医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

大津市教育委員会、生徒のいじめ見て見ぬふり (その2)

2012年07月11日 | 雑感
大津市のいじめによる自殺事件(殺人事件かもしれない)で、加害者の実名が公に流れたことには賛否両論があります。昨夜はテレビで夜回り先生こと水谷修氏は「実名の公表もいじめである」と貴重なコメントを述べていましたが、私はそのコメントには重要な論点が欠けていると感じました。

本ブログは、長らく読んでいただいている皆さんにはお分かり頂いていると思いますが、ありきたりな意見と情報の場ではありませんので、今回も誤解を恐れず、斜め後ろからみた意見を述べさせていただきたいと思います。

私は今日まで加害容疑者の実名が流れたことに「賛成」の立場です。その理由を以下に述べます。

本件は、加害容疑者がいじめで被害者をボコボコにしたのではなくて、ナイフで被害者を刺して重傷を負わせたと置き換えると解りやすいと思います。そして被害者はキズによる痛みに耐えきれず自殺した。しかし、被害者の父親が警察に被害届を出しても、被害者は亡くなっているし加害者が警察OBの孫だからと被害届が受理されなかった。そして、加害者はナイフを持ったまま、平然とどこかの中学校に通学しているとしたら・・・

これならどうでしょうか、警察が容疑者を法的監視下に置かないのですから、次は私たちや私たちの子供が刺されるかもしれません。私たちは加害容疑者が誰であるのか特定し情報を共有しようとするでしょう。これは一種、私たち自身の命を守る防衛反応でもありました。世間がこういう反応を示したのは被害届を受理しなかった警察の責任といえるのです。水谷修氏は、この辺のことがわかっていませんでした、というか、公共の電波を使ってコメントするのですから、実名の公表には反対の立場を取らざるを得ません。

さてこの事件は、加害容疑者が被害者に暴力をふるっていた目撃者が大勢いるのですから、被害者が負傷していれば傷害罪(刑法204条、14歳未満なら少年法が適用)、負傷していなければ暴行罪(刑法208条)です。私は以前、刑事訴訟法を少し勉強しアマゾンでもレビューを書きました。

伊藤真の刑事訴訟法入門―講義再現版

あくまでも少年法が適用されない場合ですが、刑事訴訟法では、容疑者は住所もあり逃亡の危険性もないので逮捕(最大72時間身柄を拘束することができる短期の身柄拘束処分)はされません。任意捜査においては黙秘権(刑事訴訟法311条)があるので、容疑者は不利になることは供述しません。一方、証人(周りの中学生は実際の暴行の現場を目撃している)に関しては、犯罪の捜査に欠くことができない知識を有すると明らかに認められる者が、供述を拒んだ場合には、検察官は裁判官にその者の証人尋問を請求することができます(刑事訴訟法226条)ので、目撃者の証言による捜査は進むと思います。

問題はここからです。公訴は、検察官が行う(刑事訴訟法247条)のですが、刑事訴訟法248条に、犯罪の性格、年齢及び境遇、犯罪の重軽及び情状並びに犯罪後の状況により訴追を必要としないときは公訴を提起しないことができるとあり、検察官は警察とお友達ですから、容疑者が警察OBの孫である本件の場合、検察官は容疑者を公訴しない可能性があります。公訴しなければ刑事裁判にもなりません。この辺が今後の成り行きを見守らなければならない点です。公訴するかどうかは8月中に決めると言っています。

本日7月11日、滋賀県警察は加害容疑者の任意での取り調べを開始しました。加害容疑者が法による監視下に入ったのです。そして、父親は被害届けを提出の予定です。届けが受理され傷害罪あるいは暴行罪容疑で捜査が開始されます。

「正義」の実現には、相対する大きな2つの柱があります。マイケル・サンデル教授のこれからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)を書籍やDVDで勉強していただくと理解しやすく、これからも起きうるであろう様々な案件に対して明確な意見を持つことができるのでお勧めです。

夏休み2日目 この講義が行われているホールは、私にとってはとても懐かしいホールです。

大きな2つの柱の一つはイマヌエル・カントが提唱した「道徳主義」の立場で、もう一つはジェレミ・ベンサムが提唱した「功利主義」の立場です。加害容疑者の実名が流れたことに反対の立場や夜回り先生こと水谷修氏の立場は「道徳主義」の立場です。「功利主義」では最大多数の最大幸福が尊重されます。私たちが次ぎに被害に遭うかもしれないので、容疑者の情報を共有しようとする立場がこれに相当します。詳しいことはマイケル・サンデル教授の著書に譲りますが、この2つの対立する主義は、どちらか一方が正しくて、どちらか一方が間違っているというものではありません。

ネットで広がった加害容疑者の実名が実際の容疑者のものでなく架空の人物のものであれば、そのソースが恥ずかしいだけですし、もし別の誰かが間違いで公表されたのであれば、その誰かはソースに対して名誉毀損の損害賠償として百数十万円は得られるはずです。真容疑者は大津市周辺では周知のことですから、この点では、真犯人が誰にもわかっていなかった松本サリン事件とは根本的に違うのです。私は以前、松本サリン事件に関する書物を読んで全貌を理解し、アマゾンでレビューを書きました。こちらもお勧めです。

「疑惑」は晴れようとも―松本サリン事件の犯人とされた私 (文春文庫)

昨日、大津市教育委員会は生徒に対して行ったアンケートの中に「自殺の練習」や「葬式ごっこ」の記載があったにもかかわらず、そんな重要なことに気が付かなったと記者会見で言いました。つまり、大津市教育委員会のメンバーは相当に認知能力が低下していた信頼性の低い連中であると言わざるを得ません。それならば、大津市教育委員会が結論付けた、「いじめと自殺は関連がない」は相当認知力のない連中が行っていて、極めて信頼できないという結論になります。大津市教育委員会、人間の形をしただけの蝉の抜け殻の連中です。

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