1000本近い樹木を伐採する可能性がある東京・明治神宮外苑地区の再開発で、文化財保護の提言などを担う「日本イコモス国内委員会」は26日、開発を行いながら、伐採樹木を2本にとどめる試案を東京都に提言した。建築物中心の従来型の再開発と異なり自然環境を優先し、樹木を避けて建物の配置を見直す提案だ。(森本智之)
提言を取りまとめた中央大研究開発機構の石川幹子教授は「大量伐採を回避しながら開発もする、こういうこともできるという提案。議論のたたき台にしてほしい」と述べ、事業者や計画を監督する立場の都に再検討を促した。
◆ラグビー場と球場は入れ替えず
提言によると、敷地を入れ替えて建設することになっていた秩父宮ラグビー場や神宮球場は、現在地もしくは近くで再建する。テニス場も、計画している移設をしない。外苑内を周遊する車道の大半は歩行者専用にし、建築物の再配置のために一部のルートを変更する。
これらにより伐採樹木は病虫害の激しい2本に、移植も42本にとどまるという。事業者が新宿区都市計画審議会に提出した資料によると、従来の計画では伐採は892本、移植は164本にのぼる可能性があった。
一方で、車道の転換などで緑地のためのスペースは増え「1000本の伐採を防ぎ、逆に1000本以上の新たな植栽が可能になる」(石川氏)という。生物多様性の観点から外苑に乏しかった水辺をつくることなども提案した。
◆市民からの寄付も提案
外苑は公共性の高い都心の緑地でありながら、地権者の明治神宮などの自主財源に頼って維持されている問題もあった。提言では、大正時代に外苑が国民の寄付や勤労奉仕で創建されたことを踏まえ、今後の外苑の維持のために、クラウドファンディングなど市民からの寄付を活用することも提案した。
提言を受けた東京都土地利用計画課は取材に「内容を確認する」とした。
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東京・明治神宮外苑地区の再開発計画を巡り、都環境影響評価審議会の部会が26日に開かれた。神宮球場が秩父宮ラグビー場の場所に移り、シンボルのイチョウ並木と接近する計画に対し、イチョウ並木の生育への悪影響や景観悪化を懸念する専門家の指摘が相次いだ。(土門哲雄)
東京・明治神宮外苑地区の再開発計画を巡り、都環境影響評価審議会の部会が26日に開かれた。神宮球場が秩父宮ラグビー場の場所に移り、シンボルのイチョウ並木と接近する計画に対し、イチョウ並木の生育への悪影響や景観悪化を懸念する専門家の指摘が相次いだ。(土門哲雄)
◆都の部会、質疑を続行
部会はこの日で事業者側への質疑を終え、次回総括審議に入る予定だったが、「もう少し議論が必要」として質疑を続けると決めた。事業者は年度内の着工を目指している。
この日の部会では、事業者側がイチョウ並木と約8メートルの距離に神宮球場の外壁が、約10メートルの距離にイチョウ並木とほぼ同じ高さの外野ネット(約25メートル)が接近するイメージ図を示した。事業者側は「あくまで途中段階で、決定したものではない」としている。球場の建設により、4列のイチョウ並木から現在のラグビー場方向に曲がって延びる2列のイチョウ並木は伐採される見込み。
◆「根茎の保全や日照に懸念」の指摘
球場と接近するイチョウ並木について、委員の横田樹広・東京都市大教授は「根茎の保全上、(距離が)非常に不足している。日照の影響なども懸念される」と指摘。部会長の斎藤利晃・日本大教授も「工事で地面を掘り下げることでイチョウの根に影響はないのか」とただした。三井不動産側の担当者は「イチョウ並木を保存するという約束を守るため、施工方法を検討する」と説明した。
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