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もう一捻り「愚行録」by貫井徳郎

2017年09月04日 | 小説レビュー
〜ええ、はい。あの事件のことでしょ?―幸せを絵に描いたような家族に、突如として訪れた悲劇。
深夜、家に忍び込んだ何者かによって、一家四人が惨殺された。
隣人、友人らが語る数多のエピソードを通して浮かび上がる、「事件」と「被害者」。
理想の家族に見えた彼らは、一体なぜ殺されたのか。確かな筆致と構成で描かれた傑作。『慟哭』『プリズム』に続く、貫井徳郎第三の衝撃。「BOOK」データベースより


叙述ミステリーの名手、貫井徳郎氏の話題作「愚行録」です。

湊かなえさんの作品風で、一家四人が惨殺される事件が起こり、その被害者一家の友人や知人が語る被害者像を通して、事件の真相が明らかになっていきます。
関係者のインタビューという形式で進んでいくんですが、一章ごとに「お兄ちゃん」と語りかける妹の独白録が挟まれていて、「この妹は誰なんや?」という疑問が沸いてきます。

また、冒頭に、ネグレクトによって、幼い命が亡くなったニュース記事があり、「この虐待と事件と一家惨殺事件には、どんな関係があるんやろ?」と、心の中に引っ掛かりを感じながら読んでいきました。

・・・が、全然わからんまま、エンディングが近づいてきまして、「どうなんのよ?」と思っていると、最後の最後の章で全ての謎が明らかになります。

もっと「ええっ!そうやったんか!?」っていうタネ明かしを期待しましたが、犯人が「こいつやったんか!」ということや、動機やキッカケについても「それだけで殺すか?」と、不十分な感じで、消化不良に終わりました。

読みやすい内容ですし、田向さんや夏原さんに対する関係者の証言を読んでいても、「殺されるほど悪い人か?」と、特に夏原さんは、それほど悪人とは思えません。逆に言えば、語っている人たちの方が、ある意味では愚かでつまらない人物ばかりだと思いました。まぁ「愚考で愚行」を重ねてきたともいえる人たちですね。

全体を通して、それなりに面白かったんですが、もう少し捻りと意外性をもってほしかったです。
★★★3つです。