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命の炎を燃やし尽くした究極の恋愛『冬の伽藍』by小池真理子

2018年10月11日 | 小説レビュー
煉獄の中で、私は天上の果実を口に含んでいた…。
夫を事故で失った高森悠子は、薬剤師として勤めることになった軽井沢の診療所で医師・兵藤義彦と出会う。
彼もまた、妻の美冬を自殺で亡くしていた。
義彦に恋心を抱きながら、好色なその義父・英二郎の誘いを拒みきれない悠子。
エロス匂い立つ、長編恋愛小説。「BOOK」データベースより


小池真理子作品の連読です。

やっぱり小池さんの作品は相変わらず情景描写、心理描写が美しく繊細です。

第一章は、冬の軽井沢を舞台に物語は進行します。

悠子と義彦が出逢い、そして義彦の義父である英二郎が絡んできて、物語は危ういバランスを保ちながら、まさにタイトロープの如くハラハラ、ドキドキの展開で事件が起こるまでを書いています。

そして第二章では、悠子を中心とした手紙のやりとりのみで、幾年もの歳月が経過し、そしていよいよ第三章で二人の運命がクライマックスを迎えます。

この書き方、章の組み立てが斬新で絶妙なんですね。

無駄なものを省きながら、それでいて読者に対してストレートに響く言葉の数々、そして目に浮かぶような情景描写、何もかもが儚く美しい「小池ワールド」に彩られています。

いよいよクライマックスを迎えるとき、一度は「これで終わってしまうんかい!?」と、落胆させておいての、素晴らしいエンディングに鳥肌が立ちました。

俗人的に言わせてもらえば、あと2、3ページを費やして、二人っきりの世界を描いて欲しかったと思いますが、それも必要ないですよね。

凄まじい環境を共有した二人が、まさに命を削ってつくりあげた究極の恋愛の形がここに描かれています。

★★★☆3.5です。