ヒトラーの馬を奪還せよ(アルテュール・ブラント 筑摩書房)
ヒトラーの総統官邸にあった巨大な馬の像は、官邸とともに破壊されたと思われていた。著者は美術品のブローカー?(自称 美術探偵。盗難品の発見や贋作を見破ることで有名)で、この馬が現存していて買い手が探されているということを知り、その探索に乗り出す・・・という話。
著者はオランダ在住だが、ドイツ各地を経巡って多くの人から手がかりを引き出そうとする。情報が次々とつながって、やがては所在地(と思われる)場所をさぐりだす。そのプロセスが実に鮮やかで、これがフィクションだったら「そんなにうまくいくはずないだろ」なんて思ってしまうくらいのお手並み。探索プロセスが並のミステリよりも遥かに面白い。
ただ、著者は現物を実際に発見したわけではない。皮肉な見方をすれば、著者は情報提供者にすぎなくて、本当のお手柄は大きなリスクを冒して家宅捜索に乗り出したドイツ警察のような気もするが・・・
この総統の馬の行方以上に興味深かったのは、ナチスの残党やネオナチの影響力はまだまだ大きくて社会の上部層にも同調者が多い、ということだ。
著者は探索の途中でヒムラーの実の娘(グドルン・ブルヴィッツ。今は故人)にもインタビューしているのだが、彼女はネオナチの間では神格化に近い扱いをされていたという。幼い頃の彼女とヒムラーがいっしょに写った写真(P49)の中の、ヒムラーのなんとも穏やかで娘を慈しんでいる表情が印象的だった。
ヒトラーの総統官邸にあった巨大な馬の像は、官邸とともに破壊されたと思われていた。著者は美術品のブローカー?(自称 美術探偵。盗難品の発見や贋作を見破ることで有名)で、この馬が現存していて買い手が探されているということを知り、その探索に乗り出す・・・という話。
著者はオランダ在住だが、ドイツ各地を経巡って多くの人から手がかりを引き出そうとする。情報が次々とつながって、やがては所在地(と思われる)場所をさぐりだす。そのプロセスが実に鮮やかで、これがフィクションだったら「そんなにうまくいくはずないだろ」なんて思ってしまうくらいのお手並み。探索プロセスが並のミステリよりも遥かに面白い。
ただ、著者は現物を実際に発見したわけではない。皮肉な見方をすれば、著者は情報提供者にすぎなくて、本当のお手柄は大きなリスクを冒して家宅捜索に乗り出したドイツ警察のような気もするが・・・
この総統の馬の行方以上に興味深かったのは、ナチスの残党やネオナチの影響力はまだまだ大きくて社会の上部層にも同調者が多い、ということだ。
著者は探索の途中でヒムラーの実の娘(グドルン・ブルヴィッツ。今は故人)にもインタビューしているのだが、彼女はネオナチの間では神格化に近い扱いをされていたという。幼い頃の彼女とヒムラーがいっしょに写った写真(P49)の中の、ヒムラーのなんとも穏やかで娘を慈しんでいる表情が印象的だった。