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蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

「世界の終わり」の地政学

2025年01月03日 | 本の感想
「世界の終わり」の地政学(ピーター・ゼイハン 集英社)

水運を使った物資輸送力は、他の手段と比較して圧倒的に効率的(例として、シベリア鉄道の年間輸送総量は超大型コンテナ船一隻分に及ばないそうである)であり、大洋の航海術が確立されるまで、文明は大河やそこから派生する河川網による水運が可能な平野で栄えてきた。大航海時代を経て海運を制した国が覇権を握るようになり、WWⅡ後は圧倒的なアメリカの海軍力に守られて全世界物流が効率化しグローバル経済が大繁栄した。
著者は、WWⅡ後の状況は歴史上特殊なものであったとして、アメリカが世界の警察官役を降りた今、グローバル経済は大幅に縮小し「世界の終わり」がやってくると主張する。

上記の主張にはにわかに首肯できかねるが、なぜ水運が重要なのか?という解説は論理的かつ単純で面白かった。

その他、次のような解説がよかった。なお、上下巻に分かれているが、上巻が総論、下巻が各論という構成になっていて、有り体にいうと上巻だけ読めばいいかな・・と思えた。

都市化によりなぜ出生率が落ちるのか?→農村では子供は無償の労働力だが、都市では単なるコストにすぎないため

日本は高齢化を逆手にとってデソーシングを進めた。工業生産能力の多くを他国へ移転し、現地の労働力を使って生産し、収益を日本に還元して高齢化する日本の人口を養うという構造である。これを進められた背景にはアメリカによる安全保障があり、それが揺らいだ今後はどうなるだろうか?

遠く離れた海域で艦隊行動ができるのはアメリカ海軍くらい。格差は圧倒的だがそれに次ぐのは海上自衛隊で海上護衛が可能な実力がある。(本書では何回も海上自衛隊の実力を高く評価しているが、買いかぶり過ぎのような気がしないでもない)

多くの移民をアメリカに供給してきたメキシコも少子高齢化が進んでおり、2014年以降大量の移民が発生しているのは(メキシコ以外の)中米諸国である。その一方で今最も強硬な移民排斥派は第2世代以降のメキシコ系アメリカ人である。

中国経済の規模はいまだアメリカのそれよりかなり小さい。それなのにここ10年間の中国の貨幣供給量はアメリカを上回っており、二倍に及んだこともある。中国経済は、消費主導でも輸出主導でもなく貨幣主導型といわざるを得ない。


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