フランス映画「エール!」(La Famille Belier / The Belier Family) の、アメリカ版リメイクです。
アメリカ東海岸の海沿いの町で両親と兄の4人で暮らす高校生のルビーは、家族で唯一耳の聞こえる健聴者。ルビーは家族の手話通訳をし、家業の漁業も手伝っていましたが、学校の選択授業の音楽で、先生に歌の才能を見出され、名門音楽大学への受験を勧められます...。
フランス版「エール!」は記事にしていませんが、Amazon Prime で鑑賞していました。アメリカ版リメイクが同じくAmazon Primeに上がっていたので、早速見てみました。
エール!とほぼ同じストーリーですが、マサチューセッツ州のグロスターという海沿いの町が舞台で、それに合わせてオリジナルの酪農農家から漁業を生業とする家族に変わっていました。
グロスターは、私の大好きな「マンチェスター・バイ・ザ・シー」の舞台となった同名の町の隣町。拙ブログで何度か書いていますが、私はアメリカのニューイングランド地方が大好きなので、この地方特有の風景や、ブルーグレーの海に、たちまち引き込まれてしまいました。
ルビーが進学するのがボストンのバークリーというのも、感情移入がしやすかったです。というのも、大好きなピアニストの小曽根真さんや上原ひろみさん、クインシー・ジョーンズなど、ジャズ界の大物を数多く輩出しているなじみのある音楽大学だから。
もうひとつ、サプライズでうれしかったのが、主人公ルビー (エミリア・ジョーンズ) の相手役マイルズを演じたのが「シング・ストリート」のフェルディア・ウォルシュ=ピーロくんだったこと。
シング・ストリートの時はまだあどけない少年という感じでしたが、ほっぺが赤いのは変わらずながら、ちょっぴりヒュー・グラントっぽく成長していたのも、感慨深かったです。
ルビーのお気に入りの秘密の池の場面もとってもロマンティック。ルビーとマイルズの関係が、さわやかでかわいくて、きゅんきゅんしてしまいました。お互いの気持ちが自然と近づいていく過程がていねいに描かれていて、青春映画としてもすてきな作品になっていましたね。
ルビーの両親、兄すべて実際に聞こえない俳優さんたちが演じていたということを、後でHPで知って驚き、そのことにも心を打たれました。ふつうの会話に加え、膨大な手話のセリフをナチュラルに演じていたエミリア・ジョーンズのがんばりにも感動しました。
ノリのいいお母さん、おおらかなお父さん、熱血漢の音楽の先生もオリジナルそのままのキャラクターでとてもよかったです。
バークリーのオーディションでルビーが歌ったのはジョニー・ミッチェルの「青春の光と影」(Both Sides Now)。トイ・ストーリーや ”最高の人生の作り方 (And So It Goes)" にも登場する、私も大好きな歌です。
(映画を見ていない方はご注意) 歌っているうちに手話が始まったとたん、涙が止まらなくなってしまいました。
Audition at Berklee / CODA (2021) + Official Trailer
ルビーが旅立ちの時に家族に送ったサインは、I love you に似ていますが指がクロスしていたので??と思ったら、I really love you. という意味だったのですね。
子どもの成長物語であり、親の子離れの物語となっていて、耳が聞こえる聞こえないにかかわらず、普遍的で誰もが共感できる作品となっていました。