セレンディピティ ダイアリー

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セーヌ川の水面の下に

2024年07月28日 | 映画

トライアスロンの世界大会を目前に控えたパリのセーヌ川に、巨大化したサメが出現するパニック映画です。

セーヌ川の水面の下に (Sous la Seine / Under Paris) 2024

この週末からいよいよパリ五輪が始まりましたが、みなさまは開会式をご覧になりましたか? 私は時差の関係もあって、後からネットで流れてくるハイライトの部分を拾いながら見たのですが

エンディングを飾る、セリーヌ・ディオンの闘病を微塵も感じさせない圧倒的な歌声にノックアウトされました。レディ・ガガのコケティッシュなパフォーマンスも、彼女らしくてとってもチャーミングでしたね。

選手団がセーヌ川を船で下って入場する、というとてつもないアイディアにもびっくりしましたが、2週間前に表題の映画を見たばかりだったので、途中で巨大サメが現れるのではないかと、ひやひや、にやにやしながら見ていました。^^

特にこの度の開会式のパフォーマンスは、フランスらしい、アグレッシブでシニカルな表現がそここにあったので。

開会式では、映画に登場するパリの町並みやセーヌ河畔の風景はもちろんのこと、地下水路やカタコンベも登場して、大いに興奮しました。偶然ながらタイムリーな鑑賞となりました。

さて、本作では、本来 海水でしか生息できないはずのサメが、地球環境の変化に対応して巨大化し、淡水でも生きられるよう進化した、という設定です。

冒頭に登場する、チャールズ・ダーウィンの「生き残るのは、最も強い種でも、最も賢い種でもない。変化に適応する種である」という名言が、この映画をみごとに表しています。

本作は名作「ジョーズ」にインスパイアされて作られたそうです。「ジョーズ」では、夏の観光シーズンを前にサメの存在をひた隠しにした市長の判断ミスで、何人もの観光客が犠牲になりますが

本作では、パリが威信をかけて開催するトライアスロンの世界大会を、今さら中止することはできない!と主張する市長の判断ミスによって、その後の大惨事を招くことになります。

太平洋や大西洋に存在するゴミの巨大渦の影響で、サメが進化を遂げて巨大化したという設定は、人間のエゴのために巨大化した「ゴジラ」にもインスパイアされているように、私は感じました。

このゴミの巨大渦については、以前大学の社会人クラスでSDGsの授業を受けた時に知ってかなり衝撃を受けたのですが、ご興味のある方はこちらのWikiをお読みになってみてください。

太平洋ゴミベルト(Wikipedia)

映画は、こうした環境問題や政治家の判断ミスによる人災などを盛り込みつつも、シリアスではなく、エンターテイメントとして楽しめました。

今まさに見るのにぴったりの作品です。

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フェラーリ

2024年07月14日 | 映画

イタリアの自動車メーカー「フェラーリ」の創業者、エンツォ・フェラーリの半生を描いた伝記ドラマです。

フェラーリ (Ferrari) 2023

最近映画はほとんど配信で見ていたので、ちゃんと映画館に足を運んで新作映画を見たのはほんとうに久しぶりです。過去記事をチェックしたら、なんと2023年10月に見た「グランツーリスモ」以来、9か月ぶりでした。

車を題材にした映画が好きなのと、本作は大好きなアダム・ドライバーがフェラーリを演じ、ペネロペ・クルス、シェイリーン・ウッドリーが出演するというので、楽しみにしていました。

アダム・ドライバーが演じるのは「ハウス・オブ・グッチ」に続いて、イタリアの創業者一族。グッチ家のおっとりとした御曹司役がとても気に入っていたのですが、本作では終始不機嫌な、冷酷な創業者を演じています。

妻(ペネロペ・クルス)、愛人(ウッドリー)の苦悩に寄り添うことをせず、ひょっとしたら会社の経営すら興味なく、頭の中にあるのは、最高の車を作って、レースで自分のチームが優勝することばかり。

チームのレーサーが事故で亡くなっても、公道を走るレースで事故を起こして何人もの死傷者を出しても、死を悼むより、どうやってこの難局を乗り越えるか腐心している(ように見えました)。

ものすごい天才だけれど、人の心を持たない人物、という印象を受けました。

特に私は妻ラウラに同情しました。エンツォの妻として、そしてビジネスのパートナーとして夫を支えてきたラウラでしたが、後継ぎ息子のディーノを病気で亡くして以来、夫の心は愛人へと移ります。

フェラーリが危機に立った時、ラウラがその気になれば、自分の取り分を得て、フェラーリ家を去ることもできたと思いますが、彼女は自分の財産を会社再建のために捧げるのです。

ラウラは、エンツォ以上に会社を愛し、存続の危機を救ったのだと思います。一方、彼女がそのためにエンツォに切り出した条件に、彼女の悲痛な思いがひしひしと伝わってきました。

ちょっぴりネガティブな感想になってしまいましたが、映画はおもしろかった! とりわけ本作の華というべき、レースのシーンの臨場感がすばらしかったです。

イタリアの公道を走る「ミッレミリア」というレースでは、イタリアの雄大な山岳地方や、素朴な田舎の村々を走るのですが、こんな美しい風景の中をドライヴして旅してみたい!と思いました。

車好きの夫から、フェラーリにはエンツォの早逝した息子ディーノの名前を冠した名車があると聞きました。エンツォは彼らしい方法で、息子の生きた証を残したのですね。

【参考】知っておきたいフェラーリ・ディーノの逸話

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ブラックベリー

2024年07月10日 | 映画

2000年代に一世を風靡した世界初のスマートフォンBlackBerry (ブラックベリー) の栄枯盛衰を描いた、実話をもとにした作品です。

ブラックベリー (BlackBerry) 2023

楽しみにしていた本作が、Netflixで配信されることになったので、早速見てみました。

BlackBerryは私がニューヨークにいた2000年代に人気を博した携帯端末。当時はまだまだ携帯電話が主流でしたが「テキストを送ることができる」のが画期的で、新しもの好きたちの間で話題を集めていました。

たしか、オバマ大統領が選挙戦の時にBlackBerryを愛用していたのがきっかけで、人気に火がついたとも記憶しています。

BlackBerryという名前がかわいいし、小さなキーボードがついた携帯端末は、ガジェットの魅力にあふれていました。

余談ですが、その後帰国した日本では、ドコモの携帯電話にiモードが標準装備されていて、周りの人たちがメッセージを送り合っている姿に衝撃を受けました。

携帯電話に代わってBlackBerryという新しい機器が生まれた北米に対して、日本では携帯電話自体にメッセンジャの機能を加えて、メールを送る、簡易的なHPが見られる、と独自の進化を遂げていたのです。(それは後に、ガラパゴス携帯と揶揄されることになりますが)

そして、BlackBerryも、iモードも、2007年にiPhoneが登場するや、瞬く間にユーザを失い、市場から姿を消すこととなったのでした。

このような携帯電話の変遷を、身近なところで見てきたので、BlackBerryの栄枯盛衰を描いた本作は、私には懐かしく、大いに楽しめました。

本作を見て痛感したのは、どれほどすばらしいイノヴェーションであっても、具現化する術がなければビジネスにはならない、ということ。

マイクもダグも、会社を立ち上げた頃は、ほんとうに生き生きとして楽しそうだったのに、会社が大きくなるにつれ、自分の手の届かない存在になってしまったのが、なんとも皮肉で気の毒でした。

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