上野の東京都美術館で開催された「ハマスホイとデンマーク絵画」展を見に行きました。
東京展はコロナの影響ですでに閉展していますが、4月7日~6月7日と山口での開催が予定されています。
19世紀末デンマークを代表する画家ヴィルヘルム・ハンマスホイの作品約40点と、同時代に活躍したデンマークの画家たちの作品合わせて約90点を紹介する展覧会です。展示室は、ハンマスホイが描いた室内風に作られているところもあり、作品の世界を存分に堪能できました。
上のポスターの作品は「背を向けた若い女性のいる室内」(1903-04)。コンソールの上にあるパンチボウルはロイヤルコペンハーゲンのもので、会場にはハンマスホイが所有していた実物が展示されていました。欠けたところが金継ぎで修復されていましたが、アンティークの輝きは本物でした。
私が初めてハンマスホイの作品に出合ったのは、映画化もされた「サラの鍵」という小説の表紙で「室内ー開いた扉、ストランゲーゼ30番地」(1905)という作品です。灰色みがかった静かな室内画は心象風景のようでもあり、ストーリーとも相まってひと目で魅了され、いったい誰の絵?と思ったのがきっかけでした。
その後、トム・フーパー監督による、デンマークを舞台にした映画「リリーのすべて」(The Danish's Girl) では、主人公の2人(エディ・レッドメインとアリシア・ヴィキャンデル)が住む家に、ハンマスホイの室内空間が再現されていました。
そんな経緯もあって楽しみにしていたので、閉展前に見に行くことができてよかったです。
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ハンマスホイの作品は、静謐な美しさにただただ引き込まれました。北欧の柔らかい光が降り注ぐ風景、洗練された都会での暮らし、家族との穏やかな日常など、ほっとくつろげる魅力がありました。
ハンマスホイと同時代に生きるデンマークの画家たちの作品は、どれも初めて聞く名前でしたが、ハンマスホイの作品と共通するものがあり、この時代のデンマークで、室内画がよく描かれていたことを知りました。寒さゆえに家での時間を大切にする、北欧ならではのムーブメントだったのかもしれません。
オスカル・ビュルク「スケーインの海に漕ぎ出すボート」(1884)
半島北端の漁師町スケーインが芸術家たちの間で注目され、厳しい自然環境や漁師たちの生活を描く画家たちは、スケーイン派とよばれました。私はオスカル・ビュルクという画家が描くドラマティックな世界に惹かれました。
作品からうかがえるスケーインが、アメリカ・マサチューセッツ州のケープコッドに似ているように感じたことも気に入った理由かもしれません。
ヴィゴ・ヨハンスン「きよしこの夜」(1891)
ヴィゴ・ヨハンスン「春の草花を描く子供たち」(1894)
ピーダ・イルステズ「ピアノに向かう少女」(1897)
ヴィルヘルム・ハマスホイ「農場の家屋、レスネス」(1900)
ヴィルヘルム・ハンマスホイ「ピアノを弾く妻イーダのいる室内」(1910)
ハンマスホイ作品がもつ独特の色調に、心が静かに満たされるのを感じました。