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◆スキマバイトは街のあちこちに…なぜか「口止め」される労働者 「人手不足」の空気漂う現場に潜入した

2024年12月10日 08時52分38秒 | ●YAMACHANの雑記帳
〈スキマバイトの隙間  乱立するアプリの陰で〉第4回
スマホ1台あれば、空いた時間にアプリを通じて履歴書も面接もなしに仕事ができる「スキマバイト」。
記者が働いてみると、多くの疑問と謎に直面した。取材を通じて、働き方を問い直します。

◆巨大倉庫の前で

JR品川駅からバスで15分ほど、東京都大田区の流通拠点・大井コンテナふ頭に着いた。
郊外のショッピングモールほどの巨大な物流施設がいくつも立ち並ぶ。
巨大な物流施設が立ち並ぶ大井コンテナふ頭=2024年11月

巨大な物流施設が立ち並ぶ大井コンテナふ頭=2024年11月

10月下旬の夕方、私はある倉庫の近くに立ち、正面側にある二つの出入り口を注視していた。
ここから出てきたスキマバイトアプリ「シェアフル」の利用者に声をかけるつもりだった。
そこは、飲料水のラベルを貼るというスキマバイトの現場。
シェアフルを通じて、都内の人材派遣会社が求人し、マッチングすると食品検品会社に「派遣」される。
30分ほど待ち構えていると、手前側の出入り口からぞろぞろと従業員たちが出てきた。
全員に声はかけられない。相手をよく選ぶ必要がある。
談笑し合う正社員らしき人らを見送る。
30代くらいの男性が1人でスマートフォンを操作しながら倉庫の手前側の門から出てきた。
私の前を通った瞬間にスマホの画面をのぞき見ると、時刻表を調べていた。

◆「何も話すなと言われた」

スキマバイトやその日限りの派遣労働が終わった直後は、普段は利用することのない最寄り駅の電車やバスの出発時刻を確認する人も多いはず。
この人はそうだ、と直感を信じた。
「こんばんは。きょうは派遣のお仕事ですか?」
小走りで後ろから近づき、声を掛けると、男性は「そうです」と答えてくれた。
予感は当たった。ただ、思わぬ言葉が続いた。
「仕事については何も話さないように言われているので。すみません」
こちらが名乗る隙もなく、男性は早足で私を振り切った。
スキマバイトアプリの利用者の体験談を集める点での成果はゼロだが、手応えを感じた。
少なくとも何かを隠そうとする派遣会社が実際にある。
もしやましいことがあるなら、不利益を受ける可能性があるのは、口止めした企業側の言いつけを守っていた労働者自身なのではないか?
スキマバイトアプリの利用者は、自分がどの会社に雇われているのか。
実際に現場を指揮し、労働者の安全の責任を負うのはどの会社なのか、それを知っておくことが重要だ。
そう思い始めたのは、アプリを通じて実際に働いてみたからだった。

◆冷凍カニの荷下ろし 「バキバキになりますよ」

9月26日朝、私は東京都中央区・豊海地区にいた。
タワーマンションが林立する都営地下鉄勝どき駅前から海側に15分ほど歩いた距離にある、海産物の冷凍倉庫が集中するエリア。
運河を挟んで、お台場のフジテレビ本社が近くに見える。
タワーマンションが林立する、勝どき駅周辺=2024年11月

タワーマンションが林立する、勝どき駅周辺=2024年11月

人けは少ない。
だが、倉庫からは従業員らの活気づいた声が聞こえる。
その一角の冷蔵倉庫で、私は冷凍されたカニをひたすら運び出した。
前日に、シェアフルで見つけた仕事だ。
現場には、同じように複数のスキマバイトアプリで集まった男性が10人くらいいた。
その中には外国系の人も数人おり、そばで話を聞いているとベトナム人のようだった。
始業前、別のスキマバイトアプリ「タイミー」から来た20代くらいの若い男性と少し話ができた。
男性は本業が別にあるが、収入を補うためにたまにタイミーを使っている。
これまでに何度か、この現場で働いたことがあるという。
「初めてだとたぶん張り切っちゃうと思いますが、バキバキになりますよ。けがしたらまずいので、無理はしないでください。何カ所か分かれて働くことになるので、一緒になるかは分からないですね」。優しく教えてくれた。

◆肉体労働は達成感がある。だが…

現場に行くと目の前に現れたのは、小学校の教室の半分くらいはありそうな巨大なコンテナ。
高級カニの段ボールが、上下左右びっちり詰まっていた。
冷凍カニの荷下ろしバイトの現場となった、海産物の冷凍倉庫が集中するエリア=2024年11月、東京都中央区で

冷凍カニの荷下ろしバイトの現場となった、海産物の冷凍倉庫が集中するエリア=2024年11月、東京都中央区で

カナダかロシアから海路で運ばれてきたらしい。数千箱はありそうだ。
これら全てを、私と常勤のベテラン男性社員の2人で、フォークリフトのパレットまで運ぶ。
圧倒的な数の段ボールを前に、先ほどのアドバイスを忘れて一心不乱に作業を続けると、腰に鈍い痛みを感じるようになった。
コンビニ弁当の製造やファミレスなど食品産業はさまざまな面で自動化が進む。
物流部門は、ロボットに任せることは難しいのだろうか。
この日の私の報酬は9000円。
自動化で人件費を節約すれば、カニの値段も下がるのではないか…。
そんなことを考えながら体を動かし、始業から2時間くらいたった気がした。
ところが壁にかかった時計を見ると、わずか40分しかたっていない。
仕事はあと7時間以上続いた。
肉体労働は達成感がある。
ただ、現場でずっと気になっていたことがあった。
当日働く直前になるまで、誰からも就業先を告げられなかったことだ。

◆始業50分前のマッチングも

今回のバイトは、スキマバイトアプリ「シェアフル」を使って応募した。
登録し、バイトに申し込んだのは前日の夕方だった。
自分が応募しなかったら現場の人手はどうなっていたのだろうか。
アプリをダウンロードし、名前や住所、スマホで撮った免許証の写真を登録した。
2時間後には「本人確認が完了」した旨の連絡がアプリに届き、仕事が選べるようになった。
コンビニのレジや牛丼店のホールスタッフ、イベント会場の設営や物流倉庫での仕分け。「美容意識調査アンケート」「家庭用美容器のモニター」
世の中にはそんな仕事があったのかと思うようなものまで、さまざまな仕事が目に飛び込んでくる。
業務内容の説明が曖昧な求人に興味を引かれた。
それがカニの荷下ろし。
アプリで「応募する」をタップすると、一瞬でマッチングが完了。
始業時間の12時間前だった。
大学生だった15年前、派遣会社に雇われ、イベント会場撤去の夜勤の仕事を何度かしたことがある。
1回で1万円以上稼げ、友人たちの間で人気だった。
その時は、派遣会社に登録するために東京・飯田橋の雑居ビルでの説明会に出席し、担当者に履歴書を手渡す必要があった。
コンビニや宅配すし店などいくつかバイトをしてきたが、履歴書の提出と面接は必ずあった。
特に履歴書は、証明写真を撮るのに安くない出費と手間がかかるのがとても嫌だった。
スキマバイトアプリを使えば、スマホの画面を数回タップするだけで済む。
わずらわしさがない。大学生の時にこんな便利な仕組みがあったら…と思う。
始業開始の直前まで募集が続く求人もあり、働きたくなったら直前でもマッチングできる。
アプリ「メルカリハロ」で、キッチンカーでの弁当販売をした。
申し込みをしたのは、始業開始のわずか50分前だ。
「こんな直前に応募したらむしろ先方の予定が狂って迷惑なのでは」と懸念した。
しかしスタッフから「おかげさまで別の現場の見回りにいくことができます」と感謝された。
多くの現場で慢性的な人手不足の空気が漂っている。
ビジネス街である東京・虎ノ門で昼時、900円の弁当を売った。
「ペイペイでも払えますか?」と聞かれ、事前に目を通したマニュアル通りの対応をするたびに考えた。
「相手は私がスキマバイトアプリで50分前にマッチングしたワーカーとは思わないだろうな」
街中の思わぬところ、至るところにスキマバイトワーカーがいるのだ。(加藤豊大)
 ◇
東京新聞では「スキマバイト」での困り事や経験談、ご意見を募集しています。
メールはogawa.s@chunichi.co.jp、郵便は〒100-8505(住所不要)東京新聞社会部「スキマバイト取材班」へ。
 

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