総務省などが公表した2023年分の政治資金収支報告書で、林芳正官房長官と村上誠一郎総務相、江藤拓農相がそれぞれ代表を務める政治団体が、支出の公開基準が緩い自身の後援会に寄付として計約900万円を移していたことが東京新聞の調査で分かった。2021年からの3年分では、3閣僚で計3000万円を超える。6月に成立した改正政治資金規正法でも、3閣僚の資金移動は公開基準を超えておらず、制度の「抜け穴」は残ったままだ。(我那覇圭)
◆「国会議員関係」と届け出ていない後援会なら「公開基準」が緩い
2021~23年分の収支報告書によると、林氏は自身の資金管理団体などから2つの後援会に3年間で計約1250万円、村上氏は計約975万円、江藤氏は約790万円を寄付した。
政治団体には、人件費を除く1万円超の支出使途の記載が必要な「国会議員関係政治団体」(国会議員関係)のほか、「その他の政治団体」(その他)がある。法律上、国会議員を支持する目的の団体は「国会議員関係」に当たるが、3閣僚の後援会は「その他」として届け出ていた。
「その他」の場合、収支報告書には、5万円以上の政治活動費は支出明細を記載するが、「国会議員関係」と異なり、経常経費の個々の支出の目的や金額、支出先などは明らかにならない。3閣僚の政治資金は、後援会に寄付として移動したことで、結果的に使途の公開度が下がった。
◆2026年に規制は強化されるが、3閣僚のケースなら影響なし
林、村上両氏の事務所は、本紙の取材に「(後援会は)国会議員関係政治団体ではない」と回答したのみ。江藤氏の事務所は、後援会の支出は事務所の家賃などだと説明した上で、今後は資金管理団体で支出する考えを明らかにした。
本紙の調査では、3閣僚に資金移動が少額だった2人を加え、石破内閣の5閣僚は自身の後援会を「その他」と届け出ていた。総務省によると、「後援会」という名前でも団体の実態に踏み込まないため、「国会議員関係」として申請し直すよう求めることはない。
先の通常国会では、自民党の茂木敏充幹事長(当時)が10年間に同様の手法で約3億2000万円の資金移動をしていたことが問題になった。これを受け、「その他」でも「国会議員関係」から年1000万円以上の資金移動を受ければ「国会議員関係」と同じ公開基準とする改正政治資金規正法が成立。改正法は2026年から施行されるが、3閣僚のように年1000万円未満の寄付なら基準は今と変わらず、抜け道はなお残される。
◆「現状では後援会への寄付が記載逃れに」
政治資金に詳しい神戸学院大の上脇博之教授は「現状の公開基準のままでは、後援会への寄付が支出明細の記載逃れとなり、裏金づくりにも悪用されかねない」と指摘。「国会議員関係政治団体との間で資金移動があるその他の政治団体は、すべて国会議員関係政治団体と同じ基準にすべきだ」と訴えた。
国会議員関係政治団体 故松岡利勝農相の資金管理団体が不正に光熱水費を支出した問題などを受け、2007年の政治資金規正法改正で設けられた政治団体の区分の一つ。(1)国会議員が代表を務める資金管理団体や政党支部(2)寄付金控除制度の適用を受け、特定の国会議員を推薦・支持する団体—を指す。2009年分の収支報告から運用が始まった。
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