最近読んだ、アートの見方に関する本2冊です。
絵を見る時に、単に好きとか嫌いとかの感覚だけでなく、もっと論理的に理解する助けになればと思って読んでみましたが、期待していた内容とはちょっと違っていました。
私が知りたかったのは、絵を見る時にどういう点に注目したらよいか、ということですが、どちらかというと文化や歴史、宗教といった背景に関する解説を求めていたのだと思います。
本作は絵のフォーカルポイントや、バランス、構成、配列、色彩といった事柄ですが、私はふだんからこうしたことを意識しながら見ているので、それほど大きな発見はありませんでした。それにあまり意識しすぎると、絵を見るのがつまらなくなってしまいますしね。
どちらかというと絵を見る技術というよりは、自分で絵を描いたり、写真を撮ったりする方にとって、役に立つ知識、といえるかもしれません。
末永幸歩「「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考」
この本はおもしろかった! 筆者は中学・高校の美術の先生で、従来の知識・技術偏重型の美術教育に問題意識を持ち、アートを通して「ものの見方を広げる」ことに力点を置いたユニークな授業を展開していらっしゃるそうです。
私は、知識や技術も基礎として大切だと思っていますし、過去の積み重ねがあって、現代の、そして未来のアートがあると思うので、従来型の美術教育も意味があったと思っています。実際、中学の時の美術史の授業もすごくおもしろかったですし。
でもこの本には、現代アートを理解するためのヒントや、かちこちの頭を柔らかくするアイデアがたくさん詰まっていて、これまでにない視点で書かれているのが斬新でした。
***
タイトルは ”13歳からの” とありますが、大人の方こそが楽しめる本だと思います。たとえば「リアルさ」に関しての記述では、私自身の経験と照らし合わせて、うなづくことが多かったです。
よくピカソの作品は見た通りに描かれていないと言われますが、実は写実的と言われる作品も、必ずしも見た目通りに描かれているわけではないのです。私は東山魁夷の「緑潤う」を見た時に、それを実感しました。⇒ 水を描く @山種美術館
***
誰もやっていないことを生み出すことがアートの本質であり、そのためにアーティストたちは苦悩するのでしょう。以前ポロックの伝記映画を見た時に、ポロックが「やりたいことは全部ピカソが先にやっちまった」と言ってたことを思い出します。
でも彼はその後に、pouring や dripping、action painting という独自の手法を生み出したのですものね。アートはイノベーションと言い換えることができるのかも。
新しい目を見開かせてくれる楽しい本でした。