穴にハマったアリスたち

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トラウマに、向き合おう -京急油壷マリンパーク

2009年02月11日 | 映画・コンサート・展示会・テーマパーク
唐突ですが私にはトラウマがあります。
海洋生物が怖い。
割と真面目に、悪夢にうなされることがあるくらいには。

それというのも間違いなく、幼少時によく行ってたスミソニアン博物館のせいです。
あの博物館は入館料は安いし展示物も面白いしで大変良い所だと思うのですが、子供にトラウマを刻みこむことを自分たちの使命と勘違いしてる節がありました。
恐竜の化石コーナーでは「…これ、要するに死体だよな」と我に返らせる奇妙な展示をするわ、珍しい昆虫コーナーでは1/1実寸大本物の「ゴキブリ数万匹に占拠されたキッチン」の展示をするわ…。
しかも巧妙に入口からは死角になるところにトラップをしかけ、出るには恐怖のコーナーを抜けないといけないとか、そんな悪辣な構成を作ることに執念を燃やしておられた。

で、冒頭の「海洋生物」ですが。
何の展示だったか思い出せないのですが、入口を入って左に細長い展示ホールがありました。
そこに呑気に踏み込んで展示物を眺めてたのですが、ふと妙なプレッシャーを感じて頭上を仰ぐと…

シロナガスクジラの成獣の剥製が天井からぶら下げてあった。

それの何が恐怖なのか、実際に体験してない人にはきっと分からない。
純粋に巨大な生物が怖かったのか、それとも「そんなものがあるのに全く気がつかずに呑気に展示を眺めてた」ことが恐怖だったのか。
自分でもよく分かりませんが、とにかくもう怖かった。

その後、どこぞの水族館でジュゴンの水槽を横から眺めたときに「ああ、自分はこういうのダメだ」と悟りました。
上からではない。横からです。水面からは想像できないほど、奴らはでかい。
信じがたいほどの巨体で、かつ異種族だ。

学生時代は水泳や水球、飛び込みをやっていたので、泳ぎは基本的に得意です。
最盛期には1日12時間以上足のつかないプールで過ごしてたし、「足がつったから溺れた」という言葉の意味が分からなかったりする。両手足使えなくても、だから何だというのだ。
でもだからこそ逆に、水中での自分の行動限界が分かる。水中で奴らに遭遇したときのことをリアルに想像できてしまう。怖い。怖いよ。

単に巨大な象やカバは怖くも何ともないのですが、舞台が海になると話が違う。
例えば船に乗ると、自分の足の下を巨大生物が階層的に蠢いてるわけですよ。
たかだか100メートルとか200メートルとかしか離れていないところに。
しかもそれに気がつくことができないというのが、また怖い。

ですから私が「人魚」さんに強烈な感情を抱くのは当然の帰着なのです。
奴らはでかい。小柄に見える るちあさんでも軽く3メートルはある。
恐怖ですよ。もう崇めるしかないじゃないか。
(ちなみに恐竜ではプレシオサウルスやエラスモサウルスが好きです。厳密には恐竜じゃないけど。多分、「のび太の恐竜」の影響だと思う。ただフタバスズキはあまり好きくない)

…だらだらと長くなりましたが、ようやく本題。
そんなわけで、何となく水族館に行ってみました。
人はトラウマから逃げてはいけないのです。

 

行き先は油壷マリンパーク。
この水族館の評価的なものは知りませんが、先月乗ったANAの機内雑誌に紹介記事が載ってたので気になってました。
なんでも、でかいサメの剥製があるそうです。トラウマ克服には良さそうです。

 

2メートル弱はあるチョウザメの群れ。
ありていに言って気持ち悪いです。
ガラス壁越しだから我慢もできますが、スキューバダイブ中に遭遇したら吐きそうな気がする。

 

1メートル弱の蟹と謎のワーム。
ありていに言って気持ち悪いです。
冷静に考えてくださいよ。普通に地面を歩いてて、こんな生物がそこらを這いずってたら吐くしかないじゃないか。
水の中なのをいいことに、奴らは好き勝手に進化しすぎだ。

 

目当てのでかいサメ。
メガマウスシャークだとか言うそうです。
体長5メートル。重量1トン。生息域は浅いところで水深150メートル程度の所。

おぞましいことに、この生き物が発見されたのは1970年代だそうです。
5メートル級の生物が、わずか150メートル下でのたうってるのに、全く気がつかずに船で航海してたわけです。
人類は数千年もの間安穏としすぎです。だから海は怖いんだ。マジで。

ただ、思っていたほどには恐怖を感じませんでした。
何でだろう。
シロナガスと比べれば小さいからか。それとも私が成長したからか。

 

そんなことをボーーーーっと水槽を眺めながら考えて、ふと気がつきました。
私は魚類はそれほど怖くないらしい。
何というか、奴らの目を見てると愛嬌があります。文字どおり死んだ魚の目をしておられる。
知性のかけらも感じられず、限られた水槽の中をひたすらに回遊してる様には癒しすら感じます。
この子らは馬鹿だなぁ。この魚脳め。

少しトラウマを克服した気分で、次はイルカのコーナーに行ってみました。

 

化け物め。
僅かばかりの勝利感は吹き飛びました。こいつらはマジ怖ぇ。
とんでもない重量感なのに、理不尽な速度で動きまくってやがる。

 

横から。でけぇよイルカ。

他の観客の方々が謎のことを言っていました。
可愛いだとか、目が澄んでて良いよねーとか。
騙されてやがる。奴らの目には邪悪さしか感じません。
お魚さんの可愛いお目々と違って、知性がバリバリ宿ってます。(奴らはまばたきまでしやがる!)
ふふ、観察してるのは果たしてどちらかな。
そんなことを考えてる目だ、あれは。

こいつらを見てると、否が応でも収斂進化を思い知らされます。
全く異なる生物でも、似通った環境では似通った形態に進化する。
かつては陸上生物だったとは思えないほど、お魚体型をしてやがる。
生物実験の成れの果てを見てるような気分になるなぁ…。
理屈の上では、人間を水に放り込んで10万年くらい放置すれば人魚さんが出来上がるんですよね。

 

アシカ。こいつらもでかい。
イルカもそうですが、このサイズで信じがたい機動力を持ってる。
純粋に動きが速いだけでなく、トップスピードに至るまでが早すぎるし、反射能力や旋回能力が異常。

 

ちょうどお姉さんが餌をあげさせられていました。
実に勇敢だと思います。私なら絶対にご免こうむる。
画像の個体はまだ小さい方ですよ。
映ってないところに、これより4倍はありそうな奴がいる。
そんな肉食生物のいるところに生身で入るなんて…!

お姉さん:
 「これからアシカに餌をあげます」
 「ここのアシカは元気がいいので、ジャンプすると柵を乗り越えますから気を付けてくださいね」

…何か、さりげなく恐ろしいことを口走られた気がする。

不穏な空気を感じ取ったか、横で見ていた女児様がボソリとつぶやきました。

女児様:
 「アシカ、怖い」

偉い子です。曇りない眼で見れば真実が見えるんです。
アシカは怖い。海洋哺乳類は怖い。
そんな恐怖を振り払うように、女児様は続けてこうつぶやいていました。

女児様:
 「でもあの人たちは立てないから大丈夫」

直立歩行の優位性が彼女の拠り所のようです。
海に逃げ還り、足を捨てたことを悔やむがいい。
でも女児様は気づいてるんだろうか。
「あの『人』たち」という表現をしてしまってるあたり、アシカを対等以上の相手と無意識に認めてることに。

 

そのアシカの足。
冷静に考えれば当たり前ですが、あれはヒレではなく足なんだよなぁ。
ちゃんと指らしきものが見える。不気味だ。

 

ペンギンさん。
私はペンギンも怖いのですが(昔、1メートル越えのペンギン数十体が直立してる展示を見たことがある)、イワトビペンギンサイズなら平気です。
ここでもお姉さんが餌をあげさせられていました。

お姉さん:
 「みんな何か質問はあるかなー?」
 「…」
 「…ペンギンの種類について?いっぱいいますよ。お姉さんよりも大きなペンギンもいます」

…またお姉さんがさりげなく怖いことを言ってる。
ここの館員の方は何か病んでるんですか。
そりゃこんな怖いところで働いてたら仕方がないとはいえ。

ちなみに上の画像は、餌をやってるその横にいるペンギンさんたち。
ご飯タイムだというのに、ぼんやりとしてやがります。
先ほどのアシカは餌をめぐって血しぶきをあげていたというのに、こちらはいたって平和。というか、何も考えずに人生を送ってそう。
所詮は鳥頭か…。ペンギンさんとは仲良くできそうな気がしました。

 

帰りに買ったお土産。

一日潰して水族館まで行った結果、幾つか分かりました。
やっぱり海洋性ほ乳類は怖い。
でも魚類や鳥類は意外と平気。

少しはトラウマが晴れたような気がしたので、爽やかにお土産も物色できました。
水族館だけあって海洋生物のぬいぐるみだとか、定番のお菓子系だとか、子供用の玩具だとかが並んでます。
せっかく来たんだしと、隅々まで店内を見て回ったのですが…

…。
……。

 

………。
…………。

(拡大)

 

トラウマが深まった気がする。だから鳥は嫌なんだ。
コメント (8)
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