友岡雅弥さんは、執筆者プロフィールにも書いてあるように、音楽は、ロック、hip-hop、民族音楽など、J-Pop以外は何でも聴かれるとのこと。
上方落語や沖縄民謡にも詳しいようです。
SALT OF THE EARTH というカテゴリーでは、それらの興味深い蘊蓄が語られています。
いくつかかいつまんで、紹介させていただきます。
カテゴリー: SALT OF THE EARTH
「地の塩」という意味で、マタイによる福音書の第5章13節にでてきます。
(中略)
このタイトルのもとに書くエセーは、歴史のなかで、また社会のなかで、多くの人々の記憶に刻まれずにいる、「片隅」の出来事、エピソー ド、人物を紹介しようという、小さな試みです。
2019年3月18日 投稿
友岡雅弥
ある、広いくくりでいう「通販」で起こった出来事です。
「どんこ」というと、関西など西日本エリアでは、ハゼの仲間です。しかし、東北、北日本エリアでは、エゾアイナメを「どんこ」と言います。
東北太平洋岸、つまり東日本大震災被災地では、この魚は人気で、それを専門的に獲る漁師さんもいるほどです。安くて、おいしいのです。肝もおいしく(僕は、岩手の野田村で、よくどんこをたべます)。かなり深いところにいて、深海魚っぽい形をしているので、観光客とかは、あまり食べないようで、だからまだ安値なのかな、とか思ったりして。
秋から冬が旬です。
このどんこ。2013年だったか、2014年に、ものすごく不漁な年のありました。
ある通販で「どんこ」が特集されて、予約注文が殺到したのですが、まったく獲れません。
たいてい、こう言う場合は、他国産とか、他地域産を送ってお茶を濁すのですが、ところが、「獲れません」とあやまったのです。
これは、通販としてはあかんのかもしれません、通信販売ですから、販売できないならば、成り立たないはず。クレームで炎上!が普通かも。
しかし、苦情は0!なし!
むしろ、60を超える「心配」と「励まし」、「いつまでも、待っています」のレスポンスで、「炎上」したのです。
「東北食べる通信」です。
https://tohokutaberu.me
「通信販売」ではなく「通信」です。
販売に力点があるのではなく、「通信」に力点があります。
「広告」ではなく、「通信」つまり、「交流」に力点があります。
「東北食べる通信」の代表の高橋博之さんは、とても面白い人です。
岩手の県会議員(まったくの無所属、一匹狼)だったのですが、東日本大震災で、地盤であり、津波は関係なかった花巻から、ボランティアで、沿岸被災地に通ううちに、漁師さんたちの生き方に感銘を受けて、こんなすばらしい「人たち」また「生業」 を、みんなに伝えたい、と、議員を辞めて、「東北食べる通信」を創りました。
クール便で送られてくる箱のなかに、毎回、違う海産物や農産物とともに、その海産物、農産物を作った生産者さんのドキュメンタリー記事が載ってます。
そして、その産物の由来や歴史や生育法など。
レシピも当然載ってますが、申し訳程度。
つまり、生産者さんと、消費者を繋ぐ。
さらには、繋いで、あとは「直接交流を」と、手を離す。
たいてい、こう言う場合は、「オレがつなげたから、直接は、連絡したらだめ、オレを通せ」みたいな態度がほとんどですが、
「どんどん、勝手に交流してください。 むしろ、それがありがたい」
高橋さんは、「東北食べる通信」を「田舎と都会をかき混ぜる場」「お見合いの場」と位置づけています。
それで、「東北」は大きすぎるから、「勝手に、それぞれの港で、独立した雑誌を」 と、のれん分けもしています。
そして、そののれん分けした「食べる通信」(今、2018年末の時点で、39あります)が、ゆるやかな連携、ボスのいない、交流会などの交流の場で、お互いの頑張りを確かめあう。
そんな「食べる通信連合」をつくっています。
https://taberu.me
高橋さんは、こうも言ってます。
田舎が大変だから助けに行かなきゃいけない、はダメなんですよ。こっちも大変だけどね、都会の人も大変じゃないですか。介護難民、医療難民あふれて、もう限界都市一直線ですよ。
「田舎の農村漁村が限界都市を救うの」っていう考えを、「都市が限界集落を支える」考えにかぶせていけばいいと思うんですね。
面白いお兄さんなのです。また本も出てますので、ご覧ください。
『都市と地方をかきまぜる――「食べる通信」の奇跡』光文社新書
『だから、ぼくは農家をスターにする「食べる通信の挑戦』CCCメディアハウス
ものを買うって、いわば「毎日の投票」だと思うんです。
それによって、社会を少しづつ変えていける。
こころと志しをもった、生産者さんを少しでも支えて、そして、その「毎日」に思いを馳せる。
それによって、「私」も変わります。
【解説】
ものを買うって、いわば「毎日の投票」だと思うんです。
それによって、社会を少しづつ変えていける。
いい言葉です。
友岡雅弥さんのエッセイが読める「すたぽ」はお勧めです。
獅子風蓮