『いくさの底』by古処誠二
~戡定後のビルマの村に急拵えの警備隊として配属された賀川少尉一隊。しかし駐屯当日の夜、何者かの手で少尉に迷いのない一刀が振るわれる。敵性住民の存在が疑われるなか、徹底してその死は伏され、幾重にも糊塗されてゆく―。善悪の彼岸を跳び越えた殺人者の告白が読む者の心を掴んで離さない、戦争ミステリの金字塔!「BOOK」データベースより
う~ん!何とも面白い小説でした!古処誠二さんという作家さんの本は初めて読みましたが、ご自身が航空自衛官出身とのこともあってか、戦争ものの作品が多い作家さんです。
ビルマ戡定(太平洋戦争の初期、1941年頃、ビルマ(現ミャンマー)を占領統治していたイギリスを中心とした、『イギリス軍・アメリカ軍・中華民国国民党軍に対して、日本軍・ビルマ国民軍・インド国民軍が戦い、日本軍側が勝利して、日本軍の統治下のもとビルマ軍政権の独立を認めた)後のビルマにおける日本軍とビルマの辺境にある小さい集落での物語です。
何の先入観もなく、どこかのサイトの「おすすめミステリ」で見かけたタイトルを記録していて、コロナウイルスの影響により閉館さていた図書館の運営が再開されたので、早速借りてきました。
まぁしかし、読み始めた頃には想像もしなかった展開で、最後まで一気に読みきりましたよ!とても面白かったです!
ビルマ東部のタイや中国雲南省と国境を接する小さな辺境の村で起こる殺人事件の犯人を巡って、関係者(日本軍、村人、中国軍など)が疑心暗鬼に陥り、軍特有の機密主義や、主人公である通訳の依井氏の微妙な立場などが相まって、ストーリーの展開が全く読めませんでした。
ある意味、周囲から隔離されたような小さな村での出来事で、大きな動きや戦闘などはなく、心理戦、騙し合いともいうべき犯人探しがはじまります。
読み進めながら、昔に観た映画で、僕の大好きな作品の一つである、
クエンティン・タランティーノの名作『レザボアドッグス』を思い起こしました。
さて、今回の作品、『いくさの底』では、キャラクターの作り方にもう少し深みが欲しかったのと、未開の地域の方言を取得する技術に対しての少々の疑問などは残りますが、クライマックスから一気に犯人が判明するまで、二転三転する緊迫感は、もの凄いものがあり、読み終えたあとの読後感も気持ちよかったです。
素晴らしい作家さんです!
★★★☆3.5です。