公職選挙法違反事件を巡り、前区長が辞職したことに伴う東京都江東区長選。無所属新人で元都部長の大久保朋果氏=自民、公明、国民民主、都民ファーストの会推薦=が初当選を果たした。
大久保氏は「区民の信頼回復のため、全力で取り組む」と支援者に語ったが、事件は捜査中で全容は明らかになっていない。投票率も過去最低の39・20%にとどまった。区政刷新の道は険しい。
今回の区長選は、4月の区長選で初当選した木村弥生・元自民党衆院議員の辞職に伴うもの。自身への投票を呼び掛ける有料広告を動画投稿サイトに掲載したため、公選法違反(違法な有料広告の掲載)容疑で家宅捜索を受け、11月に辞職に追い込まれていた。
ネットの有料広告は政党には認められているが、候補者個人には認められていない。就任から半年での辞職で区政は混乱し、出直し区長選の費用は約2億円に上る。有権者の怒りは当然だ。
違法な広告掲載は、同区を選挙区とする柿沢未途・自民党衆院議員の関与も判明し、家宅捜索を受けて法務副大臣を辞任した。
柿沢氏側が江東区議らに現金を配ったり、木村氏陣営のスタッフらに違法な報酬を支払ったりした買収の疑いも浮上している。
柿沢氏がなぜそこまで木村氏の支援に力を入れたのか。本人も説明せず明らかにされていない。
江東区では自民党政治家の不祥事が相次いでいる。カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業を巡る汚職事件では、地元選出だった秋元司・元衆院議員が2021年に実刑判決を受けた。今年9月には、区発注の清掃管理業務に関する汚職事件で、元区議長が有罪判決を受けた。
4月の区長選は自民党系の「2世」同士が争う保守分裂選挙の様相となった。背景に自民党内での激しい利権争いがあったなら、政治の土壌を変えない限り、同様のことが再発しかねない。
国会では政治資金パーティーを悪用した自民党安倍派の裏金づくりが指摘され、松野博一官房長官ら政権中枢を直撃している。政治とカネの問題に対する有権者の政治不信は募るばかりだ。
区長選で自民党は大久保氏を推薦はしたものの、党幹部は応援に駆けつけられなかったのが実情だろう。信頼回復には程遠い現状だと自戒すべきである。
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