セレンディピティ ダイアリー

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レイニーデイ・イン・ニューヨーク

2020年07月29日 | 映画

ウディ・アレン監督の最新作は、ニューヨークを舞台にした、アレンらしいスノッブでシニカルなロマンティック・コメディ。ティモシー・シャラメ、エル・ファニング、セレーナ・ゴメスと今をときめく若手俳優たちが共演しています。

ニューヨーク北部の大学に籍を置くギャツビー(ティモシー・シャラメ)とアシュレー(エル・ファニング)。アシュレーが、憧れの監督にインタビューする約束を取り付けてマンハッタンを訪れることになり、ギャツビーは同行して

勝手知ったるマンハッタンをアシュレーに案内しようと極上のプランを練りますが、忙しく飛び回るアシュレーに次々と約束をすっぽかされてしまいます。そんな折、ひょんなことから昔の彼女の妹チャン(セレーナ・ゴメス)に再会し...。

予告映像を見た時から楽しみにしていた本作、公開最初の週末に足を運んできました。緑が豊かで広大な大学のキャンパス。そこから長距離バスでマンハッタンに乗り込むくだりから、アメリカらしさ全開でうれしくなってしまいました。

エロル・ガーナーの流麗なピアノ、昔の映画風のスタッフロール、街の息遣いが聞こえてきそうなマンハッタンの風景、固有名詞を多用した小粋な会話、すべてがアレンならではで、うっとりわくわくと映画の世界に酔いしれました。

ざっくり言えば、奔放なガールフレンドに振り回された主人公が、新しい恋を見つけるまでのドタバタ劇。笑いのツボは人それぞれですし、アレンの作品には当り外れがありますが、本作は私の好みにドンピシャリでした。

とにかく、エル演じるアシュレーがかわいくて、かわいくて。私はたぶん、少女漫画みたいにがんばる女の子が好きなんだと思います。それが時にずれずれになっているところも憎めなくて、親近感を覚えます。

どうしてもチャンみたいに、クールで落ち着いた女性にはなれないし、ギャツビーのように、霞を食べて生きているような男性にも、あまり魅力を感じない。^^;

本作のハイライトはなんといっても母の告白。この場面で、この作品がびしっと締まったと感じました。ギャツビーと母の関係性、長男と次男のキャラクターの違いなど、なんとなく「エデンの東」を思い出しました。

本作はアレンのスキャンダルで米国での公開が中止、コロナ禍で日本での公開も遅れましたが、とにかく見ることができてよかった。でも、この映画で描かれているキラキラしたニューヨークがもどってくる日がくるだろうか、と思わずにはいられませんでした。

【関連記事】Everything Happens to Me @レイニーデイ・イン・ニューヨーク 2020-08-01

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和可奈鮨

2020年07月24日 | グルメ

先月、息子が帰省した折に、お誕生日のお祝いにお寿司を食べに行きました。子育て中は、毎年お料理を作りケーキでを焼いてお祝いしていましたが、大人になった今、ようやくもういいよね?と親子ともども言えるようになりました。^^

訪れたのは学芸大学の和可奈鮨(わかなずし)さんです。駅に近い、カウンターのみ10席ほどのこじんまりとしたお店ですが、創業90年という歴史のあるお店。この日は3代目の若さん(といっても大ベテラン)が握ってくださいました。

2代目のおやじさんともども、魚やお寿司のことになると饒舌になり、職人としての自信と誇りがうかがえます。お勧めのお刺身をつまんだあとに、おまかせのお寿司をいただきました。

まずはビールで乾杯。この日お勧めのカツオと鯵のお刺身をいただきました。添えてあるわかめや貝割れ、大葉まで全部おいしくて、きれいに平らげました。

お寿司は、カンパチからスタート。お酒は、お寿司によく合うという岩手県石巻の ”日高見” を冷でいただきました。

本マグロ。このあと、写真はないですが大トロと続きます。甘さを抑えた手作りのしょうががおいしくて、これだけでお酒が進むほど。

雲丹。とろけるようなおいしさ。

イカ。(何イカだったか失念) 切込みが入っていて食べやすい。

炙った平貝を塩でいただきます。帆立に少し似ていますが、わずかに歯応えがあります。

車海老。

車海老の殻は、カリカリに揚げたおせんべいにして、まるごといただきます。

穴子。優しいお味。

夫の大好物のコハダ。

お吸い物の具は、コチでした。骨があって食べにくいですが、身がむくっとしておいしいです。

鉄火巻きにかんぴょう巻き。かんぴょうも甘さ控えめのすっきりとしたお味です。この後、写真はありませんが玉子焼きをいただきました。

厳選された素材とプロの技によって握られたお寿司は、どれも洗練されたおいしさ。大満足でお店を後にしました。

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浅草 グリル佐久良 & 菓子工房ルスルス

2020年07月21日 | グルメ

1ヶ月ほど前になりますが、洋食好きの夫が浅草に行きたいお店があるというので、雨の中、車ででかけてきました。コインパーキングに停めて向かった先は、浅草寺の北側、浅草の賑わいから少し離れた静かな住宅街の中にある グリル佐久良 さんです。

お昼時、既にお店の前には十数人の列ができていて、雨の中1時間近く待つことになり、特段洋食が好きというわけではない私は「聞いてないよ~」とばかりにめずらしく不機嫌になってしまったのですが^^;

ようやく順番が回ってきて、お料理のおいしさと、おかみさんのお人柄にほっとして、気持ちがおさまったというところです。おかみさんと常連さんとの会話を漏れ聞くに、

自粛明けでお店を再開し、待ちかねていたお客さんが次々と訪れたということもあるでしょうし、十分なディスタンスを取るために、一度にお客様を入れられないという事情もあったようです。

メニューは定番の洋食メニューがならびますが、私はお店の看板メニューらしいビーフシチューをいただきました。とろけるほどに柔らかい牛肉、そして深みのあるまろやかなシチューのおいしいこと。これだけで待った甲斐がありました。

夫は迷いに迷ってカニクリームコロッケにしました。こちらも熱々のクリームが堪えられないおいしさ。カニクリームコロッケはタネの扱いが難しく、家ではめったに作らないので、夫もプロのお味を堪能したことと思います。

そしてガーリックライス。洋食によく合うおいしさでした。

私たちはカウンター席でしたが、飾られているスナップ写真や調理師免許などから推察するに、シェフのご主人が亡くなられ、今はお孫さんが跡を継いて、厨房で腕をふるわれているようです。ご家族の歴史とドラマが伝わってきて、心が温かくなりました。

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偶然ですが、このすぐ近くに、以前から気になっていたスイーツのお店があったので、立ち寄っておみやげを買って帰りました。菓子工房ルスルス というお店です。お店は東麻布にもありますが、浅草店は古民家を改装したレトロシックな佇まいです。

この時はイートインは再開されていなくて、テイクアウトのみでした。人気のクッキー詰め合わせは完売でしたが、ガラスケースにあった中から、焼菓子とフルーツを使ったタルトを選びました。

家に着いてから、おやつにいただきました。右は季節のさくらんぼのタルト、左は忘れてしまいましたが^^; どちらもおいしかったです。見た目は素朴な風合いながら、洗練されたプロの技を実感しました。

紅茶のサブレと、右は人気のミカモトサブレ。浅草で人気の猫ちゃんをモチーフにしているそうです。シンプルながら奥の深い焼菓子のお味を堪能しました。

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エンニオ・モリコーネに捧げる

2020年07月19日 | +映画のよもやま

7月6日にイタリアの作曲家、エンニオ・モリコーネが亡くなられました。1950年代末から数多くの映画音楽を手掛け、名だたる映画賞の作曲賞を何度も受賞しています。手掛けた作品は数えきれないほど。

Wikipedia のフィルモグラフィを見て、初期の頃は西部劇の音楽を数多く手掛けていたと知って驚きました。

モリコーネの作品の中で、一番人気があるのはおそらく「ニュー・シネマ・パラダイス」だと思いますが、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」や「アンタッチャブル」などマフィア映画の哀愁を帯びたメロディも忘れ難いです。

でも音楽に着目すると、私が一番好きなのは「海の上のピアニスト」(The Legend of 1900)です。豪華客船の中で生まれ、生涯船を降りることのなかったピアニストの物語で、ヒューマンドラマであり、音楽映画でもあります。

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先日「ルース・エドガー」で久しぶりにティム・ロスを見て「海の上のピアニスト」を思い出し、 YouTubeで音楽を聴いたり、ピアノを弾いたりしていたばかりだったので、今回の訃報を不思議な偶然のように感じていました。

そしてこれも偶然ですが、「海の上のピアニスト」は8月に4Kデジタルリマスター版、9月にイタリア完全版が劇場公開されることが予定されています。

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前置きが長くなりましたが、エンニオ・モリコーネへの追悼を込めて「海の上のピアニスト」から2曲、映画のシーンとともにご紹介します。

The Legend of 1900 (1998) - 'Playing Love' scene [1080p]

主人公の 1900 が船の上で演奏するピアノが話題をよび、レコーディングの話が持ち上がります。そんな話はおかまいなしに、1900 は甲板を歩く美しい女性にひと目惚れし、彼女を思いながら即興でピアノを弾き始めます。

ティム・ロスの恋する切ない表情と、その気持ちとリンクするように奏でられる音楽がロマンティックで美しい "Playing Love" という曲です。

The Legend Of 1900 "Magic Waltz" HD Ennio Morricone

私が一番好きなシーンです。海が大荒れに荒れたある夜、船酔いしてぼろぼろになったマックスが 嵐に合わせてピアノを弾く1900 といっしょにいるうちに、いつしか楽しくなってニコニコしてくる ”Magic Waltz” という曲です。

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最後に「ニュー・シネマ・パラダイス」より ”Love Theme”。この曲はクラシックのアーティストもよく演奏していて、先日はチェリストのヨー・ヨーマが追悼の演奏を Twitter にアップしていました。

私が好きなのはヴァイオリニストのイツァーク・パールマンの演奏です。パールマンはユダヤ系ヴァイオリニストで、映画「シンドラーのリスト」の演奏でも知られていますね。

私も大好きなヴァイオリニストで、1980年頃と1993年頃、来日公演を聴きに行きました。20世紀を代表する偉大なアーティストのひとりです。

Cinema Paradiso Theme By Itzhak Perlman & The City of Praga Orchestra

これは、チリのオーケストラとの演奏ですが、美しいのびやかなヴァイオリンの音色が、映画とはまた別の感動を与えてくれます。

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オーチャードハウスと、ベートーヴェンの「悲愴」

2020年07月15日 | +映画のよもやま

続きますが「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」(Little Women) についてもう少しおつきあいを。

オルコットの故郷で「若草物語」の舞台となったマサチューセッツ州コンコードは、ボストンから車で1時間ほどのところにある小さな町です。私も14年前に訪れ、当時のブログに残しています。

コンコード - 「若草物語」が生まれた町 (2006-12-1)

上はその時撮った写真で、オルコットの家族が20年間(1857-1878)住んでいた オーチャードハウス (Orchard House) です。映画に使われたのは撮影用のセットだと思いますが、忠実に再現されていましたね。

オルコットの父がこの家を買った時、敷地にりんごの果樹園 (オーチャード) があったことから、名付けたそうです。オルコットは、父が彼女のために特別に作った机で、1868年に「若草物語」を執筆しました。

オルコットが住んでいた頃の調度や装飾が、大きく変えないままに保存されています。オーチャードハウスの内部を紹介する映像を見つけたので、よかったらご覧になってみてください。若草物語の世界そのものです。

Little Women: The House of Little Women

映画に登場する音楽は、アレクサンドル・デスプラによるオリジナル曲もドラマティックですばらしかったですが、私はピアノが好きなので、ベスが演奏するクラシックのピアノ曲の美しさに心を動かされました。

サウンドトラックには入っていませんが、映画の中で演奏されたクラシック音楽のリストをまとめているサイトを見つけたので、ご紹介させていただきますね。リンク先で曲を聴くこともできます。

Soundtrack.com/Little Women Soundtrack (2019)

ショパンのノクターン、ブラームスのワルツ、シューマンの子どもの情景と懐かしい曲が続く中、ベートーヴェンのピアノソナタ「悲愴」の第2楽章もありました。

その名にふさわしい、激しい慟哭のような第1楽章とは打って変わって、甘く詩情あふれる第2章。(余談ですが、ビリージョエルがこのメロディを This Song という歌に取り入れています。(^_-)-☆)

映画ではこの曲が2回演奏されます。1回目はベスによって。そして2回目は、フレデリックがジョーに会いにマーチ家を訪れる場面で。

Friedrich at Jo's House - Little Women 2019

(演奏の場面は 1:55 くらいから。映画を見てない方はご注意を)

音楽によって、そしてベスによって導かれた運命に、胸が熱くなりました。

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ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語

2020年07月12日 | 映画

オルコットの名作小説「若草物語」を、「レディ・バード」のグレタ・ガーウィグが新たな視点で映画化。シアーシャ・ローナン、エマ・ワトソン、ティモシー・シャラメらが出演しています。

ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語 (Little Women)

「若草物語」は小学生の時に読みましたが、ストーリーはだいぶ忘れてしまいました。ただ四姉妹のうち、自分はどのタイプ?とかどのキャラクターが好き?という話で友だちとよく盛り上がったのを覚えています。

私は長女なので本来はメグのはずですが、意外とわがままで子どもっぽいところがあるので、どちらかというと四女のメアリーかな~?と思ったり。そして当時の女子たちの間で一番人気はなんといっても次女のジョーでした。

本作は、その次女ジョー(シアーシャ・ローナン)の視点で描かれています。ニューヨークの出版社に”友達”の書いた小説を売り込みにきたジョーが、ダメ出しされながらもようやく掲載にこぎつけ、颯爽と街を走り抜けるオープニングが印象的。

これだけで新しい作品だという予感を感じて、わくわくしました。19世紀のマサチューセッツ州コンコードが舞台で、衣装も美術もクラシックですが、四姉妹がこの時代の慣習にとらわれず、自分で考え、悩みながら生き方を決断していく姿は

現代を生きる私たちにとって共感でき、勇気づけられるメッセージとなっていました。4人がそれぞれ自分の考えをストレートにぶつけ合い、時に取っ組み合いのけんかをするところも新鮮な描写でした。

そして、ローラ・ダーン演じる、慈愛あふれる母親がまたすばらしい。牧師として戦地に赴いている夫に代わって女手ひとつで家族を守る彼女は、きっと神に仕える身であることを常に心に留めて娘たちを育てていたのでしょう。

一方メリル・ストリープ演じる叔母は、母とはまったく違う、どちらかというと現実的なタイプですが、姉妹たちにとってはまだ見ぬ広い世界を示してくれる、きらきらした存在だったのだろうと思います。

オルコットは自身をモデルにジョーというキャラクターを作りましたが、自身が作家という道を選び、生涯独身を貫いたのに対し、ジョーには当時の社会を反映させて、結婚というハッピーエンディングを用意しました。

ところが本作でガーウィグ監督は、ジョーに結婚と仕事と、どちらかをあきらめさせるということはさせなかった。ジョーが作家として認められることはうれしいけれど、それによって何かを失うようなことがあったらきっと物足りなさを感じたと思うので

この結末には大、大満足でした。

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新しいリップと、好きな香り

2020年07月08日 | 日々のこと

めずらしくコスメの話です。^^ 銀座のギャラリーを訪れた後、久しぶりに新しいリップを買いました。

今まで使っていたのは、シャネルの la merveilleuse という色で、信じられないほどすばらしいもの、といった意味があります。たしか数年前のクリスマスシーズンに買った限定色だったと記憶していますが

あまりに気に入りすぎて、ここまで使い切ってしまいました。^^ 限定色なので同じ色が手に入らないにしても、近い色が欲しいと思っていました。

店員さんが次々とお勧めしてくださるトレンドの色を、ことごとくお断りするのは申し訳なかったですが、私が選んだのはこちら。

palpitante というこちらの色は、どきどきさせる、といった意味があります。刺激的で、挑発的で、今の気分にぴったりかしら?? こういう古めかしい色が好きです。

せっかくの新しいリップも、今はマスクで見えなくて残念ですが、隠れたおしゃれを楽しんでいます。

***

ついでといっては何ですが、私の好きな香りの話。

香水の瓶が好きで、昔はよく集めていましたが、今はだいぶ処分してしまいました。若い頃は、ディオールの Diorissimo が好きで私のトレードマークになっていましたが、いつしか自分の気分に合わなくなっていました。

その後、いろいろ変遷があったものの、今ひとつしっくりくる香りに出会えなかったのですが

数年前に恋に落ちた?のが、ディオールの Forever and Ever です。風に消えてしまいそうなくらい軽い香りなので、スメハラ的にも安心? 自分の気持ちを引き立ててくれる、守り神のような香りです。

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幻想の銀河 山本基 ✕ 土屋仁応

2020年07月05日 | アート

銀座メゾンエルメス フォーラムを訪れたあと、THE GINZA SPACE で開催されている「幻想の銀河 山本基 ✕ 土屋仁応」を見に行きました。

THE GINZA SPACE は資生堂ギャラリーとは別で、2年前にできた資生堂の新しいマルチスペースだそうです。場所は銀座5丁目のあづま通り、トリコロール本店の並びです。入口はややわかりにくいですが、細いらせん階段を下りて、地下2階にあります。

私は5年前に銀座の POLA のギャラリーで、山本基さんのインスタレーションと出会い、深い感銘を受けたので、今回の展覧会を楽しみにしていました。コロナの影響により会期が変更となり、8月2日まで開催されています。

【参考記事】山本基展「原点回帰」@POLA MUSEUM ANNEX

今回は山本基さんの、塩を使った「たゆたう庭」というインスタレーションと、木彫作家である土屋仁応さんの「鹿」「月」という作品とのコラボレーションとなっています。

真っ白な空間に鏡の板が敷かれ、山本さんの塩で描かれた繊細な文様が広がっています。その上を土屋さんが制作された木彫りの鹿たちが佇んでいます。

銀河をイメージして制作されたという山本さんの作品と、本来地上にいる動物である鹿の群れとが組み合わされたことで、この世のものとは思えない、美しく、神々しく、幻想的な世界が広がっていました。

そういえば奈良公園では、鹿は神の使いとされていると聞いています。土屋さんが制作された白い鹿たちは、まるで神馬のように、神性が高められていると感じました。

会場にはステップがあり、少し高いところから作品を見下ろすことができます。銀河に佇むように見えた鹿の群れも、上から見ると、神様に導かれ、しっかりと歩みを進めているように見えました。

部屋の隅に1mくらいの高さの台があり、そこにも塩の文様と、立派な角をもつリーダー格の鹿の木彫りが展示されていて、目の高さで間近に作品を鑑賞することができました。

均一な厚みに絞り出された塩は、そのまま形を留めていて、塩だけでできているとはにわかに信じられないほど。手で触って確かめてみたくなりました。

幻想の銀河 - 山本基 × 土屋仁応

本展の紹介ビデオ

山本基(やまもと・もとい)さんのホームページ

土屋仁応(つちや・よしまさ)さんのTwitterアカウント

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コズミック・ガーデン サンドラ・シント展

2020年07月01日 | アート

久しぶりに銀座でアート・ギャラリーのはしごをしました。まず訪れたのは、銀座メゾンエルメス フォーラムで開催中の「コズミック・ガーデン サンドラ・シント展」(Cosmic Garden by Sandra Cinto)です。

コロナの影響で一時お休みしていましたが、再開して7月31日まで開催されています。ブランドには縁のない私もこちらのギャラリーは大好きで、これまで何度となく訪れてきました。

パリのポンピドゥー・センターと同じくレンゾ・ピアノが設計したこのメゾンは、ガラスのブリックでできているので、時間や天気の移り変わりをも取り入れた、この場所ならではの現代アートやインスタレーションが鑑賞できるのが魅力です。

本展のサンドラ・シントは、ブラジル・サンパウロを拠点に活動しているアーティストで、星や結晶、波などをモチーフとして用いたドローイングを主に、空間と関わり合いを持つインスタレーションを数多く手がけているそうです。

エレベータでギャラリーのある8階に上がると、壁に沿ってブルーのグラデーションが続き、その先には空色とも水色ともいえる淡いブルーの世界が広がっていました。極細の白い線やドットで描かれる繊細なドローイングは、島や橋、波を表しているようです。

あるいは、船や飛行機の航跡のようだったり、はえ縄漁業の網のようであったり、空中ブランコのようだったり。宇宙から見る地球は、こんな風に見えるのではないかと思われました。

シントさん自身、このような大きな作品を作るのは初めてのことで、今回は6人の仲間たちと作品を作り上げたのだとか。使っている画材はペンやマーカーなど、どこにでもあるもの。

シントさんは今は個人主義が進んで、誰もがコンピュータ上で自分の意見を言い合う時代だから、と仲間たちと手を取り合うことの大切さを語ります。

朝のスペースからグラデーションの通路を通って...

もうひとつのスペースは、がらりと変わって夜となっています。朝のスペースでは鳥の鳴き声や水のせせらぎが聞こえましたが、夜のスペースではコオロギの鳴き声や鳥の羽ばたきが聞こえます。

漆黒の空に満点の星。まるで宇宙空間に放り出されたようです。床には絨毯が敷き詰められ、クッションがぽんと置かれ、どちらにも星が描かれています。ここでは靴をぬいて、足で絨毯の感触を味わいながら作品を鑑賞します。

私は気がつかなかったのですが、ラベンダーとカモミールの香りも漂っていたようで、まさに五感で味わうアートでした。

2つのスペースをつなぐエレベータホールには、夜空いっぱいに打ち上げられた花火??

作品を鑑賞しながら、白の魅力を再認識しました。自宅の壁にドローイングしたくなりました。^^

EXHIBITIONS | Sandra Cinto, "Cosmic Garden" at Le Forum, Tokyo (1/2)

作品のメイキングと、シントさんのインタビューです。ゆったり語ることばに力を感じました。

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