セレンディピティ ダイアリー

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My Best Films in 2022

2022年12月31日 | 映画

今年も残すところあとわずかとなりました。2022年に見た映画の中から、特に心に残った3作品を選んで、ブログ納めといたします。

ハウス・オブ・グッチ (House of Gucci)

リドリー・スコット監督、ファッション・ブランド「グッチ」の創業家一族の崩壊を描いた実話に基づく物語です。最後は殺人事件にまで発展するお家騒動ですが、コミカルでエンタメ性もあって、娯楽作品として大いに楽しめました。

本作では、レディ・ガガの悪女の演技が圧巻でノックアウトされました。そして本作を見て、アダム・ドライバーがますます好きになりました。ジャレット・レト、サルマ・ハエックなど、クセのありすぎる俳優たちの競演を堪能しました。

コーダ あいのうた (CODA)

オリジナルのフランス映画を、アメリカ・マサチューセッツ州の美しい港町を舞台にリメイクした作品です。ニューイングランド地方が大好き、音楽を題材にした映画が大好きということもあって、個人的にはオリジナル以上に心に響きました。

障碍者やヤングケアラーという暗くなりがちなテーマが、明るく前向きに描かれていたのがよかったです。愛情いっぱいの家族、熱血漢の音楽の先生、ヒロインのルビーとマイルズくんとのロマンスも微笑ましく、青春映画、子離れのドラマとしてもすてきな作品でした。

ザリガニの鳴くところ (Where the Crawdads Sing)

アメリカ・ノースカロライナ州の湿地を舞台にしたミステリー仕立てのヒューマンドラマです。かつて住んでいた南部の風土や美しい風景が懐かしく、心に残った作品です。ヒロイン、カイアのドラマティックな人生に引き込まれました。

法廷ドラマ、ミステリー、偏見や貧困等の社会問題、そしてロマンス、といろいろな要素がバランスよくからみあい、エンターテイメントとしても楽しめました。

 

*** 番外編 ***

マイベストではないですが、映画以外の部分で考えさせられたのがこの作品です。

トップガン マーヴェリック (Top Gun: Maverick)

1986年の大ヒット作「トップガン」の36年ぶりの続編です。本作では映画そのものより、トム・クルーズが36年間俳優として第一線で活躍し続けてきたという事実に改めて感銘を受けました。本作ではヴァル・キルマーが軍の重鎮として出演していたものの

前作から続投した俳優が他にほとんどいなかったという現実に打ちのめされました。いつまでも現役でいるためにはどれほどの努力が必要であるかを痛感しました。私もこの先いつまでもオンの姿勢でいられたら。そんな決意をさせてくれた作品でした。

 

*** その他 ***

映画以外では、今年はレディ・ガガブルーノ・マーズと、世界を代表する一流アーティストのコンサートに行く機会に恵まれ、大きなドームで大勢のファンとともに興奮を共有できたことが心に残っています。

来年も、たくさんの感動に出会える一年となりますように。

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ミセス・ハリス、パリへ行く

2022年12月30日 | 映画

Paul Gallicoによる1958年の同名小説の3度目の映画化。ロンドンとパリを舞台にした、ハートウォーミングなコメディです。

ミセス・ハリス、パリへ行く (Mrs. Harris Goes to Paris)

1957年ロンドン。夫を戦争で亡くし、家政婦として働くミセス・ハリス (レスリー・マンヴィル) は、仕事先の家のクローゼットで美しいドレスを偶然目にし、心を奪われます。

それがパリのクリスチャン・ディオールのオートクチュールと知ったミセス・ハリスは、思いがけなく手に入った大金を握りしめ、ディオールのメゾンでドレスを誂えようと、単身パリへと向かいます...。

ファッションを題材にした作品が好きなので気になっていた本作を、日比谷のシネマズシャンテに見に行ってまいりました。主演のレスリー・マンヴィルは「ファントム・スレッド」ではメゾンのエレガントな支配人役でしたが

本作では庶民的でかわいらしいおばさまを演じています。家政婦のお仕事の制服?が、ブラウスもエプロンもリバティというのにきゅんきゅんしましたが、ミセス・ハリスがひと目惚れした、ビーズと刺繍が全身に施されたライラック色のドレスに目が釘付けになりました。

ミセス・ハリスは愛すべきキャラクターではあるのですが、ドレス代を作るために有り金全部をドッグレースにつぎ込んだり、やっと手に入れた大切なドレスを不用意に人に貸してダメにしてしまったり。善良ゆえに、見ていていらっとすることもありました。

でも、困っている人を見ると放っておけないミセス・ハリスが、ディオールで働いているお針子さんやモデルさんたちが、劣悪な労働環境の中で華やかな世界を支えてことを知って、労働運動を起こすべく立ち上がる勇気と行動力に心を動かされました。

一方、イザベル・ユペール演じるディオールのマネージャーが、(賛否はありますが) ディオールというブランドを守るために力を尽くし、家では傷痍軍人の夫を介護する生活を送りながら、それをおくびにも出さないプロフェッショナルな姿勢にぐっときました。

イザベル・ユペール、やっぱりかっこいいです。

ディオールのメゾンで開かれるドレスのお披露目のショウに登場するゴージャスなドレスの数々。会計士 (リュカ・ブラヴォー) とモデルのナターシャ (アルバ・バチスタ) のさわやかなロマンス。ラストはもちろんハッピーエンディングで、快く楽しめる作品でした。

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Brasserie Laiton

2022年12月27日 | グルメ

仕事や何やらで忙しい日が続いていたため、久しぶりの更新です。

この日は池袋の芸術劇場で用事があり、その後すぐ近くのフランス料理店 Brasserie Laiton (ブラッスリーレトン) でお昼をいただきました。事前にネット予約しようとしたらあいにく満席でしたが、ひょっとしたら入れるかも…とダメもとで訪れたところ

ラッキーなことに、入口近くのテーブルがひとつだけ空いていました。ダイニングルームの外にある、広縁のような空間ですが

この色使い、この佇まい。大好きなデンマークの画家、ハンマスホイの世界を彷彿とさせて、うれしくなってしまいました。

ほら、どことなく似ていませんか?

さて、前置きが長くなりました。ランチはコースメニュー4種類から選びます。

「今日は満席なので、お料理をお待たせするかもしれません」とスタッフが最初に運んでくださったバゲット。レストランの隣にベーカリーが併設されていて、そこで作られているのですが、かりっとしたバゲットは正統派のお味でした。

シェフお勧めの前菜の盛り合わせ。キャロットラペ、豚肉のリエット、右の2つは忘れてしまいましたが、どれもおいしかったです。

私は前菜が2皿選べるコースにしました。1皿目は牡蠣のアスピック。生牡蠣に、牡蠣のスープのゼリー、牡蠣のスープを使ったムース、キャビアを合わせた贅沢な一品。この日のお料理で一番気に入りました。

前菜もう一皿は「自家製シャルキュトリーの盛り合わせ」にしました。シャルキュトリーとはお肉の加工食品のことで、ハム、テリーヌ、レバーペースト等が盛り合され、パンデピス (スパイス入りパン) が添えられていました。レバーペーストが絶品でした。

メインのお料理です。こちらは国産合鴨のロティ オレンジソース。ぎゅっと旨みのつまった合鴨が最高。ソースもおいしかったです。

私は「仔羊の肩肉のトマト煮込み メルゲーズ添え」にしました。ほろほろに柔らかい仔羊がとろけるおいしさ。仔羊の挽肉を使ったソーセージ風のお料理も珍しく、食感の違いが楽しめました。さつまいも、れんこん、ごぼうと根菜の付け合わせもうれしい。

デザートです。こちらは「ヌガーグラッセ」です。ドライフルーツやナッツを入れた柔らかいアイスクリームで、素朴な風合いとクリーミィな食感が魅力です。

私はガトーショコラにしました。ブラウニーのような固めの仕上がりで、バニラのアイスクリームがよく合います。アメリカではおなじみのデザートですが、フランス風だとどうしてこんなにおしゃれになるのでしょう。コーヒーとともにおいしくいただきました。

お店の外観もすてきです。食事の後、レストランに併設されているベーカリーでお買い物しました。

バゲット、オニオンのパン、スイートポテトの入ったパン、じゃがいもの入ったパン。どれもおいしくいただきました。レストランもベーカリーも、近かったら何度も通いたくなるすてきなお店でした。

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ザリガニの鳴くところ(映画)

2022年12月06日 | 映画

世界的ベストセラー小説の映画化。アメリカ・ノースカロライナ州の湿地を舞台にしたミステリー仕立てのヒューマンドラマです。

ザリガニの鳴くところ (Where the Crawdads Sing)

原作のベストセラー小説はずいぶん前に読み始めていたものの、序盤に描かれている少女を取り巻く苦難のところで、止まったままになっていましたが、気になっていた映画を先に見に行ってまいりました。本作を見たかったもうひとつの理由は

物語の舞台であるノースカロライナ州の湿地が、私がかつて住んでいたバージニアの半島に比較的近く、懐かしい風景に出会えると思ったから。そういえば当時、バージニアの海の近くの湿地で、手漕ぎボートの自然探索ツアーに参加したこともありました。

でも映画を見ると、どうも植生が違う。木の枝にガーランドのようにぶら下がるスパニッシュモスは、ノースカロライナよりもっと南の地域に見られるものです。後から映画は、深南部のルイジアナで撮影されたと知って納得しました。

とはいえ、いかにも南部らしい、緑豊かな風景はとても懐かしかったです。ヒロインのカイアとボーイフレンドのテイトが見た、何千羽もの白い鳥が湖沼に舞い降りるシーンは、同じく南部を舞台にした「きみに読む物語」(The Notebook)を思い出しました。

序盤の苦難の物語も、カイアがテイトと出会ってからは、良い方向に向かうと思われましたが...。

人道的な弁護士に助けられ、カイアが裁判に出廷する展開は、グレゴリー・ペックの「アラバマ物語」(To Kill a Mockingbird)を思い出しました。アラバマ物語も、人種差別が色濃く残る南部を舞台にしていて

グレゴリー・ペック演じる弁護士が、地元の白人たちの非難を浴びながら、真理のために戦う物語でした。そういえば、本作はCrawdads、アラバマ物語はMockingbirdと、どちらもタイトルに生物の名前がついているのが興味深い。

本作は、カイアの人生や、カイアを取り巻く環境が、少し甘めに描かれていて、うまくできすぎているという向きもあるかもしれませんが、美しい映像と美しいヒロイン、ミステリーとしてのおもしろさもあって、私はとっても楽しめました。

南部を代表する俳優、リース・ウィザースプーンが製作を務めていることもあり、南部の魅力がノスタルジーたっぷりに描かれています。お勧めの作品です。

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ある男(映画)

2022年12月04日 | 映画

池袋でお昼を食べた後に、久しぶりに映画館で映画を見ました。しかも私にはめずらしく邦画です。グランドシネマサンシャイン池袋は初めて入った映画館ですが、改装してまだ3年とのことで、新しくてきれいでした。

ある男

平野啓一郎さんの同名小説の映画化です。原作がすごくおもしろかったのと、今回の映画化がとてもよくできているという予感があったので、本作を見るのを楽しみにしていました。

そして期待通りにとてもよかった! 原作は、衝撃的な事実を抑えるかのように、静かに淡々とストーリーが語られていくのですが、映画は登場人物の内なる激しさが演技によって表現され、ぐっと心に迫る作品になっていました。

特に、物語の鍵となる、谷口大祐を演じる窪田正孝さんの、狂気と孤独が宿った演技は圧巻のひとことでした。窪田正孝さん、私はたぶん彼が演じる作品を見るのはこれが初めてと思いますが、とてもよい役者さんだなーと感動しました。

相手役を演じる安藤サクラさんは、当初は小説のイメージと違うように思ったのですが、映画を見ると彼女以外には考えられないというほど役にはまっていました。辛い過去をもつ2人のかけがえのない4年間。子どもたちもほんとうにいい子に育っていて

できればいつまでも、この幸せを見守っていたかった...。終盤の男の子のことばには、幼いながらも家族を思い、しっかり前を向いて生きていく決意のようなものが感じられて、胸が締め付けられました。

私は平野さんのことばの紡ぎ方、登場人物の気持ちをていねいに掬い取るような描写が好きなので、映画化にあたっては、楽しみな反面、一抹の不安もありました。長編小説を2時間の映画にするにあたって、どの部分を残すか、どのようにストーリーを組み立てるか

監督の葛藤があったと思いますが、取捨選択がみごとで、原作の世界観を大切にしながら、映画ならではのアクティブな作品になっていたのがよかったです。そして映画を見たら、もう一度小説を読み直したくなりました。

本作のアイデンティティというテーマは深く、ストーリーも重めではあるのですが、物語がミステリータッチで進むので謎解きとしてのおもしろさもあるし、考えさせられる作品になっています。

本作とはまったく無関係ですが、私は映画を見ながら、昨今増えている、自分の顔や体にメスを入れ、人生が変わったと告白する人たちのことを、ふと考えてしまいました...。

お勧めの作品です。

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