フランスのある民間テレビ局が時事問題を風刺する番組の中で、東日本大震災の被災地の仙台の町並みと、原爆が投下された直後の広島の写真を並べて、「日本は60年間も復興に向けた努力をしていない」というせりふをつけたりするなどしたそうだ。
この番組は時事問題を人形劇で風刺するものらしく、上記の内容のものの他にも、福島第一原子力発電所で復旧作業に当たる作業員をテレビゲームのキャラクターに見立て、原発の事故処理をあたかもゲームのように伝える場面や、日の丸の上に放射能のマークを入れた映像なども映し出されたと言う。これに対してフランスの日本大使館は、「被災者感情を著しく傷つける内容だ」として、書簡などで強く抗議したが、テレビ局側は「いかなる対象も風刺する番組で、人を傷つけるのが目的ではない。表現の自由がある」などと回答し、謝罪は一切していないそうだ。その後どうなったかは知らない。
風刺とは「①遠まわしに社会・人物の欠陥や罪悪などを批判すること。②それとなくそしること。あてこすり。」(広辞苑)ということだが、原爆と今回の大震災の被害状況を並べることで、いったい何を風刺しようとしたのか。広島について、60年間も復興に向けた努力をしていないと言うのははなはだしい誤認、と言うよりも虚偽で論外なものだが、それと大震災の被害状況を並べて、被災地も60年間は復興できないとでも言いたかったのか。「人を傷つけるのが目的ではない」と言うが、公共放送の当事者としては当たり前のことで、まして「表現の自由」があるなどというのは「盗人猛々しい」の類だ。日本の国旗に放射能のマークを描いた映像は見たが、日本全体が放射能に汚染されている風刺のつもりか。バカにしているとしか思えない。
根本的には原爆や震災の被害を軽く捉えているとしか考えられないのだが、それとも世界一の原発保有国である自国のあり方に警鐘を鳴らしたつもりなのか。実際にその番組を観たわけではないから、断定はできないが、それにしても、被害者の心情に対する配慮がないと思うし、時折思う欧米人、白人の優越意識、傲慢さを感じさせる。このような番組をつくる連中の程度の低さはもちろんだが、見て喜んでいるのも品性が低いと思う。