医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

心臓病の治療薬の一部のジェネリック薬品には先発品と同等の臨床的効果あり

2009年03月24日 | 薬・総合
新薬の研究開発には莫大な費用がかかり、晴れて商品として市場に出回る時に研究開発費も考慮して薬価が設定されます。そういった先発品も発売から10年たつと特許が切れて、他社が生産できるようになります。その薬剤の薬価は、開発費がかかっていないぶん新薬よりも安くなります。これが後発品(ジェネリック薬品)です。

医者や患者のなかには後発品(ジェネリック薬)が先発品(ブランド薬)に劣ると考えている向きもありますが、先日、日本経済新聞で以下のような記事を読み、私も同感でしたので調べてみました。

「医療関係者の間に後発品に対する不安があるわけですから、その不安を打ち消すだけの十分な根拠に基づいた様々な情報提供が必要です。メーカーだけではなく、旗を振る政府にも責任があります。患者からすれば、安くていいものがあれば、それに越したことはないのですが、通常はそれを選ぶ専門知識がありません。医師や薬剤師が専門家として役割を果たすことも求められます。」

調べてみると、昨年発表された「心血管疾患の治療に関する複数の研究を調べた結果、後発品(ジェネリック薬)が先発品(ブランド薬)に劣っているという証拠はない」という以下の研究論文が信頼できる医学雑誌に載っていました。


Clinical equivalence of generic and brand-name drugs used in cardiovascular disease: a systematic review and meta-analysis.
JAMA 2008;300:2514.
(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★★)

この研究では1984年~2008年8月に発表された47件(そのうち38件がランダム化試験)の研究のメタアナリシスと、同時期に発表された論評の内容が検討されました。

結果は上の図(左寄りが先発品の方が有効、右寄りが後発品の方が有効です。全ての薬剤で中心の線にオーバーラップしていますので、片方が有効ということはありません)にあるように、βブロッカー、カルシウム拮抗剤、ACE阻害薬、αブロッカーといった高血圧治療薬、心不全や高血圧の治療に使われる利尿薬、血液をさらさらにする抗血小板薬やワーファリン、悪玉コレステロールを低下させる脂質異常症治療薬スタチン、クラスⅠ群抗不整脈薬のいずれも後発品(ジェネリック薬)の効果が先発品(ブランド薬)より劣っているということはありませんでした。

忍容性も同等でした。

また、それにもかかわらず、研究の論評では53%の医者が後発品(ジェネリック薬)に否定的な見解を示していました。

著者らは、研究の結果とその解釈が一致しない理由に「論評では医者の経験的感覚(要するに感情でしょう)の影響を受けている」点と、「論評委員と製薬会社との間の金銭的な関係が論評の結論に影響している可能性が否定できない」と述べています。

また、「後発品(ジェネリック薬)に対する事実無根の不信をこれ以上助長させないために、根拠にのみ基づいて吟味すべきである」と述べています。

私もその通りだと思います。

医者の皆さん、患者に以下の薬を処方するときに「後発品(ジェネリック薬)の効果は怪しいです」なんて言わないようにしましょう。

もう一度、先発品(ブランド薬)と後発品(ジェネリック薬)の効果と忍容性が同等の薬の名前を挙げておきます。

βブロッカー
カルシウム拮抗薬
ACE阻害薬
αブロッカー
利尿薬
抗血小板薬
ワーファリン
スタチン
クラスⅠ群抗不整脈薬


「感情」と「賄賂」で医療をしてはいけませんね←これは論文に紹介されたアメリカ人の医者のことです。


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コメント (15)
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