蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

荒神

2018年09月08日 | 本の感想
荒神(宮部みゆき 朝日新聞出版)

元禄時代、現在の福島県中部にある永津野藩とその隣の香山藩は、名産品などをめぐって対立していて、武力にすぐれる永津野側は藩境を侵して香山藩の住民を拉致していたりした。藩境に近い香山藩側の村から逃散が相次ぎ、香山藩の番方が視察に赴くと、村は何者かに襲われて全滅状態だった・・・という話。

宮部版ゴジラというべき内容で、村を襲う恐竜のような怪物が主役。
怪物が暴れまわるシーンは迫力満点でページターナーの面目躍如。
話を長くしようとすればいくらでも長くできそうな内容なのだが、(宮部さんの作品としては)かなりコンパクトな長さに調整されているのもいい。
ミステリ的な伏線と回収もあって、まさに上級のエンタテイメントに仕上がっている。

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読書の価値

2018年09月08日 | 本の感想
読書の価値(森博嗣 NHK出版新書)

タイトル通り、読書の意義について考察した本で、自分が知らないことを教えてくれることが読書の本質であるので、できるだけいろいろなテーマやジャンルの本を読んだ方がよいとする。

こうした本書のテーマ部分より、森さん自身のエピソードを紹介しているところの方が面白かった。もっとも、森さんのエッセイは何冊か読んでいるので、本書で取り上げているエピソードの大部分は既知のもの。
森さんは読むのは遅いが、それは本の内容を脳内でイメージしているためで、一回読んだ本の内容はすべて覚えているとか、雑誌マニアであるとか。

次の話は、本書で初めて知り、なるほど、と思わされた。
森さんはもともと大学教授で、学生の論文を読むことが多かったのだが、ある時期から急に学生の論文作成のスキルが上がって読みやすくなったらしい。
その時期というのは、入試に小論文を課する大学が増えた頃らしい。受験勉強で小論文のスキルを身に着けるようになったのである。

受験勉強をやっているときは、よく「こんなこと(例えば年号とか数学の定理とか)やっても何の意味もない」なんて思ったものだが、意外と役に立ち、実用的である(のでもっとやっておくべきだった)と、社会人になってから思い知ることが多かった。それをあらためて認識できた。
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