前回、魚肉に多く含まれるイコサペント酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)などのオメガ-3脂肪酸エチルをサプリメントとして摂取すれば、動脈硬化性疾患が減少するという「推測」のもとに、武田薬品工業株式会社からEPA+DHA製剤であるロトリガに健康保険が効く承認がなされたということをお伝えしました。
ロトリガの成分であるイコサペント酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)を摂取して、死亡や心筋梗塞や脳梗塞が減るのかを調べる研究は多くなされていて、昨年、それらの研究をまとめて解析したメタ解析の結果が発表されましたので、ご紹介します。
Association between omega-3 fatty acid supplementation and risk of major cardiovascular disease events: a systematic review and meta-analysis
JAMA. 2012 Sep 12;308(10):1024-33.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)
EPA+DHA製剤に関する研究で1年以上観察された20研究、68,680人において、EPA+DHA製剤を内服するグループとそうでないグループで、全ての原因による死亡、心臓病による死亡、突然死、心筋梗塞、脳卒中の発症に違いがあるかが解析されました。
その結果、内服した場合のリスクの倍率とリスク減少率は、
全ての原因による死亡、0.91~1.02倍、リスク変化率=-0.01~+0.02
心臓病による死亡、0.85~0.98倍、リスク変化率=-0.02~0.00
突然死、0.75~1.01倍、リスク変化率=-0.012~+0.006
心筋梗塞、0.76~1.04倍、リスク変化率=-0.007~+0.002
脳卒中、0.93~1.18倍、リスク変化率=-0.002~+0.004
です。
この論文の結論には、「EPA+DHA製剤を内服しても、全ての原因による死亡、心臓病による死亡、突然死、心筋梗塞、脳卒中の発症は減少しない。我々の結果はEPA+DHA製剤の内服を正当化することはできない」と記載されています。
この論文にも記載されていますが、以前の研究で唯一効果があった研究(DART study)は、悪玉コレステロール低下薬がまだ普及していない時代(1989年)の、心筋梗塞を発症して間もない患者を対象にしていたとあります。
↓従って、この辺に書かれている、動脈硬化予防、心筋梗塞予防ということは真実ではないということになります。
http://www.hakuraidou.com/info/omega3.htm
それなのに、なぜ厚生労働省は、ロトリガが中性脂肪を下げるというだけで健康保険が効くように日本で認可したのでしょうか。
仮に、効果の低い薬(真実性)を効果が高いかのように販売するとすれば、それは国民の不利益(公共性・公益性)になるので、止めていただきたいものです。
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Association between omega-3 fatty acid supplementation and risk of major cardiovascular disease events: a systematic review and meta-analysis
JAMA. 2012 Sep 12;308(10):1024-33.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)
EPA+DHA製剤に関する研究で1年以上観察された20研究、68,680人において、EPA+DHA製剤を内服するグループとそうでないグループで、全ての原因による死亡、心臓病による死亡、突然死、心筋梗塞、脳卒中の発症に違いがあるかが解析されました。
その結果、内服した場合のリスクの倍率とリスク減少率は、
全ての原因による死亡、0.91~1.02倍、リスク変化率=-0.01~+0.02
心臓病による死亡、0.85~0.98倍、リスク変化率=-0.02~0.00
突然死、0.75~1.01倍、リスク変化率=-0.012~+0.006
心筋梗塞、0.76~1.04倍、リスク変化率=-0.007~+0.002
脳卒中、0.93~1.18倍、リスク変化率=-0.002~+0.004
です。
この論文の結論には、「EPA+DHA製剤を内服しても、全ての原因による死亡、心臓病による死亡、突然死、心筋梗塞、脳卒中の発症は減少しない。我々の結果はEPA+DHA製剤の内服を正当化することはできない」と記載されています。
この論文にも記載されていますが、以前の研究で唯一効果があった研究(DART study)は、悪玉コレステロール低下薬がまだ普及していない時代(1989年)の、心筋梗塞を発症して間もない患者を対象にしていたとあります。
↓従って、この辺に書かれている、動脈硬化予防、心筋梗塞予防ということは真実ではないということになります。
http://www.hakuraidou.com/info/omega3.htm
それなのに、なぜ厚生労働省は、ロトリガが中性脂肪を下げるというだけで健康保険が効くように日本で認可したのでしょうか。
仮に、効果の低い薬(真実性)を効果が高いかのように販売するとすれば、それは国民の不利益(公共性・公益性)になるので、止めていただきたいものです。
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まず、始めに僕もω3脂肪酸製剤を保健医療へ組み込むことに関しては反対です。少なくともコストとはまったく釣り合わないと思われるからです。
ただ、論文の解釈については多少、意見がございます。心臓病による死亡の0.85~0.98というのは通常であれば「有意差がある」と判断しなくてはなりません。この結果に対して著者は様々な比較によって調整して「有意差はない」と結論ずけたらしいです。Up to Dateではそのように書かれております。また、総死亡、突然死、心筋梗塞についても有意差はないもののリスクが減少する傾向がみられたとするのが妥当だと思います。
先行するいくかのメタ分析でも少なくともハイリスクの患者についてはこれらについて有意差が示されている場合が多いと思います。
ただし、日本でこのようなサプリメントが有効かと言えば非常に疑問です。ω3脂肪酸の摂取は250mg/日までは効果を認めるとする論文が多いですが、それ以上摂取しても追加的な効果は全く認められません。
“Fish Intake, Contaminants, and Human Health:2006 JAMA,P1885~”
に論じられておりますが「日本人のω3脂肪酸摂取量は平均900mg/日に達している。したがって、さらに与えても追加的なメリットは生じないと思われる」そうです。
したがって、僕の方針は日本では、魚を全く食べないという患者さんであれば週に最低1回、できれば2回以上鮭や鰯などの脂の多い魚を食べるように勧めることです。
欧米の人で心血管リスクが高い人であればサプリメントを摂るのも一つの方法かも知れません。なにしろ、あちらでは魚がかなり割高なようですので...。
研究方法を正しくデザインするならば、オメガ6の摂取量を減らして、オメガ3:オメガ6比を是正することの方が重要なのではないでしょうか?
ご存じかと思いますが、オメガ3・6の代謝酵素は競合しているので、オメガ6を過剰摂取すると、アラキドン酸カスケードを促進させて、炎症を助長・持続させてしまいます。