「心ゆたかな暮らしを」  ~Shu’s Page

小説のレビュー、家族の出来事、趣味の事、スポーツ全般など、日々の出来事をつづりながら、一日一日を心豊かに過ごせれば・・・

とても深〜い『永い言い訳』by西川美和

2016年11月20日 | 小説レビュー
~長年連れ添った妻・夏子を突然のバス事故で失った、人気作家の津村啓。悲しさを“演じる”ことしかできなかった津村は、同じ事故で母親を失った一家と出会い、はじめて夏子と向き合い始めるが…。突然家族を失った者たちは、どのように人生を取り戻すのか。人間の関係の幸福と不確かさを描いた感動の物語。「BOOK」データベースより


妻が友人と二人でスキーに出掛けた道中で、スキーバスが転落事故を起こし、突然、妻を失ってしまった作家の物語です。

この物語の主人公である「津村啓」は、有名小説家なんですが、性格に難があり・・・、本当に自己中心的で幼児性があり、身勝手で言い訳がましく、とても好感が持てない人物です。

ある日、亡き妻の友人の旦那(大宮陽一)と出会い、ひょんなことから、大宮家での家族との暮らしが始まります。

この大宮家の子ども達(真平:小6と、灯:4歳)が、とても素直で可愛くて癒されます。

330頁あるうちの200頁は大宮家の家族と過ごす日々が描かれています。

その中の暮らしが、涙と笑いに溢れていて、とても癒されます。津村の心の移り変わりが、とても上手く描写されていて、「さすがは映画監督さん」と、拍手を送りたいですね!

最後の最後で主人公が語ります。

「・・・生きているうちの努力が肝心だ。時間には限りがあるということ、人は後悔する生き物だということを頭の芯から理解しているはずなのに、最も身近な人間に誠意を欠いてしまうのは、どういう訳だろう。愛するべき日々に愛することを怠ったことの代償は小さくない。・・・中略
・・・あの人が居るから、くじけるわけにはいかんのだ、と思える『あのひと』が、誰にとっても必要だ。生きていくために、想うことの出来る存在が。つくづく思うよ。他者の無いところに人生なんて存在しないんだって。人生は他者だ。僕にとって、死んだ君が今の今になって、『あのひと』になりつつあるような気もするよ。遅いか―。」

と、長文になりましたが・・・(^_^;)、文字にしてしまうと当たり前のことなんですが、皆さん思い当たる節もあるのでは?

という自分もそうですけどねf(^_^;

限られた人生を大切に過ごしたいと思います。

さて、この作品は映画にもなっていて、このどうしようもない主人公を本木雅弘氏が好演しているようですが、どんな風に演じているのか、とても興味があります。またDVDで観たいです!

★★★☆3.5です。