医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

LDLコレステロール値は140mg/dlでも大丈夫

2008年03月10日 | 生活習慣病
Risk of coronary events in Japanese patients with both hypercholesterolemia and type 2 diabetes mellitus on low-dose simvastatin therapy: implication from Japan Lipid Intervention Trial (J-LIT)
Atherosclerosis. 2007;147:440.
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★★)

この研究は日本で行われました。4,1801人を対象にシンバスタチンというLDLコレステロール低下薬を5-10mg/日内服してもらい、5.4年間の心筋梗塞と心臓を原因とする突然死の発症が調べられました。

この研究はもともと、糖尿病の患者の予後がそうでない方と比較してどう違うかを調べたものですが、その主旨以外に興味深い結果がでています。

この研究では全員がLDLコレステロール低下薬を内服しているという条件の違いはありますが、上の図にあるように、糖尿病の患者も(左)そうでない方も(右)、LDLコレステロール値が4.14モル(コレステロールは1ミリモル/Lが約38mg/dlですから、157mg/dlです)までは、それ以下の群と比較して心臓を原因とする突然死と心筋梗塞の発症に差がないことがわかります。


欧米のデータではLDLコレステロール値は下げれば下げるほど生命の予後に良い効果があるとされ、製薬会社はLDLコレステロール低下薬の販売を促進させようと、こぞって欧米のデータを利用していますが、日本人では糖尿病などの危険因子のない一次予防(心筋梗塞などの既往がない)の患者の場合、LDLコレステロール低下薬を内服してさえいれば、LDLコレステロール値が140mg/dlであっても心臓を原因とする突然死と心筋梗塞の発症に差がないようです。


「特定保健指導」が始まり、生活指導だけにとどまらず、LDLコレステロール低下薬の余計な処方が増えるようなことがあるとすれば、それは重大な問題だと思います。



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4 コメント

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はじめまして (坂本直之)
2008-05-03 21:40:35
はじめまして、坂本と申します。
とても参考になるブログですね。
私も糖尿病合併していない患者での日本人と欧米での心血管イベントの発症リスクの違いが常々気になっているところです。薬剤の処方について最近、エゼチミブの問題がクローズアップされ話題になったと思いますが、スタチンの処方の適切性も見なおすべき部分があるのでしょうね。
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死亡率だけを比較するのは無意味です (匿名)
2008-12-17 00:36:19
コレステロールの低い人の中には、悪性疾患の「結果」としてコレステロールが低い人が少なからず含まれています。それゆえに死亡率だけで見ると、コレステロールはU字カーブになるのですが、これはコレステロールが低いことが死亡率を上げる「原因」ということは全く意味しません。つまり、「相関」だけでは「原因」と「結果」は区別できず、「因果の逆転」と言われる解釈の間違いが起こりえるわけです。浜六郎先生とか、未だに頭の悪い一部の医者はこの間違いに気付いていないようですが、先生ももしかするとそうかもしれませんので、お知らせしておきます。
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コレステロール値153なんです。 (トドおばさん)
2009-01-09 12:33:29
ドクターが薬物療法を進めるけど食事療法ってできないものなのかしら?
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大丈夫? (kresnik)
2009-08-28 08:47:19
 この問題については、議論のあるところで、同様のスタディが多く行われていると思います。一つのスタディだけで結論づけるのはどうかなという気がします。
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