自民党が「反撃能力」提言しロシアを脅威と名指し 危険な時代に独裁者にケンカを売る気か
この危険な時代に新たな火種をまき散らす愚策だ。自民党安全保障調査会(会長・小野寺元防衛相)がまとめた「敵基地攻撃能力」改め「反撃能力」の保有検討を後押しする提言案。反撃能力を持つ理由について、安全保障環境が「加速度的に厳しさを増している」と指摘し、その脅威として中国、北朝鮮、そしてロシアを名指しした。
攻撃対象も従来想定していたミサイル発射拠点に限らず、「指揮統制機能等も含む」と踏み込んだ。その具体的内容は「手の内を明かせない」と、もったいぶった理由から提言案では触れていないが、攻撃意思を決める敵国の指導部や軍の司令部などが想定される。ミサイルを撃ち落とせないから撃たれる前に敵国の中枢をたたく──。そんなムチャな発想は、指名されたロシアなどの指導部に「日本側が『撃たれる』と勝手に判断すれば、いつ先制攻撃を受けるか分からない」と、不要な刺激を与えるだけだろう。さらに、提言案は「防衛装備移転三原則」の緩和も主張。「侵略を受けている国に幅広い分野の装備移転を可能とする制度」の検討を打ち出した。ロシアのウクライナ侵攻が念頭にあるのは明らか。民生用と称し、軍事目的で使えるドローンをウクライナに与えるだけでは足りず、殺傷力のある武器まで渡すのか。まるでプーチン大統領にケンカを売るような内容ばかりだ。
「米インド太平洋軍司令官が昨年3月、中国は『6年以内』に台湾に侵攻する恐れがあると米議会で証言。バイデン大統領も『台湾が中国から攻撃された場合、米国が台湾を防衛する』と発言しました。2027年は中国人民解放軍の創設100周年。それまでに台湾を攻めるという米国の見解に従い、提言案は防衛費倍増の目標を『5年以内』に区切っています。拙速に見えるのは、米国の軍事戦略に隷従する自民党
内の焦りの表れ。あと5年で憲法の平和主義、専守防衛を捨て去り、米国と共に戦争ができる国にしたいのです。提言案を実行に移せば、日本周辺の独裁国がキバをむいてくるのは確実。その覚悟を国民に語らず、一足飛びに戦争への危険性を高めていいのでしょうか」(立正大名誉教授・金子勝氏=憲法)
国民も戦争バカに唯々諾々と従うのか、覚悟が問われている。
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