先日、大腸ポリープの予後をお伝えしましたが、高齢者に対する治療戦略は少し違うので、その根拠となっている論文をお伝えします。
50歳を越えると年々大腸ガンの発症率は上昇していくので、もちろん便潜血検査は不可欠ですが、便に血液が混ざっていた場合の精密検査(注腸検査:おしりからバリウムを浣腸してX線写真を撮る検査)で大腸ガンの前駆状態といわれるポリープが見つかった場合に、何歳の高齢者まで大腸内視鏡でポリープを切除するのがよいのかは、これまで検証されていませんでした。
Screening colonoscopy in very elderly patients. Prevalence of neoplasia and estimated impact on life expectancy.
The Journal of the American Medical Association. 2006:295;2357.
(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★★)
対象は何の症状もない、50~54歳のグループ1,034人、75~79歳のグループ147人、80歳以上のグループ63人で、まず大腸内視鏡検査が行われました。
ポリープが見つかった割合は、50~54歳のグループで13.8%、75~79歳のグループで26.5%、80歳以上のグループで28.6%と年齢が高くなるにつれて有病率も高くなりました。
ポリープの発見によりそれを切除した場合の寿命が、切除しなかった場合の寿命と比較してどれくらい長くなるかをシミュレーションで計算したところ、50~54歳のグループで0.85年、75~79歳のグループで0.17年、80歳以上のグループで0.13年でした。
80歳以上の患者さんではポリープ(大腸ガンではない)が見つかってそれを切除しても、寿命はほとんど変わらず、大腸内視鏡治療による合併症の発症率の方が高くなるので、十分な考慮が必要だと結論づけています。
著者らはこのような結果がでた原因として以下のことを上げています。
大腸ガンの前駆状態といわれる小さなポリープが実際に大腸ガンになるのに11年かかる
Premalignancy of the mucosal polyp in the large intestine, II: estimation of the periods required for malignant transformation of mucosal polyp.
Dis Colon Rectum. 1975;18:494.
6~10mmのポリープが大腸ガンになるのに7.75年、1cm以上のポリープが大腸ガンになるのに5.27年かかる
A case-cohot study for the disease natural history of adenoma-carcinoma and de novo carcinoma and surveillance of colon and rectum after polypectomy: implication for efficacy of colonscopy.
Br J Cancer. 2003;88:1866.
ポリープが大腸癌になる進行は遅く、5年で2.5%、10年で8%、20年で24%である
Natural history of untreated colonic polyps.
Gastroenterology. 1987;93:1009.
大腸内視鏡治療の合併症(腸に穴があく、出血が止まらない)の発生率は0.1%~0.5%で、高齢者では5倍である
Procedual success and complications of large-scale screening colonscopy.
Gastrointest Endosc. 2002;55:307.
頻回の大腸内視鏡検査は必要ないという事ですね。でも便潜血検査は必ず受けましょう。
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50歳を越えると年々大腸ガンの発症率は上昇していくので、もちろん便潜血検査は不可欠ですが、便に血液が混ざっていた場合の精密検査(注腸検査:おしりからバリウムを浣腸してX線写真を撮る検査)で大腸ガンの前駆状態といわれるポリープが見つかった場合に、何歳の高齢者まで大腸内視鏡でポリープを切除するのがよいのかは、これまで検証されていませんでした。
Screening colonoscopy in very elderly patients. Prevalence of neoplasia and estimated impact on life expectancy.
The Journal of the American Medical Association. 2006:295;2357.
(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★★)
対象は何の症状もない、50~54歳のグループ1,034人、75~79歳のグループ147人、80歳以上のグループ63人で、まず大腸内視鏡検査が行われました。
ポリープが見つかった割合は、50~54歳のグループで13.8%、75~79歳のグループで26.5%、80歳以上のグループで28.6%と年齢が高くなるにつれて有病率も高くなりました。
ポリープの発見によりそれを切除した場合の寿命が、切除しなかった場合の寿命と比較してどれくらい長くなるかをシミュレーションで計算したところ、50~54歳のグループで0.85年、75~79歳のグループで0.17年、80歳以上のグループで0.13年でした。
80歳以上の患者さんではポリープ(大腸ガンではない)が見つかってそれを切除しても、寿命はほとんど変わらず、大腸内視鏡治療による合併症の発症率の方が高くなるので、十分な考慮が必要だと結論づけています。
著者らはこのような結果がでた原因として以下のことを上げています。
大腸ガンの前駆状態といわれる小さなポリープが実際に大腸ガンになるのに11年かかる
Premalignancy of the mucosal polyp in the large intestine, II: estimation of the periods required for malignant transformation of mucosal polyp.
Dis Colon Rectum. 1975;18:494.
6~10mmのポリープが大腸ガンになるのに7.75年、1cm以上のポリープが大腸ガンになるのに5.27年かかる
A case-cohot study for the disease natural history of adenoma-carcinoma and de novo carcinoma and surveillance of colon and rectum after polypectomy: implication for efficacy of colonscopy.
Br J Cancer. 2003;88:1866.
ポリープが大腸癌になる進行は遅く、5年で2.5%、10年で8%、20年で24%である
Natural history of untreated colonic polyps.
Gastroenterology. 1987;93:1009.
大腸内視鏡治療の合併症(腸に穴があく、出血が止まらない)の発生率は0.1%~0.5%で、高齢者では5倍である
Procedual success and complications of large-scale screening colonscopy.
Gastrointest Endosc. 2002;55:307.
頻回の大腸内視鏡検査は必要ないという事ですね。でも便潜血検査は必ず受けましょう。
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