東京・明治神宮外苑地区の再開発の見直しを求めて来た東京都議会の議員連盟は11日、記者会見し、都環境影響評価(アセスメント)条例の改正案を開会中の都議会に提案したと発表した。外苑再開発は、有識者や住民らとの対話を拒んだまま、計画を進めてきたとの批判がある。議連は「幅広く有識者らが審議会に出席し、住民意見を取り入れた審議ができるようにする」としている。(森本智之)
◆都議会野党4会派など40人が改正案を共同提案
改正案は野党4会派と無所属、約40人の共同提案。都庁で開かれた記者会見で原田暁都議(共産)は「事業者や都は、学識経験者や専門家の指摘に耳を傾けることなく外苑再開発の手続きを進めてきた。条例を改正し、アセスの手続きを改善したい」と訴えた。
再開発について、国連教育科学文化機関(ユネスコ)諮問機関の国際記念物遺跡会議(イコモス、パリ)が計画撤回を求める緊急要請「ヘリテージ・アラート」を出したほか、日本イコモス国内委員会が環境保全策などの問題点を繰り返し指摘し対話を求めたが、事業者は返答すらしていないという。
象徴的だったのは、外苑のシンボルのイチョウ並木を巡る議論だ。日本イコモスは2022年秋、自主調査により一部のイチョウに樹勢が衰えるなど生育不良が見つかったと公表した。再開発では新球場がイチョウ並木に隣接するため、生育への悪影響が懸念されていた。工事の前から生育不良があれば、なおさら懸念は深まる。
◆事業者側にヒアリングしたが「住民との協議は不十分」
だが、事業者がアセスの審議会に提出したのはそれ以前の、いずれのイチョウにも健康に問題はないとする調査結果で、イコモスの指摘を受けても修正されなかった。環境アセスは再開発が環境に与える影響を事前に検証して低減を図る手続きだが、現状が正確に把握できなければ、将来の影響予測にも疑念が生じる。
日本イコモスはこのイチョウの問題を含め「事業者がまとめた環境影響評価書には多くの誤りがある」と主張。審議会に出席して直接説明する機会を求めたが、審議会は認めず、事業者側にヒアリングしてイコモスの主張を退けた。
こうした審議の進め方については日本弁護士連合会も問題視。審議のやり直しを求める会長声明を2024年3月に出した。当時、担当者は取材に「一方の当事者だけの意見で結論を出した。イコモスの指摘する疑問に納得のいく説明はなされていない」と批判した。同年5月には、国連人権理事会のビジネスと人権作業部会も環境アセスの手続きについて「住民との協議が不十分」と批判する報告書を出した。
◆改正案「書類に虚偽」があれば都知事が勧告
現行条例では、外部の有識者などの意見を審議会に生かす規定が欠けている。議連の条例改正案は一連の経緯を踏まえ、有識者ら「適当と認める者」が審議会に出席したり資料を提出できるようにするほか、事業者が「書類に虚偽の記載をして提出したとき」には知事が必要な措置を勧告できるようにする。
漢人明子都議(無所属)は会見で「外苑の問題に向き合ってきた中で、内容をしぼった改正案になった」と説明。岩永康代都議(無所属)は「都の条例が実効性を担保できるかどうか今は大きな岐路に立っている」と改正の重要性を訴えた。
改正案は再開発を否定しているわけではなく、検討プロセスで対話の機会を確保することが主眼だ。議連関係者は「与党会派も納得できる内容のはずだ」と述べる。
改正案は17日に始まる都議会の委員会で審議され、21日に委員会採決、28日に本会議で採決される見通し。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます