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糖尿病薬はアルツハイマー型認知症を助長する?

2023年01月02日 | 神経
前回と前々回に、「睡眠薬の内服」は「アルツハイマー型認知症」を増やすかどうか、多くの交絡因子のために証明できないということをお伝えしました。

今回は、「睡眠薬の内服」は「アルツハイマー型認知症」を増やすなどと言っていたら、「糖尿病薬の内服」は「アルツハイマー型認知症」を増やすと言っているのも同然という話です。あらかじめお断りしておきますが、「糖尿病」は「アルツハイマー型認知症」を増やします。

おそらく論文を検索すると、単解析では「糖尿病薬」を内服している人は、内服していない人と比較して「アルツハイマー型認知症」の割合は多いと思います。それでは糖尿病薬を飲んでいると「アルツハイマー型認知症」になりやすいのでしょうか?そんなことはありませんね。私たちは無意識的に交絡因子だとわかっているからです。

「糖尿病」の人の例えば80%以上は「糖尿病薬」を内服していると思います。「糖尿病薬の内服」は「糖尿病」の交絡因子なのです。

話を戻します。上の図はその辺の事をわかりやすくしたものです。

「インスリン抵抗性」は「糖尿病」の原因の1つです。「インスリン抵抗性」は「高インスリン血症」をもたらし、「高インスリン血症」は「脳内 低インスリン」をもたらします。インスリンは「アルツハイマー型認知症」の原因であるアミロイドβ(Aβ)を抑制する作用がありますので、「脳内 低インスリン」は脳内のアミロイドβの抑制作用の低下をもたらすのです。

そのエビデンスは、生前に75g経口糖負荷試験を受けた後に亡くなり、剖検を受けた久山町住民135人について、生前のインスリン抵抗性の指標とAβの関連を病理学的に検討した久山町研究の以下の素晴らしい論文で証明されています。

Insulin resistance is associated with the pathology of Alzheimer disease: the Hisayama study
Neurology. 2010 Aug 31;75(9):764-70.



単解析では「糖尿病薬」を内服している人は、内服していない人と比較して「アルツハイマー型認知症」の割合は多い。でもそれは交絡因子のため。「睡眠薬」の件と同様に、「糖尿病薬」を飲んでいると「アルツハイマー型認知症」が増えるかどうか(増えないと思いますが)を証明するのは、「糖尿病薬の内服」は「糖尿病」の交絡因子なので大変難しいのです。


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