医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

糖尿病では以前につまった心臓の血管を流れるようにしても生命予後は改善されない

2006年11月21日 | 循環器
心筋梗塞をおこすと胸が苦しくなったり胸痛が出現したりしますが、まれにその症状が弱く病院に行かないですんでしまったりする事があります。そういう場合はその後の心臓カテーテル検査で以前につまった部分が偶然発見される場合があります。心臓の筋肉(心筋)は約24時間血液の供給が途絶えると死んでしまいますから、以前につまった部分の心筋は既に死んでいることが多いのです。

この事から考えると、以前につまった心臓の血管を流れるようにしても死んだ心筋は蘇らずに、そういった治療の意義はないと考えられます。

しかし、心臓の血管は3本あり、心筋梗塞の時に1本がつまっても隣の血管から血液をもらい心筋の障害を最小限にとどめる作用があります。そうすると、以前につまった血管の場所の心筋が死んでいても、その後、その血管を流れるようにしておけば将来隣の血管がつまった場合に血液を供給する働きをして、患者さんの寿命が延びるのではないかという推測から「以前につまった心臓の血管を流れるようにする風船治療」がさかんに行われています。

この治療は細い針金を心臓の血管のつまった部分にもっていき、レントゲン透視を見ながらトンネルを掘るように慎重に道を作っていくというもので、職人技が要求されます。

本当にそのような「転ばぬ先のつえ」のような働きをして寿命を延ばすのかという証明はあまりありませんが、糖尿病の患者さんを対象とした研究の結果が最近発表されました。

Success rates of percutaneous coronary intervention of chronic total occlusions and long-term survival in patients with diabetes mellitus.
DiabeticVascular Disease Research. 2006;3:45.
(インパクトファクター:最近刊行されたばかりなのでまだない、研究対象人数★★★★☆)

対象は「以前につまった心臓の血管を流れるようにする風船治療」を受けた、心臓の血管が最低1本は完全につまっていた506人の糖尿病患者さんです。

「以前につまった心臓の血管を流れるようにする風船治療」が成功して流れるようになった群と、失敗して流れるようにはならなかった群を比較すると、1年後の死亡率は前者で22.2%、後者で26.8%と統計学的に差がありませんでした(p=0.30)。

つまり、糖尿病の患者さんでは、糖尿病であることによる悪影響の因子が、心臓の血管がつまったままかそうでないかという因子より影響が強く、1年後の死亡率は「以前につまった心臓の血管を流れるようにする風船治療」で流れるようにしても改善されないということです。

しかし現実は、糖尿病の患者さんに対しても「以前につまった心臓の血管を流れるようにする風船治療」がさかんに行われています。

FIREBIRDさんのブログ風ですとこんなぐあいです。

K部長「今日はここの完全閉塞を通す」

D医員「で・でも、血液を供給している範囲はごく限られていますよ。それにこの方、糖尿病だし・・・・」

K部長「そんなことはどうでもいい!ワシの職人技を見るがよい。それにそうした方が病院が儲かるし、症例の数も増え他の病院に自慢できるのだ!さらにあの会社のワイヤーを宣伝してやれば、今度の学会の時にきっといいことがある!」

という具合です。

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コメント (1)
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