セレンディピティ ダイアリー

映画とアートの感想、食のあれこれ、旅とおでかけ。お探しの記事は、上の検索窓か、カテゴリーの各INDEXをご利用ください。

LOLA'S cupcakes

2018年01月31日 | グルメ

映画の後に、六本木ヒルズに入っている LOLA'S cupcakes (ローラズ・カップケーキ)でケーキを買いました。

2006年にロンドンにオープンして大人気となったカップケーキ専門店の日本第2号店です。細長いショーケースがあるだけの小さなお店ですが、茶色と水色を基調にしたかわいいお店、そしてずらりと並んだかわいいカップケーキにわくわくしました。六本木ヒルズ店限定の2種類を含め、常時15種類のカップケーキがおいてあるそうです。

悩みに悩んで3種類選びましたが、お店の人に箱が4個入りなのでよかったらもうひとついかがですか?と上手に勧められ、定番のレッドベルベットを追加しました。

ロンドンのお店で一番人気というレッドベルベット。生地はココア味ですが、ほんのり赤い色がついています。フロスティングはクリームチーズ入りのさわやかなお味。

バノフィーはバナナケーキです。フロスティングの上に、キャラメルコーティングしたバナナと、削ったチョコレートがトッピングされています。

チョコレート生地のカップケーキに、ラズベリーがトッピング。チョコレート&ラズベリーの組合せが大好きな私は、これが一番気に入りました。

ブルーベリー。フロスティングにブルーベリーが練り込んである、シックでおしゃれなケーキです。息子はこれが一番気に入ったそうです。

フロスティングはどれもクリームチーズが入っていて、さっぱりとヘルシー。甘さも全体的に控えめでした。デコレーションが凝りすぎず、家庭的なほっとするお味のケーキでした。冷蔵庫に入れると、バター分やクリームチーズが固くなるので、食べる前に常温にもどしておくとよいと思います。おいしくいただきました。

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ロング,ロングバケーション

2018年01月30日 | 映画

ヘレン・ミレン&ドナルド・サザーランド主演、人生の終わりを見据えた夫婦がキャンピングカーで旅をするヒューマンドラマです。マイケル・ザドゥリアンの小説「旅の終わりに」をイタリアのパオロ・ヴィルツィ監督が映画化。

ロング,ロングバケーション (The Leisure Seeker)

ボストン郊外ウェルズリーに住む、ジョン(ドナルド・サザーランド)とエラ(ヘレン・ミレン)の老夫婦。ある日、近くに住む息子が様子を見に来ると、家の中はもぬけの殻。キャンピングカーもありません。2人だけで旅に出たことを知った息子は大慌て。なぜならジョンは認知症で、エラは末期がんに侵されていたからです...。

老夫婦のロードムービーか...と当初はあまり気に留めていなかったのですが、ボストンからフロリダのキーウェストまで旅する話と知って、急に興味がわいてきました。アメリカのロードムービーといえばルート(R)66が定番で、原作もそうなっているようですが、この映画では東海岸を縦断するR1が舞台となっています。

R1と平行して走る高速道路のI95は、ニューヨーク、バージニア、チャールストン、オーランド、マイアミ~キーウェストなど、かつて何度もドライブ旅行したルート。懐かしい風景に出会うのを楽しみに見に行きました。

フィラデルフィアからワシントンDCを経由せずデラウェアを通るのは、南部に向かうショートカット。長い長いチェサピーク・ベイ・ブリッジを渡った辺りは、イギリス人が一番早く入植した場所で、映画に出てきたコロニアルビレッジ(ジョンが教え子に会ったところ)がいくつもあります。

今ならGoogle Mapsでしょうが、エラが全州が載っている大きなロードマップを広げてナビしていたのに当時の自分を思い出しました。お昼に入ったダイナーで、お店で働く女の子も男の子も、誰もが辛抱強くジョンの長い話につきあってくれるのは南部ならでは。サザン・ホスピタリティが今なお健在でうれしくなりました。

ちょうど大統領選挙前という設定で、トランプが熱狂的に支持されているのも共和党が強い南部らしい。ジョンもうれしそうにデモに参加して、エラに「あなたは民主党支持でしょ」と言われていたのがおかしかった。さらに南へ向かうと、大きなオークの木にスパニッシュモスがぶらさがる、南部独特の風景が続きます。

2人が目指すのは、アメリカ本土最南端のキーウェスト。ここには、かつて文学を教えていたジョンが敬愛する、ヘミングウェイが暮した家があるのです。R1もここが終点。目の前にフロリダの青い海が広がる美しい風景は、2人にとって人生のフィナーレを飾るのにふさわしい理想的なロケーションだったのでしょうね。

高齢者に焦点を当てた映画に慎重だったと語るヘレン・ミレン(公式サイト)。その気持ちはよくわかる気がします。でも本作のエラは、美しく気高く、時にお茶目で、颯爽とした、いつものヘレン・ミレンでした。強盗に襲われた時に毅然と対処する姿は、最高にかっこよかったです。

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コシード(スペイン風ポトフ)

2018年01月28日 | 料理

東急沿線の駅などにおいてある無料紙「SALUS」(サルース)。

今出ている2月号の特集は「世界のあったか鍋」でした。タイスキや中国の火鍋、ロシアのボルシチなどのレシピが紹介されてましたが、表紙にもなっているスペインの「コシード」というお料理がおいしそうだな~と早速作ってみました。

コシードというのはスペイン版のポトフで、ひよこ豆が入るのが特徴です。お肉と野菜をじっくり煮込み、最初は煮汁でパスタを入れてスープとして味わったあとに、メインのお料理として肉と野菜をいただくそうです。

レシピでは、豚スペアリブと鶏手羽元を使っていましたが、私は豚スペアリブだけで作りました。前日にスペアリブに塩をすりこんでラップして塩漬けにし、ひよこ豆はたっぷりの水でもどしておきます。

まずは鍋に塩漬けしたスペアリブ、にんにく、ベイリーフ、水を入れてことこと煮込みます。アクがたくさん出るのでがんばってとるときれいなスープになります。さらにひよこ豆を入れてことこと。野菜(キャベツ・長ねぎ・にんじん・じゃがいも)を入れてことこと。最後にパスタ(フッジリ)を入れて柔らかくなったらできあがり。

最初にパスタをスープとしていただくのが本来の食べ方ですが、私はいっしょにもりつけていただきました。日本の鍋だと最後に〆のうどんをいただくことが多いので、順番が逆というのがおもしろいですね。

食べる時は、オリーブ油やビネガーをかけたり、アイオリソース(マヨネーズににんにくを加えてもの)を添えるそうですが、私はいつものポトフと同じく、粒マスタードを添えていただきました。塩だけのシンプルな味付けですが、お肉と野菜から出るおだしがじんわりしみて味わい深い。おいしくいただきました。

***

後日、残ったコシードでグラタンスープを作りました。

残った野菜は細かく刻み、下ゆでしたベーコンを加えます。これだけでもおいしいミネストローネになりますが...

ガーリックブレッドのせて、スープをさらに注ぎます。上にとけるチーズをたっぷりのせて、250℃のオーブンで10分くらい焼きました。

とろりとのびるチーズ、スープをたっぷり吸ったバゲット、熱々のスープをはふはふしながらいただきました。相変わらず寒い日が続いていますが、体の芯からぽかぽかと温まりました。

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ガトーマジック(2)

2018年01月26日 | 料理

以前、フランス生まれの不思議なケーキ、ガトーマジックについて記事にしたことがあります。

ガトーマジック(1) (2017-06-17)

この時は、プレーンとチョコレート味の2種類を作りました。その後7月にブルーベリー狩りに行った時に、途中で寄った本屋さんですてきな本を見つけました。

荻田尚子「魔法のケーキ」

魔法のケーキというのはガトーマジックのことで、ひとつの生地からフラン・カスタード・スポンジの3層に分かれるケーキです。表紙に惹かれましたが、中身もすばらしくて、季節のフルーツを使ったものなどバリエーションが豊富。どれもおいしくて気に入りました。半年くらいの間に作ったものを、今回まとめてアップしておきます。

まず作ったのはブルーベリーのケーキ。本ではミックスベリーのケーキでしたが、私はこの日摘んだばかりのフレッシュなブルーベリーを使って作りました。

ほどよく熟したバナナがあったので、バナナのケーキを作りました。本では生地にチョコチップも入れていますが、私はバナナのみで作りました。

レモンのケーキ。夏らしいさわやかな味です。

紅茶のケーキ。葉の細かいティーバッグの紅茶を、茶葉ごと使っています。

はちみつのケーキ。優しい甘さが心地よい。はちみつをしゅしゅっとジグザグにかけ、素朴なデコレーションに仕上げました。

そして、今年のオーブン初め?に抹茶のケーキを作りました。上に抹茶をふるって仕上げています。この本に載っている中で、まだまだ作りたいケーキがあるので、少しずつトライしていきたいです。

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エゴン・シーレ 死と乙女/ロスト・バケーション 他

2018年01月25日 | 映画

DVDで見た旧作、3作品の感想です。

エゴン・シーレ 死と乙女 (Egon Schiele: Tod und Madchen / Egon Schiele: Death and the Maiden) 2016

20世紀初頭のオーストリアで活躍した早逝の天才画家エゴン・シーレの半生を描いた伝記ドラマです。師であるクリムトとともに語られることの多いエゴン・シーレ。シーレの作品は、以前ノイエ・ギャラリーで見たことが思い出されますが、ふだんは展覧会でもなかなか作品にお目にかかれないアーティストです。

本作ではシーレの奔放な人生をたどるとともに、スケッチなどもたくさん登場するので、アート好きとしてはわくわくと楽しめました。先日「北斎とジャポニズム」展で、クリムトが春画の影響を受けていることを知りましたが、本作でもシーレが何枚かの春画を見ているシーンがあり、クリムトからもらったのかも?と思わずにやりとしました。

クリムト以上に、背徳的で禁断の香りがするシーレの作品。それはクリムトが大人の女性を描いているのに対し、シーレがあどけなさの残る少女ばかりをモデルにし、しどけないポーズをとらせて描いているからでしょうか。自分の妹をモデルにしたり、クリムトのモデルを自分の恋人にしたり、幼女をモデルにして逮捕されたり、結婚相手の姉ともつきあったり...

シーレの私生活は彼の作品と同じく、背徳と自由に満ちていました。シーレにとって、魅力的な女性は創造力を支える女神のような存在だったのかもしれません。そして女性たちは彼を愛し、彼の才能を愛したから、見返りを求めることなく献身的に支え続けたのでしょう。主演の新人ノア・サーベトラがばっちりのキャスティングで、魔性の美しさが心に残りました。

ロスト・バケーション (The Shallows) 2016

ブレイク・ライブリー主演のサバイバル映画。てっきり美女がサメと格闘するB級映画?と思って楽しみにしていましたが^^ サメと直接対決するのは最後のクライマックスのみで、ほとんどが陸からわずかに離れた岩礁の上でひたすら救助を待ち続けるというサバイバル映画でした。私が本作を見て思い出したのは、ダニー・ボイル監督の「127時間」。

誰もいない浅瀬の岩礁の上で、ケガと飢えと寒さとサメから自分を守らなければならないのです。ライブリー演じるナンシーが医学生という設定が本作では功を奏していて、彼女はウェアの袖を破って止血し、アクセサリーを使って縫合します。>< サメの旋回サイクルと自分が泳ぐスピードから移動に必要な時間を割り出すところは理系心をくすぐりました。

孤独の中でずっといっしょにいてくれた、ケガしたカモメがかわいかった♪ 危険をおかしてビデオカメラを拾う必要があるのか?と最初は思いましたが、結果的にはそれが彼女を救うことになるのでした。サメとのバトルは少々劇画チックでしたが、全編ほとんどがライブリーの一人芝居。体当たりの演技に拍手しました。

ザ・シューター 極大射程 (Shooter) 2007

マーク・ウォールバーグ主演のサスペンスアクション。元海兵隊の凄腕スナイパー スワガー(ウォルバーグ)は、大統領暗殺を阻止して欲しいとジョンソン大佐に依頼されて現地入りしますが、実際に狙撃されたのはエチオピア司教で、スワガー自身も銃撃され、容疑者として追われることに...。

前知識なく見始めたので、まさかのスワガーが銃撃されたのにびっくり。ジョンソン大佐の策に落ちたことを瞬時に悟ったスワガーは、銃弾を受けながら車を奪って逃走します。それからは大迫力のカーアクションに銃撃戦、爆発...と怒涛の展開が繰り広げられ、はらはらしながら引き込まれました。

序盤に出てきたいかにも冴えないFBIの新人くんが実はなかなかの切れ者で、上層部に疑問をもち独自に調べ始めます。やがてスワガーの無実を確信した彼はスワガーに助けられ、互いに協力して戦います。どことなくデジャヴ感があると思ったら「イコライザー」の監督さんだったのですね。正統派の勧善懲悪もので、後味すっきりと楽しめました。

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世界一大きな額縁

2018年01月23日 | アート

昨日の雪で、東京区部は20cmほど積もりました。朝早く玄関を開けるとそこは雪国。車は通らず、しんと静まり返っていて、まるでSFの世界でした。やがて太陽が上りはじめると、今度は屋根から落ちる雪解け水の大合唱。時々ばさっと落ちる雪の塊がパーカッションのような合いの手を入れています。凍りつかないうちに全部溶けてくれ~と応援しています。

***

さて先日ネットのニュースを見ていて、今年1月1日アラブ首長国連邦のドバイに「ドバイフレーム」という新しい建造物ができたことを知りました。

高さ150m、幅93m。2本のタワーの間は”スカイデッキ”とよばれる展望室でつながり、下層階は”パヴィリオン”とよばれる博物館となっていて、その造形から”世界一大きな額縁”とよばれています。日本には借景とよばれる庭造りの文化がありますが、まるで額縁が風景を切り取っているように見えますね。

スカイデッキからは、南側にブルジュ・ハリファを含む高層ビル群の”新しい”ドバイ、北側に歴史地区の”古い”ドバイ、そしてスカイデッキの床にはガラスのパネルがあり、150m下が見渡せます。パヴィリオンでは、”過去”のドバイから”未来”のドバイ、歴史からテクノロジーまで紹介されているそうです。

公式サイトを見ると、建物の幅は93m、スカイデッキの面積は100平方メートルとありますから、建物の奥行は約1mでしょうか。以前ドバイが舞台のミッション・インポッシブルでものすごい砂嵐のシーンがありましたが、倒れないかしら?と心配になります。空洞を風が抜けるから、かえって安全なのかしら?

設計したのは、メキシコの建築家フェルナンド・ドニス。ドニス氏は2008年にドバイ市が主催する国際コンペで優勝しましたが、ドバイ市はドニス氏と契約をかわすことなく、勝手に変更を加えてプロジェクトを実行したとして、現在著作権をめぐる問題が起きているそうです。

【参考サイト】
Dubai Frame: Emirate's controversial mega structure opens (CNN.com)
都市を見下ろす巨大な額縁、新名所「ドバイフレーム」完成 (CNN.co.jp)
THE DUBAI FRAME (公式サイト)
Dubai Frame (Wikipedia)

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Embassy CAFE&DINING

2018年01月22日 | グルメ

先週、交差点を渡ろうとしてあわてて走って足首をひねり、生まれて初めてねんざしてしまいました。念のために整形外科を受診し、湿布とテーピングをしてもらいましたが、たいしたことはなさそうです。今年は新年早々、風邪にねんざと災難が続いています。><

そして今日の東京は雪模様です。お昼頃から本格的な降りになり、道路も少しですが積もりはじめています。明日の朝は銀世界になっているかも...。これから交通の乱れが予想されますので、お仕事の方、おでかけの方、お帰り気をつけてくださいね。

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さて先月、目黒の碑文谷にあるゴルフ練習場のクラブハウスに、新しいカフェがオープンしたというので行ってみました。Embassy CAFE&DININGというお店です。

(HPよりお借りしました)

写真では明るいカルフォルニアスタイルという感じですが、実際にはバーカウンターもあり、照明をおとした落ち着いた雰囲気です。以前のダイニングは、カレーや麺類など、ゴルフ好きのおじさん向き?のメニューが中心でしたが、女性が増えているのかもしれませんね。練習場を使わない人も、誰でも利用できます。

そういえばアメリカのゴルフ場のクラブハウスにも、こういうアメリカンなレストランがあったことを思い出します。ゴルフをしなくても気分だけ楽しめます。クラブハウスサンドウィッチは、ニューヨーク州のカジノが発祥といわれていますが、ゴルフ場のクラブハウスで生まれたという説もあります。

こちらは朝から夜までのオールデイ・ダイニングで、ランチメニューはパスタやサンドウィッチなどが中心でした。

和牛バーガーです。バンがバゲット風の生地でおもしろい。ハーブを効かせたパティは、かなり分厚くてボリュームたっぷり。グリルした野菜が彩りよく添えられています。

サイドディッシュは4種類から選びます。バーガーには季節のスープをつけました。この日のスープは、ごぼうのポタージュ。滋味深いおいしさでした。

私は本日の魚料理をいただきました。この日は鯛のグリルです。わずかにクミンの香りがしました。サイドディッシュはポテトのローストにしましたが、カラフルなポテトが野菜のグリルとともに彩りよく添えられて、とてもおいしかったです。クリーミィなソースもお魚によく合いました。

食後にカフェラテをいただきました。南アフリカで修行した??というバリスタの方が淹れてくださったカフェラテは、まろやかな深みがあってとてもおいしかったです。

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没後40年 熊谷守一 生きるよろこび

2018年01月21日 | アート

東京国立近代美術館で開催中の「没後40年 熊谷守一 生きるよろこび」展(~3月21日まで)を見に行きました。

ポスターで見たポップでデザイン性のある作品に惹かれ、楽しみにしていました。本展は熊谷守一の没後40年を記念して開催される回顧展で、200点の代表作品に加え、スケッチや日記など多くの資料を展示しています。70年以上におよぶ守一の画業とともに、作風の変遷や激動の人生をたどりました。

蝋燭(ローソク) 1909

熊谷守一(くまがいもりかず・1880-1977)は岐阜県出身。1900年に東京美術学校に入学し、青木繁らとともに、黒田清輝らの指導を受けました。明るくポップな画風で知られる守一ですが、初期の作品はどれもダークトーンの写実画で、まったく画風が異なるのにびっくりしました。今日よく知られる画風を確立したのは70歳をすぎてからだそうです。

写真の作品は初期の代表作で、闇の中に浮かぶ不安な心を描いた自画像です。光と闇をテーマにしていた守一。私は本作を見て映画「沈黙」の隠れ切支丹を思い出しました。

日蔭澤 1952

その後の守一は、両親を亡くしたり、結婚して5人の子どもに恵まれるも貧しさの中で3人の子どもを次々と亡くしたり、苦労の日々が続きます。やがて、赤い輪郭線で縁取られる守一独特の画風が生まれます。この輪郭線は逆光の赤い線が山の端を彩っている様子を表現しているそうです。

ヤキバノカエリ 1956

長女・萬の遺骨を抱いて帰る家族3人の姿を描いた作品は、フォーヴィズムの画家アンドレ・ドランの「ル・ペックを流れるセーヌ川」を下敷きにしているといわれています。悲しいはずの作品ですが、なぜか弥次喜多道中を思い出しました。タイトルがカタカナというのも新しい感覚ですね。

稚魚 1958

マティスの「ダンス」の影響を受けて描かれた作品。なるほど!納得です。

たまご 1959

これもかわいい。デザイン性があってすごく好きです。

雨滴 1961

地面に落ちた雨滴がはね、同心円状に水紋が広がる様子を描いた作品。単純化した形の中にも科学的な観察眼が感じ取れます。

群鶏 1961

猫 1965

壁一面に猫の絵ばかり10点以上、ずらり~と並んでいる部屋があり圧巻でした。晩年は豊島区にある自宅から出ず、庭の花や虫、鳥などを明るいタッチで描き続けた守一。庭に出入りする猫もよくモデルとなりました。三毛猫、白猫、くろ猫など、どの猫もリラックスした表情を浮かべ、かわいかったです。

守一は同じモチーフでいくつも絵を描きました。時にカーボン紙を使って写して描くこともあり、輪郭の太さなどのわずかな違いで描き分けていました。同じ作品を2点ずつ並べてあるコーナーもあり、比べて見るのがおもしろかったです。絵はカンバスでなく、板に描いたものも多く、ソリッドな質感が感じられました。

最後は太陽を描いた作品が5点ほど並んでいましたが、朝日や夕陽がカラフルな同心円で抽象的に表現されていました。95歳になってなお「生きていたい」と語ったという守一。身近な世界に驚きと不思議を見出した守一の、前向きな生き方に励まされました。

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オリエント急行殺人事件 (1974)/ローサのぬくもり 他

2018年01月20日 | 映画

DVDで見た旧作、3作品の感想です。

オリエント急行殺人事件 (Murder on the Orient Express) 1974

現在公開中のケネス・ブラナー版「オリエント急行殺人事件」を見た後に鑑賞しました。監督は「十二人の怒れる男」のシドニー・ルメットで、名作とよぶのにふさわしい作品でした。オープニングのアールデコ調クレジットからもうわくわく。発端となった事件について、新聞記事など交えリアルに手際よく紹介しています。

それに続くイスタンブール駅での物売りたちや山羊、食材、人々の喧騒から一気に旅の世界に引き込まれました。ポアロが乗客ひとりひとりを取り調べるところは2017年版とだいたい同じでしたが、クライマックスとなる推理の場面にしっかり時間が割かれ、犯人の正体と犯行の詳細、憎しみが胸に迫りました。

ローレン・バコール、アンソニー・パーキンス、ショーン・コネリーなど名作映画のスターたちが勢揃いし、見応えもたっぷり。ジャクリーン・ビセットの花のような美しさは、過去の悲劇をより浮彫にしていたように思いました。イングリット・バーグマンはスターのオーラを消し、意外性のあるチャレンジングな役どころです。

殺人事件ではありますが、動機に納得のいく犯罪であり、ポアロの大岡裁きもあって、ラストはハッピーエンディングを迎えます。軽やかなワルツが流れる中、シャンパンで乾杯し、旧交を温め合い、晴れやかな余韻が残りました。

ローサのぬくもり (Solas / Alone) 1999

数々の国際映画賞で高い評価を得た、スペインのヒューマンドラマです。

家族に暴力をふるう父親が嫌で家を飛び出し、都会で一人暮らしているマリア。しかし仕事は長続きせず、バーに入り浸り酒に溺れる毎日。母のようにだけはなりたくないと思っていたのに、結局つきあうのは父のように暴力をふるう男ばかり。そんなある時、父がマリアの街の病院に入院し、つき添う母がマリアのアパートにしばらく滞在することに。

母はマリアの荒んだ生活を心配し、料理や掃除と世話をやきますが、マリアはそんな母が疎ましい...。はじめはマリアのどん底ともいえる生活が見ていてつらく、暗い気持ちになりますが、母ローサがひょんなことから階下の老人と親しくことばを交わすようになってから、おもしろくなってきました。

老人は妻に先立たれ、愛犬だけが話し相手という孤独な生活。やもめ暮らしを見かね、ローサが心配して料理を作り、面倒を見るうちに2人の間に友情のような関係が生まれます。恋愛...とはちょっと違いますが、老人にとってローサは心安らげる存在、ローサにとっても紳士な老人はこれまでの人生になかったときめきを与えてくれたのではないでしょうか。

そしてローサとのつかのまの生活は、マリアの心にも氷が解けるような変化をもたらします。ラストはある意味シンデレラストーリーといえなくもなく、できすぎ...とも思いますが、ローサがマリアに残してくれた贈りものだったのかもしれませんね。

カサンドラ・クロス (The Cassandra Crossing) 1976

ジュネーヴの国際保健機構に侵入したゲリラのひとりが、アメリカ軍が極秘に研究していた細菌兵器の病原菌をつけたまま逃走。ストックホルム行きの大陸横断鉄道に乗り込みます。アメリカ軍大佐は乗客を隔離すべく、列車をポーランドの隔離施設に向かわせるよう指示。しかし真の目的は研究の証拠隠滅を図ることでした...。

オールスターキャストによる鉄道パニック&細菌パニック映画。保菌者と思いっきり接触しているのに感染しなかったり、感染した人がなんの治療もしないうちに自然治癒したり、つっこみどころはたくさんありますが^^; はらはらドキドキと楽しめました。オリエント急行~同様、鉄道旅行の気分が満喫できました。

ソフィア・ローレンの迫力ある美しさ。列車がポーランドに向かうことを知って(強制収容所を思い出し)パニックになるユダヤ人の男性。ヒッピー風の若い男女。大国アメリカの陰謀...など、時代を感じさせるあれこれが懐かしい。ラストは一応の解決を見せるものの、ぞわっと背筋が凍ります。

ジェリー・ゴールドスミスの憂いを秘めたテーマ曲も印象的。パニックの場面ではストラヴィンスキー風?でした。タイトルのカサンドラ・クロスはポーランドの隔離施設の手前に架かる橋の名前。モデルとなっているのはフランスにあるガラビ橋で、エッフェル塔のギュスターヴ・エッフェルが設計したそうです。

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築地本願寺カフェ Tsumugi

2018年01月18日 | グルメ

日本橋の後、築地方面で用事をすませてから築地本願寺を訪れました。

築地本願寺は、江戸時代の1617年に京都・西本願寺の別院として日本橋横山町に建立。明暦の大火の後、1679年に現在の場所に再建されました。現在の本堂は関東大震災後、1934年に竣工したもので、古代インド様式をモチーフとした鉄筋コンクリート造りという、日本の仏教寺院としては異色の建築となっています。

中にはパイプオルガンやステンドグラスもありますし、インド、西洋、イスラム、日本など、いろいろな要素が取り入れられ、組み合わされているのがおもしろい。重厚で壮麗な本殿の前の広場が、新しくきれいにブリック舗装されていました。場所柄、観光客にも人気のスポットです。

昨年11月に創建400年を記念して開設されたインフォメーションセンターの中にオープンした「築地本願寺カフェ Tsumugi」でひと休みしました。

飲みものはコーヒーや日本茶などいろいろありましたが、私は6種類ある”べっぴん茶”の中の、”親鸞聖人ごのみの小豆&ほうじ茶”にしてみました。小豆のほのかな甘さとほうじ茶の香ばしさがほっとするおいしさ。ガラスのポットでたっぷりいただきました。

スイーツは、レアチーズケーキにしようと思いつつ、ブームの時に食べずにおわった堂島ロールがあったので、いただいてみることに。バニラと抹茶とあったので、私は”抹茶と小豆の堂島ロール”にしてみました。クリームの多い柔らかいケーキですが、切り口がきれいで感動しました。家ではこうはいきません。^^

食べてみての感想は、甘くないということ。そしてロールケーキというより、クリームを楽しむケーキだな...と思いました。抹茶と小豆がバランスよく、おいしくいただきました。

コーヒーもトレーにセットされてかわいい。深みがあっておいしいコーヒーでした。

ゆっくりお茶を楽しんでいたら、いつの間にか日が暮れて、本殿に明かりが灯りました。屋根の正面が黄金色に輝いています。

カフェのライティングも落ち着きがあってすてきでした。

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