セレンディピティ ダイアリー

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汚れたミルク あるセールスマンの告発

2017年03月30日 | 映画

パキスタンで起こった巨大企業による粉ミルク事件を、ボスニア・ヘルツェゴビナのダニス・タノヴィッチ監督が映画化。子どもたちの命を守るために、ひとりの営業マンが立ち上がります。

汚れたミルク あるセールスマンの告発(Tigers)

パキスタンの製薬会社で営業マンとして働いていたアヤンは、世界最大の食品会社に転職。医師たちにプレゼント攻勢して会社の主力商品である粉ミルクを販売し、好成績を上げますが、親しい医師から「粉ミルクを飲んだ乳幼児が次々と病気になり、命を落としている」と聞かされます。

昔、日本でもヒ素ミルクによる中毒事件があったことを思い出しました。当時は高度成長時代の真っ只中で、母乳より粉ミルクの方が栄養価が高いと指導されていて、わざわざ母乳を捨てて粉ミルクを飲ませるお母さんもいたと聞いたことがあります。

今回の事件では、粉ミルクそのものに毒性があったわけではなく、母親たちが不衛生な水で溶いたミルクを飲ませたために、子どもたちは命を落としていったということです。私は最初、それは企業が悪いのではなく、汚染された水で作ったミルクを飲ませる母親の方に問題があるのでは?と思っていました。

でもそれは私の理解不足で、パキスタンではきれいな水が手に入りにくいと知りながら、企業や医師たちは、母親たちに必要な知識を与えずに、世界一のミルクと喧伝し一方的に販売してきたのです。誰もが知る大企業の製品であり、母親たちは品質を信頼し、半ば憧れをもって、子どもたちに飲ませ続けてきたのだろうと想像しました。

企業は、パキスタンが抱えている問題を認識した上で、乳幼児の口に入るまで見届ける、倫理上の責任があったのだと理解しました。

アヤンは、これはいい製品だという自信があったからこそ、医師たちに勧めてきたわけですが、それが間違った結果を生んでしまったことに苦しみます。そして医師たちに粉ミルクを提供しないよう働きかけますが、企業も医師も聞く耳をもちません。それどころか、企業はアヤンの口を封じるために、家族への危害をもほのめかします。

アヤンは、人権団体から支援を得て、ドイツのテレビ局を通じて告発することになりましたが、いざ放送しようとした時にアヤンが会社から示談を持ちかけられていたことがわかり(アヤンはそれを断ったのですが)結局、ドキュメンタリーではなく、架空の物語(でも事実)として作られたのがこの作品だそうです。

問題は今も続いているために映画の一般公開がままならず、今回の日本での公開が世界初だということ。日本の食品会社もパキスタンでの粉ミルク販売をはじめているそうですが、これまでの経緯を考えて、相手国の立場にたったビジネスとなることを祈ります。

余談ですが... 原題のTigersは、映画の中で企業が社員を採用する時に、虎が吠えるまねをして鼓舞する場面から来ています。そういえばベン・アフレック主演の「カンパニーメン」にも同じようなシーンがありましたが、欧米ではポピュラーな人材トレーニングの方法なのかしら?

【参考サイト】
◆ ネスレ・ボイコット(Wikipedia)
◆ 森永乳業 パキスタンで粉ミルク合弁(日経 2016/12/27)
◆ 世界のヒット商品:パキスタン★12歳まで飲まれる粉ミルク 明治(毎日 2016/01/17)

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ぶりのカレー風味 春野菜添え & マンデルムムス

2017年03月29日 | 料理

先日「ザ・カフェ by アマン」でいただいた”寒ぶりのポワレ サフランのソース”にヒントを得て、「ぶりのカレー風味 春野菜添え」を作ってみました。

ぶりは塩をふってから小麦粉とカレー粉をまぜたものをまぶし、オリーブオイルで両面焼きます。オリーブオイルと白ワインで蒸し焼きにした春野菜(レタス・アスパラガス・スナップえんどう・レッドオニオン・プチトマト)をお皿に敷いて、その上に盛り付けました。

寒ブリとブリとどう違うのかと思ったら、寒ブリは12~2月に獲れるブリのことを言うそうです。(コチラを参考にしました) サフランの代わりにカレー粉を使いましたが、どちらもブリのくさみをとるのにぴったりで、洋風の味によくなじみました。カラフルな春野菜とともにおいしくいただきました。

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冷蔵庫に残った卵白が2つ分あったので、スウェーデンのお菓子のレシピから「マンデルムムス」(Mandelmums)を作りました。

スウェーデン語でマンデルはアーモンド、ムムスはおいしいものを食べた時の”ん~”とうなる言葉を意味するそうです。硬く泡立てたメレンゲに、アーモンドパウダー、細かく砕いたアーモンド、粉砂糖を混ぜ、丸めてオーブンで焼きます。食感はフランス菓子のダックワーズに似てむちっとしています。

レシピ通り12個に分けて作りましたが、もっと小さく作ってもかわいいですね。アーモンドの代わりにクルミで作ってもおいしそうです。挽き立てのアーモンドの香りが最高でした。

土井始子「北欧の美味しいお菓子づくり」

レシピはこちらの本から。スウェーデン語表記のお菓子の名まえがかわいらしく、旅情をかきたてられます。

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地球を「売り物」にする人たち

2017年03月28日 | 

最近読んだ本から、簡単に感想を残しておきます。

マッケンジー・ファンク
地球を「売り物」にする人たち 異常気象がもたらす不都合な「現実」

アメリカのジャーナリストが24か国訪れて書き上げたルポルタージュ。センセーショナルなタイトルですが、原題はWindfallで”棚ぼた”という意味です。地球規模の問題として認識されている気象変動ですが、それをビジネスチャンスと捉えている人たちがいるという現実に衝撃を受けました。

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例えば、北極圏の氷の下には豊富な地下資源が眠っていると考えられ、周辺諸国はひそかに期待を寄せています。やがて資源大国となるグリーンランドでは、デンマークからの独立が議論されています。また、北極圏の氷が解けると、太平洋・大西洋間が北極圏を通って行き来できるようになり、新たな航路としてカナダとアメリカが注目しています。

このほか、古代より干ばつに悩まされてきたイスラエルによる淡水化ビジネスや降雪ビジネス、山火事に悩まされているカルフォルニアの保険会社による顧客向け民間消防サービス、海抜0mのオランダがノウハウをもつ防波壁ビジネス、将来を見据えて高緯度の農地を買いあさっているウォール街のファンドなど。

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ピンチをチャンスに変える人間のたくましさに圧倒されますが、こうした恩恵にあずかれるのは、温暖化を引き起こした張本人である先進国で、温暖化に関与したわけではない、いわば被害者ともいえる途上国は、なすすべもなく、ますます厳しい状況に追いやられていくという現実に胸を衝かれます。

日本は先進国として温暖化ガスを排出している”加害者”の側ではありますが、一方で毎年のように、大雨、洪水、大雪...とさまざまな異常気象の被害も受けています。自国の環境・エネルギー問題を解決することが、ひいてはビジネスチャンスにつながり、他国への支援にも貢献できる。そんなウィンウィンなシナリオが描けたら理想的ですが...。

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麻布十番 ラ・パスタイオーネ

2017年03月27日 | グルメ

映画を見た後に、麻布十番にあるパスタ専門店「ラ・パスタイオーネ」(La Pastaione)さんにお昼を食べに行きました。六本木ヒルズの映画館から歩いて15分くらい。やや肌寒い中にも春の気配が感じられ、ちょうどいい散策になりました。

うっかり見過ごしそうなほど小さなお店ですが、イタリアの町の食堂といったカジュアルな雰囲気が心地よい。シェフさんはサッカーファン?のようで、イタリアのチームのユニフォームやバナーが店内のあちこちに飾ってありました。ランチは5種類から選ぶパスタに、サラダとデザート&エスプレッソがつきます。

グリーンがもりもり入ったサラダ。味がルッコラに似ているけれど葉の形が違う...と思った野菜は、あとで調べてみたらセルバチコという野菜で、別名ワイルドルッコラ、野生のルッコラとよばれているようです。生命力を感じる力強い味でした。マッシュルームを生でいただくのは日本ではめずらしいですが、新鮮さの証ですね。

桜海老と細切りサラミと春キャベツのスパゲティ。自家製の生パスタはもちもちつるりとした食感でした。

私は「小柱とからし水菜の青のりクリームソース 柚子胡椒風味」をいただきました。パスタは自家製のフェットチーネ(平麺)。家でも明太子のクリームソースにはかならず柚子胡椒を入れるので、我が意を得たりとうれしくなりました。

デザートはドライフルーツ入りのチーズアイスクリーム。上には煮詰めたバルサミコがかかっています。濃厚なエスプレッソがおいしかった!

久しぶりに麻布十番商店街をぶらぶら歩いていたら、いつの間にかお店があちこち変わっていました。和食器屋さんの店先に出ていた器に吸い寄せられて衝動買い。浅めの小鉢は和のお惣菜にぴったりですが、アイスクリームにもしっくりきました。最近人気の波佐見焼です。

六本木ヒルズの毛利庭園では、ソメイヨシノはまだ数輪しか咲いていませんでしたが、名前の知らない濃ピンクの桜がちょうど見頃を迎えていました。今日は4月も近いというのに朝から雪混じりの冷たい雨でしたが...桜にダメージがないことを祈ります。

繁みの中には馬酔木の花が。かんざしのような愛らしさに思わずにっこりでした。

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パッセンジャー

2017年03月26日 | 映画

ジェニファー・ローレンス&クリス・プラット主演のSFロマンス「パッセンジャー」(Passengers)を見ました。「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」のモルテン・ティルドゥム監督作品。

(若干のネタバレを含みます)

惑星ホームステッドIIに移住するために、乗客5000人を乗せて地球を旅立った巨大宇宙船アヴァロン号。目的地に到着するまでの120年間、乗客たちは冬眠ポッドの中で眠り続けるはずでしたが、ジム(クリス・ポッド)の入ったポッドにトラブルが生じ、彼ひとり90年早く目覚めてしまいます。

広い宇宙船の中でただひとり。話し相手はアンドロイドのバーテンダー、アーサー(マイケル・シーン)だけという日々の中、ポッドに眠る美女オーロラ(ジェニファー・ローレンス)に恋をしたジムは、孤独に耐えかねてある行動を起こします。

見ようかどうしようか迷っていましたが、イミテーション・ゲームの監督さんということに一縷の望みを託して鑑賞。過度に期待していなかった分、エンターテイメントとしてそこそこ楽しめました。ある意味、哲学的な作品といえるかも? 改めて人は社会的な生き物であり、ひとりでは生きられないのだと確信しました。

予告を見た時には、2人のポッドが故障して目覚めるのかと思っていましたが、実は故障したのはジムのポッドだけで、彼は孤独に耐えかねてオーロラのポッドを開けてしまったのでした。彼は事前にオーロラの紹介ビデオを何度も見ていて、彼女への思いを募らせていたのです。

とはいえ、たまたま2人が気が合ったからよかったものの、そうでなかったらこれから何十年もいっしょに暮していくのはかなり苦痛を伴うもので、ジムの行動は別の意味で危険な賭けだったといえるかもしれません。2人がヤケを起こして、他の人のポッドを開けちゃえ~とならなかったのは不思議ですが、そうなったら映画にならないですものね。^^

宇宙が舞台ではありますが、私が思い出したのはブルック・シールズ主演の「青い珊瑚礁」(1980)。無人島に流された少年と少女が、2人だけで成長していく物語です。ジムとオーロラのその後について映画では描かれていませんが、乗員たちが目覚めた時に、2人の子どもたち、孫たちが船内にコロニーを作っていたら...それはそれでおもしろかったかもしれません。

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フェタチーズを使って(2)

2017年03月24日 | 料理

前回に続いて、ふたたびフェタチーズの話題です。

なんと最近、近くのスーパーでもフェタチーズが手に入るようになったのです。プレーンな塩漬けのフェタチーズのほかに、ハーブとオイルでマリネしたキューブ状のフェタも。ひょっとしたらフェタの時代が来るかもしれません。

私が買ったのはプレーンな塩漬けの方で、ビニールパウチされていました。ギリシャからの輸入品ですが、パッケージのイラストがすてきですね。早速いろいろ使って楽しんでいます。

揚げ茄子とベーコンのトマトソースパスタに、青ねぎとフェタをトッピングしました。フェタをパスタに最初から混ぜなかったのは、白い色を生かしたかったから。食べる時にフェタをくずして混ぜながらいただくと、ほんのり山羊乳の味わいがしてクセになるおいしさ。どんなパスタにも合いそうです。

タコ・きゅうり・プチトマト・パセリのサラダに、フェタをトッピングしたら、一気にメディトレイニアンな雰囲気に。フェタの塩味がいいアクセントになりました。

ミートボールの生地に刻んだフェタを混ぜて、ホールトマトで煮込みました。写真ではわかりにくいですが、生地のところどころに白いフェタが見えています。フェタから旨味が出て、ミートボールが複雑な味わいになりました。

実はミートボール生地の半分は、ピーマンの肉詰めにして、いっしょにホールトマトで煮込みました。見た目ではわかりませんが、こちらにもフェタがたっぷり入っています。ピーマンが大好きなので、私はこちらの方が好み。どちらもおいしくいただきました。

【関連記事】 フェタチーズを使って(1)(2017-02-28)

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ザ・ギフト

2017年03月23日 | 映画

DVDで、ジョエル・エドガートンの初監督作品となるサイコスリラー「ザ・ギフト」(The Gift)を見ました。ジェイソン・ベイトマン&レベッカ・ホールが共演。エドガートンが監督のほか、脚本・製作・主演を務めています。

シカゴから故郷ロサンゼルスに引っ越してきたサイモン(ジェイソン・ベイトマン)と妻ロビン(レベッカ・ホール)。2人が新居のための買い物をしていると、ゴード(ジョエル・エドガートン)と名乗る男が話しかけてきます。サイモンはすっかり忘れていましたが、ゴードはサイモンの高校時代の同級生でした。

再会を祝して2人の家にワインを贈り届けたゴード。その後もゴードは、ことあるごとに2人の家を訪れ、贈りものを届け続けます。しかし、ロビンがひとりで家にいる時に訪れたり、奇怪な行動をみせるようになったため、困惑したサイモンはゴードに2度と近づかないよう言い渡します。

本作でエドガートンが演じるゴードは、気弱で悲しい目をした少々不気味なキャラクター。これまで「ブラック・スキャンダル」「ラビング 愛という名前のふたり」など彼の出演作を見てきましたが、どれともまったく違う役どころで、彼の演技の幅を再確認しました。また本作でエドガートンは、監督という新たな才能を見せています。

復讐のためにターゲットの家庭の中に入り込んでいくサイコスリラーといえば、少々古いですが「ゆりかごを揺らす手」(1992)やフランス映画の「譜めくりの女」(2006)を思い出します。どちらもおもしろかったのですが、動機としては逆恨みに近く、どうしてそこまで?と思ったのも事実。

その点、この作品は動機が十分に納得のいくものだったので、ドラマとして説得力があり、私はとても満足でした。最初は、不気味なストーカーにしか見えないゴードですが、だんだん真相が明らかになるにつれ、彼に同情し、最後には応援したくなってくるから不思議です。

一方、サイモンというのが最低の男で、私が最も許せないタイプの人間。ラストは、見ている側としては溜飲が下がりましたが、はたしてゴードにとってはどうなのでしょう。結果はどうあれ、決して過去の傷を消すことはできないだろうと思うと、複雑な思いが残りました。

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うまやの楽屋

2017年03月22日 | グルメ

映画を見た後に、久しぶりに有楽町イトシア地下1階にある「うまやの楽屋」でお昼をいただきました。こちらは、歌舞伎俳優の3代目市川猿之助さんが監督を務める和食のお店です。

過去の記録を見ると、前に訪れたのは9年前で、アメリカから帰国して数日後。今見ると、生卵に異様に反応していて恥ずかしいです。^^; 今回も、席にすわるとすぐに小さなかごに入った生卵が運ばれてきて、当時を懐かしく思い出しました。

歌舞伎役者の楽屋に届けられるお弁当をアレンジしたという「楽屋めし」をいただきました。少しずついろいろなお味が楽しめるのが私好み。蒸籠にひとつひとつ違う豆皿が入っているのが愛らしく、目にも美しく楽しめました。

おかずは、野菜のきんぴら、筑前煮、ごま豆腐、ところてん、海老フライ、さつま揚げ、明太子、たまご焼き、南蛮漬け...と九州のおいしいものを中心とした組合せ。麦飯とお味噌汁、瓶に入ったデザートの杏仁豆腐とどれもおいしくいただきました。

***

週末、用事のついでに少し時間があったので、代々木公園によってみました。

まだ花も葉もない裸木ですが、この日はよく晴れて暖かく、春の気配を濃厚に感じました。芽吹く直前の、枝先がほんわかと柔らかい色になっている今の季節が大好きです。たくさんの人たちが遊んだり、お弁当を食べたり、春の訪れを楽しんでいました。

写真ではわかりにくいですが、水辺にカラスが集まっていました。水浴びしながら、エサ情報を交換しているのかもしれません。^^

翌日は朝から冷たい雨でしたが、驚いたことに東京では全国に先駆けて桜の開花宣言がありました。まだまだ肌寒いですが、これから一気に春が加速しそうです。

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わたしは、ダニエル・ブレイク

2017年03月21日 | 映画

イギリス社会派映画の巨匠、ケン・ローチ監督の最新作「わたしは、ダニエル・ブレイク」(I, Daniel Blake)を見ました。複雑で理不尽な社会保障制度の前に立ち尽くす弱者の姿を描いたヒューマンドラマ。2016年、カンヌ国際映画祭のパルムドール(最高賞)受賞作です。

イングランド北東部ニューカッスル。妻に先立たれたベテラン大工のダニエルは、心臓病を患い、医師から仕事を止められます。やむなく福祉事務所を訪れますが、職員はマニュアルに乗っ取って意味のない質問を延々続けた挙句、就労可能との判断を下し、代わりに失業手当を受けるべく求職活動する(ふりをする)よう勧めます。

要領のいい人はパソコンで履歴書を作ってあちこちに応募し、求職活動をしたという実績を作ることができますが、パソコンの使い方を知らないダニエルは、手書きの履歴書をわざわざあちこちに出向いて配ったために証拠が残らず、役所からは求職活動をしていないとみなされてしまいます。

挙句に、彼のキャリアを買って雇い入れようとした会社に、ダニエルは「実は働けないんだ」と断らなければならず、雇い主を怒らせる始末。実直なダニエルは、これはまるで茶番だと匙を投げようとしますが、親切な職員に「これを逃したら、国からの援助がまったく受けられなくなってしまう」と説得されます。

日本でも、生活保護を受けるのに、システムが複雑で理解するのが難しかったり、何度も何度も質問された挙句、人間としての尊厳を損なわれて、あきらめざるを得なかったり、といった問題を耳にすることがありますが、イギリスでもまさに同じようなことが起こっていることを、この映画を見て知りました。

何かと理由をつけて、ほんとうに困っている人に福祉の恩恵を受けさせないためのシステム。40年間まじめに働き、善良な市民として税金を払い続けてきたのに、なぜこんな目にあわなければならないのか。ダニエルの叫びが心をえぐります。

ある時ダニエルは、役所で職員ともめていたシングルマザーのケイティを助けた縁から、お互いに家族のような交流を深めていきます。職がなく、食べるものにも事欠いているケイティのために、ダニエルは家の修理を引き受けます。ダニエルと接する中で、子どもたちも少しずつ落ち着きを取り戻していきます。

引っ越してきたばかりで近くに身寄りのないケイティにとって、ダニエルの親切がどれほど心に染みたことでしょう。しかしケイティもまた、明日の暮らしが見えない厳しい現実の中で、徐々に追い詰められていきます。思い余っての行動には涙があふれてしまいました。

毎日をせいいっぱい生きていても、病気や災害などの不慮の事態によって、あるいはちょっとしたボタンの掛け違いで、人間らしい生活がある日突然奪われてしまうのは誰にでも可能性のあること。そうした人たちを支えるのが国の、福祉の役割ではないのか。

映画の大半は役所とダニエルの押し問答で、ラストも決して明るいものではないのですが、それでもこの作品に救いを感じるのは、彼らを見放さず、助けようとする、数々の隣人の存在があるから。見たあとも、考えさせられ、語り合いたくなる作品でした。

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クリスチャンの”3”の朝食 @ザ・コンサルタント

2017年03月16日 | +映画のひとさら

映画「ザ・コンサルタント」(The Accountant)の中で、ベン・アフレック演じる主人公のクリスチャンが作っていた朝食。なぜか数字の3にこだわっていたのが、彼のキャラクターにぴったり合って印象的でした。

The Accountant | Breakfast Scene HD

3枚のパンケーキ、3片のベーコン、そして3つのたまごで作る目玉焼き。

3は父、彼、弟の3人を意味しているのか?はたまた三位一体を表しているのか?それとも、偶数でない最小の素数だから?? 理由は定かではありませんが、彼が3が好きだということはよくわかりました。^^  映画をまねして私も作ってみたくなりました。

パンケーキとベーコンはともかく、トリプルの目玉焼きを作るのが思いのほか難しかった。円く仕上げるために、ケーキ型の枠を使いましたが、映画ではどうやって作ったのでしょう? 3つの卵黄をバランスよく配するのもたいへんで、位置を調整しているうちに、1つめの卵が少し固まってしまいました。

ミニマリストのクリスチャンが持ってるようなアルミのお皿がないので、思いつきで木目柄のトレーで代用してみましたが、これがなかなかいい感じ。最終的にはそれらしくできて満足しました。

このあと3つのお皿に分けていただきましたが、これで一人前とはクリスチャンはなかなかの大食漢ですね! 久しぶりのアメリカンな朝食は、家族にも好評でした。

【関連記事】 ザ・コンサルタント (2017-02-21)

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