セレンディピティ ダイアリー

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アラン・ドロン追悼上映「冒険者たち」

2024年12月01日 | 映画

招待券をいただいて、渋谷のル・シネマ宮益坂下で開催中の、この夏に亡くなられたアラン・ドロン追悼上映に行ってきました。「太陽がいっぱい」ほか全3作が上映されていますが、私たちが見たのは「冒険者たち」です。

※ ル・シネマが東急文化村から宮益坂下に移転してから初めて訪れました。シアターは7階と9階にありますが、チケット発券所は1階にありますのでご注意くださいね。

冒険者たち (Les Aventuriers / The Last Adventure) 1967

飛行機操縦士のマヌー(アラン・ドロン)、レーシングカーのエンジン開発者ローラン(リノ・ヴァンチュラ)、現代美術アーティストのレティシア(ジョアンナ・シムカス)。

それぞれ夢に破れた3人は、コンゴの海底に眠る5億フランの財宝の噂を聞きつけ、アフリカへと旅立ちます。

男性2人、女性1人の3人が宝探しの旅に出る冒険映画で、この作品は「明日に向かって撃て!」など、後のさまざまな映画に影響を与えたと言われています。

久しぶりに見たフランス映画ということもあり、とても楽しめたのですが、最初のうちは、3人の生き方が地に足がついていないように思えて、共感しにくい部分もありました。

例えば、マヌーが凱旋門の上を飛ぶ前に法律を調べなかったことや、ローランが安全性を考えずに実験したこと、レティシアが全財産を個展に注ぎ込んだことなど、どれも見込みが甘く無鉄砲に思えて、ちょっといらいらしました。

でもそれは、私が常識的だからかもしれません。コンゴに行くことも、コンゴでの3人の行動も、見ていて冷や冷やするばかりでしたが、そもそも私のように心配していては映画にはなりませんね。

印象に残ったのは、マヌーとローランが、レティシアの故郷を訪ねる場面です。どことなく「男はつらいよ」のテイストを思い出しました。ローランがレティシアの夢を実現しようと熱く計画を語る場面も、胸にぐっときました。

意外だったのは、レティシアがハンサムで年齢も近いマヌーではなく、年上のローランを将来のパートナーとして選んだことです。でも、彼女はローランの誠実さや優しさに惹かれたのかもしれません。

一方で、マヌーがレティシアに対して最初から一歩引いていた点も、彼の思いやりを感じて、好感を持ちました。この3人だからこそ絆が深まり、関係がうまくいったのでしょうね。

そして、ローランがマヌーに語りかけた最後のことばに心を強く揺さぶられ、そのとたんに涙があふれてしまいました。なんだかんだと文句を言いましたが、私はこの作品をとても気に入りました。

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トラップ

2024年11月03日 | 映画

M・ナイト・シャラマン監督の最新作です。

トラップ (Trap) 2024

たまたまシャラマン監督の最新作のことを公開直前に知り、「おもしろそう!」と期待して見に行ってきました。上映時間も長すぎず、肩の凝らない内容で、エンターテインメントとして存分に楽しめました。

娘ライリーを溺愛する父親クーパーは、ライリーが大好きなミュージシャンのコンサートのアリーナ席チケットを手に入れて、いっしょに会場へ向かうのですが、警備をする警察官の数が尋常ではない。

不審に思ったクーパーは、場内ショップの店員から「連続切り裂き魔『ブッチャー』がこの日コンサート会場に紛れ込んでいるらしい」という情報を耳にします。実はその切り裂き魔こそがクーパー、という設定です。

会場にはさまざまなトラップが仕掛けられているはずなので、ショップの店員も、会場で偶然会ったライリーのクラスメートの母親も、実は警察のグルなのではないか?と勘ぐってしまう。

また、ライリーが熱烈なファンであるスター歌手、レディ・レイヴンがステージで歌う曲の歌詞も、何やら意味深なものに感じられ、もしかして彼女も真相を知っているのでは?と疑ってしまう。

観客である私たちも、クーパーと同じ視点で、どこにどんなトラップが仕掛けられているのか、そしてクーパーははたしてこの危険な状況から抜け出すことができるのか、ドキドキはらはらしながら見守ることになります。

シャラマン監督自身も会場スタッフのひとりとして登場していますが、エンドロールを見て、レディ・レイヴンを演じていたのが、シャラマン監督の娘、サレカ・ナイト・シャラマンだと知りました。

サレカさん自身も実際に歌手なのですね。彼女の歌もよかったし、カリスマ性もあって、スターの役どころがとても合っていました。

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ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ

2024年10月14日 | 映画

三連休に帰省していた息子と「ジョーカー」の続編「ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ」(Joker: Folie a Deux)を見に行きました。

息子ともども前作がとても気に入っていたので、本作をとても楽しみにしていました。正直に言えば、前作があまりにすばらしかったので、それを上回る感動はなかったのですが、後からじわじわと考えさせられる作品でした。

今回は、世界の歌姫レディ・ガガがハーレイクイン役で登場しているとあって、ミュージカル仕立てとなっていて、主演の二人の魅力が存分に堪能できましたし、本作の魅力である、ダークでアートな世界観も健在でした。

ビリー・ジョエルのMy Lifeがカーラジオでかかっていたので、本作の舞台は1970~80年頃と想像しましたが、私は本作で描かれているストーリーに、現代のネット社会に通じるものを感じました。

救いのない時代に、人々はジョーカーを悪のヒーローとしてあがめ、過大に英雄視してきましたが、いったん何か気に入らないことが起きると、突然ジョーカーを奈落の底へと突き落とし、容赦のない暴力を浴びせるのです。

そして、愛によって結ばれたはずのハーレイクインでさえも、ジョーカーの言動が自分の求めていたものと違っていたという理由で、いとも簡単に離れていったことに、現代における「愛することの軽さ」を思いました。

そして私は、本作はジョーカーとハーレイクインの物語でも、アーサーとリーの物語でもなく、ホアキン・フェニックスとレディ・ガガの物語になっている、と思いました。

ハーレイクインは、精神不安定な放火魔ではなく、自由で才能あふれるアーティストに見えましたし、ジョーカーは、病的で気味の悪い殺人鬼ではなく、思慮深いインテリに見えてしまいました。

だから、(監督が意図したように)この二人が互いの中にある狂気に惹かれたのではなく、お互いの才能や個性を尊重して惹かれ合っているように、私には見えました。

映画は、ミュージカル仕立てになっていましたが、高らかに歌い上げるのではなく、あくまでセリフのようにささやくように歌っていたのが印象的でした。

スティービー・ワンダーの For Once in My Life、ジャズの名曲 Bewitched、カーペンターズの Close to You など、だいぶアレンジされていましたが、よく知っている歌、好きな歌がたくさん登場していて楽しめました。

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カジノ / 縞模様のパジャマの少年 / ファミリー・アフェア 他

2024年10月02日 | 映画

NETFLIXで見た4作品です。

私の居場所の見つけ方 (All We Had) 2016

トム・クルーズの元妻ケイティ・ホームズの初監督・主演作品です。

ケイティといえば、かつては娘のスリちゃんといっしょにおでかけしているところを連日のようにパパラッチされていたことを思い出しますが、最近の様子を知らなかったので、久しぶりに映画を見たいと思いました。

ケイティが演じるリタは、次から次と恋人の家に転がり込んでは捨てられて、を繰り返している恋多きシングルマザー。私は、映画「フロリダ・プロジェクト」を思い出しました。

フロリダ・プロジェクトと違うのは、一文無しになったリタが理解あるダイナーのオーナーに出会い、住み込みで働かせてもらえるところ。最後には誠実なパートナーに出会えるところ、でしょうか。

リタのキャラクターにはなかなか共感できなかったですが、冒頭でお金がないために自力で虫歯を抜かざるを得なかったリタが、最後には虫歯を治療してくれる優しい歯科医の伴侶を得た、という展開にストーリーの遊び心を感じました。

ファミリー・アフェア (A Family Affair) 2024

ニコール・キッドマンとザック・エフロンの、ロマンティック・コメディです。

夫を亡くした作家のブルック (キッドマン) が、映画俳優のクリス (エフロン) と恋に落ちるという物語。ブルックの娘ザラは、クリスのアシスタントを務めていて、クリスの我儘にいつも振り回されています。

ブルックとクリスはかなり年の差がありますがが、ニコールは若々しくて美しいし、エフロンは実年齢よりも落ち着いて見えるので、それほど違和感はなかったです。でもこれは、ニコールだから成立するストーリーですね。^^;

私はブルックよりも、無茶ぶり上司のクリスに振り回される、ザラに共感しながら見ていました。そういえば、ザラがクリスに腹を立てた時に「sayonara!」と捨て台詞を言う場面があって「おっ!」と思いました。(過去記事参照)

クリスマス休暇をブルックの実家ですごす場面もよかったです。(その後ちょっとした修羅場がありますが) アメリカ映画に出てくるクリスマスの場面が好きなのです。^^

カジノ (Casino) 1995

マーティン・スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロ主演のマフィア映画です。

デ・ニーロの他、スコセッシ監督のマフィア映画には欠かせないジョー・ペシが共演といえば、おもしろくないわけがない。美しくてゴージャスなシャロン・ストーンが、デ・ニーロの妻を演じています。

スコセッシ監督の「グッドフェローズ」や「アイリッシュマン」を彷彿とさせる、1970~80年代にラスベガスのカジノで暗躍していたマフィアたちを描いた、実話に基づく物語です。

ストーリーがテンポがよく展開し、飽きさせない。きらびやかなカジノの裏側で動く現金の扱いがあまりに軽く、まるでおもちゃのお金をやりとりしているようでした。あまりに現実離れしていて、エンターテイメントとして楽しめました。

マフィア映画なので、エグい暴力シーンもところどころにありますが、その度にクッションで顔を隠しながら乗り切りました。^^

縞模様のパジャマの少年 (The Boy in the Striped Pajamas) 2008

公開時に気になっていた作品ですが、どういう結末なのか想像できたので、これまで見る勇気を持てずにいました。たしかに結末は予想通りではあったものの、主人公の少年ブルーノ (エイサ・バターフィールド) の目を通して描かれているので

直接暴力を描いた場面はほとんどなく、強制収容所の中が登場するのも最後の最後。でもそれゆえに、鮮烈な印象が残りました。哀しい物語ではありますが、映像が儚く美しく、少年たちの友情が美しく、心を震わせられました。

気になったのは、どうして母親はブルーノから目を離すのだろうということ。特殊な環境ですし、好奇心旺盛で冒険好きの少年なのだから、ふだんから母親かお手伝いさんがブルーノをしっかり見守っているべきだった。

それから、子どもでもあんなに簡単に穴が掘れるのだから、とっくに何人もの人が逃げ出せたのではないかしら、とちょっと思いました。

引越しの日のブルーノは、白いシャツにニットのベストをきちんと着て、これまで一番というくらいかわいかったので、友だちを助けるためとはいえ、あんなにみすぼらしいパジャマを着ようとするだろうか?とも思いました。

それでもそれらすべてを差し引いても、心に残る作品でした。

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自由研究には向かない殺人(Netflixドラマ・全6話)

2024年09月16日 | 映画

Netflix配信のドラマシリーズ全6話。イギリスの田舎町を舞台に、優等生の女子高校生が、5年前に起こった殺人事件の真犯人を求めて奮闘するミステリーです。

自由研究には向かない殺人 (A Good Girl’s Guide to Murder) 2024

唐突ですが、少女探偵「ナンシー・ドルー」をご存知でしょうか。私は小学生の時に学校の図書室で偶然このシリーズに出会い、一時期夢中になって読んでいました。

当時衝撃だったのは、高校生のナンシーが車を運転していたことです。友人と車で犯人を追っている途中で、ガソリンがなくなったところ、ちょうど下り坂に差し掛かり、そのまま余力で追い続けるという描写がありました。

子どもなのに車を運転している!と当時はびっくりしたのですが、大人になってから、アメリカでは高校生が免許を取って車を運転するのは、ごく当たり前のことだと知ったのでした。

話はそれましたが、そんなことを懐かしく思い出し、イギリス発のこの少女探偵のドラマを見てみたくなりました。原作は、英国人作家ホリー・ジャクソンのベストセラー。日本でも「ミステリーが読みたい!」他いくつもの賞を受賞しています。

舞台はイギリスの美しい平和な田舎町。主人公のピップはケンブリッジ大学への進学を目指す優等生です。5年前に女子高生アンディが行方不明となり、アンディの恋人サルが殺人を自白して自殺、そのまま殺人犯として処理されてしまいました。

優しかったサルが殺人犯とはどうしても信じられないピップは、事件の真相を明らかにしようと立ち上がります。

「ナンシー・ドルー」ののどかな事件とは対照的に、現代を舞台にした本作は、ドラッグ、性、暴力、さまざまな闇が背後にあり、真相に近づくことは命の危険をともなうものでした。

同じ高校に通いながら、しかも全員が顔見知りといってよい小さな町で、ピップのようなまじめな生徒たちと、正反対の不良たちが、表面上は何の問題も衝突もなく共存していることの恐ろしさを覚えました。

そして多くのミステリーと同じように、もっともあり得ない人物が犯人だったのも衝撃でした。でも現実社会においても、もっとも恐ろしい悪魔は善人の仮面を被っているものなのかもしれませんね。

私はピップを取り巻く健全な世界を愛するので、真相を暴くために彼女が危険に足を踏み入れようとすることが心配で、はらはらしながら見守っていました。

ピップが自分の部屋の黒板に、事件の手がかりを次々とピンナップしているところが楽しかった。(まるで警察の捜査本部みたいに!)壁紙がウィリアム・モリスの Willow Bough というのもイギリスらしい。

ピップを演じるエマ・マイヤーズの清潔感が好ましかったです。「17歳の肖像」(An Education) の頃のキャリー・マリガンを思い出しました。これから注目したい俳優さんです。

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フォールガイ

2024年09月01日 | 映画

ライアン・ゴズリングがスタントマンを演じるアクションコメディ映画です。


フォールガイ (The Fall Guy) 2024

コメディは苦手ですが、本作はライアン・ゴズリングというよりは、ヒロインのエミリー・ブラントを目当てに見に行きました。監督は自らもスタント出身という「アトミック・ブロンド」のデヴィッド・リーチ。

キレのいいアクションにスピード感のある展開、コミカルな会話、ほんのりロマンス、ミステリーの要素もあって、夏にぴったりのエンターテイメントムービーでした。


冒頭からノリノリではじまるKISSの I Was Made for Lovin’ You、細いワイヤーにつながれたスタントマンのコルト (ライアン・ゴズリング) が高い崖の上から背中から飛び降りるシーンに一気に映画の世界に引き込まれました。

私が初めてワイヤーアクションを見たのは、キアヌ・リーヴスの「マトリックス」と記憶しています。その後に見たミシェル・ヨーの「グリーン・デスティニー」での人間離れしたアクションも印象的に覚えています。


高く飛び上がってキックしたり、かっこよくポーズを決めたり、当時はどうやって撮影しているんだろうと思っていましたが、本作を見て、その謎が解けたのがうれしかったです。

それにしてもあんなに細いワイヤーに命を預けるなんて信じられない! 本作ではライアンがスタントマン役を演じていますが、そのライアンのアクションもライアンのスタントダブルが演じているのですよね。

本作は、リーチ監督によるスタントマン賛歌であると受け止めました。映画ネタ(そのセリフは「ノッティングヒルの恋人」じゃなくて「プリティウーマン」だよ、とか)も次から次へとぽんぽん飛び出して楽しかった。


音楽はリーチ監督の好みか、全体的にハードロックが多めでしたが、懐かしかったのがエミリー・ブラントがフルコーラス歌う、フィル・コリンズの Against All Odds。映画「カリブの熱い夜」(Against All Odds) の主題歌ですが、映画公開当時大好きな歌でした。

というわけで、何かと大いに楽しめました。

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ツイスターズ

2024年08月24日 | 映画

オクラホマに大量発生する竜巻に立ち向かう、ツイスターチェイサー (竜巻追跡者) たちの奮闘を描く、アドベンチャー&パニック映画です。

ツイスターズ (Twisters) 2024

ミナリ」のリー・アイザック・チョン監督、「ザリガニの鳴くところ」のデイジー・エドガー=ジョーンズ、そして「イン・ザ・ハイツ」のアンソニー・ラモスが出演するというので楽しみにしていました。

本作は、竜巻銀座で知られるオクラホマが舞台。かつて、竜巻の実地実験で仲間の3人を失った辛い過去をもつケイト(デイジー)が、もうひとりの生き残りハビ(ラモス)に呼び寄せられて故郷オクラホマにもどり、再び竜巻の弱体化に挑戦します。

そこにはツイスターチェイサーとしてSNSで有名なタイラー (グレン・パウエル)のチーム がいて、ハビたちのチームと、どちらがツイスターの発生と進路を予測できるか、競い合うことになります。

まず、ケイトのチームの「竜巻を弱体化させる」という目的は、社会的意義があるので理解できるのですが、タイラーの目的がよくわからなかった。竜巻を追いかけて迫力ある映像を撮って注目を浴びること?

被災地で救助活動を行っていたので、ツイスターの発生と進路を予測して、被害を未然に最小限に食い止める、というのが真の目的なのかもしれませんが。

それから、ケイトの竜巻を弱体化させる方法が「紙おむつに使われている吸水ポリマーを、竜巻に向かって打ち上げる」というのが、稚拙な発想に思えてしまったのも正直なところ。

でも、そんな細かいことは抜きにして、迫力ある映像や、王道のストーリー展開など、娯楽作品として大いに楽しめました。

オクラホマの何もない、緑の大平原の美しさは、さすがは「ミナリ」のチョン監督だと感嘆したし、「ザリガニ~」のデイジーは、竜巻で何度もぼろぼろになってもやっぱり魅力的でした。

竜巻にちなんで、ケイトの実験装置に「オズの魔法使い」の名前がつけられているのも楽しかった。

映画を見終わって、私が「(ケイトとタイラーが、互いに惹かれ合いながらも) 安易に恋愛に発展しないところがよかった」と息子に言ったところ、息子が「それは年上のタイラーが、年齢差をわきまえていたからでしょ」と答えたことにびっくりしました。

息子とこういう大人の話ができるようになったことがとても感慨深かったし、彼の良識に、私の子育ては決して間違えていなかったのだと安堵しました。

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FALL フォール

2024年08月09日 | 映画

アメリカの荒野にそびえる高さ600メートルの老朽化した鉄塔の上に取り残された2人の、生き残りをかけた奮闘を描くサバイバルホラーです。

FALL フォール (Fall) 2022

瞳さんがご紹介されていて、おもしろそう!と見た本作ですが、期待通りにおもしろかった! シンプルといえばシンプルなのですが、次から次へと襲いかかる困難が、バラエティ豊かで飽きさせない。

そもそもパートナーをロッククライミングで亡くして一年間も立ち直れない親友を、いきなりこんな途方もないミッションに巻き込むなんてあまりに無茶ぶりすぎます。^^ ある意味ショック療法でしょうか??

2人が挑むのは、あたり一面何ひとつないアメリカの荒野に、屹然とそびえ立つ鉄塔。取り壊しが決まっているこの鉄塔は、さびついていて、ところどころボルトのゆるみもあります。

600メートルという高さはあるけれど、はしごもついているし、楽勝でしょ?と最初は思っていたのですが、とんでもなかった。頂上まで無事に登ってやれやれと思ったら、まだ映画全体の3分の1しか経っていないのです。

この後どうやって引き延ばすのか?!と思ったら、ここからが本番でした。高いのも怖いのですが、今にも壊れそう、倒れそうなのが怖くて、見ていられず、何度も何度も顔を背けてしまいました。

さて、何が起こるのか、結末は?については、映画を見てのお楽しみですが、ドローンやSNSが登場するのが今の時代ならでは。それから、ちょっぴり勧善懲悪っぽいところが、アメリカ映画らしいなーと思いました。

余談ながら、以前ダニー・ボイル監督の「127時間」を見た時にも思ったことですが、山登りや人里離れたところに行く時には (めったにないことですが) 必ず行先を周りの人に伝えなくては、と心に誓いました。

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ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌

2024年08月03日 | 映画

全米ベストセラーとなったJ・D・ヴァンスの回顧録を、ロン・ハワード監督が映画化。アメリカの知られざるリアルな一面を描いた、実話に基づく作品です。

ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌 (Hillbilly Elegy) 2020

この作品の原作は、アメリカで話題になっていた頃から気になっていて、翻訳版が出版されてすぐに図書館で借りて読み始めたのですが、長編な上に内容がかなりきつくて、一度に読み終えられずに返却してしまったのです。

そういえば「ザリガニが鳴くところ」もホワイトトラッシュ(貧しい白人)を描いた作品で、最初はつらくてなかなか読み進めることができなかったことを思い出します。(あとで読了しましたが)

著者のヴァンス氏は、アメリカ中西部のオハイオ州やケンタッキー州の最貧の白人社会から、イェール大学のロースクールを卒業した努力家で、現在、共和党のトランプ大統領候補を支えるブレインであり、副大統領候補に任命されています。

民主党を支持しているのが、東海岸、西海岸の都市部のインテリ層やマイノリティであるのに対して、先の大統領選挙でトランプを支持してきたのは、中西部の農家や炭鉱などで働く肉体労働者たち、すなわち国の繁栄から取り残されてきた貧しい白人たちでした。

ヴァンスの母は13歳の時に妊娠。結婚もせず、学校にも行かず、子どもを育ててきました。結婚を夢見て次々と男性と付き合っても長続きしない。何とか資格を取って看護師の仕事に就いたものの、薬物に手を出して解雇されてしまいます。

そうした過酷な環境の中で、ヴァンスも道を踏み外しそうになりますが、見かねた祖母が無理やり母親からヴァンスを引き離して自分の家に引き取り、経済的に恵まれない中で、愛情深く育てます。

そんな祖母の姿に一念発起し、アルバイトで生活を支えながら死に物狂いで勉強するようになったヴァンスを見て、私は涙が止まらなくなってしまいました。

アメリカの名門大学は生まれながらに恵まれた家庭の子女が多く、いくら優秀とはいえ、ヴァンスが彼らと肩を並べて学ぶには、計り知れないほどの苦労を重ねてきたと思います。

でも一方で、そんなヴァンスだからこそ、できること、わかることもあると思います。

今年の大統領選挙は、おもしろいことになりそうだなーとひそかに注目しています。

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セーヌ川の水面の下に

2024年07月28日 | 映画

トライアスロンの世界大会を目前に控えたパリのセーヌ川に、巨大化したサメが出現するパニック映画です。

セーヌ川の水面の下に (Sous la Seine / Under Paris) 2024

この週末からいよいよパリ五輪が始まりましたが、みなさまは開会式をご覧になりましたか? 私は時差の関係もあって、後からネットで流れてくるハイライトの部分を拾いながら見たのですが

エンディングを飾る、セリーヌ・ディオンの闘病を微塵も感じさせない圧倒的な歌声にノックアウトされました。レディ・ガガのコケティッシュなパフォーマンスも、彼女らしくてとってもチャーミングでしたね。

選手団がセーヌ川を船で下って入場する、というとてつもないアイディアにもびっくりしましたが、2週間前に表題の映画を見たばかりだったので、途中で巨大サメが現れるのではないかと、ひやひや、にやにやしながら見ていました。^^

特にこの度の開会式のパフォーマンスは、フランスらしい、アグレッシブでシニカルな表現がそここにあったので。

開会式では、映画に登場するパリの町並みやセーヌ河畔の風景はもちろんのこと、地下水路やカタコンベも登場して、大いに興奮しました。偶然ながらタイムリーな鑑賞となりました。

さて、本作では、本来 海水でしか生息できないはずのサメが、地球環境の変化に対応して巨大化し、淡水でも生きられるよう進化した、という設定です。

冒頭に登場する、チャールズ・ダーウィンの「生き残るのは、最も強い種でも、最も賢い種でもない。変化に適応する種である」という名言が、この映画をみごとに表しています。

本作は名作「ジョーズ」にインスパイアされて作られたそうです。「ジョーズ」では、夏の観光シーズンを前にサメの存在をひた隠しにした市長の判断ミスで、何人もの観光客が犠牲になりますが

本作では、パリが威信をかけて開催するトライアスロンの世界大会を、今さら中止することはできない!と主張する市長の判断ミスによって、その後の大惨事を招くことになります。

太平洋や大西洋に存在するゴミの巨大渦の影響で、サメが進化を遂げて巨大化したという設定は、人間のエゴのために巨大化した「ゴジラ」にもインスパイアされているように、私は感じました。

このゴミの巨大渦については、以前大学の社会人クラスでSDGsの授業を受けた時に知ってかなり衝撃を受けたのですが、ご興味のある方はこちらのWikiをお読みになってみてください。

太平洋ゴミベルト(Wikipedia)

映画は、こうした環境問題や政治家の判断ミスによる人災などを盛り込みつつも、シリアスではなく、エンターテイメントとして楽しめました。

今まさに見るのにぴったりの作品です。

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