医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

急性心筋梗塞では別の部位が半分以上狭くなっていれば同時に治療したほうがよい

2013年09月02日 | 循環器
学会で発表するためにアムステルダムに来ています。
さきほど驚くべき研究結果が発表されました。

心臓の血管が完全に詰まってしまう急性心筋梗塞になった時、風船治療(およびステント治療)で詰まったところを広げて血液が流れるようにします。その際、その血管の詰まった以外の場所に半分以上狭くなった箇所があれば(例えば、血管の直径が4mmの場合、2mm以下に細くなっているという意味です)、同時にその個所を風船治療(ステント治療)をしておくのがいいか、しなくてもいいかを調べた研究です。

半分以上狭くなった箇所といっても、その筋肉の部位に血液不足が証明されなければ、現行の健康保険ではその治療は認められていません。

このPRAMI 研究では、急性心筋梗塞になった465人が、同時に風船治療(ステント治療)する群としない群に割り当てられ、その後3年間の死亡、心筋梗塞の発症、狭心症の再発が調べられました。

両群であまりにも差がついたので、倫理的な問題により途中で早く研究が打ち切られたそうです。

結果は、上の写真のように(前の聴衆の頭でスライドの下のほうが見えないのはスクリーンの設置のミスです)、急性心筋梗塞の時に、血管の詰まった以外の場所に半分以上狭くなった箇所があれば、同時に風船治療しておく群で21人、しない群で53人と、しておく群でその後の患者の予後は改善されました。

患者の皆様に誤解があるといけないのでもう少し説明しますと、これは心臓の血管に細いところがあると予想されるので何月何日に検査して狭いところがあれば風船治療しましょうという予定手術のことではありません。急性心筋梗塞で緊急入院して緊急に風船治療(ステント治療)したという場合です。

この方法で、患者の予後が改善されるのであれば、今後、この同時治療が健康保険で認められるようになるということです。

この結果は、先ほどの発表と同時にNew England Journal of Medicineに掲載・発表されました。

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1305520?query=featured_home

素晴らしい研究でした。今までの医療行為の適応を根本から変えてしまう結果です。2000人以上の聴衆は、結果が発表されると一斉にザワメキ始めました。

改善されたのが、死亡、心筋梗塞の発症、狭心症の再発のうち、狭心症の再発だけなら、「なんだ~それぐらの改善?死亡は減少させないの?」ということになりますので、原文が手に入りましたら、詳しいことは再度お伝えします。

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