蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

千年の読書

2023年11月10日 | 本の感想
千年の読書(三砂慶明 誠文堂新光社)

数々の本をジャンル分けしながら紹介する。

よくあるダイジェスト本と違って、それぞれの本に著者の愛着が感じられる。おそらく、本書のような本を書こうと思ってそれぞれの本を読んだわけではなくて、あまたの本を読んできて本当に自分が気に入ったもの、感銘したものを取り上げているためだろう。

第6章の「瞑想と脳と自然」が特によかった。私自身あまりそういう方面に近づきたくないなあ、と日頃思っているせいかマインドフルネスについて何も知らなかったのだけど、もともとは仏教(というか禅宗?)に起源があるのものだったのね。アメリカでそれを広めたのは日本人(鈴木大拙、鈴木俊隆)だというのも知らなかったし、なぜ英語で禅のことをZENと呼ぶのか(本来の起源の中国語ではチャンと発音するらしい)という挿話も面白かった。
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さがす

2023年11月10日 | 映画の感想
さがす

原田智(佐藤二朗)は、懸賞金がかかった指名手配犯を街で見かけたと、娘の楓(伊藤蒼)に話した翌日に失踪する。楓は智を探すが見当たらない。ある日、自宅のはなれ(かつては卓球教室だった)に、指名手配犯の清水(山内照巳)が寝込んでいるのをみつけ後を追うが逃がしてしまう。清水が残した荷物には智のスマホがあった・・・という話。

という話は物語の一面で、視点や時間軸を変えてこの後異なる場面が描かれる。この二面性が本作の魅力。よくある手法といってしまえばそれまでだが、わかりやすく、サスペンスと謎を盛り上げながら真相を観客に明かしていくプロセスはよく出来ていた。加えて、普通の映画ならエンディングになりそうなところからもう一つの物語が始まる構成も異色であった。

ストーリーの二面性だけでなく、主要登場人物がそれぞれに二面性を抱えている設定もいい。
佐藤二朗という純朴?なイメージの俳優をハマり役のように見える役柄で起用しながら、実は・・・というキャスティングもありがちといえばありがちだが、突然手の平を返すようにキャラが変わるのではなくて、序盤からそれらしい伏線(例えば、智が、難病に苦しむ妻を見つめる視線とか)を配しているのがいいんだよね。
似たようなことは娘の楓やシリアルキラーの清水にもいえる。佐藤さんがうまいのは当然として、楓役、清水役の人も上手だった。

本作を知ったのは、レンタルビデオ屋さんの(貸出実績じゃくなくて中身の評価での)ランキングで上位だったから。それに取り上げられてなければ絶対見なかったと思うので、このランキングには感謝。毎年、特に邦画ではメジャーと言いかねる意外性がある作品をいくつか取り上げていることはえらいと想う。
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