中国迷爺爺の日記

中国好き独居老人の折々の思い

シラミ

2008-10-01 09:22:24 | 身辺雑記
 今年の春に広東省を訪れた時に広州の海鮮料理の店で、水生昆虫のゲンゴロウを食べたことがある。大して旨いものではなかったが、帰ってから中国語では何と言うのかを調べたら「龍虱ロンシィ」とあった。その「虱」という文字に興味を惹かれた。虱はシラミを意味する。龍虱は虱の王を意味するのかも知れないが、ゲンゴロウはおよそシラミなどには似ていない。それに風という文字の第1画が取れた虱の字源は何だったのだろう。シラミにはかつてひどく悩まされた経験があるだけに興味をもった。

 このシラミなどと言う、良い思い出のない鬱陶しい生き物はもういないのかと思っていたら、まだ生き残っているようで、小学生の女の子の髪の毛に「湧く」というので騒ぎになることがある。私の孫娘も小学生の時について駆除したようだ。昔は一度湧くと厄介なものだったが、今では比較的簡単に駆除できるようだ、家族で海外に旅行することが増え、東南アジアなどから持ち帰り、それがプールの脱衣室などでうつるらしいとされていた。

 シラミは、芭蕉の「のみしらみ 馬の尿(ばり)するまくらもと)と詠まれたようにノミと対を成すような寄生虫である。羽はないが昆虫で、人以外にもいろいろな動物に寄生するが、人に寄生するのは、コロモジラミ、アタマジラミ、ケジラミの3種だ。コロモジラミは衣服につき、アタマジラミは頭髪に、ケジラミは陰毛部につく。

            コロモジラミ(インタネットより )

 今では嘘のような話だが、私は小学生の頃に大量のシラミが寄生して悩まされた。前にも書いた学童疎開の時に、誰かが持ちこんだらしいシラミが、みるみるうちに全員に広がった。当時は下町ではシラミのいる家庭もあったのだ。男の子も女の子も衣服にコロモジラミが寄生し、女の子にはアタマジラミもついた。夏よりも冬のほうが多かったように思う。

 シラミの繁殖力はものすごいもので、次々に産卵して増えていき、シャツの縫い目にはびっしりと卵が並び、下着にしている毛糸のセーターの編み目にはたくさんの成虫がもぐりこんでいた。自由時間などには皆で火鉢を囲んで服を脱ぎ、シラミ取りをした。白くて米粒のような成虫を引っ張り出して、両手の親指の爪の間で潰す。今なら寒気がするようなことだが、その頃は潰す時のプチンという感触に快感を覚えたものだった。まさに「しらみつぶし」を地で行ったわけだが、何しろ大量なので気休めくらいにしかならなかった。だから冬には脱いだ服を屋根や庇に投げ出したりする。宮城県の山間部だから冬はとても気温が低く、投げ出した服はすぐに凍ってしまい、成虫は全滅する。しかし卵はしぶとく生き残り、しかも縫い目の間に粘着質のものでしっかりと貼り付いていて、洗濯しても落ちないから、着るとまたすぐ孵化して増えてくる。

 (ふと思いついてシラミのことを書きはじめたが、長くなりそうなので、このあたりでいったん止めよう。)