創価学会の「内在的論理」を理解するためといって、創価学会側の文献のみを読み込み、創価学会べったりの論文を多数発表する佐藤優氏ですが、彼を批判するためには、それこそ彼の「内在的論理」を理解しなくてはならないと私は考えます。
というわけで、こんな本を読んでみました。
佐藤優/大川周明「日米開戦の真実-大川周明著『米英東亜侵略史』を読み解く」
今回は「文庫版あとがき」を引用したいと思います。
日米開戦の真実
――大川周明著『米英東亜侵略史』を読み解く
■文庫版あとがき
文庫版 あとがき 佐藤優
(つづきです)
本書を上梓してから5年が経った。その間に国際関係はより帝国主義的になっている。帝国主義国は、相手のことなど考えずにまず自国の利益だけを徹底的に主張する。そして、相手国が強く反発せず、国際社会も沈黙しているならば、そのまま自国の権益を拡大する。これに対して、相手国が激しく反発し、国際社会からも「いくら何でもやりすぎだ」と顰蹙を買うようになると、このままゴリ押しを続けても、結果として自国が損をするという見通しから、帝国主義国は妥協し、国際協調に転じる。一種の勢力均衡ゲームが行われているわけだ。それだから帝国主義国である中国は、尖閣諸島を中国の実行支配下に置こうと種々の画策を展開するのだ。ロシアもメドベージェフ大統領が国後島を訪問し、北方領土の「脱日本化」を進め、不法占拠を固定化しようとしている。中国もロシアも帝国主義の文法に従って行動しているのだ。米国も帝国主義政策を露骨に進めている。現在の「悪い円高」は、米国が事実上、為替ダンピングを行っているからだ。帝国主義の文法に従った近隣窮乏政策である。
帝国主義のゲームのルールは、「食うか食われるか」だ。日本の政治エリート(国会議員、官僚)には、この現実が見えていない。そして、各帝国主義国が建前として掲げている国際協調や戦略的互恵などを額面通りに受け取り、事実上、日本は米国、中国、ロシア、EUによって、「食われる」状態になっている。
客観的に見た場合、日本は一級の帝国主義国である。日本が生き残るためには、品格のある帝国主義政策を展開できるように国家体制を改造する必要がある。社会の力(それは国民の力でもある)によって国家を改造しなくてはならないのである。国民が集合的無意識のレベルでこの改造を強く望んでいるから2009年に自民党から民主党への政権交代が起きたのだ。政党は、社会に基盤を置く。しかし、どうもこの原点を民主党も自民党も忘れているようだ。特に政権党である民主党は、当事者にとっては深刻なのであろうが、日本国民と日本国家の利益とは関係のない権力闘争、政治抗争に明け暮れている。こうしている中で日本の地盤沈下が進んでいく。「何とかしなくてはならない」という危機意識を私を含む多くの日本人が持っている。
(つづく)
【解説】
本書を上梓してから5年が経った。その間に国際関係はより帝国主義的になっている。
文庫版が発行されたのは2011年2月ですから、現在はそれよりもさらに各大国は帝国主義的になっているといえるでしょう。
政権は民主党から自公連立に代わりましたが、世界の中で日本の地盤沈下が進んでいることには変わりがありません。
「何とかしなくてはならない」 という危機意識を私を含む多くの日本人が持っている。
私も同感です。
獅子風蓮