医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

男性型脱毛症用薬プロペシア

2006年04月13日 | 総合
男性型脱毛症(円形脱毛症などの疾患でなく加齢に伴い脱毛するもの)はジヒドロテストステロンが関与しており、これを阻害すれば治療できることが明らかになり、昨年日本でも発売が開始されました。

この薬は、図の赤枠で示されたII、III、IV、V型の脱毛症に有効です。今回は男性型脱毛症用薬プロペシアの有効性についてお伝えします。

Europian Journal of Dermatology. 2004;12::247.
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★☆☆)

20歳から50歳までの男性型脱毛症の男性405人を対象として、プラセボ群(137人)、0.2mg投与群(135人)、1mg投与群(133人)に無作為に分け、1年間観察されました。評価は投与状況を知らない第三者機関の熟練した皮膚科医師により投与前後の頭皮の写真を比較され、7段階に分類することでなされました。

結果は、3カ月の時点で改善した割合は、プラセボ群で8%、0.2mg投与群で25%、1mg投与群で23%で、6カ月の時点で改善した割合は、プラセボ群で9%、0.2mg投与群で44%、1mg投与群で49%、1年後に改善した割合は、プラセボ群で6%、0.2mg投与群で54%、1mg投与群で58%でした。

内服しても全員に改善が認められるわけではなく、効果が認められるのは約半数ですが、効果は1年間内服し続けなければ判定できません。

プロペシアには保険は利きません。厚生労働省から薬価収載されておらず定価はありませんが、1錠約250円ですから1年間で9万円です。内服をやめると元に戻ってしまいますから、効果があった場合はそのまま内服を続けることになります。

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勤務医は過労死が起きてもおかしくないとされる月100時間近い残業をしている

2006年03月29日 | 総合
病院の常勤医師の労働時間は週63.3時間に上っていることが3月27日、厚生労働省の医師の勤務状況調査(中間報告)で分かった。

労働基準法が定める週40時間労働に照らせば、過労死が起きてもおかしくないとされる月100時間近い残業をしている計算。患者の生命を預かり、高度な技術や細かい配慮を求められる医師の過酷な労働実態が浮かび上がった。

調査は、約230病院の医師1万1,600人余りが対象で、6,650人から回答を得た。1週間の労働時間では、回答した4,077人の常勤医師の最高は152.5時間で、平均は63.3時間。うち診療時間は、外来15.3時間、入院24.4時間の計約40時間で、自己研修や研究、教育などがその他の時間を占めた。

同じ病院に3年以上勤めている医師の3人に2人は「3年前より負担が増えた」と感じていた。理由として、62.3%が病院内の診療以外の業務を挙げ、教育や指導(49.4%)、外来患者数の増加(48.3%)が続いた。

診療科別にみると、最も多いのが産婦人科の週69.3時間。次いで小児科68.4時間、外科66.1時間となっており、不足が指摘されている産婦人科、小児科医が忙しいことを裏付けた形だ。非常勤医師の平均労働時間は週27時間だった。
(共同通信社)


この報告を論文のように評価し、報告の限界点を挙げてみると、
時間は多めに自己申告される傾向があるだろうということ
最高152.5時間というのは仕事以外の時間(睡眠・食事など)が週16時間しかなかった事になり、非現実的回答であったか、その週だけが特別多かったと考えられるため、情報として意味を持たないこと
1週間の労働時間を調査するのではなく1ヶ月の労働時間を調査するべきであったが、それでは回答率が下がってしまうこと
外科の66.1時間と比較して、産婦人科の週69.3時間や小児科68.4時間が多いと判断するには統計学的分析が必要であること

などが挙げられます。しかし、それらを差し引いて考えても、勤務医の労働時間の是正は不可欠であることは間違いないでしょう。


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老人1人の医療費78万円 2年連続で前年比増

2006年03月17日 | 総合
厚生労働省は3月8日、2004年度の1人当たり老人医療費が、前年度に比べ3.7%増えて78万円になるとの集計結果(見込み)を公表した。1人当たりの老人医療費は、介護保険が導入された2000年度から3年連続して前年に比べ減った後、03年度からは2年連続して前年比増となった。都道府県別に見ると、最も多いのは福岡県で96万5000円、2位は北海道の95万6,000円、3位は大阪府の91万3000円で、03年度と順位は変わらなかった。一方、最も少ないのは03年度と同じ長野県の63万5000円で、次いで新潟県の65万1000円、山形県の66万1000円。新潟、山形は03年度の順位が入れ替わった。老人医療費の総額は11兆6000億円で03年度に比べ0.6%のマイナス。02年度の医療制度改革で、老人保健制度の対象者を1932年9月30日以前生まれの人に限定したことで、03、04年度とも前年比で減となった。
(共同通信)

上にあげた図は、十万人に対する1年間の心筋梗塞の発症件数を都道府県別に分析したものです。

北海道の発症が多く医療費との関連の可能性が示唆されますが、福岡県と大阪府では発症率がそれほど多くないのに医療費が高いのは福岡県と大阪府に日本で有数の心臓病専門病院があることに関係しているのかもしれません。

老人医療費最がもっとも多い県は、最も少ない県の1.5倍という原因の究明が必要ですね。


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中国での臓器移植

2006年03月01日 | 総合
肝臓や腎臓の臓器移植を受けるため最近2年間に中国へ渡った日本人少なくとも7人が、手術直後に上海や遼寧省瀋陽などで死亡していたことが2月26日、分かった。これまでに中国で移植手術を受けた日本人が、計180人以上いる事実も判明した。中国の臓器移植では、ドナー(臓器提供者)が死刑囚である点など人権上の問題が指摘されている。厚生労働省の研究班と日本移植学会は、安全性を含めた実態把握に向け、渡航移植者の調査に乗りだした。
(時事通信)

中国外務省の劉建超副報道局長は2月28日の定例記者会見で、中国の一部医療機関が日本など外国からの臓器移植希望者を多数受け入れている実態について「正確に掌握しているわけではない」と述べ、具体的な状況をつかんでいないことを明らかにした。副局長は「臓器移植に関する医療行為は法律に基づき行われるべきだ。関連法に抵触してはならない」と強調したが、中国国内で臓器移植関連法が未整備となっている実情について具体的には言及しなかった。
(共同通信社)

中国での臓器移植を仲介しているサイトです
http://www.yeson.com.tw/jpn/
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中国で邦人108人臓器移植 死刑囚から提供

2005年12月31日 | 総合
(時事通信)
中国の遼寧省瀋陽市と上海市の病院で2004、05年の2年間に、計108人の日本人が腎臓や肝臓の移植手術を受けていたことが30日分かった。背景には日本国内の深刻なドナー(臓器提供者)不足があり、重症患者らが移植を待ち切れず、ひそかに中国へ渡っている。日本人の患者にとって、中国が海外最大のドナー国となっているのが実態だ。

中国では最近1年間に腎臓移植約6500件、肝臓移植約3000件が実施され、移植医療技術が急速に向上。ただ、ドナーの約9割を死刑囚が占めるほか、公平な臓器配分制度が確立されておらず、人権・法整備面の不透明さも大きい。中国での臓器移植は、今後議論を呼びそうだ。



(中日新聞)(東京新聞)
中国で日本人の臓器移植手術を仲介する中国国際移植支援ネットワークセンター(遼寧省瀋陽市)は30日、今年末までの2年間に、日本人計108人が腎臓、肝臓の移植手術を受けていたことを明らかにした。

日本国内のドナー(臓器提供者)不足が深刻なため、多くの重症患者が中国に渡航し、移植手術を受けている。同センターによると、移植手術は北京、上海、瀋陽の有名病院で実施され、これまでに腎臓が97人、肝臓が9人、腎臓・肝臓が2人の計108人が手術を受けた。諸費用は腎移植が600万円台、肝移植が1,300万円ほどで、米国などと比較するとはるかに安い費用で済むという。

ただ、中国人ドナーの95%は死刑囚とされ、倫理問題を指摘する専門家も多い。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは中国で昨年、約3,400人の死刑が執行されたと発表。これら死刑囚の臓器は移植手術に使われたとみられる。中国では年間6,000件の腎移植が実施されるが、移植が必要な患者は約5万人いるとされる。金銭的に恵まれた日本など外国人患者の増加は、中国人患者の手術の妨げになるとの指摘もある。

同センター代表は「死刑囚から臓器提供を受けていることは分かっている。だが、自分の身内や子どもが重症患者だったら、倫理問題を言ってはいられない。中国の医療技術は高く、今後も臓器移植をサポートしたい」と話している。

以上引用



同じ出来事でもこの二社で報道のニュアンスがかなり違う事に気が付きます。中日新聞・東京新聞は「倫理問題を言ってはいられない」という意見を本気で支持しているのでしょうか。実際、日本の医師は日本ほどの技術を持たない中国で移植した患者さんの術後管理で苦労していて、倫理的問題も含め日本の移植学会でもかなり問題になっています。

死刑囚からの臓器提供が可能なのは、それを仲介する日本の病院が実際に存在するからで、このような肯定的な記事は、病院名は言えませんが、それらの病院との癒着があるからです。

私は脳死・臓器移植に関しては肯定派でも否定派でもないのですが、死刑囚からの臓器提供には倫理的問題を強く感じます。こうした人体の徹底利用は、最後はどこに行きつくのだろうかと考える時、徳山大学教授・粟屋剛 氏の指摘が意味深いです。

「最後に残るのは肉である。その肉をそのまま食べればカニバリズムとして批判されるにちがいない。しかし、アミノ酸に加工し、錠剤になったものだったらどうだろうか。飢餓に苦しんでいる時に、口にする人も出てくるかもしれない」。

死刑囚からの臓器提供のみならず脳死・臓器移植は、「いわゆるソフィスケートされたネオ・カニバリズムへの一里塚」であると指摘しています。


ヒト組織を利用する医療行為の倫理的問題に関するガイドライン
http://www.asas.or.jp/jst/reports/guideline/ethicalguideline.html
ここにはこんなことが書かれてあります。
「ヒト組織の提供は、ドナー側の善意に基づいた社会全体に対して行われる公共性を持った崇高な行為である。提供を受けた組織バンク及び移植施設等は、ドナーの尊厳を確保し、ドナー側の意思と社会に対する善意を尊重して組織を取り扱わなければならない。」



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睡眠不足はホルモンを変換させ食欲を増進させる

2005年12月13日 | 総合
Annals of Internal Medicine. 2004;141:846.から最新の報告です。
(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★☆☆☆☆)

Sleep curtailment in healthy young men is associated with decreased leptin levels, elevated ghrelin levels, and increased hunger and appetite.

この研究では、健康な男性12例を被験者として、エネルギー摂取量と身体活動量を一定に管理した状況で、2日間の睡眠制限(1晩4時間)と2日間の睡眠延長に被験者をランダムに割り付けました。被験者の平均年齢は22±2歳、平均肥満指数(BMI)は23.6±2.0 kg/m2でした。評価項目は日中における食欲抑制ホルモンである血漿中レプチン濃度および食欲増進因子であるグレリン濃度の推移ならびに空腹感と食欲の自覚的評価点です。

結果は、睡眠制限中に、食欲抑制ホルモンのレプチンは18%減少(P=0.04)、食欲増進因子のグレリンは28%増大(P<0.40)、空腹感は24%増大(P<0.01)、食欲は23%増大(P=0.01)しました。特に炭水化物含有量の多い高エネルギー食に対する食欲が増大しました。(増大幅33-45%、P=0.02)。 つまり睡眠不足では食欲が亢進し太るという事です。減量を勧める時は十分な睡眠も勧めた方がよいようです。

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鉄と亜鉛のサプリメント

2005年11月16日 | 総合
米国心臓病学会も3日目が終わりました。巨大なコンベンションセンターを使った世界最大の学会です。マイナーな存在ですが鉄と亜鉛もサプリメントとして売られています。今回はそんなサプリメントについてです。
American Journal of Clinical Nutrition. 2005;81:787.からの最新の報告です。

鉄分が不足すると鉄欠乏性の貧血になります。特に女性に多く、鉄剤の処方の対象になりますし、鉄のサプリメントも売られています。ところが、飲酒の習慣がある人は気をつけなければいけません。

55歳から69歳の閉経後の女性34,492人が鉄と亜鉛のサプリメントの摂取状況と飲酒の状況が15年間アンケートで調査されました。アルコール分を10g/日以上飲酒している群では、鉄剤を摂取している群は摂取していない群に比較して動脈硬化性の心臓病の死亡率が2.47倍高く、逆に亜鉛のサプリメントを摂取している群はそうでない群と比較して0.37倍死亡率が低かったそうです。そしてアルコール分30g/日以上飲酒している群ではさらにそれらの傾向が強くなったそうです。

つまりアルコールの摂取が多い閉経後の女性が鉄剤を摂りすぎる事は危険です。反対に亜鉛の摂取は動脈硬化性の心臓病の死亡を予防します。

理由は亜鉛が抗酸化効果を持つのと対照的に鉄は酸化作用を持ち、アルコールが鉄の代謝を抑制するからです。

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グレープフルーツが影響を及ぼす薬剤

2005年11月13日 | 総合
グレープフルーツは飲用でも食用でも多くの薬物の代謝に大きな影響を及ぼしますから常用薬がある方は注意しなければいけません。

それは、グレープフルーツには肝臓に存在するシトクロムP450(CYP)の酵素活性を低下させる特異的なフラボノイドが含まれているためです。このため、CYP酵素系によって代謝される薬物の分解が阻害され、最高薬物血中濃度が高まります。他の柑橘類にはこのような作用は認められていません。

グレープフルーツが影響を及ぼす薬剤を以下に示します。

シンバスタチン(商品名リポバス)高脂血症の薬
フェロジピン(商品名スプレンジール)高血圧・狭心症の薬、カルシウムブロッカー
ニフェジピン(商品名アダラート、セパミット)高血圧・狭心症の薬、カルシウムブロッカー
サキナビル(商品名インビラーゼ)エイズの薬
タクロリムス(商品名プログラフ)免疫抑制剤・アトピー性皮膚炎の薬
シクロスポリン(商品名サンディミュン)免疫抑制剤
エリスロマイシン(商品名エリスロシン)抗生物質
カルバマゼピン(商品名テグラトール)てんかん・三叉神経痛の薬
アミオダロン(商品名アンカロン)抗不整脈剤
ベンゾジアゼピン系(商品名ハルシオン、ドルミカム、リスミー、ネルボン、ユーロジン、ロヒプノール、ドラールなどの睡眠薬)

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医療費の一定額を保険対象外に

2005年10月16日 | 総合
医療費抑制のため厚生労働省が今週公表する医療制度改革試案の全容が明らかになった。高齢者などの患者負担増や生活習慣病対策を実施。もう一段の医療費圧縮の追加策として、通院などの際にかかる医療費のうち、一定額までを保険適用の対象外として患者の自己負担とする「保険免責制度」の導入を盛り込んだ。(日本経済新聞)以上引用

これに対して日本医師会などは「症状が重くなるまで通院を避ける人が増え、かえって医療費が増える」と反論しています。患者が減り自分たちの収入が減る事に対する相変わらずの保身です。それならそう言えばいいのに、「かえって医療費が増える」と反論してしまうのは偽善です。

保険の対象外となるのは1,000円だそうです。よく考えてみて下さい。例えば診療代に5,000円かかったとすると、これまではその3割の1,500円が自己負担でしたが、最初の1,000円が保険の対象外となれば、残りの4,000円の3割の1,200円と最初の免責の1,000円の合計2,200円が自己負担額で差額は700円となります。しかし診療代に五万円かかった場合の差額は700円、十万円の場合も700円です。診療代が高くなるほど制度導入で増える自己負担の割合は少なくなります。診療代が5,000円というのは風邪で受診し抗生剤を処方されたぐらいの病状で、そういう方が通院を避け症状が重くなり国の医療費を押し上げる可能性はほとんどありません。アメリカでは、風邪で病院にかかっても「薬局で薬を買い(自己負担100%という意味も含めて)自宅で安静にしていて下さい」と言われるだけです。

それでは診療代に十万円かかる場合はどうか。この場合は重症の疾患もかなり含まれているかもしれません。しかし結果的に自己負担が約三万円かかるのに700円をケチって通院を止めるでしょうか。そういう方には診療代以外の理由があると考えるのが妥当です。

確かに軽微な症状に重大な疾患が隠れている場合もあります。しかし、それはむしろ予防医学の世界であり、それを主張するなら健康診断も保険でする必要がある事になってしまいます。

日本医師会の主張は、論理学では「二分法」という有名な詭弁法で、すべてを白か黒かに分類して割り切ろうとする論法です。すなわち、二つにきっぱりと分けることなどできない複雑な母集団を二つに分けてしまい(免責制度を採用すると通院を避ける人が増える。採用しないと避ける人は増えない)、話を過度に単純化して都合のいい結論を導こうとする方法です。

日本の借金を減らすため、国民一人一人が国のことを考えないといけない現在、医師会も国民もしっかりと考えてもらいたいものです。

ドキュメント日本医師会―崩落する聖域

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医者の腕を上げるための能力給制度は有効か

2005年10月15日 | 総合
勤務医の世界では報酬は相変わらずの年功序列制で、病院長など人格・人望といった要素が求められる立場を除いてほとんどが知識や技術よりも医者としての経験年数(すなわち年齢)で報酬が決まっています。従って、技術や知識を身につけても立場を変えることが難しいため、一般の企業ほど上昇思考は生まれないのです。この報告は、医者も一般の企業のように成果を上げた場合にそれに応じた給与があれば(pay-for-performance)、皆が競って腕を磨き合い医療技術が向上するのではないかという仮説に対する1つの回答でもあります。Journal of American Medical Association. 2005;294:1788.からの報告です。(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★☆☆)

疾患の診断率や患者さんの病状が改善したらボーナスが与えられる群(カリフォルニア医師グループ)とそうでない比較対照群(米国北西部医師グループ)で、2001年10月から2004年4月に約300の大規模医師団体に医療の質の改善がみられたかどうかを記載した報告書を配布して調査されました。評価する項目は子宮頸癌の診断率、乳ガンを検診するマンモグラフィーという画像の読影による乳ガンの診断率、患者さんのヘモグロビンA1c検査という糖尿病の指標が改善したかという三つで、それらの改善によって臨床の質が測られました。

臨床の質の改善は、子宮頸癌スクリーニングについてはカリフォルニア医師グループ5.3%対米国北西部医師グループ1.7%、マンモグラフィーについては1.9%対0.2%、ヘモグロビンA1c検査については2.1%対2.1%でした。米国北西部医師グループと比較して、カリフォルニア医師グループで能力給制度導入後に質が改善したのは子宮頸癌検診のみでした。しかも改善の差は3.2%にすぎませんでした(P=0.02)。

診断技術や質の向上には限界があるという本調査の限界はあるものの、三つのすべての評価基準について、もともとボーナスの対象になるような質の高い医療を提供していた医師がもっとも改善の伸び率が低かったが、ボーナスの取り分も一番大きかったようです。つまり「全員が同じパフォーマンス目標の達成ができるよう能力給を導入しても、支出に見合った質の改善をほとんどもたらさない可能性があり、もともと高パフォーマンスの医師が多額の報酬を得ることになる」という結果でした。

医師に能力給制度を導入しても、能力のある医師の取り分が増えるだけで能力を向上させるモチベーションにはならないという報告でした。確かに、能力を向上させるモチベーションとしてボーナス制を取り入れるなら、例えば五段階で1の医者が2になった場合と4の医者が5になった場合のボーナスを同じにする必要があります。しかし、それでは5の医者はどうするのかという問題や、4が5になった医者より1が3になった医者のボーナスが多いという問題も生じます。難しい問題です。

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手術数と治療成績は関係があるという根拠はない

2005年09月23日 | 総合
厚生労働省は21日、来年4月の診療報酬改定で、一定数以上の手術件数を満たした病院に対する報酬加算を廃止する方針を固めた。同制度は医療の質を高めることを狙って導入されたが、手術件数と患者の生存率向上など治療成績との因果関係が見られないとする調査結果が発表され、制度の存在意義が薄れたと判断した。

制度は、1年間に実施された手術数が一定数に満たない病院の手術料を3割減額する仕組みとして2002年4月にスタート。しかし「手術数の少ない過疎地の病院などで必要な手術ができなくなる」などの声を受け、04年度からは、患者への積極的な情報提供などの条件を満たせば減額をしないことにし、一定の手術数を満たした場合には報酬を5%加算する仕組みに変更した。

こうした中、今年6月、外科手術に関連した学会でつくる外科系学会社会保険委員会連合が723施設、22万件のデータを分析し、手術件数と治療結果との因果関係が相関しているとは言えないとする調査結果を発表した。

同省はこの結果を受けた形で廃止を検討。「制度導入時は、手術数と治療成績は関係があるとの米国の研究結果を参考にしたが、それに反論する研究まで確認できていなかった。根拠がない以上、制度を続けられない」(保険局)としている。

ただ、医師個人では技量と手術件数の関連はあるとみられ、同省は難易度や時間、技術力を踏まえた新たな評価方式を検討する方針だ。以上引用(共同通信社)

少し考えれば、こんな制度は間違っている事はすぐにわかります。手術数を増やすために、手術をするかしないかの境界にいた患者さんが手術になってしまう事がよくありました。


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開業医の医療費の自己負担

2005年09月17日 | 総合
医師や弁護士、建設業などの同業者で作る166の国民健康保険組合(国保組合)のうち、42%に当たる69組合が患者の医療費の自己負担を2割以下にしていることが厚生労働省の調べで分かった。国保組合へは医療給付費の32%の国庫補助があり、さらに財政力に応じて1~20%が上乗せされる。2003年度は全組合で3,241億円の補助金が支払われており、自己負担三割で原則国庫補助のないサラリーマンらが加入する健康保険組合などは不公平と批判、来年の医療制度改革で国庫補助を見直すべきだと主張している。

前回の医療制度改正で、03年度から健保組合の本人負担も二割から三割に引き上げられ、すべての公的医療保険の自己負担は原則三割となった。ただ、負担割合は最高限度を定めたもので、保険財政の健全性を損なう恐れがなければ、自己負担を下げることが可能で、これら69の国保組合は財政に余裕があるとみられる。

国保組合は(1)医師、歯科医、薬剤師の92組合(69万人)(2)建設関係従事者の33組合(221万人)(3)弁護士や魚市場といった市場従事者など一般業種の41組合(113万人)に分類される。03年度は81組合が赤字だったが、全体の収支は45億円の黒字。一世帯当たりの平均保険料は市町村が運営する国民健康保険の約1.5倍となっている。自己負担が二割以下の69組合は、二割が67組合、一割が2組合。一割のところは10月に二割と三割に引き上げる。(東京新聞)以上引用

この記事は恣意的に勤務医の事を説明せず、医師という事でひとくくりにしていますが、勤務医は基本的にサラリーマンですから自己負担は三割です。

日本の借金を減らすため、国民一人一人が国のことを考えないといけない現在、これではちょっと不公平ですね。

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女性ホルモン・エストロゲン補充療法は骨粗鬆症に有効か

2005年09月13日 | 総合
もともと閉経後の骨粗鬆症はエストロゲンの減少が原因の一つですから、それを補充すれば骨粗鬆症も良くなるのではないかというのはごく当然の発想といえます。欧米では長い間第一選択の薬物療法でした。ちなみに我が国ではエストロゲン製剤はエストロゲン、エストラジオール、エストリオールの三種類あります。

しかしその後の大規模臨床試験で驚くべき事実が判明しました。Journal of American Medical Association. 2002;288:321.からの報告です。(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★★)

対象は16,608人の閉経後の女性です。エストロゲン製剤を単独で長期使用すると子宮内膜の異常増殖を誘発する危険があるため、プロゲステロン製剤も併用されました。この試験は閉経後の米国女性における喫煙・運動などの生活習慣や治療が心脳血管疾患や癌、骨粗鬆症などにどのような影響を与えるかを前向きに(過去をふり返るのではなく、その時点から未来にわたり調査する事)調査されました。

平均試験期間5.2年の時点で、エストロゲン製剤+プロゲストロン製剤投与群(8,506人)で、非投与群(8,102人)と比較して骨折と直腸・結腸癌のリスクは有意に減少しましたが、浸潤乳ガン発症のリスクはあらかじめ想定していたリスクの範囲を逸脱して高かった(非投与群に対して1.26倍、290人)ので、この時点でエストロゲン製剤+プロゲストロン製剤を投与する事は中止されました。その他脳卒中(212人、1.41倍)、肺梗塞(101人、2.13倍)のリスクが高まりました。またエストロゲン製剤単独投与群では平均試験期間6.8年の時点で脳卒中のリスクにも同様な結果が得られたためエストロゲン製剤単独投与も中止されました。

これらの決定が広く報道された結果、エストロゲン補充療法に対する考え方が世界中で変わりました。骨折やある癌を減らしても別の癌を増やしてしまうようでは治療として成り立ちませんね。この件に関して我が国の対応は遅れており、ホーリンとかエストリールというエストリオール製剤にはいまだに老人性骨粗鬆症という適応がついています。長期投与を避ける(長期投与って何年の事?5.2年で乳ガンが増えるのですよ。それに骨粗鬆症に長期投与しない事がありえるの?)とか、閉経直後の更年期障害の副次的な使用(じゃあ別の薬を投与すべきでしょう)とか苦し紛れの注釈があります。

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骨粗鬆症に有効な薬は一体なに?

2005年09月09日 | 総合
さて骨粗鬆症に対する古典的な薬としてカルシウム製剤、カルシトニン製剤、エストロゲン製剤、活性型ビタミンD3製剤があります。高コレステロール血症の場合に、たとえコレステロールが高くても心筋梗塞にならなければいいのと同様、骨の密度が減ったといっても骨折をしなければいいわけで、今回はその辺について調べてみました。まずカルシウムそのものを投与するというカルシウム製剤ですが、Endocrine Reviews 2002;23:552からの報告です(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★☆)。ちなみにこのEndocrine Reviewsってインパクトファクターが25以上もあるんです。

研究の対象は閉経後の1,806人の女性でカルシウム製剤内服群と非内服群で腰椎と骨盤と前腕の骨密度と骨折の頻度が比較されました。結果は、最低1年間の観察でカルシウム製剤投与は有意に(2.05%)骨密度を上昇させましたが、脊椎に骨折の既往を有さない患者に骨折予防効果がなかったばかりか、脊椎に骨折の既往を有する患者でも有意な骨折予防効果は認めませんでした。つまりカルシウム単独の投与は骨密度を上げるけれど、骨折は防げないという事です。

それではビタミンD製剤はどうでしょうか。Endocrine Reviews 2002;23:560からの報告です(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)。これは25の研究をまとめたメタアナリシスなのですが、カルシウム製剤に加えてビタミンD製剤を内服していた群では脊椎骨折は37%減少しました。厚生労働省から出されたガイドラインに、ビタミンD製剤はカルシウム骨代謝関連の作用以外にも筋力増強作用による転倒頻度の減少や認知機能の改善による転倒頻度の改善の可能性があると報告されています。

牛乳に骨折の予防作用があるのは、牛乳がカルシウムとビタミンDを両方含んでいるからなのでしょう。つまり、骨を強くするという点では、コンビニでカルシウム製剤だけ買って飲んでいても無駄という事です。

こんな事を調べていたら、私も毎日牛乳を飲むようになりました。子供たちは3人で一日2リットルの牛乳を消費しています。買い込むのが結構重いのです。

今は何位かな?
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国内でがんにかかる人の3・2%は、医療機関での放射線診断による被ばくが原因の発がんと推定される

2005年09月04日 | 総合
Lancet. 2004;363:345からの報告です。
(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★★)

この研究は、各国のエックス線、CT(X線断層撮影)など放射線検査の頻度や、検査による被ばく量、さらに年齢、性別、臓器ごとに示した放射線の被ばく量と発がん率の関係についてのデータなどを基に、検査に伴う75歳までの発がん者数を推定しました。日本は年間7,587件で、がん発症者の3.2%として、調査が行われた英米など15か国の中でも最も高かったそうです。日本以外では、英国、ポーランドがともに0.6%で最も低く、米国0.9%、最も高いクロアチアでも1.8%でした。日本は、1,000人あたりの年間検査回数が最多の1,477回で、15か国の平均の1.8倍。発がん率は平均の2.7倍で、1回の検査での被ばく量が他国より高いことがうかがえました。本論文は、通常のエックス線検査より放射線量が多いCT検査の日本での普及が影響していると指摘しています。

CTは、エックス線を使ってコンピューターで画像にする装置。国連科学委員会報告によると、日本は人口100万人あたりの普及台数が64台で、2位のスイス(26台)を引き離し、世界一多いそうです。CTには年間の検査回数や撮影枚数に制限がなく、機器の精度や技師の腕により被ばく量が異なります。

日本放射線技師会は2000年、医療被ばくの指針を定め、撮影部位ごとの目標値を策定。さらに見直し作業を進め、来年度にCT検査の実態調査を行う予定です。今後、検査のあり方を巡り波紋を広げそうです。

日本の医療を問いなおす―医師からの提言
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