生まれた子どもは八十四万二千八百九十七人と前年に比べ三万人ほど少なく、六年連続で過去最少を更新している=グラフ。
少子化傾向が続き、親となる世代の若者が減っていることに加えて、コロナ禍の影響も深刻だ。
出生数は前年に比べて一〜二月の減少が目立つ。新型コロナウイルスの感染が拡大した二〇年春ごろの妊娠が減り、出産を控えた人が少なからずいたのではないか。
将来の出生数を左右する婚姻件数は五十一万四千二百四十二組と前年から約二万組減り、戦後最少となった。婚姻件数の減少は少子化をさらに加速させかねない。
政府はこれまで、保育所の整備や育児休業制度の拡充、長時間労働の是正などさまざまな対策を打ち出してはきた。不妊治療も今月から保険適用の対象を拡大した。しかし、こうした支援策の多くはすでに結婚した人が対象だ。
これから結婚・出産をしたいと考えている人への支援が手薄なままであり、政府や自治体は対策に本腰を入れる必要がある。
婚姻件数の減少が続くのは経済的な理由が大きい。非正規雇用が増加し、雇用が安定しない若者も増えている。正社員も賃金は長らく上がっていない。コロナ禍に伴い、休業や解雇などで収入が減った人もいる。
政府は、非正規の待遇改善など生活不安解消のための対策を強化する必要がある。デジタル分野での職業訓練や、家計に負担の大きい住居費支援も効果的だろう。
二三年度には「こども家庭庁」が発足する。子どもに関する政策を総合的に担う「司令塔」となるには、若者たちが安心して結婚・出産できるよう効果的な対策をいくえにも打ち出し、確実に実行する体制にすることが不可欠だ。さもなければ、少子化に歯止めをかけるのは難しい。
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